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第13話

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エドガー視点

「記憶喪失となってから変わりすぎだ! 俺はルクルとの婚約を破棄する!!」

 もう婚約破棄は決まっていたが、俺はパーティ会場でルクルとの婚約破棄を宣言した。

 慰謝料を払って婚約破棄したことで、俺の評判が下がるかもしれない。

 理由を貴族達に知ってもらおうとしたが、ルクルは呆れた様子で言い出す。

「婚約者が記憶喪失になったのなら、力になろうとするのが普通なのではありませんか?」

「なっっ――立場が上の俺にそんなことを言うからこそ、婚約を破棄するのだ!!」

「私はおかしいことを言っていませんけど……エドガー様の方が立場が上でしたら、婚約の破棄を受け入れるしかありませんね」

 蔑んだ目で俺を眺めるルクルに、俺は苛立ちを覚えるしかない。

 ルクルと婚約破棄することを決めてから、俺は新たな婚約者を探すため他の女性と仲良くしていた。

 記憶喪失となったルクルからすれば、浮気していると思うだろう。

 もうルクルからどう思われても、婚約を破棄するのだから関係ない。

 記憶喪失になる前と今では、ルクルの精神力は違いすぎる。

 去ろうとしているルクルに聞こえるよう、俺は叫ぶ。

「記憶を失ったルクルなど、なんの魅力もない。何日かすれば、自らの愚かさを知るだろう!」

 事前に打ち合わせをしていた取り巻き達と笑い合い、これからルクルを貶めようと決意する。

 そして数日後――自らの愚かさを知るのは、ルクルではなく俺だった。
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