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高校一年生
▽出会いは桜、心は桃色
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「瀬川君、おはよう」
俺、瀬川春生に声を掛けてくれたのは俺が所属するクラス、一年二組から少し離れた一年四組の吉岡涼子チャン。
優しいその声に、毎朝鏡を見ながら練習した『一番イケとる俺角度』で今日も振り返る。
そんな俺の決め顔はもののコンマ数秒で崩れ去り、涼子チャンの姿を視界に捉えると鼻の下は如意棒よろしく伸びに伸びた。
そら好きな子が小走りで向かってきてたらそうなるわ。
* * *
――二か月前。
関西の地元から上京してきて落ち着く間もなくこの桃咲学園高等学校の入学式を迎えた俺は、連れと逸れ途方に暮れとった。
精神的に大きな疲れを感じて足を止めると、十代特有の鳴き声が耳に届いた。
「ヤベェ、ヤベェ。マジでヤベェ」
「うわ、ヤバ。バカヤベェじゃん、みんな見ろし」
「マジでヤバイやつだ。映え」
群れる新入生の言葉に釣られてソメイヨシノに目を移す。
それまで視界の端にあった満開の桜に意識を支配され、息を飲んだ。
既に役目を終えた花弁は地面にその切なさを彩り、時を感じさせる。
まだ見ぬ高校生活に期待しているであろう新入生達。
その反対側から優しい春風に揺れる桜を見上げ、儚く笑う涼子チャンを見つけた。
白に近いピンクの花弁が舞い散る中で、静かに佇む彼女に恋をした。
* * *
「涼子チャン、おはようさん。もう梅雨やなぁ」
あの日を境に自分でも引くほど毎日必死に話すきっかけ作って、今となってはこうして涼子チャンの方から声を掛けてくれるようになった。
ほんでちゃっかり隣歩いて一緒に登校……なんやカップルみたいや、幸せ。
「そうだね。折り畳み傘、せっかく用意したのに忘れてきちゃった」
眉を下げて恥ずかしそうに笑う涼子チャン……好き。
「どんくさいなぁ、涼子チャン」
でも可愛い。
他愛ない会話を交わしながら、俺の教室の前に着いて別れる……この表現めちゃくちゃ辛い。
来年こそ同じクラスになれますように――そう願いながら教室に足を踏み入れた。
「よー、春生ー」
俺に気付いて片手を挙げるのは岩坂陽呂。
スポーツ推薦で入学した陽呂はバスケ部所属で、噂によると期待の星やら時期エースやら騒がれとるらしい。
因みに同部の一年生マネージャーと付き合うとるとか。
「おはよう」
落ち着いたこの声は白石清正、通称キヨ。
腹立つほどイケメンで腹立つ。しかも普通に良い奴で腹立つ。
図書委員会所属で部活は無所属。
美形でモテる代償として運動音痴でどんくさい。嬉しい。
因みに不仲ではない。
「お前、炊飯器のタイマーちゃんと設定してきたんやろな?」
俺と同じ方言のこいつは水藤蓮華――通称デン――。
俺とデンの母親同士が幼馴染みで、父親同士が親友っちゅう物心つく前からの腐れ縁。
二人揃って上京してきてから同じアパートで同居中の双子みたいなもん。
家庭菜園とペット(金魚)の世話が趣味で部活は無所属。園芸委員会に入ってる。
「……あ」
「せやろな」
幸せモードから一転、両手で顔を覆い膝をつく俺。
真顔で腕を組んで頷くデンが、無慈悲に俺を見下ろして「色ボケも程々にな」と追い打ちをかけた。
「まぁええわ、今タコパしよて話しててん」
「おー! ええやんタコパ! こっち来て初めてや!」
飛び上がる俺をジッと見ながら陽呂が一言呟く。
「……お前忙しいな」
「まさかそれをお前に言われるとはな」
「今日図書当番だから待っててくれる?」
首を傾げるキヨに頷くと、陽呂が続けて「俺も部活あるわ」と声を上げる。
結局、帰宅部で委員会当番の無い俺とデンが買い物と準備をすることになった。
俺、瀬川春生に声を掛けてくれたのは俺が所属するクラス、一年二組から少し離れた一年四組の吉岡涼子チャン。
優しいその声に、毎朝鏡を見ながら練習した『一番イケとる俺角度』で今日も振り返る。
そんな俺の決め顔はもののコンマ数秒で崩れ去り、涼子チャンの姿を視界に捉えると鼻の下は如意棒よろしく伸びに伸びた。
そら好きな子が小走りで向かってきてたらそうなるわ。
* * *
――二か月前。
関西の地元から上京してきて落ち着く間もなくこの桃咲学園高等学校の入学式を迎えた俺は、連れと逸れ途方に暮れとった。
精神的に大きな疲れを感じて足を止めると、十代特有の鳴き声が耳に届いた。
「ヤベェ、ヤベェ。マジでヤベェ」
「うわ、ヤバ。バカヤベェじゃん、みんな見ろし」
「マジでヤバイやつだ。映え」
群れる新入生の言葉に釣られてソメイヨシノに目を移す。
それまで視界の端にあった満開の桜に意識を支配され、息を飲んだ。
既に役目を終えた花弁は地面にその切なさを彩り、時を感じさせる。
まだ見ぬ高校生活に期待しているであろう新入生達。
その反対側から優しい春風に揺れる桜を見上げ、儚く笑う涼子チャンを見つけた。
白に近いピンクの花弁が舞い散る中で、静かに佇む彼女に恋をした。
* * *
「涼子チャン、おはようさん。もう梅雨やなぁ」
あの日を境に自分でも引くほど毎日必死に話すきっかけ作って、今となってはこうして涼子チャンの方から声を掛けてくれるようになった。
ほんでちゃっかり隣歩いて一緒に登校……なんやカップルみたいや、幸せ。
「そうだね。折り畳み傘、せっかく用意したのに忘れてきちゃった」
眉を下げて恥ずかしそうに笑う涼子チャン……好き。
「どんくさいなぁ、涼子チャン」
でも可愛い。
他愛ない会話を交わしながら、俺の教室の前に着いて別れる……この表現めちゃくちゃ辛い。
来年こそ同じクラスになれますように――そう願いながら教室に足を踏み入れた。
「よー、春生ー」
俺に気付いて片手を挙げるのは岩坂陽呂。
スポーツ推薦で入学した陽呂はバスケ部所属で、噂によると期待の星やら時期エースやら騒がれとるらしい。
因みに同部の一年生マネージャーと付き合うとるとか。
「おはよう」
落ち着いたこの声は白石清正、通称キヨ。
腹立つほどイケメンで腹立つ。しかも普通に良い奴で腹立つ。
図書委員会所属で部活は無所属。
美形でモテる代償として運動音痴でどんくさい。嬉しい。
因みに不仲ではない。
「お前、炊飯器のタイマーちゃんと設定してきたんやろな?」
俺と同じ方言のこいつは水藤蓮華――通称デン――。
俺とデンの母親同士が幼馴染みで、父親同士が親友っちゅう物心つく前からの腐れ縁。
二人揃って上京してきてから同じアパートで同居中の双子みたいなもん。
家庭菜園とペット(金魚)の世話が趣味で部活は無所属。園芸委員会に入ってる。
「……あ」
「せやろな」
幸せモードから一転、両手で顔を覆い膝をつく俺。
真顔で腕を組んで頷くデンが、無慈悲に俺を見下ろして「色ボケも程々にな」と追い打ちをかけた。
「まぁええわ、今タコパしよて話しててん」
「おー! ええやんタコパ! こっち来て初めてや!」
飛び上がる俺をジッと見ながら陽呂が一言呟く。
「……お前忙しいな」
「まさかそれをお前に言われるとはな」
「今日図書当番だから待っててくれる?」
首を傾げるキヨに頷くと、陽呂が続けて「俺も部活あるわ」と声を上げる。
結局、帰宅部で委員会当番の無い俺とデンが買い物と準備をすることになった。
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