悪いのは全て妹なのに、婚約者は私を捨てるようです

天宮有

文字の大きさ
3 / 14

第3話

 屋敷を出てから、数ヶ月が経っている。
 私はルザード伯爵家を捨てたけど、国を出ようとはしなかった。

 悪いのは全て元妹デーリカなのに、元婚約者オリドスは私を捨てている。
 それによるルザード伯爵家の末路は気になっていたから、私は国内で生活することにしていた。

 家を捨てた私はすぐに冒険者ギルドへ向かい、冒険者登録をしている。
 平民の冒険者シンディとして活躍し、新生活を送ることができていた。
 元貴族令嬢でも冒険者登録はできるし、私の力が最も生かせると考えたからだ。

 冒険者になれた私は、今まで順調に依頼をこなしている。
 問題があるとすれば、ランクが高くなりすぎて他国に行って欲しいと頼まれていること。
 そして――貴族達の内情は、平民の冒険者となった私の耳に入ってこないということだ。

 私は依頼を終えて、冒険者ギルドのテーブル席に座っている。
 食堂も併設しているから少し遅い昼食を食べて、思わず呟いてしまう。

「ルザード家では確実に問題が発生しているはずですが、隠し通せるものなのですね」

 何も聞くことができないのは……平民の冒険者で、貴族について知ろうとする人がいないからなのかもしれない。
 冒険者としての生活を優先するなら、ルザード伯爵家のことを完全に忘れた方がいい気がしてくる。
 もう他国へ行こうかと考えていた時―ー私の前に、1人の美少年が座った。

「冒険者シンディ――同じ名前なのだろうかと思いましたけど、やはりシンディ様でしたか」

 黒く長い髪をした美少年が正面にいて、私を眺めて微笑む。
 嬉しそうにしている姿を目にすると、その姿に見覚えがあった私は話す。

「貴方は……バルギオ公爵家の、ヨハン様ですね」

「その通りです。シンディ様の事情を、私は知っています」

 冒険者シンディは有名だから、そこからヨハンは調べたのかもしれない。
 登録する際に別の名前にできたようだけど、そこまでする必要はないと考えてしまう。
 それによって、ヨハンは私が家を捨てて冒険者として活動していることを知ったようだ。

 バルギオ公爵家のヨハンが、冒険者となった私に何か用だろうか?
 思案した私は、真っ先に思い当たることを話す。

「……もう私は、ルザード伯爵家とは無関係です」

 デーリカが、何か迷惑をかけていそう。
 そう考えて先に話すと、ヨハンは笑いだした。

「はははっ。やはりシンディ様は、ルザード伯爵家が気になったから国内にいたのですね」

「うっっ……そう、ですね」

 図星を突かれたことで、私は顔が赤くなってしまう。
 
 デーリカのせいで迷惑がかかっているのなら、ヨハンは笑っていないはず。
 どうやらデーリカとは無関係のようだけど、それならここに来た理由がわからない。
 困惑していると、ヨハンが私に話す。

「私がここに来たのは、冒険者シンディ様をバルギオ公爵家の屋敷に招待したいからです」

「……えっ?」

「優秀な冒険者を護衛として傍にいてもらう。これは普通にあることで――信頼できるシンディ様に、傍にいて欲しいと考えています」

 そう言ってくれるのは嬉しいけど、不安なこともある。

「あの、私が行くと迷惑がかかるかもしれません」

「それについては大丈夫です。数ヶ月前に、オリドスはシンディ様をルザード家から除籍しています」

「そうなんですか?」

 それは知りたかったことだけど、ヨハンは調べていたようだ。
 思わず私が尋ねると、ヨハンは詳しく説明してくれる。

「はい。どうやらデーリカが、ルザード伯爵家に戻さないようにしたいと話した結果のようです。ルザード伯爵家の領主が気づいたのは、手続きを終えた後だと聞いています」

 元父はデーリカの行動を知り、絶望したに違いない。
 私がルザード伯爵家と完全に無関係なら、ヨハンの屋敷で護衛になっても問題なさそうだ。

「冒険者になって数ヶ月程度ですが、私でよろしいのでしょうか?」

「シンディ様の活躍は聞いてます。それに……ルザード伯爵家について、シンディ様は知りたいのではないかと思いました」

 どうやら私の考えを、ヨハンはわかっているようだ。
 何も問題はなさそうだから、私はヨハンの提案を受けることにした。

あなたにおすすめの小説

私が出て行った後になって、後悔した旦那様から泣きの手紙がもたらされました♪

睡蓮
恋愛
ミーシャとブラッケン伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるエリーナによって壊される。伯爵はミーシャの事よりもエリーナの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ミーシャは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ミーシャの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当にすまない。ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。 民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。 しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。 第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。 婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。 そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。 その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。 半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。 二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。 その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。

婚約破棄の日の夜に

夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。 ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。 そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····

私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。 でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

彼の妹にキレそう。信頼していた彼にも裏切られて婚約破棄を決意。

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢イブリン・キュスティーヌは男爵令息のホーク・ウィンベルドと婚約した。 好きな人と結ばれる喜びに震え幸せの絶頂を感じ、周りの景色も明るく見え笑顔が輝く。 彼には妹のフランソワがいる。兄のホークのことが異常に好き過ぎて婚約したイブリンに嫌がらせをしてくる。 最初はホークもフランソワを説教していたが、この頃は妹の肩を持つようになって彼だけは味方だと思っていたのに助けてくれない。 実はずっと前から二人はできていたことを知り衝撃を受ける。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。