異世界に来たら勇者するより旅行でしょう

はたつば

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第七章 勇者するより旅行だろ・・・?

第百話 円卓

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  今日は明日香たっての希望で辺境伯近くの迷宮に行ってきました。
  そしたら、男女二人が抱き合っていたので、助けました。その後、ステータスをちょっと弄り、脱出の手伝いもしました。
  コレは迷宮攻略を楽しめているのか、少し不安だったのですが、明日香さんは冬弥と京が駆け出しカップルみたいで可愛かったからいいそうです。

  そして現在。俺達は辺境伯領地に戻ってきました。

「冬弥君かっこよかったね~」
「え!?」
「京ちゃんのこと、ずっと守るように動いてたよ。普通の人にはできないよね」
「あ、うん。そうだね!」

  安心しなさい奏汰。明日香は別に冬弥を意識し始めたとかじゃないから。
  これみよがしに周りを警戒して、明日香を守ろうとするのもやめなさい。お前の殺気を飛ばし続けると、空舞う機関銃に撃たれかねんぞ。

「楓、これからどうする?辺境伯領地の改造も終わったし、迷宮攻略も楽しかったし」
「僕と明日香の子供できたし」
「あ、冬弥君の事ね」

  そうだな~。特にすることも無くなってきたしな~。また旅を再開するかな~。

「次の街にでも――

「大変ですッ!隣国が攻めてきましたっ!」

  ――行く前に、これを何とかするか」

  隣国。辺境伯領地は小国とかなり接してるからな。どこからなのか・・・。

「私の出番ね。防壁と私の武器。今の騎士団や魔法士達なら余裕よ」

  ・・・オーバー戦力な気がするけど。
  てか、本国と戦っても勝てるんじゃねぇか・・・?

  明日香が一人で盛り上がってるところに、辺境伯がやってくる。

「御三方、今日は助太刀なしでよろいか?」

  負けるとは思わんが・・・

「被害ゼロとは行かないと思うぞ?」

「もちろん、理解しております。ですが、御三方はいずれこの地を去る。なれば私達は自分で自分を守れるようにならなければなりません」

「ふーん・・・ま、やれるだけやってみなよ」

  辺境伯がそう言うなら見守ってやろうではないか。
  敵の数はそこそこ。強さもこの世界に置いてなら強いほう・・・か?しかし、ここまでの兵をよくもまぁ集めたものだ。戦争よりも農業や牧畜の方が人気なんだろ?
  ・・・なにか裏がありそうだが・・・面白そうだから調べるのはやめておこう。

  あの二人の勇者は逃げ延びただろうか。

  うまく逃げられたんならよかった。・・・もしかしたら、数人殺ってるかもな。
  フェンリルも冬弥も強いからな・・・。京の強化はしてないが、一応俺の加護を与えておいたし。レベルは爆発的に上がるだろう。
  いやぁ、戦争が荒れるだろうな~楽しみだねぇ。この世界の人間がどこまで頑張れるか・・・。この世界に異世界からの化物共が次々に入り込んできている。それも、上位陣ときたもんだ。俺の目を盗み、裏で化物が動き出すのも時間の問題だ。

  いやぁ、楽しみで仕方がないわ。

  七つ目、あのとシルクハットの堕天使。俺の中で主役はあいつらだな。七つ目が戻ってくるのか、それとも善神が七つ目なのか・・・。

  そして、侵略者。あれはあれで面白みがある。既に回線が切れている世界眼やスキルの世界にいる住人が探し回ってると聞いたがね。

  勇者もだ。あいつらがどれだけ戦えるか。十年間の成長も見たい。

  深淵隊。ワタシはウラでツナガッテタリシマセンよ?
  心当たりがありすぎるが、なにかの考えあってのことだろう。

  一番気になるのは雪とマリーだ。強欲の捜索網には入っているが、この世界のアーカイブには載っていない。何かあったのか、それともそれだけ強くなったのか。この二人についてもまだ再開には早いな。死なせる気は無いが、放っておいた方が面白そうだ。俺の予想の斜め上を行く少女達だからな。

  くっくっく、笑いが止まらんですな。

  今回の事件は誰が手を引いてるのか・・・。
  やはりこの世界は物語なんかよりもはるかに楽しめる。明日香と奏汰を連れてきたのは正解だったな。

  さて、俺は俺で仕事をしますかね。

  強欲による転移を行う。

「楓?あれ、楓は?」
「さぁ、またどっか遊びに行ったんじゃない?」
「私たちを置いて?」
「ま、後で分かると思うよ」
「・・・そうね、後で面白い話でも聞きましょうか」
「うん。ってことで、膝枕してください!」
「・・・はぁ・・・呑気ねぇ」
「君が大好きだからね」
「あの時から吹っ切れたのね」
「まぁね・・・君といれる今が一番幸せなんだ。楓にはすごく感謝してる」
「・・・・・・・・・私もよ・・・」
「うんうんうん」
「・・・分かったわよ。ここじゃあれだから、私の部屋に来て」
「りょーかい!」


◇◆◇◆◇◆


  現在上空。
  辺境伯兵士の数に比べて敵兵が多すぎる。規模では三倍近い。

「臆するなァ!殺せ殺せ殺せェ!!」

  あれ、騎士団長ってあんなキャラだっけか。なんか見失ってない?

  奏汰に鍛え直されたからか、騎士団の動きがいい。なんか立体機動戦士って感じ。一人一人が跳躍したり、捻って攻撃を躱したりと物語に出てくる勇者か英雄のような動きだ。相手兵士も戸惑ってるじゃないか。
  奏汰に訓練させるとこんな風になるんだな。まるっきり鬼じゃないか。
  立体的に、本能に従事して動き、圧倒的破壊力にて人を踏み潰す。

「やれる!やれるぞォ!」
「うぉぉぉぉ!」
「ぶっ殺せェッ!」

  ・・・性格的ところまで同じになってきてねぇ?
  やる気になるととことんなんだよな。

「げぇ!魔法だァ!どーするぅ!」
「どーしよぉ!」

  やっぱり、魔法が強い世界なのか。
  味方ごと魔法で攻撃し始めた敵方に次は辺境伯兵士が戸惑い始める。

「くそっ!一旦ひくぞ!」
「ひけっ!ひけぇー!」

  魔法士が戦いやすいように一度下がることにした騎士団。既に剣持つ敵の殆どを失った敵兵。敵の数三倍と言ったが、辺境伯兵士は一人で何十人と殺している者もいるので、当然といえば当然だ。というか、騎士団長が頑張った。

  騎士団は多少死者を出すことになったが、なんとか撤退成功。

  魔法士同士の戦いも、終始辺境伯兵士が圧倒していた。

「・・・俺も行くぜェェ!『鬼神化』ァァ!!」

  なぜか魔法士同士の争いに参戦する騎士団長。赤いオーラを纏った鬼の姿をした騎士団長はその身に魔法を受けながらも、止まることを知らない。

「ウラウラウラウラウラ!!」

  剣圧のみで魔法を吹き飛ばしていく。
  これには両軍みんなであんぐり。

「生温い!弱い!弱いぞォ!」

  彼は既に怪物の道を歩んでいるみたいだ。

「死ねオラァ!」

  魔法士の首をいくつも跳ね飛ばして敵の指揮官のもとへ。馬に跨っているだけのみせかけ指揮官なんぞ恐るるに足らん。
  鬼の独壇場。指揮官を屠った後は大きく吠える。

「しゃオラァァァァ!!」

  勝利の咆哮をあげた騎士団長。そこから先はもうただの蹂躙だ。


  ・・・ここはもういいか。
  黒幕の顔だけ確認しに行こうかな。


◇◆◇◆◇

◇第三者視点

「馬鹿な!こんな馬鹿げた話があってたまるか!」

「ただ、事実だ。」

  バンッと円卓を叩き、怒りを顕にする男。机を囲む他の七人はその行動に何か言うこともない。それがいつも通りだと言うように、腕を組んでいる。

「あんたが悪いんじゃぁん?うちらはやめとこうって言ったのに~ねぇ~」

  無駄に露出の多い服を着た猫耳少女が男を煽り、見事に乗せられた男はまたも机を叩き、声を荒らげた。

「黙れ!このままでは我らが王に顔向けできんぞ!」

「貴様が責任を取って死ねばいいだけだ」
「そうだよねぇ~今回の件については、うちらノータッチだしぃ~?」
「・・・預言者様の言いつけ破ったの、あんただけ」

  男以外の者達は冷めた目で男を見やる。

「あんなものは当てずっぽうにすぎん!!」

  顔を真っ赤にして怒り狂う男。

「・・・そんなこと言ってるから失敗する」
「今回のことで預言者は本物だと思っても構わんだろう」
「んだ、んだ」

  彼らが預言者と呼ばれる者から得た情報は『ネメシスにイレギュラーあり』というもの。彼らがいうイレギュラーとは楓たちの言う『化物』のことで、それはもう世界を外れた規格外な連中のこと。近頃この世界への干渉が増えてきたことが確認されているため、警戒心が高まっていたのだ。

「はっ!あの鬼騎士がイレギュラーだと?イレギュラーはもっと馬鹿げてる!預言者の言葉は嘘っぱちだ!」

「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

「あ!?なんだよ!文句あるなら言え!」

  一瞬血の気の引いた顔をした七人。なにか悪夢でも見ているような様子で、額から冷や汗がたれている。
  男はその様に違和感を覚えるが、今はそれを考える余裕がない。彼は此度の失敗により、彼らの上司に潰される可能性があるからだ。命を守るためになんとかして起死回生の一手を探すことに必死だ。

「そ、そうだな・・・」
「・・・私たちが間違っていた・・・」
「んだっ!んだぁ!」

  緊張から解き放たれたように、苦しい呼吸を繰り返し、ようやく安堵した表情を見せた七人。

「ん?・・・そうだろ?そうだろう、そうだろう。預言者なんて――」

「・・・私たちが間違っていた」
「鬼騎士如きがイレギュラーでは無かったんだ・・・」
「とんでもない事になっちまったねぇぇ・・・」

「あ?」

「「「あんな、化物がいたなんて・・・!!」」」

  彼らが見ていたのは男の後ろ。空中で足を組み、座っていたピエロの仮面をつけた男だった。人間とは思えない威圧感、魔人や魔王なんてものとは比べ物にならない邪悪な様相。尻尾の生えた悪魔。
  口元に人差し指を当て、七人だけに向けて殺気を放ち続けていた。その後口パクで、「俺の目に付く者は消す」と。それだけ伝えてその場からは消えた。

  それを確認した七人。

  ありすぎる実力差。戦争を起こし、世界全体を巻き込んだ大戦にするつもりだった彼らだが、その気すらも失せてくる。王への忠誠が無ければ、すぐにこの作戦を降りているだろう。
  それほど、ピエロの男は次元が違ったのだ。

「うちは、今回のこととは一切関わってないよ~」
「俺もだな。全てお前の独断だったと認識している」
「みーとぅー」

「な!何を言ってるんだ貴様ら!私を裏切る気か!?」

「裏切るって言い方は酷いねぇ。むしろうちらが被害者じゃなぁい?」
「・・・死ぬのはあなただけで十分」

「ふざける―――」

  ボトリ。

  首が千切れた。

「・・・笑えないな」
「・・・王に報告。忘れない」
「だねぇ。いつも見てる、いつでも殺れるって合図かねぇ・・・」
「んだっ!んだっ!」

  男が死んだことに悲しむ必要は無い。
  彼らは生き残っているのだから。彼らの組織は仲間の死に関して騒ぐことがない。自分と王さえが生きていれば、それでいいと思っているからだ。王と新たな世界を見られるならば、隣に立っているのが誰でも構わない。
  だから今考えるべきなのは、自分と王をいかにして生き残らせるか。それだけだ。

「まずはイレギュラーについて調べる必要がある」
「うちもそう思うよぉ。イレギュラーはさっきの悪魔だけじゃないだろうから」
「・・・預言者様、招き入れる」
「それがいいだろう。他の意見はあるか?」

「・・・・・・」

「よし、あとは個々人が王に報告して終わりだ。解散」

  仲間としての意識が薄いため、全体の報告会はここでだけ。流す情報も制限できる。仲間内での騙し合いも日常茶飯事なこの組織は、組織内で生き残るだけでも武智勇が必要で、こうして生き残っている者達はかなりの熟練者であり、情けなきものなのである。



◇◆◇◆◇◆◇



◇楓視点

  いや、まさかバレるとは思ってなかった。
  一応人並みに気配を隠していたんだけど、バレちった。

  なんでもありの組織だったな。全体に殺気が蔓延してた。特に円卓の中心として向かい合っていた男と女。俺が殺したやつに向けて細工をし続けてた。俺が殺らなくても、どちらかが殺していただろう。そうでなければ、洗脳して駒にしていたかだ。
  こいつらの言う王ってのに興味が出てきたな。組織内でここまでの競走を生み出すなんて簡単に出来ることじゃない。王への忠誠が高すぎる。

  円卓の連中が王と話しているのを聞いていたが、それぞれが腹黒い。

  他人を蹴落すことばかり考えている。だが、世界の改変をすることも頭に入れて行動している。王的にはかなり使える駒たちなんだろう。
  王とやらは、人間の姿をしているが、人間ではない。

「おい、俺になんか用かよ、悪魔」

  あ、またバレちった。
  ちょっとこの世界のレベルを舐めすぎか。次からは気をつけよう。

「バレてしまったか。初めまして、だな。侵略者」

  ここは四つ股の巨人のアジト。
  辺境伯領地に隣国が攻め込んだ事件の繋がりを追っていたら、ここにたどり着いた。

「・・・貴様、能力神の使いか?」

「違うな。俺をそのへんの使い走りと一緒にするな」

「・・・なら帰れ。死にたくなければな」

  俺、舐められてるな~。

「お前に俺が殺せると?」

「無論だ」

「なら、やってみな」

  黒田を殺せるのなら、な。

「フンッ!」

  侵略者の能力値は謎だ。
  知ろうと思えばいくらでも知れるが、別にそこまで必要性は感じない。

  侵略者の手元から射出された刀身。そこまで速くない。俺でなくても視認できるだろうし、なにより、威力も足りなければ、その刀身自体に毒を塗ることしか出来ていないのが無能を表している。

  当たる直前に刀身を『破壊』する。

「・・・・・・」

「終わりか?つまらないな」

  拍子抜けもいい所だ。
  円卓の中心人物であったあの二人の方が強そうに見える。

「その言葉、後悔するなよ!」

  なんだ?この三下感は・・・。

「ぬるい」

  頑張って走り、俺の後ろに回ってから横腹を蹴りに来るが、それを右手で掴んで、左手の裏拳で顔面を叩く。

「くそっ!」

  ・・・つまらない。
  もしや、こいつは侵略者ではないのか?影武者かなにかだったりするのだろうか。最低でも絶望竜程度の実力が無ければ、お話にもならないんだが。

  今の裏拳だけで顔がぐちゃぐちゃになってしまっている。

  期待はずれだな。部下が優秀だからこいつもいい感じだと思ってたんだがな~。

「ここは一旦・・・!」

  逃がすはずない。

「魔手」

  侵略者の影から魔手が現れ、侵略者の体、魂をその場に固定させる。
  世界眼がこいつの力は乗っ取りだと言っていたからな。この体も乗っ取ったものなのだろう。それを捨てて、次に入られたらそれはそれで面倒だ。

「それで終わりか?」

「くそ・・・!」

  負け犬感が強い。

「させん!」

  乱入者か。
  円卓にいた男だな。こいつは見どころがある。

  男の持つ剣が怪しく輝き、剣撃が放たれる。かなり魔力を込めたようで、威力が高い。

「王よ、こちらへ!」
「おう!」

  む、逃げられた。
  魔手を引き剥がしたのか。やはり、あの男は見どころがある。引くべきところを最短で引き上げる力がある。考えなしの行動では出来ない。魔手を侵略者から剥がしたのも見事だ。勢いで出てきたわけではないので、最初から最後まで狙い通りだろう。うむうむ、面白いぞ。

  ・・・少しだけ追いかけてみるか?

  いや、やめとこうか。
  こんなところで深追いしてもあとあとの楽しみが減るだけだ。明日香や奏汰にもこの世界の面白さを実感してもらいたいし、俺もできることをしよう。

  それに、収穫が何も無かったわけじゃない。
  この10年でこの世界にすむ者は以前よりも強くなっている。たった10年で優秀な生物が増えたんだ。喜ばしいことだろう。

  これは本当に、あいつらと会うのが楽しみだ。

――――

百話達成!!
本編百話に到達しました!嬉しいです。
まさかここまで長く続くとは・・・。あらためて、自分たちの妄想力にドン引きです。

もう少しで一年経ちますが、ここまで続けられたのも、応援してくださる、皆様のおかげです。
本当にありがとうございます!

行き当たりばったりですが、なんとか頑張りたいです!
・・・もっと早く書けたらいいんですけどね~。

これからも、この旅行記をよろしくお願いします!


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