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レベル上げをしたいんです

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オルドラ王国を出発した直後だった。
俺は拳聖ナナの襲撃?によって手痛い足止めを食らってしまった。まあ急いでる訳ではないので良いんだけどね。

・「いや~、まいったまいった。」

・リーシュ
「もう大丈夫?」

リーシュのお陰ですっかり良くなりました。
あの防御方法は2度と使わない様にしよう。

数日間、近い場所に居たせいだろうか?
屋敷に帰りたくなってきた。
絶賛ホームシック中。

・セリス
「ところで何処に向かうつもりなんだ?」

セリスが当然の質問をしてくる。
実は狙っている場所があるのだ。

・「ドンクさんが言ってた『ミスリル洞』ってダンジョンに行こうと思うんだ。レベル上げしながら鍛冶を上げようと思ってね。」

そろそろ腰を据えてLV上げしたい。今までいろいろ工夫して戦っているが本来は楽して勝ちたいのだ。

・「とりあえずLV30は超えたい。
と言うかMAXまで上げたい。」

俺の本音はそこだ。
何も考えずに上げまくりたいのだ。

・セリス
「しかしLV28で拳聖とやり合うんだから信じられないよな、普通なら1秒であの世行きだぜ?」

物騒な事は言わないでください。
ナナさんはマジで強かった。
手も足も出なかったよ。

・マルチ
「私はライオットの行く所なら何処でも。」

・ミズキ
「右に同じ。」

・リーシュ
「私も。」

どうやら俺の我儘に付き合ってくれるらしい。
しかし大丈夫かな?
俺のLV上げはしつこいぜ?

・「んじゃとりあえずダンジョンに向かうという方向で行きたいと思います。」

特に反対意見はないので俺の提案で『ミスリル洞』に向かう事となる。


*ミスリル洞
ここではミスリル鉱石が取れると言う噂でこの名となったが、文献こそ残っているが肝心のミスリル鉱石が取れる階層は未だに発見されていない。その為、現在ではあまり訪れる冒険者が居ない寂しい場所でもある。
浅い階層で軍の演習が行われる事がある。


ミトラ湖キャンプ地を離れ2日程でお目当てのダンジョンに到着、想像より随分と遠かった。

・「へぇ~、ここがミスリル洞か。」

・ミズキ
「懐かしい、変わってないわ。」

・リーシュ
「そうね。」

ここに来る道中で聞いたがリーシュとミズキは軍に居た時にここに来たことがあるらしい。LV上げとか野営の練習とかしてたらしいよ。

・セリス
「ここは来た事ねぇな。」

・マルチ
「噂だけは知ってるかな。
サリーヌとドンクが話してた。」

職人の間では話題になる場所なんだね。

・リーシュ
「早速進みます?」

・「そうだね、とりあえず突入しようか。」

眺めてても仕方ないしね。
様子を伺いながら進んで行こう。


~ミスリル洞内~

俺達はダンジョンに足を踏み入れる。
浅い階層では敵が弱い。
LV上げには不向きなので深い所まで潜る。

先頭はミズキで案内とスカウト。
次に俺とリーシュ、前衛と回復だ。
最後尾はマルチとセリス。
後方支援と遠距離攻撃。

ちなみに全員マップ機能は使える。
そのお陰で奇襲の心配はない。
便利な機能だ、、、

・ミズキ
「とりあえず私の知ってる場所まで進みます。」

ミズキのお陰で迷う事無く進んで行く。
途中でよく見掛けるのは鉄鉱だ。
流石は鉱山だね。
採掘ポイントが多い。
全部採掘したら日が暮れそうだ。

・「軍ではどのくらい進むの?」

・リーシュ
「私の班は3層まで行けました、軍の記録では確か4層までだったと聞いてます。」

4層かぁ、結構深いダンジョンなんだね。

・ミズキ
「4層なら行った事がありますが敵が非常に強力だったので直ぐに引き返しました。3層では『ミスリル鉱』は発見されていません。文献では5層の奥で発見されたと書いてあるらしいです、ですので今回は5層を目指してみたいと思います。」

ミスリルの鉱石があるのに冒険者が少ないのはそう言う事か、要するに割に合わないんだね。

・セリス
「どれ位かかる?」

・ミズキ
「道は知っているし敵との遭遇も最小限。
更にリーシュの攻撃魔法で戦闘は一瞬。
このペースだと半日で行けるんじゃないかな?」

思ったより早く行けそうだ。

・ミズキ
「3層の奥に野営する場所があるの。
そこまで一気に行くわね。」

ミズキの案内でドンドン進む。
敵はリーシュの『魔弾』で直ぐに消滅する。

しかしダンジョンって不思議だよね。
魔石以外は残らず消滅するんだもん。
ダンジョンが生きている説が出るのも頷ける。

一度その手に詳しい人に聞いた事がある。
ロイヤルの知り合いに研究家が居たからさ。

確か、、、魔素?
魔力の残りと言えば良いのかな?
それを吸収しているとか言ってた。
詳しくは知らん。
そしてあまり興味はない。

今はLVを上げたいのだ。

一行は苦労する事もなく野営地に到着。
とりあえず今日はここを拠点としよう。

・「少し様子を見ながら4層に行こうか。
敵の強さを見てみたいし。」

俺の提案で一度4層にアタック開始。
その後に野営地の設置と言う流れにする。
さてさて、どんな敵が居るかな?

一行は4層へと向かう。
そして4層でのファーストコンタクト。

・グラン
「やっ!奇遇だね。」

なんで居るんだよ!
奇遇ってなんだよ!

・「いつから居たの?」

とりあえず突っ込んでおいた。

・グラン
「君たちの少し後ろから付いて来てた。
そして4層に入ってこっそり先に進んみた。
納得したかな?」

相変わらず恐ろしい奴だ。
マップに乗らないなんてどうやってるの?こうなってくるとマップに頼り過ぎるのは良くないかもね。

・「んで、何のようだ?」

どうしても警戒してしまう。
だってこの人怖いんだもの。

・グラン
「一応、報告とお礼を言いにね。
魔物化した人間を戻せるとは思わなかった。
その点に関しては礼を言う。
だからお礼に教えてあげようと思ってね。
野営地は6層まで進んでからでいい。
君達なら余裕だと思うよ。
そこならミスリルが沢山取れるからね。」

ここについて詳しそうだな。
どうやら親切にも案内してくれるらしい。
結構良い奴なのかもしれない、、、

・グラン
「リーシュさんも大変だったね。
ライオット君を信じてよかったよ。
僕じゃ元には戻せないから。」

俺が魔物化を治せなかったらどうしてたんだ?
まぁ全ては結果論だから考えても仕方ないか。
あの時はグランも大変そうだったっぽいし。

・リーシュ
「貴方がグランですね。
この度は私と王国を助けてくれたそうで。
ありがとうございました。」

リーシュが律儀にあいさつしている。

・グラン
「助けられたのは俺の方かもね、全てが良い方向に進んだのはライオット君のお陰かな。」

今日はやけに素直だな。
何か心境の変化とかあったのかな?

・グラン
「そうそう、ここに来たのは他でもない。
実はセリスに渡すものがあってね。」

徐にセリスに道具袋を手渡した。

・グラン
「いつもは僕がやってたんだけど、今では僕よりもライオット君の方が上手く使えると思うんだ。」

いつもは僕がやっていた?
一体何のことだ?

・セリス
「私はお前に会うのが初めてだが?」

セリスの言葉で場に緊張が走る。

・「とりあえず詳しく聞かせて貰っても良い?」

ピリピリした空気は好きじゃない、何も知らないままだと何も出来ないから聞いて置こう。

・グラン
「ん~、そうだね。
んじゃ6層まで進んだら教えてあげるよ。」

グランの提案で6層まで進む一行。
大事な話ならゆっくり聞きたいしね。

グランの言う通り4層の敵は弱かった。
俺達が強くなっているのかな?
ミズキ、リーシュ、マルチ、セリス。
4人だけで敵を殲滅して進む。

・「俺の出番がない、、、」

少し寂し気もします。
仕方がないので戦闘中は近場の採掘ポイントで鉄鉱を取っていた。意外だったのはグランも採掘を手伝ってくれたことだ、楽しそうに採掘するグラン。
多分こいつ良い奴だ。

そのまま6層まで問題なく進めた。
その頃にはグランも随分と馴染んでいた。

鉄鉱も沢山取れたので俺としては嬉しい。

・「とりあえず野営の準備だ。
話は飯でも食いながら聞こう。」

せっせと準備を行う。
グランの楽しそうな顔が印象的だった。

セリスだけはまだ警戒している様だ。
そして食事時になる。

・グラン
「楽しいね、こんなに楽しいのは久しぶりだ。
あの頃を思い出すよ。」

何やら思い深けるグラン。
まあ楽しいならそれで良い。

・セリス
「んで、アンタは何者だ?」

セリスは聞きたかった一言を言い放つ。
一方でグランは肉を食べながら答える。

・グラン
「俺は君の保護者って所かな?
ちなみにサリスも保護者の一人だ。」

どういう事?

・セリス
「姉さんが保護者だってのは解る。
ずっと私を守ってくれたからな。
だがお前の事は知らない。」

俺達は黙って聞いていた。
質問とか出来る程事情を知らないからね。

・グラン
「本当は黙っておくつもりだったんだがそうも行かなくなったんだ。どうしようかと困ってた所でライオット君の登場だ、本当に嬉しく思うよ。」

うん、サッパリ伝わりません。

・グラン
「セリス、君は僕の娘だ。
そしてサリスは君のお母さん。
僕の側室って言えば分かるかな?」

とんでもない事言ってますよ?
お陰でみんながフリーズしてます。

・「セリスのお父様?」

・グラン
「まあね。」

マジで?
いやはや、サリスさんに娘が居たとは。
セリスは妹って言ってたじゃん。

・グラン
「後は僕の正体だけど。
元魔王って言えば分かる?」

魔王って本当に居たのか。
ちょっと待て、セリスは魔王の娘って事?

・ミズキ
「嘘でしょう?」

・グラン
「本当だよ、証拠はないけどね。」

待てよ?そう言えば初代勇者が言ってたな。

・「ランバートと仲良かった魔王さん?」

・グラン
「正解!あいつとはよくダンジョンに篭ってた。
君と同じようにLV上げが好きな奴でさ。
いっつもレイチェルを困らせてたな。」

とても懐かしそうに語るグラン。
レイチェルって誰の事だろう?
初代勇者の仲間かな?

・ミズキ
「大賢者レイチェル様、、、」

ミズキが呟く。
大賢者って人も居たんだね。

・マルチ
「それで、セリスに何の用?」

庇う様にセリスの前に立つマルチ。
セリスはまだ動けない。
仕方ないよな、いきなり言われたんだし。
しかしセリスがサリスさんの娘って所には驚いた、サリスさんは何で自分が母親だって言わなかったんだろう?

・グラン
「約800年前の事だ。」

グランは語り始めた。
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