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私はやってない

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突然ニュートが謝って来る。
俺はニュートから説明を受けた。
どうやら俺がリーシュを助けている時にオルドラ王国が魔族に攻められていたらしい。
グランが言っていたのはこの事か。

その際、キロス君を守る為に俺とセリスの名を勝手に使っていたという。

・「成る程そういう事ね。
全然問題ないよ。
どんどん使ってくれればいい。」

そんな事だったか。
大事じゃなくて良かった。

・セリス
「そんな大きな戦いがあったとは。
よく街が無事だったな。」

かなりの大規模な戦いだったらしい。
途中からミミさんも色々話してくれた。
ベルガルさんも色々教えてくれた。

・ベルガル
「今回の戦いでは魔貴族も2名参加した。
元魔王四天王の2人がな。
この規模で被害がこれほど少なかったんだ。
魔王様が人間側についたのは幸運だったな。」

納得しかけたがベルガルの言葉で混乱した。
魔王がこっちについた?
何となく思い浮かぶ人物はいるけど。

・ベルガル
「そうだ、これは言って良いのか解らんが。
この戦いで元四天王の一人が人間側についた。
もちろん我以外の人物がな。」

俺が居ない間にとんでもない事になってるのね。
関係ない事だからあまり突っ込まないでおこう。
蜂の巣を突くつもりはない。

俺とマルチはあまり気にしていなかった。
他のみんなは驚いていたみたいだけどね。

・「仲間が増えたって事かな?
いい事じゃないか。
仲良くできると良いね。」

他人事の様に言っておいた。
だって無駄に敵対する必要もないだろ?

その後は雑談が始まる。
ニュートは本当に強くなっていた。
話を聞くとそれが解る。
『拳聖』とか言う人の弟子になったらしい。
完全に置いて行かれたなぁ~。

LV上げがしたいと心から思う一時でした。

・兵士
「ライオット殿いらっしゃいますか?」

・「居ますよ~。」

不意に兵士さんが入って来た。

・兵士
「準備が整いましたのでご同行願います。」

どうやら審判の時が来たらしい。
俺、悪い事してないよね?
ん~大丈夫なはずだが、、、

・セリス
「とりあえず話を聞かなきゃな。
反論するにも現状が解らねえ。」

セリスの言う通りだな。
とりあえず話を聞きに行くか。
っと、その前に。

・「少しだけ待ってもらえますか?」

・兵士
「では扉の外でお待ちしてます。
出来るだけ早くお願いします。」

とても良い兵士さんだ。
あとでお礼を言っておこう。

・「何か書くものあるかな?」

俺は図面を書き始めた。
すっごい簡易的な奴だけどね。
ドンクさんとドーンさんなら解るだろう。

文字はマルチに書いてもらった。
だって未だに書けないんだもの。

・「ニュート、この図面を持って行け。
ギルドのドンクさんに渡せば解ると思う。
あと、これも一緒に、、、」

俺はいつかの『ガーディアンの核』を渡す。
何かに使えないかと取っておいたやつだ。

・ニュート
「これは?」

・「武器の改造設計図と部品だね。
強くなったお祝いだよ。
俺にはこんな事ぐらいしか出来ないからね。
んじゃ、兵士さんを待たせちゃいけないから。
またなニュート。」

用事を済ませた俺は部屋を出る。
ニュートが俺に一礼をしていた。
もっと強くなれよニュート。
しっかりクラスさんを守ってやれ。


~王の間~

俺は王の間に連れてかれた。
みんなも来たがっていたが兵士さんが困っていたので説得して俺だけで入室。
ほっとしていた兵士さんの顔が忘れられない。

・オルドラ王
「久しぶりだな、ライオット殿。」

本当に久しぶりだなぁ~。
国王にセントさん、ロイヤル爺さんも居る。
てか、凄い人の数だな。

・ロイヤル
「こんな形でなんだが、孫のバーバラじゃ。」

・バーバラ
「オルドラ5貴族を名乗らせて頂いております。
バーバラ・カインズと申します。
貴方のお話はお爺様から聞いております。」

深く一礼してくるバーバラさん。
かなり位の高い人だよね?
ほら、周りがざわざわしてるじゃない。
もっと軽い挨拶で良いですよ?

・オルドラ王
「相変わらずライオット殿には驚かされる。
5貴族の内、4人から認められてるとはな。
一人の冒険者がここまで言われるとは、、、
前代未聞とはこの事だな。」

楽しそうな王様。
俺はこの状況の説明が欲しいのだが、、、

・ライル騎士団長
「急に呼び出して済まなかったな。
一部の貴族から君の不正疑惑が上がっている。
先の戦争では魔族の手引きをした疑惑もある。
なので今回はここに来て貰った。」

全く身に覚えがありませんが?

・ライル
「余計な混乱は避けたい。
だから君の弁護は後回しだ。
まず君の口から真実を語ってくれ。」

みんなが話し出したら収拾がつかないしね。
さて困ったな、、、なんて話せばいいんだ?
だって何も知らないんだもの。

・貴族
「何も言えまい、これが証拠だ。」

いや、言えなくて当然だろう?
何も知らないんだし。

・ライル
「発言はお控え下さい。」

ふ~む、困ったな。

・「どんな疑惑があるか知りませんが。
俺は不正をした覚えはない。
それに戦争の事は知らなかった。
としか良い様が無いですね。」

・ライル
「では君は何も知らないと言うのか?」

・「はい。」

その通りです。
これで終わるとは思えないけど、、、

・ライル
「では連れてこい。」

ライルさんの指示で謎の男が入って来た。
誰この人?

・謎の男
「ライオットさん、あんたの言った通りにしたぞ?
なぜこんな事になった?」

いや、お前誰だよ。

・ライル
「この男はお前さんの指示で無断販売をした。
簡単に言えば押し売りだな。
買わなかった客には暴行を働いたので逮捕した。
尋問の時に君の指示だと言っててな。」

・「えっと、誰だか知りません。」

本当に知らないんだもの。

・謎の男
「あんたの指示でやった事だろ?
しらばっくれるなよ!」

ん~、水掛け論になりそうな感じ?

・ライル
「次はこいつだ。」

更にもう一人連れてくる。
またまた知らない人物だ。
なんかブツブツ言ってない?

・謎の男
「ライオット様の為に、、、
ライオット様の為に、、、」

怖っ!何この人。

・ライル
「こいつは戦時に捉えた捕虜だ。
魔物化に失敗したらしくてな。
自我の崩壊後、同じ言葉しか言わない。
ずっとこの調子だ。
何も食べず、何も飲まず、、、
生命力は魔物並みだな。」

魔物化?戦争でも使われたのか?

・貴族
「ほら!反応したぞ。
やっぱり黒幕だ!」

・ライル
「お静かに、次に発言したら退場させます。」

あ~何となく理解した。
俺、嵌められてるな。
どうやらちょっと目立ち過ぎたらしい。

、、、、まてよ?
ライルさんは一部の貴族と言ったな。
ふむ、つまり一部の貴族が暗躍していた。
これはそいつらを炙り出す為と見た。

・「身の潔白を証明したいです。
なので皆さんに居て貰いたい。」

俺の一言でライルさんがニヤける。
国王も頷いてるな。
全く、先に言っておいて欲しいもんだ。

・ライル
「最後の証言だ。」

奥からリーシュさんが入って来た。
イージスさんも居るな。

・ライル
「では報告を。」

・イージス
「我々は隣国モーダルにて捕虜となりました。
救出に来たのはライオット殿だけです。」

・リーシュ
「私達は彼に助けられました。」

この二人は説明を受けてそうだな。
説明が淡白すぎる。

・ライル
「これは事実か?」

・「はい、私が助けました。」

これで良いかな?

・貴族
「貴様は『南海門』で防衛していた筈だ。
報告書にはそう書いてある。
だが貴様は隣国に助けに行ったと発言した。
救出が本当ならば奴は防衛戦に参加していない。」

そう言えばそうだった。
そう言う設定になってるの忘れてた。

・貴族
「どうだ?これで分かっただろう?
こ奴は噓の証言を述べた。」

ん~どうしようかな、参加したと強く主張すればニュートたちが疑われそうだしな。

・「名前だけ参加した。
そう言っておくよ。
救出と防衛は同時に出来ないだろう?
だから俺の名前で代理を立てた。
その事を報告してなかったから、代理だと伝わっていなかったんじゃないかな?」

適当に話を作ってみる。
無理かな~。

・ライル
「部外者の発言は控えて下さい。」

・「良いよ、疑問には答えたいし。」

それにライルさんもこの展開が良いんだろう?
すぐに止めなった事で伝わりましたよ。

・貴族
「では貴様は防衛戦に参加していないと?」

・「防衛戦は代理で知り合いに参加して貰い。
俺はリーシュさん達を助けに行った。
これが真実です。」

さて、どう出るかな?

・貴族
「不正を認めたな?
この様な男が信用できるか?
こ奴は戦争の事は知らないと言った。
だが防衛戦には代理を出した。
矛盾している!
戦争を知らない物が代理など出せる訳がない。
こ奴が黒幕だ!
不正販売の指示もこやつの仕業だ。」

あ、、、そう言えば最初に言ったな。
『戦争の事は知らなかった』と。
見事に墓穴を掘りました。

・ライル
「不正疑惑の件は後に捌こう。
矛盾についても後で尋問する。
では戦争の手引きについてだ。
なぜ攻め込まれる日時を知っていたのだ?
君の答えを聞こう。」

それグランです。
俺じゃないです。
と言いたいがニュートが情報源は俺と言っていたな。

・「た、タレコミがあったからかな。」

・ライル
「ほう、、、誰からだ?」

あ、ライルさんが笑ってる。
ライルさんもグランの事知ってるかな?

・「信頼できる仲間から。
それ以上は言えません。」

・貴族
「ほら、隠ぺいしたぞ!
こやつが黒幕で間違いない。」

駄目だな、収拾がつかない。
ちょっと面倒になって来た。
俺はライルさんに小声で聞いてみた。

・「捕まっといた方が良い?」

・ライル
「今、部下があいつの身辺を洗い出している。
証拠が挙がるまであいつを泳がせたい。
数日程で良い捕まってくれるとありがたい。」

しっかり答えてくれた。
そういう事ね。
俺が犯人として捕まって安心した貴族がボロを出す様に仕向ける訳か。犯人の目星はついてるが証拠がない。
つまりそう言う事だろう。
仕方がない協力しておくか。

後はライルさんとの内緒話をごまかさなきゃな。
こそこそ話している場面は見られている。
ライルさんに嫌味を言われて暴れた。
そういう事にしておこう。
ライルさんにその事を伝える。
そして、、、

・「う、、うるさい!
私はやっていない!」

とりあえず不自然だが暴れてみる。

・ライル
「貴様がやったのだろう!」

ライルさんが合わせてくれる。
ちょっとライルさん、半笑いですよ?
大げさに取り押さえようとしてきた。
なんか腹が立ったので回避、そしてドサクサに紛れて先程から俺を攻めている貴族にダイブしておいた。
接触する際に肘打ちしてやったぜ。

、、、やり過ぎました。

・ライル
「そいつを牢にぶち込んでおけ。」

ライルさんの言葉で俺は兵に連れて行かれる。
結果、見事に逮捕されてしまいました。

今日から初めての牢屋生活が始まります。
不謹慎ながら少しドキドキしています。
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