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第9章 呪怨事件編
海龍神と勇者との因縁
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『……それで? 決闘に勝ったにもかかわらず、なんでまた戦う羽目になっているんだ?』
場面は再び戻り、紫音たちがいる海底神殿の最奥。
そこでグリゼルの口からあらかたの経緯を聞いた紫音は、問い詰めるような言い方で再度質問する。
『さあ……? なんでだろうな?』
『……あのなあ』
『それについては、儂が答えよう』
はぐらしているのか、それとも本当に心当たりがないのか、まったく真相を明らかにする気のないグリゼルに代わって、ディアナが代わりに答えてくれた。
『……ディアナ、頼む』
『実はじゃな、グリゼルの言うように奴は確かにデュークとの決闘に勝利し、彼とともに儂らが待機しておった海岸に帰ってきた……のじゃが、その帰り方に問題があったんじゃよ……』
『帰り方……?』
『何を思ったのか、グリゼルの奴はデュークを引きずりながら帰ってきたんじゃよ。その光景を見た奴の仲間たちが激怒して、儂らの言い分を聞かないまま乱闘にまで発展したんじゃよ』
『グリゼル……お前……』
敗者に対してのあまりにもひどい扱い方に紫音は若干引いていた。
『オイ! なんだよ、その呆れたような声は!』
『いや、これが普通の反応だと思うが?』
『オレはただ、勝者と敗者を明確にしようと思ってやっただけで……まあ、ちょっとだけおふざけでやったところもあったが……まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったんだよ! ……まったく、器の小せえ連中だ』
『全面的にお前が悪い。……それで、ディアナ。収拾はつきそうか?』
『少々手こずりそうじゃな……。3人に1人は、儂でも簡単には倒せぬ相手ばかりで戦いは長引くじゃろうな。一番早いのはデュークの目が覚めて、この場を収めてもらうというのが望ましいんじゃが、それもいつになるのやら……』
『……とりあえず、そのときが来るまで時間稼ぎをしていてくれ。その海賊団とは、これから協力関係を築くことだし、なるべく傷つけないようにな』
『難しい注文じゃが、善処しよう』
『ヨシツグとグリゼルもその方針でよろしく頼む。……特にグリゼルは、やり過ぎないようにな』
また問題を起こしそうなグリゼルにあらかじめ釘を刺しておきながら指示をする。
『心得た』
『分かったよ……。心配すんな』
若干不安は残るが、ひとまずグリゼルを信じることにして紫音はグリゼルたちとの念話を切った。
「なんだか暗い顔をしているわね。……向こうはそんなにひどい状況なの?」
浮かない顔をしている紫音を見て、フィリアは小首を傾げながら問いかけてきた。
「途中まではそんなにだったんだが……グリゼルの奴がな……」
その後紫音は、向こうでなにが起きているのか、これまでの経緯を踏まえてフィリアたちに話していく。
「……まあ、伯父様ならやりそうね。簡単に死ぬような人でもないし、ほっといてもそのうち解決するでしょう。それよりも、海賊を味方につけたのよね? そいつらって、使えるの?」
幼いころからグリゼルのことを知っているせいか、特に心配する素振りも見せず、すぐさま別の話へと話題を移していく。
「残念ながら海賊界隈について明るくないから、使えるかどうかはわからないけど、ディアナの話によると相手はバームドレーク海賊団らしいぞ」
「バームドレーク海賊団!?」
海賊の名前を出した途端、エリオットは驚いたように声を上げる。
「……? エリオットさん、知っているんですか?」
「ああ、まあな。海に生きる種族として海賊については私自身、ある程度把握しているのだが、バームドレーク海賊団。この海賊団は昔からある海賊団で、実力も折り紙付きだ」
「へえ、エリオットさんがそう言うなら、よっぽどなんでしょうね」
「……ただ、初代船長が率いていた時代と比べてしまうと、少々劣ってしまうのだが、それでも海賊の中では群を抜いているはずだ」
申し分ない実力を持っているとのことで、ひとまず心強い協力者が増え、紫音はそっと笑みを浮かべた。
「どうせなら呪いも解けたことだし、シェイレーンさんも協力してくれたら嬉しいんですけど……やっぱりダメですかね」
「おい、シオン殿! それは不敬だぞ!」
「落ち着きなさい、我が眷属よ。……人の子よ、そなたの言い分はもっともだ。私自身、このままでは腹の虫も収まらないゆえ、一致報いたいとも考えている。……だが残念ながら、それは叶わないだろう」
少し残念そうに顔を曇らせながら紫音の提案を断った。
「もしかして、ここから出られないからそう言っているのか?」
「ええ、その通りです。私は遥か昔、勇者と名乗る連中の手により、この地に封じ込められてしまったのです。以来私は、籠の中の鳥のようにここから離れることができなくなってしまいました」
「勇者……? ああっ! そういえば最初、俺のことを勇者と勘違いして襲ってきたけど……それでか」
紫音はこの場所にたどり着いたときのことを思い出し、ようやく合点がいった。
いまの話を聞く限り、シェイレーンは勇者に対して相当の恨みを抱いているようだ。どのような理由で紫音を勇者と勘違いしたのかはまだ分からないが、目の前に勇者が姿を見せればあれほど激怒するのも無理はない。
「その節は申し訳なかった。呪いのせいというのもあるが、そなたからは勇者と似た気配を感じて恥ずかしながら勘違いしてしまった」
(たぶん、その勇者から感じていた異世界の気配が俺と重なってしまったんだろうな)
そう考えると、紫音はとんだとばっちりを受けたうえ、勇者のせいで殺されかけたとも言える。
なんとも理不尽な出来事になんだか無性に腹が立ってきた。
「……でも、なんで勇者はシェイレーンさんを封印しようとしたんだ?」
「おそらくだけど、神龍族が大戦に出てこないようにするための工作だったんでしょうね。当時はまだ、神龍族の数も多かっただろうし、少しでも戦力を削りたかったのかもしれないわね」
「……ええ。ここに来た勇者も似たようなことを言っていました。すでに私と同じような目に遭わせた同族もいるとも自慢していましたね」
「その封印というのは、シェイレーンさんでも解けないのですか?」
「そうですね……。私もこの地に封じられてからというもの、幾度となく解決策を模索していましたが、どれも失敗に終わってしまいました」
「そう……でしたか……」
紫音たちの手でどうにかしてあげたい気持ちもあったのだが、どうやら難しいようだ。
「ですが、悪いことばかりでもありませんでした。新しく眷属を生み出す能力を得たことや遠隔で能力を発動することもできました。……そして、人魚族と出会えたことも私にとってはなによりの幸運でした」
「幸運……ですか?」
「ええ。私はここから動けないのでどうしても外界の動きについてはまったく把握できない状況でした。そんな中、人魚族と偶然出会い、私の能力を与え、眷属とすることで外界について知ることができるようになりました」
永い間、この地に閉じ込められたシェイレーンからしてみれば、この上なく喜ばしいことだったのだろう。
退屈な毎日と一人だったときが続く中で人魚族と出会えたのはまさしく幸運と言える。
「その話については父上から聞いたことがある。大戦に敗北した人魚族は、長い期間を経て種族としての力も衰え、海底に隠れるように暮らしていたそうです」
シェイレーンの話を補足するようにエリオットは話を続ける。
「当時の国王――つまり私の祖先はこの状況を憂い、外に解決策を求めたところ偶然にも海龍神様と遭遇したそうです」
「……本当に偶然なんですか……それ?」
なんともご都合主義な展開に紫音は疑いの眼差しを向ける。
「疑っているところ悪いが、本当に偶然のようだ。私もそのときはシオン殿と同じように疑っていたが、父上に『偶然』だと言い切られてしまってな……」
「そうだったんですね……」
「それで、海龍神様に会った私の祖先が交渉した結果、海龍神様の能力の一端を貸し出すと同時に私たちは海龍神様の眷属となり、前以上の力を得たというわけだ」
人魚族がいまの地位に上がるまでの経緯をエリオットの口から聞いた後、フィリアがそこに口を挟んできた。
「シェイレーン様って案外お人好しなんですね。竜人族には利己的な奴らが多いのでてっきり神龍族もそうなのだと思ってたのですが……まさか自分の能力を与えるなんて思いもよりませんでしたよ」
「他の同族については知りませんが、少なくとも私の場合は、孤独だった時期も長く常日頃から誰かと交流したいという気持ちも強くあったので、それで人魚族を眷属にしようと考えたのかもしれませんね」
(……ん?)
シェイレーンのことについて詳しく知ったところで、紫音のもとにディアナからの念話が送られてきた。
「みんな、ディアナから念話が来た。もしかしたら、向こうのいざこざが終わったのかもしれない」
事前にそう言ってから紫音はディアナからの念話に応答する。
『ディアナ、どうした? なにかあったか?』
『シオン、朗報じゃ。先ほどデュークの目が覚めて、すぐにこの場を収めてくれた』
『本当か! ……それで、お前たちのほうはケガとかはないよな?』
『心配する出ない。儂らもそうやわではないのでな。ピンピンしておるわ。それでシオン、さっそくデュークの奴がお主らと話をしたいと申しておってな。今大丈夫か?』
『ああ、ちょっと待ってくれ』
紫音はフィリアたちにも状況を伝え、確認を取ってからディアナとの念話を再開する
『こっちは大丈夫だ。すぐに始めてくれ』
『了解した。しかしこのままじゃと、デュークとの会話もままならないことじゃし、こっちで改めて連絡するから少し待ってくれ』
いま使用しているのは、紫音と契約した者同士でしか使えない念話のため別の連絡手段でデュークとの話を進めるようだ。
少しすると、紫音の目の前に突然画面のようなものが現れる。
「――っ!? びっくりした……」
「なにこれ……? ディアナったらいつの間にかこんな魔法を……」
『あー、あー。シオン、こっちの音声と映像は届いておるか?』
画面の中からディアナの姿が現れる。
「ああ、聞こえているし、見えてもいるよ。……それにしても、こんな連絡手段を持っていたとはな。まったく知らなかったぞ」
『最近、覚えたものでな。言い忘れておったわ』
「まあ、この話は後にして。本題に移ろうか」
『そうじゃったな。今呼んでくる』
デュークを呼びに行ったのか、少しの間、画面の中からディアナの姿が消える。
それから数分ほどでディアナが戻ってきて、グリゼルとヨシツグ、そして見知らぬ男が画面の中に現れる。
『よう、マスター。そっちもうまくいったようだな』
「ヨシツグとグリゼルも無事なようだな。……それと」
シオンは画面の端に移っている男に視線を向ける。
『初めましてだな。俺はバームドレーク海賊団の船長をやらしてもらっているデュークってもんだ』
ここで紫音たちは、初めて世界に名を轟かせている大海賊の船長と顔を合わせることとなった。
場面は再び戻り、紫音たちがいる海底神殿の最奥。
そこでグリゼルの口からあらかたの経緯を聞いた紫音は、問い詰めるような言い方で再度質問する。
『さあ……? なんでだろうな?』
『……あのなあ』
『それについては、儂が答えよう』
はぐらしているのか、それとも本当に心当たりがないのか、まったく真相を明らかにする気のないグリゼルに代わって、ディアナが代わりに答えてくれた。
『……ディアナ、頼む』
『実はじゃな、グリゼルの言うように奴は確かにデュークとの決闘に勝利し、彼とともに儂らが待機しておった海岸に帰ってきた……のじゃが、その帰り方に問題があったんじゃよ……』
『帰り方……?』
『何を思ったのか、グリゼルの奴はデュークを引きずりながら帰ってきたんじゃよ。その光景を見た奴の仲間たちが激怒して、儂らの言い分を聞かないまま乱闘にまで発展したんじゃよ』
『グリゼル……お前……』
敗者に対してのあまりにもひどい扱い方に紫音は若干引いていた。
『オイ! なんだよ、その呆れたような声は!』
『いや、これが普通の反応だと思うが?』
『オレはただ、勝者と敗者を明確にしようと思ってやっただけで……まあ、ちょっとだけおふざけでやったところもあったが……まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったんだよ! ……まったく、器の小せえ連中だ』
『全面的にお前が悪い。……それで、ディアナ。収拾はつきそうか?』
『少々手こずりそうじゃな……。3人に1人は、儂でも簡単には倒せぬ相手ばかりで戦いは長引くじゃろうな。一番早いのはデュークの目が覚めて、この場を収めてもらうというのが望ましいんじゃが、それもいつになるのやら……』
『……とりあえず、そのときが来るまで時間稼ぎをしていてくれ。その海賊団とは、これから協力関係を築くことだし、なるべく傷つけないようにな』
『難しい注文じゃが、善処しよう』
『ヨシツグとグリゼルもその方針でよろしく頼む。……特にグリゼルは、やり過ぎないようにな』
また問題を起こしそうなグリゼルにあらかじめ釘を刺しておきながら指示をする。
『心得た』
『分かったよ……。心配すんな』
若干不安は残るが、ひとまずグリゼルを信じることにして紫音はグリゼルたちとの念話を切った。
「なんだか暗い顔をしているわね。……向こうはそんなにひどい状況なの?」
浮かない顔をしている紫音を見て、フィリアは小首を傾げながら問いかけてきた。
「途中まではそんなにだったんだが……グリゼルの奴がな……」
その後紫音は、向こうでなにが起きているのか、これまでの経緯を踏まえてフィリアたちに話していく。
「……まあ、伯父様ならやりそうね。簡単に死ぬような人でもないし、ほっといてもそのうち解決するでしょう。それよりも、海賊を味方につけたのよね? そいつらって、使えるの?」
幼いころからグリゼルのことを知っているせいか、特に心配する素振りも見せず、すぐさま別の話へと話題を移していく。
「残念ながら海賊界隈について明るくないから、使えるかどうかはわからないけど、ディアナの話によると相手はバームドレーク海賊団らしいぞ」
「バームドレーク海賊団!?」
海賊の名前を出した途端、エリオットは驚いたように声を上げる。
「……? エリオットさん、知っているんですか?」
「ああ、まあな。海に生きる種族として海賊については私自身、ある程度把握しているのだが、バームドレーク海賊団。この海賊団は昔からある海賊団で、実力も折り紙付きだ」
「へえ、エリオットさんがそう言うなら、よっぽどなんでしょうね」
「……ただ、初代船長が率いていた時代と比べてしまうと、少々劣ってしまうのだが、それでも海賊の中では群を抜いているはずだ」
申し分ない実力を持っているとのことで、ひとまず心強い協力者が増え、紫音はそっと笑みを浮かべた。
「どうせなら呪いも解けたことだし、シェイレーンさんも協力してくれたら嬉しいんですけど……やっぱりダメですかね」
「おい、シオン殿! それは不敬だぞ!」
「落ち着きなさい、我が眷属よ。……人の子よ、そなたの言い分はもっともだ。私自身、このままでは腹の虫も収まらないゆえ、一致報いたいとも考えている。……だが残念ながら、それは叶わないだろう」
少し残念そうに顔を曇らせながら紫音の提案を断った。
「もしかして、ここから出られないからそう言っているのか?」
「ええ、その通りです。私は遥か昔、勇者と名乗る連中の手により、この地に封じ込められてしまったのです。以来私は、籠の中の鳥のようにここから離れることができなくなってしまいました」
「勇者……? ああっ! そういえば最初、俺のことを勇者と勘違いして襲ってきたけど……それでか」
紫音はこの場所にたどり着いたときのことを思い出し、ようやく合点がいった。
いまの話を聞く限り、シェイレーンは勇者に対して相当の恨みを抱いているようだ。どのような理由で紫音を勇者と勘違いしたのかはまだ分からないが、目の前に勇者が姿を見せればあれほど激怒するのも無理はない。
「その節は申し訳なかった。呪いのせいというのもあるが、そなたからは勇者と似た気配を感じて恥ずかしながら勘違いしてしまった」
(たぶん、その勇者から感じていた異世界の気配が俺と重なってしまったんだろうな)
そう考えると、紫音はとんだとばっちりを受けたうえ、勇者のせいで殺されかけたとも言える。
なんとも理不尽な出来事になんだか無性に腹が立ってきた。
「……でも、なんで勇者はシェイレーンさんを封印しようとしたんだ?」
「おそらくだけど、神龍族が大戦に出てこないようにするための工作だったんでしょうね。当時はまだ、神龍族の数も多かっただろうし、少しでも戦力を削りたかったのかもしれないわね」
「……ええ。ここに来た勇者も似たようなことを言っていました。すでに私と同じような目に遭わせた同族もいるとも自慢していましたね」
「その封印というのは、シェイレーンさんでも解けないのですか?」
「そうですね……。私もこの地に封じられてからというもの、幾度となく解決策を模索していましたが、どれも失敗に終わってしまいました」
「そう……でしたか……」
紫音たちの手でどうにかしてあげたい気持ちもあったのだが、どうやら難しいようだ。
「ですが、悪いことばかりでもありませんでした。新しく眷属を生み出す能力を得たことや遠隔で能力を発動することもできました。……そして、人魚族と出会えたことも私にとってはなによりの幸運でした」
「幸運……ですか?」
「ええ。私はここから動けないのでどうしても外界の動きについてはまったく把握できない状況でした。そんな中、人魚族と偶然出会い、私の能力を与え、眷属とすることで外界について知ることができるようになりました」
永い間、この地に閉じ込められたシェイレーンからしてみれば、この上なく喜ばしいことだったのだろう。
退屈な毎日と一人だったときが続く中で人魚族と出会えたのはまさしく幸運と言える。
「その話については父上から聞いたことがある。大戦に敗北した人魚族は、長い期間を経て種族としての力も衰え、海底に隠れるように暮らしていたそうです」
シェイレーンの話を補足するようにエリオットは話を続ける。
「当時の国王――つまり私の祖先はこの状況を憂い、外に解決策を求めたところ偶然にも海龍神様と遭遇したそうです」
「……本当に偶然なんですか……それ?」
なんともご都合主義な展開に紫音は疑いの眼差しを向ける。
「疑っているところ悪いが、本当に偶然のようだ。私もそのときはシオン殿と同じように疑っていたが、父上に『偶然』だと言い切られてしまってな……」
「そうだったんですね……」
「それで、海龍神様に会った私の祖先が交渉した結果、海龍神様の能力の一端を貸し出すと同時に私たちは海龍神様の眷属となり、前以上の力を得たというわけだ」
人魚族がいまの地位に上がるまでの経緯をエリオットの口から聞いた後、フィリアがそこに口を挟んできた。
「シェイレーン様って案外お人好しなんですね。竜人族には利己的な奴らが多いのでてっきり神龍族もそうなのだと思ってたのですが……まさか自分の能力を与えるなんて思いもよりませんでしたよ」
「他の同族については知りませんが、少なくとも私の場合は、孤独だった時期も長く常日頃から誰かと交流したいという気持ちも強くあったので、それで人魚族を眷属にしようと考えたのかもしれませんね」
(……ん?)
シェイレーンのことについて詳しく知ったところで、紫音のもとにディアナからの念話が送られてきた。
「みんな、ディアナから念話が来た。もしかしたら、向こうのいざこざが終わったのかもしれない」
事前にそう言ってから紫音はディアナからの念話に応答する。
『ディアナ、どうした? なにかあったか?』
『シオン、朗報じゃ。先ほどデュークの目が覚めて、すぐにこの場を収めてくれた』
『本当か! ……それで、お前たちのほうはケガとかはないよな?』
『心配する出ない。儂らもそうやわではないのでな。ピンピンしておるわ。それでシオン、さっそくデュークの奴がお主らと話をしたいと申しておってな。今大丈夫か?』
『ああ、ちょっと待ってくれ』
紫音はフィリアたちにも状況を伝え、確認を取ってからディアナとの念話を再開する
『こっちは大丈夫だ。すぐに始めてくれ』
『了解した。しかしこのままじゃと、デュークとの会話もままならないことじゃし、こっちで改めて連絡するから少し待ってくれ』
いま使用しているのは、紫音と契約した者同士でしか使えない念話のため別の連絡手段でデュークとの話を進めるようだ。
少しすると、紫音の目の前に突然画面のようなものが現れる。
「――っ!? びっくりした……」
「なにこれ……? ディアナったらいつの間にかこんな魔法を……」
『あー、あー。シオン、こっちの音声と映像は届いておるか?』
画面の中からディアナの姿が現れる。
「ああ、聞こえているし、見えてもいるよ。……それにしても、こんな連絡手段を持っていたとはな。まったく知らなかったぞ」
『最近、覚えたものでな。言い忘れておったわ』
「まあ、この話は後にして。本題に移ろうか」
『そうじゃったな。今呼んでくる』
デュークを呼びに行ったのか、少しの間、画面の中からディアナの姿が消える。
それから数分ほどでディアナが戻ってきて、グリゼルとヨシツグ、そして見知らぬ男が画面の中に現れる。
『よう、マスター。そっちもうまくいったようだな』
「ヨシツグとグリゼルも無事なようだな。……それと」
シオンは画面の端に移っている男に視線を向ける。
『初めましてだな。俺はバームドレーク海賊団の船長をやらしてもらっているデュークってもんだ』
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