1 / 2
第一章 光圀町と血の結界
しおりを挟む光圀町。この地に住む者なら誰しもが耳にしたことのある言葉がある。
「厄災は神の怒り。祈りと血で鎮めよ」
私の生まれ育った宗田神社は、代々神を鎮める役目を担ってきた直系の宮司の家系だ。洋服よりも白と赤の巫女装束に馴染み、畳の香りの中で祝詞を覚えながら育った。祖母はこの土地における“最後の巫女”と称される存在で、私の師匠でもある。
けれど、その祖母は今年の三月、床に伏した。転倒による入院。いったん落ち着いたかに見えたが、五月に入って昏睡状態となる。
「今年、鵺が来る」
そう言い残したきり、祖母は目を覚ましていない。
この町では、厄災は突然現れない。山が鳴き、犬が吠え、海がざわつく。自然の声を聞き取ることが、私たちの役目だった。
祖母の代わりに私がその役を引き継いでから早二ヶ月、異常はなかった。けれど今日、それは来た。
高校の教室で、突然全身を貫く瘴気に気づいた。本能が危険を告げ、呼吸が乱れた。先生が早退を勧めてくれたのは幸運だった。私は制服のまま神社に駆け戻る。着替えもそこそこに、叔父と協会の担当に連絡し、迎えの車に飛び乗った。
辿り着いたその場所には…巨大な蛇が鎮座していた。
地鳴りのような唸り。逃げ遅れた人々への避難勧告が出される中、私は装束を正し、短刀を抜いた。
巫女の力は祈りだけではない。血を捧げて呼ぶ霊獣――私は自らの手首を斬り、和紙に血を滴らせ、狐を召喚する。
赤い光とともに現れた一匹目の白狐が蛇に噛みついた。しかし、それだけでは抑えきれない。
二度目の召喚のため、更に深く短刀を入れる。痛みに耐え、和紙を染める。血が尽きる前に、二匹目の狐を呼ぶ。
だが、蛇は強すぎた。咆哮とともに一匹目の狐が霧散し、私の身体も地に叩きつけられる。
それでも――退くわけにはいかない。
祖母が守ってきたこの町を。
祖母が託してくれたこの使命を。
私は、祈り続ける。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる