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自慢の黒髪はあなたのために
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胸の下まである一度も染めたことのない自慢の黒髪を丁寧にブラッシングして耳の少し上で一つに結ぶ。
白のドレッサーの上には上品な香水の瓶やいくつものリップがインテリアのように並べられている。
「うん……これでよし」
仕上げに大事な鮮やかなブルーのリボンをヘアゴムの上からつけると自然と笑みが零れた。
白いブラウスとネイビーのプリーツスカート、そして鮮やかな赤のリボンが一気に華やかさを演出しているこの制服は俺のお気に入りだ。
制服に着替えて姿見で今日の自分を眺めることに夢中になっていると廊下から聞こえてくるスリッパの音に気付かず、突然自室のドアが勢いよく開いたため肩がビクリと跳ね上がった。
「瑠衣遅刻するよ」
「わかってるもん。行ってくるね!」
黄色いエプロンを身に着けノックもなしで部屋に入ってきたには一番目の兄である優馬。
優馬と末っ子である瑠衣は七歳も離れており、瑠衣が十歳の時に親を亡くしているために瑠衣にとっては兄というより親代わりのような存在だ。
スクールバックを肩に掛け綺麗に磨かれたローファーに足を入れ、慌ただしく家を出ていくのは毎朝恒例である。
そんな瑠衣に微笑みながら「瑠衣今日も可愛いね」と送り出すのも優馬にとっては恒例なのだ。
女の子にしては少し大きなローファー、短いプリーツスカートから伸びる長い脚は筋がしっかりしており少し骨ばっている。
あまりに不釣り合いなそれがなぜか周りには美しく見えてしまうのはある意味、瑠衣の魅力なのだろうか。
「……よっ」
「おはよう……椿」
マンションのエレベーターホールの壁にもたれかかっているこの男は瑠衣の幼馴染であり、瑠衣に恋する気持ちを教えた瑠衣の初恋の相手である本条椿。
髪は高校生とは思えない金髪でカッターシャツのボタンは二つ外されており、隙間から三つほどゴールドのネックレスが顔を覗かせている。
そんな恰好をしている椿だが椿に恋する瑠衣にはかっこよく見えてしまうのは恋のせいだということにしておこう。
****
恋をしたから……椿に恋心を抱いてしまったからあんなことになってしまったんだ。
瑠衣は鉄格子の中から見える星を眺めながらため息を一つ吐いた。
そのため息も暗い夜空に消えることなくコンクリート塀の部屋に溶け込んだ。
毎日欠かさずに手入れをしていた自慢の黒髪は傷んでぼろぼろになってしまい、お気に入りだった白いブラウスとネイビーの制服も大好きな柄物のスカートも今ではグレーの作業着。
暗い塀の中の凍てつくような寒さにも随分と慣れたものだ。
白のドレッサーの上には上品な香水の瓶やいくつものリップがインテリアのように並べられている。
「うん……これでよし」
仕上げに大事な鮮やかなブルーのリボンをヘアゴムの上からつけると自然と笑みが零れた。
白いブラウスとネイビーのプリーツスカート、そして鮮やかな赤のリボンが一気に華やかさを演出しているこの制服は俺のお気に入りだ。
制服に着替えて姿見で今日の自分を眺めることに夢中になっていると廊下から聞こえてくるスリッパの音に気付かず、突然自室のドアが勢いよく開いたため肩がビクリと跳ね上がった。
「瑠衣遅刻するよ」
「わかってるもん。行ってくるね!」
黄色いエプロンを身に着けノックもなしで部屋に入ってきたには一番目の兄である優馬。
優馬と末っ子である瑠衣は七歳も離れており、瑠衣が十歳の時に親を亡くしているために瑠衣にとっては兄というより親代わりのような存在だ。
スクールバックを肩に掛け綺麗に磨かれたローファーに足を入れ、慌ただしく家を出ていくのは毎朝恒例である。
そんな瑠衣に微笑みながら「瑠衣今日も可愛いね」と送り出すのも優馬にとっては恒例なのだ。
女の子にしては少し大きなローファー、短いプリーツスカートから伸びる長い脚は筋がしっかりしており少し骨ばっている。
あまりに不釣り合いなそれがなぜか周りには美しく見えてしまうのはある意味、瑠衣の魅力なのだろうか。
「……よっ」
「おはよう……椿」
マンションのエレベーターホールの壁にもたれかかっているこの男は瑠衣の幼馴染であり、瑠衣に恋する気持ちを教えた瑠衣の初恋の相手である本条椿。
髪は高校生とは思えない金髪でカッターシャツのボタンは二つ外されており、隙間から三つほどゴールドのネックレスが顔を覗かせている。
そんな恰好をしている椿だが椿に恋する瑠衣にはかっこよく見えてしまうのは恋のせいだということにしておこう。
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恋をしたから……椿に恋心を抱いてしまったからあんなことになってしまったんだ。
瑠衣は鉄格子の中から見える星を眺めながらため息を一つ吐いた。
そのため息も暗い夜空に消えることなくコンクリート塀の部屋に溶け込んだ。
毎日欠かさずに手入れをしていた自慢の黒髪は傷んでぼろぼろになってしまい、お気に入りだった白いブラウスとネイビーの制服も大好きな柄物のスカートも今ではグレーの作業着。
暗い塀の中の凍てつくような寒さにも随分と慣れたものだ。
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