母さん、僕はこんな風に生まれ変わりたくなかった

解場繭砥

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21 わからない

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 ぼくの中には悲しいことと嬉しいことと哀しいことと楽しいことがあるのですがそういうのはだいたい、まじりあっていてその配合がぼくたちをつくっていくんだと思うんですがそれでたぶんぼくは一方向に進んでいて、きっと決められたコースを運命的におよいでいくんです、そういうのをみだすと一方向でなくなって、行く先が千々に乱れて神様のダイスが振り直された結果着地した地点を運命という、それこそを運命と呼ぶのだ、呼び直しましょう、そのために人は生まれ、千々に乱れるために生まれ、そうやって人はであってゆく。

 視覚神経の奥を刺激する存在が、視覚のみならず、たいへんなかおりとともに、まざりあったものをつくっていて、つまりゆめが、ゆめのような、ぼくをすくいあいげる、ひとをすくいあげる、人というのはまざりあった存在で、そこにあるということが、大変な乱れをもたらして、なんともまばゆく、きれいで、ぼくを、ぼくをむかえにきて、水の中にいざなってきて、ぼくはとびこまなくてはいけない、そこで息をして、どくんどくん、声をきくのです、僕とつながったひと、声はとてもきれいで、みだれて、そこにある。

 たいせつなものはなくても、生きていける、でも、それはいみがない、いきてゆく意味、意義、異議、そういうもの、人と人が交わり、交わし、閾をこえて、息をこらして、今、いきます、たぶん、母さん、ぼくはこんな風になりたくなかった、でも、なりたいものが、ある、いつかきっと、人と人が、抱き合うところ、笑い合うところ、仲良く登校するところ、過去、未来、とおく、ずいぶんととおく、むこう、だいじにしたいひと、行きたい、生きたい、ぼくはいきたい。

 いきます、かあさん、ごめんなさい、ぼくはいきます、たぶんここから、とても高いところ、高いところは、とても天にちかい、上に理想はある、あいはある、自分の、みずからの、相手と、人と人をわかつところ、そういうのをいったん無くして、ぼくは行かねばならない、いまはこんなでごめんなさい、ただそこにきっと、あるべきものが、幸せが、あるので、ここはとても高いところ、送信ボタンをおしたら、きっといける、そして、まっている人が、ほんとうに待ってくれて、しあわせがしあわせになって、だから、ぼくはいきます、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、いまは、ごめんなさい。いま、とびました。
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