こんなはずじゃなかったのに。思わぬ恋のその先は。

あい

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じゅうさん

課長は遊びの女の人にも口移しとかできてしまうの?
生まれて初めての出来事にこちらは動揺を隠せないのに。
課長はさっきまでと変わらず皆さんと会話を弾ませている。
課長の口から伝わる暖かい水が自分の身体に流れ混んできて浸透していく。
これ以上入り込まないで欲しい。
ダメっ!!

「ちょ、相沢さん?急にどうしたの?」
「なんでもないです!」

目の前の氷のたっぷり入った冷たいお酒をぐびぐび飲み干して。
さっきの暖かい水の感覚を忘れたい!流し出したい!
早く身体から出ていって!
課長との。
いくら忘れようとしても忘れられない暖かさがまだ胸のところにつっかえている。





「あれ?相沢がネックレスしてるなんて珍しいじゃん!」
「あ。うん。」
「さては男だな。」
「えっ!?」
「えっ!?マジ!?」
「ち、違う違う!そういうんじゃなくて!」
「うわぁ~ついに相沢にも!」
「だからそういうんじゃないってば!ただの会社の上司からの頂き物!」

このぐいぐいと詰め寄ってきているのは大学で一緒だった坂上徹君。

「なになに~なんの話?」
「お!山崎!お疲れ~!」
「めぐちゃんお疲れ様!」
「なんか話盛り上がってたじゃん!」

今合流したのが同じく大学で一緒だった山崎恵ちゃん。
あと矢島奏介くん。島田光太くんと柳瀬ののちゃんカップル。
今日は2~3ヵ月に一度の定例会。
コミュニケーション能力低めの私が馴染める数少ないお友達。

「ついに相沢に男が!!」
「え!うそ!?」
「だから違うんだって!」
「徹が勝手に盛り上がってる。」
「いやいや~。」
「な~んだ!」
「でもそのネックレスどうしたの?琴美にしては珍しくない?」
「だろ!?」
「会社の上司から頂いて。」
「可愛いね!センスある~!」
「うん!」
「ってかよくみたらそれってクルティエのじゃない?」
「え?」
「うわ!そうだよ!しかもこの時期限定のやつな気がする!!」 
「ま、まさか~。」

そ、そんなすごいもの?
でも課長が私にそんなすごいものをプレゼントするわけないし。

「ほら!見て!今検索してみたけど絶対これでしょ!」
「マジか!すげ~!」
「ホントにただの上司かよ?」
「ほ、ほんとだよ!」

そんな高価なものだなんて知らなかった。
普通の女の子ならもらった瞬間に気がついてる所を。
私がこういうことに疎いばっかりに…。
課長もこんな高いものあげたのになんだよって思ってるかも。
それか。待って!
こんな高いものを私にくれるなんておかしいよ!
もしかして結婚式の時だけ貸してくれてた!?
返却しなきゃだったのに1ヶ月ぐらい使ってしまってた!
ど、どうしよう!
それでなんだか最近課長の態度前と違ったのかなぁ。
本命彼女さんに借りてるものとかだったらどうしよう!!
うわぁ~!あわあわ。

「琴美?」
「わ、私ちょっと用事思い出したから先に帰るね!」
「え?」
「ごめん!またね!」

大変なことをしてしまった!
私のバカ。
何を勘違いして浮かれていたのか。

課長からもらったネックレス。
部屋の飾り棚の貝殻のトレイにのせて。
他のモノとは明らかに違う。
特別扱いをして。
会社に着けていく勇気はなかったけれど。
あれ以来お休みの日はいつもつけていた。
可愛くて私にはもったいないぐらいステキで。
着けるだけであの時のふわっとつけてくれた課長のことを思い出してドキドキするやらふわふわするやらで。
で、でも!
もしこれが本命彼女さんのものだったら?
あの日に貸してもらっていただけのものだったとしたら?
ど、どうしよう!
とにかく早急に課長に確認しなきゃ!

「あ。もしもし。課長。もうご在宅ですか?」
「どうした?」
「ちょっと。あの。」
「なんだ?」

ん?
なんか家じゃない気がする。

「あ。す、すみません。また改めます。」
「寛人?」

女の人の声。
思わずぷつっと電話を切ってしまった。
土曜日の夜なんて。
そりゃそうだよね。

あれから折り返しの連絡もないし。
そういうことだよね…。
もともとそういう人なのは分かっていたのに。
あれ?
なんでこんなに涙出てくるの?

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