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メグルの休日:
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:メグルの休日
大学進学を機に上京してからあっという間に7年という時間が経った。
特に記憶に残るような深い思い出もなく、ただ時間だけが過ぎ去っていく。
社会人になってからは平日遅くまで仕事で残ることも珍しくなくて、帰って適当にご飯を食べて、お風呂に入ったらベッドに倒れこんで。
朝になったらまた仕事に出かけて、週末は溜まった家事をしてダラダラと過ごす。
たまに買い物に出かけたり、仕事終わりに同僚と飲みに行ったり。
熱中できるほどの趣味もなくて、なんやかんや彼氏もいたけど長続きはしなかった。
そんな時に新しいゲーム機が発売されるという宣伝が流れた。
〔現実とは違うもう一つのリアルな世界〕
というのが売りで従来のテレビにゲーム機をセットして画面で見ていた世界から、ヘッドギアを装着することで360°見渡すことができる。
操作自体はコントローラーを使っているから体に感じるリアル感はないけど、画素数が多いのかヘッドギアを装着して見える景色は現実と同じようなリアルさだった。
チャットはヘッドギア内のマイクに向かって話すと送られるようで、その辺は字を打たなくてもいいから楽だった。
通話機能もあるみたいだけど、流石に初対面の人と話すのは怖いし抵抗があった。
そこそこの値段はしたけど、かなり興味が引かれた。
休日の暇つぶしになればと思って始めたゲームだったけど、キャラクター作りからどっぷりはまり込んでしまうものだった。
キャラクターも細かく作れるようで、なかなか作りがいがある。
PVでみた女性キャラの装備の露出度を思い出して流石に水着みたいなものは……と思って男性キャラにした。
……なんとなく恥ずかしいし、あんな装備で防御できる気がしない。いや、性能は一緒だと思うけどさ。
折角だからイケメンにしよう。
あ、プレビューで表情も動かせるんだ。
目元は少し大きめの切れ長で、笑うとすごく優しい感じ。
髪と目は色素薄目だけど、項にかからないくらいの短髪で爽やかに。
身長は高すぎるのもだし、平均くらいで。
あ、この声カッコイイ。
低くもなく高過ぎず、落ち着いた感じ。
職業はー、ソロで回る予定だしなー。
事前情報でファイターかマジシャンが人気って書いてたな。
ハンターはやめた方がいいとか……。
後々は生産もしてみる予定だし、そしたらDEX上げといた方がいいよね。
ってことはハンターの方が良さげだな。
いくら不毛職って言ってもそんな酷いもんじゃないと思うし。
えーと、名前は本名をちょっと変えて〔メグル〕でいいか。
ゲームなんてスマホでやるくらいですぐに飽きることが多かったけど公式サイトや攻略サイトをみて情報を集めたり、休日の前の日には夜通しレベル上げに勤しんだり初めてこんなに熱中した。
野良パーティに入ってチャットを使ってゲーム内で仲良くなった人とかもいて、一緒に高レベルのイベントに参加したりもして。
仲良くなったのはみんな戦闘狂みたいな人達ばっかりだったから、また会えたら~ってフレンド登録とかもせず意外とあっさりしたものだったけど。
NPCとの会話も1人1人細かくなっていて、話しかけると選択肢が出てきたりして親密度を上げると一緒にパーティーメンバーとして着いてきてくれたりと育成仕様もついている。
夢中でゲームをしていたら1年経つころには気づけば最大Lv.90まで到達していた。
ストーリーも最終まで進めていてアップデートを待つばかり。
その間にも錬金や調理、畑仕事とかの要素があってゲームに飽きるなんてことはなかった。
ゲームを初めてから異世界転生物の小説を読んだり、漫画を見たりする機会も増えた。
それくらい今の自分とは違う自分になれる世界に憧れていた。
「いっその事ゲームの中で生活できたらいいのに」
その日も夜遅くに仕事から帰って、ログインしようとしたとき。
それはふと思っていたことを口にした小さな囁き。
何も縛られない場所で自由に生きれたらどんなに楽しいだろう。
「ま、小説や漫画じゃないんだからありえないか」
小さな囁きが現実となるのはもう少し後のお話し。
大学進学を機に上京してからあっという間に7年という時間が経った。
特に記憶に残るような深い思い出もなく、ただ時間だけが過ぎ去っていく。
社会人になってからは平日遅くまで仕事で残ることも珍しくなくて、帰って適当にご飯を食べて、お風呂に入ったらベッドに倒れこんで。
朝になったらまた仕事に出かけて、週末は溜まった家事をしてダラダラと過ごす。
たまに買い物に出かけたり、仕事終わりに同僚と飲みに行ったり。
熱中できるほどの趣味もなくて、なんやかんや彼氏もいたけど長続きはしなかった。
そんな時に新しいゲーム機が発売されるという宣伝が流れた。
〔現実とは違うもう一つのリアルな世界〕
というのが売りで従来のテレビにゲーム機をセットして画面で見ていた世界から、ヘッドギアを装着することで360°見渡すことができる。
操作自体はコントローラーを使っているから体に感じるリアル感はないけど、画素数が多いのかヘッドギアを装着して見える景色は現実と同じようなリアルさだった。
チャットはヘッドギア内のマイクに向かって話すと送られるようで、その辺は字を打たなくてもいいから楽だった。
通話機能もあるみたいだけど、流石に初対面の人と話すのは怖いし抵抗があった。
そこそこの値段はしたけど、かなり興味が引かれた。
休日の暇つぶしになればと思って始めたゲームだったけど、キャラクター作りからどっぷりはまり込んでしまうものだった。
キャラクターも細かく作れるようで、なかなか作りがいがある。
PVでみた女性キャラの装備の露出度を思い出して流石に水着みたいなものは……と思って男性キャラにした。
……なんとなく恥ずかしいし、あんな装備で防御できる気がしない。いや、性能は一緒だと思うけどさ。
折角だからイケメンにしよう。
あ、プレビューで表情も動かせるんだ。
目元は少し大きめの切れ長で、笑うとすごく優しい感じ。
髪と目は色素薄目だけど、項にかからないくらいの短髪で爽やかに。
身長は高すぎるのもだし、平均くらいで。
あ、この声カッコイイ。
低くもなく高過ぎず、落ち着いた感じ。
職業はー、ソロで回る予定だしなー。
事前情報でファイターかマジシャンが人気って書いてたな。
ハンターはやめた方がいいとか……。
後々は生産もしてみる予定だし、そしたらDEX上げといた方がいいよね。
ってことはハンターの方が良さげだな。
いくら不毛職って言ってもそんな酷いもんじゃないと思うし。
えーと、名前は本名をちょっと変えて〔メグル〕でいいか。
ゲームなんてスマホでやるくらいですぐに飽きることが多かったけど公式サイトや攻略サイトをみて情報を集めたり、休日の前の日には夜通しレベル上げに勤しんだり初めてこんなに熱中した。
野良パーティに入ってチャットを使ってゲーム内で仲良くなった人とかもいて、一緒に高レベルのイベントに参加したりもして。
仲良くなったのはみんな戦闘狂みたいな人達ばっかりだったから、また会えたら~ってフレンド登録とかもせず意外とあっさりしたものだったけど。
NPCとの会話も1人1人細かくなっていて、話しかけると選択肢が出てきたりして親密度を上げると一緒にパーティーメンバーとして着いてきてくれたりと育成仕様もついている。
夢中でゲームをしていたら1年経つころには気づけば最大Lv.90まで到達していた。
ストーリーも最終まで進めていてアップデートを待つばかり。
その間にも錬金や調理、畑仕事とかの要素があってゲームに飽きるなんてことはなかった。
ゲームを初めてから異世界転生物の小説を読んだり、漫画を見たりする機会も増えた。
それくらい今の自分とは違う自分になれる世界に憧れていた。
「いっその事ゲームの中で生活できたらいいのに」
その日も夜遅くに仕事から帰って、ログインしようとしたとき。
それはふと思っていたことを口にした小さな囁き。
何も縛られない場所で自由に生きれたらどんなに楽しいだろう。
「ま、小説や漫画じゃないんだからありえないか」
小さな囁きが現実となるのはもう少し後のお話し。
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