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牢屋の中からこんにちわ

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牢屋の中からこんにちわ。
皆さんご存知の通り私は牢屋に居ます。

いや~、ビックリしましたよ。

想像以上に劣悪な環境でした。
初めてだとドキドキしていた自分を殴ってやりたい。

・「寝床は冷たい床。
飯は1日一回、固いパンみたいなもの。
排泄物は角のくぼみに落とすだけ。」

牢屋に入れられて説明を受けた事だ。
実際にその環境下に入るとかなりきついね。
もう臭いのなんのって、、、
それに知らない人と同室ですよ?
堪らず魔法を使ってしまったよ。

風魔法で匂いを外に流しておいたのです。
これで少しはマシになった。

・同室の罪人
「なんでお前魔法使えるんだ?」

罪人の手枷には魔法封じの印が刻まれている。
しかし俺にはそんなもの効かん。
印を書き換えてやったからな。
魔法封じではなく魔力封じじゃないとダメだろう?
俺みたいに書き換える奴がいるかもしれないぞ?

・「魔法なんて使ってないですよ?
俺にも手枷があるんだし。
勘違いではないですか?」

手枷を見せながらすっ呆ける。
同室の人は首をひねりながら考えていた。

さて、早い事証拠を上げてくれないと辛い。
あまり長い様なら逃げ出してやろうかな。
環境に耐えれずに逃げ出す方が早い気がします。

現在、牢屋に入って1時間ちょい。
既に心が折れそうです。


~3時間後~

・「し、、、ぬ、、、、」

正直に言うと暇すぎる。
何もすることが無い。
小さな空間に知らない人と一緒。
お互いあまり話す事もない。

まさに拷問ですな。
せめて書物があれば気が紛れるのに。

てか文字読めなかったな。

・「それに、うるさくて眠れない。」

・モージ
「奥には怖い獣人が繋がれてるからな。」

同室に居た罪人はモージさんと名乗った。
少ない会話の中で得た情報だ。

・「獣人ね、、、一体何したんだろう。」

・モージ
「さあね、大方盗みでも働いたんだろう?」

獣人はよく盗みを働くのかな?
でもこの国で獣人を見た事ないな。
別の区で住んでいるのか?

・モージ
「あんたは獣人の事どう思う?
獣人は盗みもするし人殺しもする。
噂では人の子も喰うらしいぞ?」

変な事を聞かれた。
でも話題が無かったから丁度いいか。
これで少しは時間が忘れられる。

・「実際にはあった事ないから何とも言えん。
盗みも人殺しも人族だってやってるだろう?
一部の行動で種全体を捉えるのは良くない。」

モーダル国の事を考えるとそう思いたくなる。
人間の魔物化。
一部の人間だけがやっていると考えたい。

・モージ
「へぇ、面白い事言う?
獣人は人間を餌としてしか見てないらしい。
それでもアンタは獣人の肩を持つのかい?」

・「別に肩を持った訳じゃないよ。
それも只の食物連鎖だろう?
弱肉強食てやつだな。
ただ、何もしないで喰われてやる義理はない。
その時になったら全力で抗う。
それだけかな。」

俺は神様じゃない。
だから自然の流れは止められない。
その中で細々と生きて行くしかないんだよ。

・モージ
「アンタとは気が合いそうだ。
だから教えてくれよ。
どうやって魔法を使ってるんだ?」

あらら、バレてしまったか。
バレないように薄く展開していたが。
属性魔法は感知されやすいから仕方ないか。

・モージ
「ここまで感知出来ない魔法は初めてだ。
相当の腕前なんだろう?」

悪いがそんなに強くないぞ。
最近も兵士さんに走りで負けたばかりだ。

・「ん~、企業秘密です。
とりあえず寝るので話は終わり。」

面倒事に巻き込まれそうな予感。
なので私は現実逃避です。

・モージ
「なあ頼むよ、教えてくれよ。」

せっかく話題が出来たと思ったのに。
これじゃ話すら出来ん。
絶対に感知されない魔法とか考えよう。

寝ようとしてもしつこく食い下がるモージ。
既に面倒な事になっていた。

寝ようとする。
食い下がってくる。
断る。

この繰り返しが行われる。
そろそろ俺も怒りますぞ?

何度繰り返したのか忘れた頃。

・牢屋番1
「上玉が入ったって本当かよ?」

・牢屋番2
「マジだぜ、今回は俺からだからな。」

・牢屋番1
「解ってるよ。」

そんな会話をしながら奥に向かっていく。
なにやら嫌な予感がする、、、

・モージ
「くそ、、、、」

俺は今、狸寝入り中です。
暫くすると奥で怒号が聞こえた。
さっきの獣人さんかな?

・モージ
「やっぱりか!頼む起きてくれ。」

ものすっごいユサユサされた。
やめて、起きてるから。

・モージ
「頼む、俺に魔法の使い方を教えてくれ。
俺の連れなんだ。
助けてやりてぇんだよ。」

必死なのは伝わりました。
こりゃひと騒動ありそうだな。
出来ればゆっくりして置きたいのだが。

・牢屋番2
「こりゃ上玉だ!じっくり可愛がってやるぜ。」

上機嫌の牢屋番さん。
悪いがそれはフラグです。

・「モージさんだっけ?
事情は何となく把握したよ。」

モージの手枷にある魔法封印の印を解除する。
さて、俺は寝たふりでもしてようかな。

・モージ
「本当か?すまねえ。」

モージは俺にお礼を言ってから行動に移す。
風魔法の爪で牢の入り口を破壊。
そのまま牢屋番に斬りかかる。

囚われていた少女を見事に救出。
彼はそのまま奥に向かった。

・「風属性の使い手だったのね。
そりゃバレるわ。」

同じ属性なら感知しやすいからね。
お陰で納得できた。

暫くするとモージが戻って来た。

・モージ
「すまねえ、お陰で助かった。」

獣人さんとモージ、そして可愛い女の子。
どうやらモージさんは獣人の仲間らしい。

・モージ
「あんたも一緒に来るか?」

モージさん結構優しいんだな。
本当に罪人なのかしら?

・「牢から外まで結構遠いよ?」

・モージ
「人間の兵士をなぎ倒しながら行けば良い。
本気で走れば付いてこられないさ。」

奥で繋がれていたであろう獣人の息が荒い。
ヤル気満々だな。

・「お勧めしないよ。
万が一、騎士団長と出くわしたらどうする?
あの人は抜けないと思うな。」

俺の言葉で獣人さんがシュンとなる。
ライルさんに捕まえられた経験ありって感じ?

・モージ
「一か八か賭けるしかねえ。
このままここに居ちゃルイネが、、、」

女の子はルイネちゃんって言うのね。
流石に俺もこのままって訳にはいかないな。

・「面倒事はゴメンなんだけどな。」

俺は立ち上がる。
俺のいた檻は破壊されている。
ここに残っても面倒な事になるのは明白。
どうせなら外に出てしまおう。
そう思ったので行動に移します。

・「俺が外まで案内するよ。
信用するかしないかはアンタらに任せる。
このままこの場所に居るのも辛いしね。」

匂いは解決したが腹減った。
なのでここらでお暇しようと思います。

案の定、獣人が反対してきた。
しかしモージが何とか説得する。
ルイネちゃんは獣人の脚にしがみ付いている。
怖かったんだろうね。

俺はモージが倒した牢屋番の所に行く。
一撃できっちり仕留めてますな。

これ、俺も同罪だよね?
殺人、脱走補助、、、

・「いまさら罪が増えても同じか。」

てなわけで窃盗も追加です。
奴らの装備を剥ぎ取る。
そして合成で装備品を作り直す。

モージと獣人さんには簡単な軽鎧。
素材が少ないので急所のみを保護する形。
そしてルイネちゃんには動きやすい服を。
囚人服じゃ可哀そうだしね。

・モージ
「あんた、一体何者だ?」

只の冒険者ですよ。

・「さて、俺は外に出るが。
アンタらはどうする?」

立場が逆転したな。
俺は出ると決めた。
後はこの人たちに任せよう。

・ルイネ
「えと、、、服、ありがと。」

お礼を言ってくれた。
いい子じゃない。

・モージ
「アンタに賭けてみよう。」

モージは決断した。
ルイネちゃんの言葉で獣人さんも決意した。

・ロス
「お前が何者だろうと関係ない。
敵ではない、それで十分だ。
俺の名前はロスだ。
兵士が来たら俺が何とかする。」

ロスさんの警戒心が薄れた。
装備品を作ってよかったみたい。

・「ライオットだ、宜しく頼む。」

せっかく名乗ってくれたのでこちらも。
特に偽名を使う事もなかろう。

・ルイネ
「ライオット?本当に?」

偽名を使うべきだったかな?

・モージ
「知ってるのか?」

・ルイネ
「あたしが知ってるライオットならね。
何でこんな所に居るの?
国の英雄でしょ?
あ、そうか手柄は全部カインズ家の物だっけ?」

女の子がやたらと詳しい。
何故に表に出ていない情報を知ってるのかな?
どういう事?

・ルイネ
「どうしてって顔してるわね?
ふふふ、女は秘密が多いのよ。」

小さい女の子に似つかわしくない色気。
なんだこの色香は。
行っちゃいけない道にハマりそうだ。
って、よく観察すれば何かしらの魔力?
魅了魔法とかでも使ってるのか?

・ロス
「そろそろ移動した方が良い。」

たしかに、のんびりしてられないよね。

・モージ
「索敵しながら進む。
ゆっくり付いて来い。」

ふむ、モージがスカウト。
ロスが戦闘。
ルイネちゃんが、、、魔法使い?
そんな感じかな?

・「ここは俺の方が詳しいから先導するよ。
譲ってもらって良いかな?」

モージは少し考える。

・モージ
「解った、では俺は後ろを守ろう。」

物わかりの良い事で何よりです。
では行きますか。

・「マップオープン。」

俺はマップを展開。
そのお陰で兵士の位置が丸わかり。
さて、この配置なら。

・「こっちだ。」

俺は3人を連れて城内を進む。
まずは事情を説明しとかなきゃな。
俺はある部屋に向う。

・モージ
「おい、外はあっちだぞ?」

・ロス
「俺達をどうする気だ?」

早速突っ込まれてます。
何故なら俺は3階に上がっているからです。
途中で何度も言われたけどね。

・「こっちで大丈夫。」

の一言で誤魔化してきた。
でもそろそろ限界かな?

・ルイネ
「この人を常識で計ると痛い目を見る。
そう言う評判よ、任せれば良いわ。」

ルイネちゃんの一言で静かになる。
この子が一番発言力があるのか。
何とも意外。

そしてある部屋で止まる。

・「ここだ、ちょこっと挨拶して来るね。」

しっかり話しておかないとね。
後々怖いので、、、

・ロス
「挨拶だと?貴様裏切ったか?」

バカ!大きな声を出さないの。

・???
「誰だ!ってライオットか?」

ほら、バレちゃった。

部屋の中から人が飛び出す。
仕方がないので一緒に脱獄した3人を部屋の中に投げ飛ばして扉を閉める。

・マルチ
「ライオット?」

・「ただいま。」

部屋の中から出てきたのはセリス。
そして部屋の中に居たのはマルチだ。
この二人には説明しておかないとね。

俺を捕まえて逃げられた。
今は逃走中で行方不明。

そんな報告を受けたら城を吹き飛ばしかねん。

・マルチ
「随分長かったね。」

・セリス
「裁判ってのは初めてだが長いんだな。
んでどうなった?ちゃんと話は付けたか?
この三人は何者だ?」

二人には話が伝わってないらしい。
それもそうか、俺が捕まったと知ったらこんな所で待ってるわけないもんな。

・「えっと、なんて言ったらいいかな?」

困ったな、どうやって説明しよう。

・ロス
「貴様!我々を嵌めたな!」

・モージ
「まて、ロス!」

ロスが俺に攻撃してきた。
その瞬間、

バチン

・マルチ
「この人達、ライオットの仲間?
それとも敵?」

マルチの雷魔法が炸裂。
しっかり手加減してある。
しかし今日はもう動けないだろうね。
あらあら、ビクンビクンしてらっしゃる。

・ルイネ
「賢者マルチ、、、氷鬼姫セリス。」

ルイネがこぼす。
そしてその場に座り込んでしまった。

・モージ
「はじめから、俺達を騙してたのか?」

盛大に勘違いしてますぞ?
挨拶だって言ったじゃない。

・セリス
「ライオット、説明してくれ。」

やっぱり牢屋で寝てりゃ良かった。
とりあえず簡単に説明するか。

・「えっと、、、犯罪者になっちゃった。」

説明すらも面倒に思えてきたライオットだった。
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