婚約者の愛した人が聖女ではないと、私は知っています

天宮有

文字の大きさ
11 / 38

第11話

ルグド視点

 時間は前日まで遡り、俺は不安で苦しんでいる。
 不眠症になる程で、原因はアイラの成績が徐々に向上しているからだ。

 アイラが次の聖女になると噂を耳にすれば、俺は過呼吸に陥ってしまう。
 シェムを婚約者にしたことを強く後悔して、頭痛に苛まれていた。
 明日には聖女の儀式が行われて、シェムが聖女になるだろう。
 それでも俺は不安になってしまうと、部屋に来たシェムが話す。

「ルグド様、明日は間違いなく私が聖女に選ばれます」

「わかっている! それでも、アイラの成績はシェムに追いつきそうだ……」

「大地から魔力を得ているのなら、私の体内に宿る魔力は減っているはずです。アイラ様の実力なのは間違いありませんが、私を超えることはないでしょう」

 シェムの魔力が急成長した理由を、俺は前から知っていた。
 聖女になれば加護を得て問題ないようで、シェムが聖女になると確信していたから俺は婚約者にしている。
 それなのに……アイラが努力して、魔力を急激に向上させていた。
 聖女について調べていたから、理由を推測して俺は呟いてしまう。

「聖女の儀式が近づくと、急に魔力が向上していく……アイラが、聖女になるのではないか?」

「ルグド殿下が不安になるのはわかりますけど、まだ私の方が上です! 私が聖女に決まっています!!」

 シェムは断言して、聖女になることを確信している。
 明日になれば、全てが発覚するだろう。
 俺はシェムが聖女になると、信じるしかなかった。

■◇■◇■◇■◇■

「――アイラ様が、ムーディス国の聖女です!」

 翌日になって、聖女の儀式がはじまり……他国の聖女が、会場の皆に聞こえるよう魔法道具で宣言する。
 今日で不安が晴れると思っていたのに、最悪の事態になろうとしていた。

「そんな……馬鹿な……」

 俺は目眩がして、頭を抱えながら呆然とするしかない。
 憐れむような視線を、会場中から浴びているような気がしてくる。
 今この場で注目されているのは、間違いなく聖女と宣言されたアイラだ。
 それでも……俺は精神が不安定になり、立っていられなくなってしまう。

「俺が何もしなければ、婚約者が聖女だったのか……」

 シェムが聖女になれなかったから、俺は頭が真っ白になっていく。
 そんな中で――俺以上に、シェムが取り乱していた。

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

婚約破棄の日の夜に

夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。 ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。 そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

聖女クローディアの秘密

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
神託によって選ばれた聖女クローディアは、癒しの力もなく結界も張れず、ただ神殿にこもって祈るだけの虚しい日々を送っていた。自分の存在意義に悩むクローディアにとって、唯一の救いは婚約者である第三王子フィリップの存在だったが、彼は隣国の美しい聖女に一目ぼれしてクローディアを追放してしまう。 しかし聖女クローディアには、本人すら知らない重大な秘密が隠されていた。 これは愚かな王子が聖女を追い出し、国を亡ぼすまでの物語。

【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~

山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。 この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。 父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。 顔が良いから、女性にモテる。 わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!? 自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。 *沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

欲深い聖女のなれの果ては

あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。 その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。 しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。 これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。 ※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。