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第1話
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「エルノア様は、来週ドスラ王子から婚約破棄を宣言されます」
侯爵令嬢の私エルノア・イルノークは、目の前にいる美少年の発言に驚いている。
休日の早朝――長身で短い黒髪の美少年は、誰にも気づかれずに私の部屋に侵入した。
屋敷に備えられている魔法道具の警報が鳴らないことが理解できず、私は動揺しながら尋ねる。
「あの、まず……貴方は、二―ルド国のラーサー殿下ですか?」
「俺のことを知っていましたか」
「優秀で、非常識な魔法使いの王子と有名ですからね」
いきなり私の屋敷に侵入して……来週の、恐らくパーティの時に私が婚約破棄されると言い出す。
他国の侯爵令嬢の部屋にいきなりやって来るのだから、ラーサーは噂通りの人だ。
「……私以外の誰にも知られたくなかったから、ラーサー殿下は部屋に侵入したということでしょうか?」
「そうなります。他国の王子が、この国の王子の婚約者に会いたいなんて怪しまれますからね」
笑顔で話すラーサーだけど、私は噂でしかこの人を知らない。
本当に信じていいのかわからないけど、ここに来たのは話がしたいからのようだ。
ラーサーは椅子に座り、立ち尽くしていた私に話す。
「知ったのは偶然ですが……婚約破棄をする理由が気に入らなかったので、エルノア様に知ってもらおうと思いました」
そう言って、ラーサーが私の婚約者ドスラ・ランアス王子について話す。
ドスラは私の妹リオナが好きで、私と婚約を破棄したいようだ。
そのための準備をしている際に、怪しい行動をとったことでラーサーが事情を知った。
詳しく調べていくと、来週のパーティでドスラは私との婚約を破棄するつもりらしい。
そのための計画も知っているようで、計画を聞いた私が話す。
「この国を守る結界に異常を発生させて、それを全て私のせいにするつもりなのですか」
「俺が知った時点で結界の一部は壊されていました。イルノーク侯爵家の領主も、ドスラは説得済みのようです」
王子の婚約者になるから、私は国を守るための結界を強化しようと行動していた。
結界の強化は成功したのに、ドスラはそれを失敗したことにして私との婚約を破棄するつもりのようだ。
「お父様はリオナを溺愛しているので、発言を信じてしまったのでしょう」
「このままだと結界を壊したことによる罰で、エルノア様はドスラに従うこととなります」
「ドスラ殿下は私よりリオナが好きでしたから、ありえる話です」
婚約者だけど、ドスラは私に妹リオナの話ばかりしていた。
ドスラは「婚約者の妹だから」といつも言っていたけど、明らかにリオナの方が好きだと皆が知っている。
妹のリオナは、魔力の差があるから私のことを嫌っていた。
それでも……国を守る結界に異常を発生させてまで、私を貶めようとするなんて信じられない。
「これからランアス国は大変な目に合いますが、王子の判断なので仕方ないでしょう」
「そうなると……何もしていない私が、ランアス国の人達から憎まれることになりますか」
壊れた結界を修理するためには、優秀な魔法使いの命が必要となるらしい。
私が結界を破壊したと思わせた後、最終的に私は結界の生贄として消されそうだ。
最悪の事態を想像して、どうすればいいのかを考える。
ランアス国の結界を調べたいけど、来週までには無理そうだ。
思案していると、私を眺めてラーサーが提案する。
「エルノア様、これから俺と一緒に二―ルド国に来ませんか?」
「それは――」
「――処罰された後だと、国外に出られなくなります。今なら問題ありません」
ラーサーが提案するけど、私はまだ話を信じることができない。
それがわかっているのか、ラーサーが続けて話す。
「今日は報告に来ただけです――3日後に、また来ます」
そう言って、部屋からラーサーの姿が消える。
私は明日、婚約者のドスラを追求しようと決意していた。
■◇■◇■◇■◇■
翌日――学園で授業を終えた放課後、私はドスラ王子と話をすることにしていた。
机の前に立つと、椅子に座っていたドスラが驚いた様子で尋ねる。
「エルノア、何か用だろうか?」
「ドスラ殿下――来週のパーティで、何か企んでいるのではありませんか?」
私は魔法使いとして優秀だから、ドスラの行動を把握していると思わせる。
結界については隠して聞いてみると、それだけでドスラは動揺していた。
「なっっ!? エルノアは何を言っている!?」
「最近リオナがパーティを待ち望んでいましたから、何かあるのではないかと考えただけです」
これは私が実感していたことで、ラーサーの話を聞くことで理由が推測できた。
そこから追求することにしたけど、ドスラは明らかに焦っている。
結界の話をしていないから、全て知られているとは考えていないようだ。
「リオナの奴め……エルノアが気にすることは何もない! 忘れて欲しい!」
「ここ最近、ドスラ殿下は生物の行動を制限する魔法を覚えようとしていましたね」
「うっっっ!? 興味があっただけだ! エルノアに使うつもりはない!」
「……そうですか。わかりました」
納得してみせると、ドスラは安堵して教室から出て行く。
私に使うつもりはない――それは、私に使うと考えていたからこそ出た発言だ。
婚約者ドスラの反応を見て、私はラーサーの発言が正しかったと確信する。
婚約破棄が決まっているようなので、私は国を出ることにします。
侯爵令嬢の私エルノア・イルノークは、目の前にいる美少年の発言に驚いている。
休日の早朝――長身で短い黒髪の美少年は、誰にも気づかれずに私の部屋に侵入した。
屋敷に備えられている魔法道具の警報が鳴らないことが理解できず、私は動揺しながら尋ねる。
「あの、まず……貴方は、二―ルド国のラーサー殿下ですか?」
「俺のことを知っていましたか」
「優秀で、非常識な魔法使いの王子と有名ですからね」
いきなり私の屋敷に侵入して……来週の、恐らくパーティの時に私が婚約破棄されると言い出す。
他国の侯爵令嬢の部屋にいきなりやって来るのだから、ラーサーは噂通りの人だ。
「……私以外の誰にも知られたくなかったから、ラーサー殿下は部屋に侵入したということでしょうか?」
「そうなります。他国の王子が、この国の王子の婚約者に会いたいなんて怪しまれますからね」
笑顔で話すラーサーだけど、私は噂でしかこの人を知らない。
本当に信じていいのかわからないけど、ここに来たのは話がしたいからのようだ。
ラーサーは椅子に座り、立ち尽くしていた私に話す。
「知ったのは偶然ですが……婚約破棄をする理由が気に入らなかったので、エルノア様に知ってもらおうと思いました」
そう言って、ラーサーが私の婚約者ドスラ・ランアス王子について話す。
ドスラは私の妹リオナが好きで、私と婚約を破棄したいようだ。
そのための準備をしている際に、怪しい行動をとったことでラーサーが事情を知った。
詳しく調べていくと、来週のパーティでドスラは私との婚約を破棄するつもりらしい。
そのための計画も知っているようで、計画を聞いた私が話す。
「この国を守る結界に異常を発生させて、それを全て私のせいにするつもりなのですか」
「俺が知った時点で結界の一部は壊されていました。イルノーク侯爵家の領主も、ドスラは説得済みのようです」
王子の婚約者になるから、私は国を守るための結界を強化しようと行動していた。
結界の強化は成功したのに、ドスラはそれを失敗したことにして私との婚約を破棄するつもりのようだ。
「お父様はリオナを溺愛しているので、発言を信じてしまったのでしょう」
「このままだと結界を壊したことによる罰で、エルノア様はドスラに従うこととなります」
「ドスラ殿下は私よりリオナが好きでしたから、ありえる話です」
婚約者だけど、ドスラは私に妹リオナの話ばかりしていた。
ドスラは「婚約者の妹だから」といつも言っていたけど、明らかにリオナの方が好きだと皆が知っている。
妹のリオナは、魔力の差があるから私のことを嫌っていた。
それでも……国を守る結界に異常を発生させてまで、私を貶めようとするなんて信じられない。
「これからランアス国は大変な目に合いますが、王子の判断なので仕方ないでしょう」
「そうなると……何もしていない私が、ランアス国の人達から憎まれることになりますか」
壊れた結界を修理するためには、優秀な魔法使いの命が必要となるらしい。
私が結界を破壊したと思わせた後、最終的に私は結界の生贄として消されそうだ。
最悪の事態を想像して、どうすればいいのかを考える。
ランアス国の結界を調べたいけど、来週までには無理そうだ。
思案していると、私を眺めてラーサーが提案する。
「エルノア様、これから俺と一緒に二―ルド国に来ませんか?」
「それは――」
「――処罰された後だと、国外に出られなくなります。今なら問題ありません」
ラーサーが提案するけど、私はまだ話を信じることができない。
それがわかっているのか、ラーサーが続けて話す。
「今日は報告に来ただけです――3日後に、また来ます」
そう言って、部屋からラーサーの姿が消える。
私は明日、婚約者のドスラを追求しようと決意していた。
■◇■◇■◇■◇■
翌日――学園で授業を終えた放課後、私はドスラ王子と話をすることにしていた。
机の前に立つと、椅子に座っていたドスラが驚いた様子で尋ねる。
「エルノア、何か用だろうか?」
「ドスラ殿下――来週のパーティで、何か企んでいるのではありませんか?」
私は魔法使いとして優秀だから、ドスラの行動を把握していると思わせる。
結界については隠して聞いてみると、それだけでドスラは動揺していた。
「なっっ!? エルノアは何を言っている!?」
「最近リオナがパーティを待ち望んでいましたから、何かあるのではないかと考えただけです」
これは私が実感していたことで、ラーサーの話を聞くことで理由が推測できた。
そこから追求することにしたけど、ドスラは明らかに焦っている。
結界の話をしていないから、全て知られているとは考えていないようだ。
「リオナの奴め……エルノアが気にすることは何もない! 忘れて欲しい!」
「ここ最近、ドスラ殿下は生物の行動を制限する魔法を覚えようとしていましたね」
「うっっっ!? 興味があっただけだ! エルノアに使うつもりはない!」
「……そうですか。わかりました」
納得してみせると、ドスラは安堵して教室から出て行く。
私に使うつもりはない――それは、私に使うと考えていたからこそ出た発言だ。
婚約者ドスラの反応を見て、私はラーサーの発言が正しかったと確信する。
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