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一章(進行中)
血
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俺の両親は鬼に殺された──。
死んだ2人の顔が思い出せないくらい、遠い日の話──
幸い、当時近くで任務にあたっていた陰陽師に助けられ、俺と兄は死なずに済んだ。
その後──妖によって親を失った俺たちは、陰陽寮が管理する施設に入れられた。
少しして、
「晴翔、俺は陰陽師になる。父さんと母さんを殺した奴らを、一匹残らず狩りつくす──!」
そう言い残して、兄は俺を置いて施設を出ていった。
兄の訃報を聞いたのは──
それから1年後のことだった。
待ってる時間というのは、どうも苦手だ。
無駄な時間を過ごしてると、どうしても当時のことを思い出す……。
我ながら未練がましい。
携帯の着信がなる──
ようやくか。
「誰から?」
「射之上だ」
画面を見ずに電話に出た俺に、神室はいぶかしげな目線を向ける。
この電話が来ることは、既にわかっていた。
昨晩、この件に『萬物語』が絡み、奴らが『玉藻前』を探していて、尚且つ、まだ見つかっていないと判明した時点で、現場に痕跡があろうがなかろうが、現在いる場所の特定ができないことは明白だった。
考えるまでもなく、『萬物語』の連中も躍起になって捜索していることだろう。
組織の規模が正確にわかっていないが、全国各地から、被害が寄せられている百鬼夜行だ。
俺達とは、比にならない数のはず──
もし互いに手掛かりがなく、闇雲に探すことになれば、奴らに軍配が上がるのは、自明の理──
「そうか……わかった。場所を送れ──現地で落ち合う」
「なんて?」
「樋口紅葉が失踪したそうだ」
「はぁぁ!?」
神室は、驚愕とも、怒号ともとれるような大声を上げる。
声がデカイ……。
「──少し落ち着け」
「いや、落ち着けじゃないわよ!逆になんでそんなに落ち着いてるわけ!?」
こいつがここまで他人を心配するとは──
よほど樋口を気に入ったようだな……。
「こうなることは、予め予想していたからな」
「えっ、なに?全然話が見えないんだけど……」
「移動しながら話す」
当初の予定では、通常通り、痕跡を頼りに捜索する予定だったが、萬物語の登場により、それは困難になった。
奴は──
安倍宗次郎は、事前にこうなるとわかっていたのだろう。
でなければあの時──
「彼女、『樋口紅葉』は、『玉藻前の子孫』だ」
………………。
「は?」
「聞こえなかったかい?『樋口紅葉』の体には、妖──『玉藻前』の血が流れている」
「いや聞こえてますよ……聞こえてますけど……」
「まぁ、納得できないのも無理はない。彼女の存在は、過去に妖と交わった人間がいることの証明だからね」
「つまりこいつは、半人半妖──いや、900年も経ってるんだ。いくら子孫だとしても血なんて……」
そうだ。例え900年前に、半人半妖の人間が居たとしても、何世代経ってると思ってんだ。
「私の祖先、陰陽師の祖である『安倍晴明』が提唱した仮設によれば、一度人間に発現した妖の特徴は、世代をまたぎ、未来永劫残り続けるそうだ」
「未来永劫?何を根拠に、そんな馬鹿なことを……」
「何をって、現に我々は、陰陽術を使えているじゃないか」
「──は?」
なんのことだ……?
「おっと、これは失言だった。忘れてくれ」
今の話と陰陽術に、一体なんの関係性が──
「話を戻そう。以前から何度か、彼女──樋口紅葉と言葉を交わしたが、自身の血筋、体質に疑問を持ちつつも、それが妖に由来するものだとは自認していない。しかし、殺生石の封印が解けたと予想される時点から、氣の扱いが飛躍的に向上している点を鑑みるに、仮に君たちが、玉藻前へのアクセスが困難になった場合、樋口紅葉を利用することで、彼女と君たちを繋ぐパイプになりえるだろう」
利用するか……。
一般人を……。
「他には居ないんですか?」
「──?」
「玉藻前の子孫──さっきの言い分だと、陰陽寮は、把握してるんですよね。もし、俺たち陰陽師の中に1人でも居れば──」
「残念ながら現状、玉藻前の子孫は、彼女一人しか居ない」
当然か……。
仮に陰陽師の中に子孫が居れば、そもそもうちの隊にこの任務が割り当てられることはない。
俺は、何を無駄なこと……。
「一般人を巻き込みたくないかい?だが、我々の仕事にそれは付き物だ。それに彼女はもう一般人じゃない。自分の意思で、陰陽師になると言い出してきたんだ。我々は来るものを拒まない。理由はどうであれ、妖を滅するという目的の元集う。その点で言えば、彼女はもう立派な陰陽師だ」
「それは詭弁だ……」
「詭弁で結構。理由なんてどうせ、後から付いてくる。何かをするに当たり、1番大事なのは、あれこれ考えるより、まずやることだろう」
「違う!俺が言いたいのは、ついこの間まで一般人だったようなヤツを妖を吊るための餌のようにすることを──」
「小鳥遊隊長──我々は正義の味方ではない。我々は陰陽師であり、その本分は、妖の根絶。それに、彼女の意思は本物だよ。幼少期に両親を妖に殺され、育ての親となった陰陽師も、同一の妖によって命を奪われてる。陰陽師になる動機としては充分だ」
妖に、両親を──。
そうだ。
妖を根絶すること。
それだけが──
俺たちのような人間を生み出さずに済む、唯一の方法なんだ。
そのためなら、俺は……。
「──って、紅葉ちゃんを囮にしたってこと!?」
「囮……まぁ、その側面も確かにある。しかし、玉藻前が、樋口紅葉の存在を感知し、接触してくるかどうかはわからない。どちらかと言えば──その逆。俺たちの中で、玉藻前の居場所を見つけることが出来る可能性があるなら、それは、樋口紅葉以外には居ないと思っていた」
そのため、あらかじめ射之上には、樋口が単独行動をするよう誘導させた。
とはいえ、何の確証もなかった。
言うなれば切り札──
リスクは往々にあるが、他に手立てがない以上、切らざるを得ない最後の手段。
射之上の術による発信機が指し示す、樋口の現在地はこの辺り──
殺生石からおよそ30キロほど離れた人気のない森の中……。
一般人ほどの身体能力しかない樋口の足で、数分程度でここまで離れた位置までこれたことを踏まえると、未知の妖が絡んでいるのは、もはや疑いようがない。
「あ、射之上!」
「お二人ともご苦労様です。樋口さんの反応は、この神社の中です」
木々の中に立つ──古い朱色の鳥居。
そして──
人除けの結界……。
「アンタは紅葉ちゃんが玉藻前の子孫だって知ってたわけ?」
「ええ、まぁ。事前に、隊長から聞かされていましたから……」
「アタシだけハブだったってこと!?」
口の軽いお前に言うと、ボロが出る可能性があったからな……。
「で、どうだ?中の氣の様子は」
「恐らくですが、この結界に、神社内の氣を外部に悟られないようにする効果があると思われます。僕の術によって、樋口さんのバイタルは確認できますが、氣の探知はできていない状態です」
樋口が失踪したと連絡を受けてから、俺たちがここに来るまで、およそ30分。
それだけの間、樋口が妖と二人きりと考えると、あまり好戦的ではないように思えるが……。
とにかく、これでようやく一安心か。
だが──
ここからだ。
「射之上はここに残って見張りを──それと、もしもの時は援護を頼む」
「了解しました」
「行くぞ神室」
「結局どうするわけ?紅葉ちゃんが中で生きてるってことは、人間に友好的な妖なんじゃ──」
「神室……」
ブレるな。
目の前の一人を助けることが、最善であるとは限らない。
俺は──
俺達は──
「俺達は──陰陽師だ」
「……わかったわ」
「「「──っ!?」」」
鳥居をくぐった瞬間──
背筋が凍りつきそうになる。
「な、なんなの……このバカでかい氣、こんなのついさっきまで──」
「わかりません、完全に規格外です!ですがはっきり言えるのは、これは明らかな負の感情による──隊長!?」
参道を駆け抜け、氣の出処へ一直線に向かう。
樋口──
無事で居てくれ──!
2つ目の鳥居の先に、本殿らしき建物が見える。
樋口──!
建物の近くに、彼女と、その傍で少女が横たわっている。
「そいつから離れろ」
外見的特徴から見て、写真の少女──『玉藻前』か。
陰陽術──『黒炎尽』
簡易的に術を発動できるよう作られた札──『霊符』から氣を纏わせた刀を引き抜く。
「小鳥遊……隊長──!?」
「そいつは妖だ。陰陽師の名の元──ここで滅する」
「ちょっと待ってください隊長!この子は──」
「紅葉ちゃん無事!?」
息を切らしながら、後から神室が樋口へ駆け寄る。
「私は大丈夫です。聞いてください、この子は!」
「玉藻前でしょ、皆わかってるわよ」
樋口、奴をかばっているのか……。
血の繋がりに気が付いたのか、もしくは、妖に言いくるめられたか。
どちらにせよ、やはりこの作戦は樋口への負担が大きすぎた。
もっと、何かやりようがあったのかもしれない……。
しかし俺では、一晩中考えを巡らせても、これ以外に萬物語を出し抜く方法が思いつかなかった。
…………。
いや。
フィードバックは後だ。
今はただ──
己に課せられた任務を全うしろ、小鳥遊晴翔!
「別に殺されてやってもいいんじゃがのう、生憎と──痛いのは嫌いなのでな」
そう言って妖は、はだけた胸元から、1枚の札を取りだす。
間違いない。あれは霊符だ。
だが、なぜ妖がそんなものを……?
──まさか!?
札はたちまち姿を変え、一振りの刀と、それを収めるための鞘を形作る。
「霊符を用いた陰陽術……!」
「起きよ、『切月下』。およそ900年ぶりの食事の時間じゃ」
彼女は、鞘から刀をゆっくりと引き抜く。
「わしの八つ当たりに付き合って貰うぞ小僧」
『切月下』──聞いたことのない名だ。
だが、恐らくあの刀の名だろう。
妖刀──そう考えるべきだ。
一度抜いた刀身を、鞘に重ねるような、独特な構え──
右半身を狙ってくれと言わんばかりだな。
現状、奴の妖術に関する情報はない。
……いいだろう。
誘いに乗ってやる。
地面を蹴り、一呼吸のうちに間合いを詰める。
狙うは腹部──『丹田』を一撃で破壊する!
がら空きの右半身に向け、横薙ぎに刀を振るう。
対し奴は、刀を合わせるどころか──
その逆。
身体をひねり、背中を見せる。
何やってんだこいつ!?
そう思ったのも束の間──
弧を描いた尻尾が、遠心力を使ってこちらに向かってくる。
尻尾による打撃。
あの構えは、この攻撃を悟られないようにするための布石……。
それなら──
「射之上!」
後方から、風切り音と共に、木の根でできた矢が尻尾を打ち抜く。
陰陽術──『乾坤一擲』
完璧なタイミングだ。
矢と接触した尻尾は、後方に大きく仰け反る。
あの術で貫通ない辺りかなりの氣が纏われていたのだろう。
しかし、これで障害はなくなった。
断ち斬る──!
勢いを殺すことなく刀を水平に振りぬく。
奴自身は、ひねった身体をそのまま、左足を軸に、半時計回りに回転していた。
仰け反った尻尾と、振り乱れた長い髪に視界を遮られてはいるが、わずかな隙間から、左腕の肘に力が入っているのがわかる。
鞘で受けるつもりか?
如何に妖の力と言っても無謀──!?
振りぬいた刀は、勢いを殺され、奴の刀と相打ち、火花を散らす。
こちらに背中を向けたあの一瞬──
視線を尻尾に集中させた隙に、刀と鞘の持つ手を入れ替えたのか──!
こいつ、バトルセンスが並じゃねぇ!
「──だが、避けるのではなく、刀で受ける選択をしたのは、《《お前の失態だ》》」
「ほう……」
陰陽術──『黒炎尽』
刀身を通して出力される俺の氣は、空気に触れると同時に黒い炎へと変化する。
炎はあらゆる物を伝い、対象を燃やし尽くすまで消えることはない。
つまり──
俺の刀は防ぐことができない。
炎は奴の刀に移った。
今すぐにでもその得物を投げ捨てなければ、直に身体に引火するが、俺の刀を止めているそれを捨てれば……。
詰みだ──玉藻前。
「喰らえ、『切月下』」
「──なにっ!?」
炎が、奴の刀を包んでいた炎が消えていく──!?
いや違う!刀──奴の妖刀が、俺の炎を喰ってやがる──!
「よそ見か?ちゃんばら小僧」
しまっ──
「ぐっ!」
鞘で足を払われ、後方へ蹴り飛ばされた。
「隊長!?」
「この刀は、触れた物の氣を喰らい、自身の切れ味を増す──まさしく妖刀じゃ」
「触れた物の氣を喰らう、だと……」
「そう。元々は、わしら妖を斬るために作られた刀でのう。妖術は勿論、肉体が氣で構成されておるわしら妖にとっては、これほど脅威な代物はない。月の下──すなわち、夜を切る刀それが、この『切月下』の名の由来じゃ」
「元の持ち主は陰陽師か?なんにせよ、そんな刀を妖が持っているということは、そいつはもうこの世にいないのだろうがな……」
「そうじゃな。この世にはもうおらん……」
「お前が殺したのか」
「……違うと言って、うぬはそれを信じるのかのう?」
「──違いないな」
再び懐へ切り込む。
注意すべき攻撃は主に4つ。
こちらの氣を喰らう妖刀、変則的な挙動でこちらを狙う尾、その二つの後隙を消すように来る鞘による打撃と、出の速い蹴り……。
おまけに的が小さく、よく動くときた。
「この刀は譲り受けたものじゃ。この剣技と共にな!」
「──っ、妖の言葉に耳を貸すつもりはない」
「じゃろうな!人間はそうやって、己に都合の良いものしか見聞きしようとせん!故に貴様らは信用できんのじゃ!」
「妖が信用とは、笑えん冗談だな」
互いの刀が激しくぶつかり、火花が散る。
単純な力比べ──鍔迫り合いなら、こちらが有利──
しかし、そうはさせまいと、間髪入れずに尾と鞘による追撃が迫る。
両方を避けるには、後方へ退くしかない。
後方からの射之上のサポート込みで、ようやく互角に打ち合えているが……。
攻め手に欠ける……。
持久戦じゃ妖に敵うはずもない。
早いところ、突破口を見つけなければ──
「もうよかろう……」
──?
なんだいきなり。
「主らの力量は大体わかった。わしが封印される前に見てきた人間は、誰も彼も、本当に人間か疑いたくなるような輩ばかりじゃったが、主らはそうではない。長生きの秘訣は、引き際を見極めることじゃ」
「ずいぶんと上から言ってくれるな……。確かに俺達は、お前が知っているような歴史に名を残すような陰陽師たちとは違うかもしれない。しかしそんな俺達でも、妖を根絶するために、この身を厭わず戦いに臨んでいる。見くびるな。引き際かどうかくらい、自分で判断する」
「そう気負うな。何も主らが力不足だと言って居るわけではない。寧ろ、人間としてはよくやっておる。多くの鍛錬を積んできたことじゃろう。わしが言いたいのは、そんな者が、こんな無意味な戦いで命を落とすべきではないと言っておるんじゃ」
「無意味だと……?」
「そうじゃ。どちらにせよ、わしはもうじき──」
「ふざけるな」
確かにこいつの言う通りかもしれない。
今の俺達では、こいつを滅するのは難しいかもしれない。
だが、この戦いが──陰陽師としての行いが無意味だと……?
「ならばなぜ、俺の家族は死ななければならなかったんだ!俺の家族は、全員お前たち妖に殺された!この死に意味を持たせられるのは、生き残った俺だけだ!俺が、妖を根絶し、あの悲劇を繰り返させないようにすることでしか、俺が彼らに報いる方法はないんだ!それをお前は、無意味だと言うのか!?」
「隊長……」
脳裏に、あの時の出来事がフラッシュバックする。
父さんは俺と母さんを逃がすために立ち向かっていった。
自分より大きなガタイの鬼に、素手で……。
母さんは俺を押し入れに隠すため、わざと自分に注意を引き付けた。
二人の断末魔は、今でも耳にこびりついている。
生きながらに腸を食われたんだ。
恐ろしかっただろう。
痛かっただろう。
それでも──
俺を庇って、俺を生かしてくれた。
俺が今生きているのは二人のおかげだ。
妖から救ってもらったこの命を、妖を滅することに使う。
無意味なんかじゃない。
「……失礼した。先ほどの発言は撤回する。それほどの覚悟があるのならば、わしも、全力をもって応えるとしよう」
目付きが変わった。
ここからが──
奴の──本気。
妖術か、それとも接近戦──っ!?
真正面から勢いよく刀が投擲される。
間一髪、反射で身体が動き、頬をかすめ、刀は背後へと飛んでいく。
紙一重だった。
──なに!?
視線を前に戻すと、すでに奴の姿はなかった。
奴は、どこへ?
そう思った瞬間──
「隊長!後ろ!」
神室の声が聞こえたとき、既に奴は背後にいた。
こいつ、投げた刀を、先回りしやがったのか……!
クソっ──!
「「──っ!」」
玉藻前の斬撃が、止まった──。
いや。
樋口が止めた。
樋口が俺達の間に割って入り、玉藻前は彼女に刀が当たる寸前で、動きを止めた。
「二人とも、もうやめて……」
震えた声で、樋口はそう懇願した。
「樋口……」
「この子は、間に入った私を切らなかった。これでもう充分でしょ?隊長」
そう言って樋口は目の前の少女を強く抱きしめた。
あの時の、母さんのように……。
俺達は、自然と刀を収めた。
「美甘……」
そう言い残して、玉藻前は樋口の胸のなかで、静かに眠りについた。
少しして、神室と射之上が駆け寄ってきた。
「ちょっと大丈夫!?相変わらず無茶するわねアンタ」
「神室さん、いや、なんというか、身体が勝手に……」
「勝手に……ってもうちょっとで真っ二つだったわよ?」
「なんていうか、この子は止めてくれるって、信じてたんです」
樋口、彼女に救われるとはな……。
「隊長も、ご無事ですか?」
「ああ。取り乱して悪かった」
「気にしないでください」
「で、どうすんのよ隊長、この子……」
どうする、か。
…………。
「樋口、少しの間、そいつをお前に預けていいか?今の俺は冷静じゃない。正しい判断は、下せそうにない」
「……わかりました」
「おやおや、参拝客とは珍しいですね」
鳥居をくぐり、一人の男が現れる。
入口には人除けの結界が貼ってあったはず……。
何者だ──?
「アナタは?」
「これはこれは、申し遅れました。私は、この神社の宮司を務めさせていただいております『伊吹甘人』と申します」
死んだ2人の顔が思い出せないくらい、遠い日の話──
幸い、当時近くで任務にあたっていた陰陽師に助けられ、俺と兄は死なずに済んだ。
その後──妖によって親を失った俺たちは、陰陽寮が管理する施設に入れられた。
少しして、
「晴翔、俺は陰陽師になる。父さんと母さんを殺した奴らを、一匹残らず狩りつくす──!」
そう言い残して、兄は俺を置いて施設を出ていった。
兄の訃報を聞いたのは──
それから1年後のことだった。
待ってる時間というのは、どうも苦手だ。
無駄な時間を過ごしてると、どうしても当時のことを思い出す……。
我ながら未練がましい。
携帯の着信がなる──
ようやくか。
「誰から?」
「射之上だ」
画面を見ずに電話に出た俺に、神室はいぶかしげな目線を向ける。
この電話が来ることは、既にわかっていた。
昨晩、この件に『萬物語』が絡み、奴らが『玉藻前』を探していて、尚且つ、まだ見つかっていないと判明した時点で、現場に痕跡があろうがなかろうが、現在いる場所の特定ができないことは明白だった。
考えるまでもなく、『萬物語』の連中も躍起になって捜索していることだろう。
組織の規模が正確にわかっていないが、全国各地から、被害が寄せられている百鬼夜行だ。
俺達とは、比にならない数のはず──
もし互いに手掛かりがなく、闇雲に探すことになれば、奴らに軍配が上がるのは、自明の理──
「そうか……わかった。場所を送れ──現地で落ち合う」
「なんて?」
「樋口紅葉が失踪したそうだ」
「はぁぁ!?」
神室は、驚愕とも、怒号ともとれるような大声を上げる。
声がデカイ……。
「──少し落ち着け」
「いや、落ち着けじゃないわよ!逆になんでそんなに落ち着いてるわけ!?」
こいつがここまで他人を心配するとは──
よほど樋口を気に入ったようだな……。
「こうなることは、予め予想していたからな」
「えっ、なに?全然話が見えないんだけど……」
「移動しながら話す」
当初の予定では、通常通り、痕跡を頼りに捜索する予定だったが、萬物語の登場により、それは困難になった。
奴は──
安倍宗次郎は、事前にこうなるとわかっていたのだろう。
でなければあの時──
「彼女、『樋口紅葉』は、『玉藻前の子孫』だ」
………………。
「は?」
「聞こえなかったかい?『樋口紅葉』の体には、妖──『玉藻前』の血が流れている」
「いや聞こえてますよ……聞こえてますけど……」
「まぁ、納得できないのも無理はない。彼女の存在は、過去に妖と交わった人間がいることの証明だからね」
「つまりこいつは、半人半妖──いや、900年も経ってるんだ。いくら子孫だとしても血なんて……」
そうだ。例え900年前に、半人半妖の人間が居たとしても、何世代経ってると思ってんだ。
「私の祖先、陰陽師の祖である『安倍晴明』が提唱した仮設によれば、一度人間に発現した妖の特徴は、世代をまたぎ、未来永劫残り続けるそうだ」
「未来永劫?何を根拠に、そんな馬鹿なことを……」
「何をって、現に我々は、陰陽術を使えているじゃないか」
「──は?」
なんのことだ……?
「おっと、これは失言だった。忘れてくれ」
今の話と陰陽術に、一体なんの関係性が──
「話を戻そう。以前から何度か、彼女──樋口紅葉と言葉を交わしたが、自身の血筋、体質に疑問を持ちつつも、それが妖に由来するものだとは自認していない。しかし、殺生石の封印が解けたと予想される時点から、氣の扱いが飛躍的に向上している点を鑑みるに、仮に君たちが、玉藻前へのアクセスが困難になった場合、樋口紅葉を利用することで、彼女と君たちを繋ぐパイプになりえるだろう」
利用するか……。
一般人を……。
「他には居ないんですか?」
「──?」
「玉藻前の子孫──さっきの言い分だと、陰陽寮は、把握してるんですよね。もし、俺たち陰陽師の中に1人でも居れば──」
「残念ながら現状、玉藻前の子孫は、彼女一人しか居ない」
当然か……。
仮に陰陽師の中に子孫が居れば、そもそもうちの隊にこの任務が割り当てられることはない。
俺は、何を無駄なこと……。
「一般人を巻き込みたくないかい?だが、我々の仕事にそれは付き物だ。それに彼女はもう一般人じゃない。自分の意思で、陰陽師になると言い出してきたんだ。我々は来るものを拒まない。理由はどうであれ、妖を滅するという目的の元集う。その点で言えば、彼女はもう立派な陰陽師だ」
「それは詭弁だ……」
「詭弁で結構。理由なんてどうせ、後から付いてくる。何かをするに当たり、1番大事なのは、あれこれ考えるより、まずやることだろう」
「違う!俺が言いたいのは、ついこの間まで一般人だったようなヤツを妖を吊るための餌のようにすることを──」
「小鳥遊隊長──我々は正義の味方ではない。我々は陰陽師であり、その本分は、妖の根絶。それに、彼女の意思は本物だよ。幼少期に両親を妖に殺され、育ての親となった陰陽師も、同一の妖によって命を奪われてる。陰陽師になる動機としては充分だ」
妖に、両親を──。
そうだ。
妖を根絶すること。
それだけが──
俺たちのような人間を生み出さずに済む、唯一の方法なんだ。
そのためなら、俺は……。
「──って、紅葉ちゃんを囮にしたってこと!?」
「囮……まぁ、その側面も確かにある。しかし、玉藻前が、樋口紅葉の存在を感知し、接触してくるかどうかはわからない。どちらかと言えば──その逆。俺たちの中で、玉藻前の居場所を見つけることが出来る可能性があるなら、それは、樋口紅葉以外には居ないと思っていた」
そのため、あらかじめ射之上には、樋口が単独行動をするよう誘導させた。
とはいえ、何の確証もなかった。
言うなれば切り札──
リスクは往々にあるが、他に手立てがない以上、切らざるを得ない最後の手段。
射之上の術による発信機が指し示す、樋口の現在地はこの辺り──
殺生石からおよそ30キロほど離れた人気のない森の中……。
一般人ほどの身体能力しかない樋口の足で、数分程度でここまで離れた位置までこれたことを踏まえると、未知の妖が絡んでいるのは、もはや疑いようがない。
「あ、射之上!」
「お二人ともご苦労様です。樋口さんの反応は、この神社の中です」
木々の中に立つ──古い朱色の鳥居。
そして──
人除けの結界……。
「アンタは紅葉ちゃんが玉藻前の子孫だって知ってたわけ?」
「ええ、まぁ。事前に、隊長から聞かされていましたから……」
「アタシだけハブだったってこと!?」
口の軽いお前に言うと、ボロが出る可能性があったからな……。
「で、どうだ?中の氣の様子は」
「恐らくですが、この結界に、神社内の氣を外部に悟られないようにする効果があると思われます。僕の術によって、樋口さんのバイタルは確認できますが、氣の探知はできていない状態です」
樋口が失踪したと連絡を受けてから、俺たちがここに来るまで、およそ30分。
それだけの間、樋口が妖と二人きりと考えると、あまり好戦的ではないように思えるが……。
とにかく、これでようやく一安心か。
だが──
ここからだ。
「射之上はここに残って見張りを──それと、もしもの時は援護を頼む」
「了解しました」
「行くぞ神室」
「結局どうするわけ?紅葉ちゃんが中で生きてるってことは、人間に友好的な妖なんじゃ──」
「神室……」
ブレるな。
目の前の一人を助けることが、最善であるとは限らない。
俺は──
俺達は──
「俺達は──陰陽師だ」
「……わかったわ」
「「「──っ!?」」」
鳥居をくぐった瞬間──
背筋が凍りつきそうになる。
「な、なんなの……このバカでかい氣、こんなのついさっきまで──」
「わかりません、完全に規格外です!ですがはっきり言えるのは、これは明らかな負の感情による──隊長!?」
参道を駆け抜け、氣の出処へ一直線に向かう。
樋口──
無事で居てくれ──!
2つ目の鳥居の先に、本殿らしき建物が見える。
樋口──!
建物の近くに、彼女と、その傍で少女が横たわっている。
「そいつから離れろ」
外見的特徴から見て、写真の少女──『玉藻前』か。
陰陽術──『黒炎尽』
簡易的に術を発動できるよう作られた札──『霊符』から氣を纏わせた刀を引き抜く。
「小鳥遊……隊長──!?」
「そいつは妖だ。陰陽師の名の元──ここで滅する」
「ちょっと待ってください隊長!この子は──」
「紅葉ちゃん無事!?」
息を切らしながら、後から神室が樋口へ駆け寄る。
「私は大丈夫です。聞いてください、この子は!」
「玉藻前でしょ、皆わかってるわよ」
樋口、奴をかばっているのか……。
血の繋がりに気が付いたのか、もしくは、妖に言いくるめられたか。
どちらにせよ、やはりこの作戦は樋口への負担が大きすぎた。
もっと、何かやりようがあったのかもしれない……。
しかし俺では、一晩中考えを巡らせても、これ以外に萬物語を出し抜く方法が思いつかなかった。
…………。
いや。
フィードバックは後だ。
今はただ──
己に課せられた任務を全うしろ、小鳥遊晴翔!
「別に殺されてやってもいいんじゃがのう、生憎と──痛いのは嫌いなのでな」
そう言って妖は、はだけた胸元から、1枚の札を取りだす。
間違いない。あれは霊符だ。
だが、なぜ妖がそんなものを……?
──まさか!?
札はたちまち姿を変え、一振りの刀と、それを収めるための鞘を形作る。
「霊符を用いた陰陽術……!」
「起きよ、『切月下』。およそ900年ぶりの食事の時間じゃ」
彼女は、鞘から刀をゆっくりと引き抜く。
「わしの八つ当たりに付き合って貰うぞ小僧」
『切月下』──聞いたことのない名だ。
だが、恐らくあの刀の名だろう。
妖刀──そう考えるべきだ。
一度抜いた刀身を、鞘に重ねるような、独特な構え──
右半身を狙ってくれと言わんばかりだな。
現状、奴の妖術に関する情報はない。
……いいだろう。
誘いに乗ってやる。
地面を蹴り、一呼吸のうちに間合いを詰める。
狙うは腹部──『丹田』を一撃で破壊する!
がら空きの右半身に向け、横薙ぎに刀を振るう。
対し奴は、刀を合わせるどころか──
その逆。
身体をひねり、背中を見せる。
何やってんだこいつ!?
そう思ったのも束の間──
弧を描いた尻尾が、遠心力を使ってこちらに向かってくる。
尻尾による打撃。
あの構えは、この攻撃を悟られないようにするための布石……。
それなら──
「射之上!」
後方から、風切り音と共に、木の根でできた矢が尻尾を打ち抜く。
陰陽術──『乾坤一擲』
完璧なタイミングだ。
矢と接触した尻尾は、後方に大きく仰け反る。
あの術で貫通ない辺りかなりの氣が纏われていたのだろう。
しかし、これで障害はなくなった。
断ち斬る──!
勢いを殺すことなく刀を水平に振りぬく。
奴自身は、ひねった身体をそのまま、左足を軸に、半時計回りに回転していた。
仰け反った尻尾と、振り乱れた長い髪に視界を遮られてはいるが、わずかな隙間から、左腕の肘に力が入っているのがわかる。
鞘で受けるつもりか?
如何に妖の力と言っても無謀──!?
振りぬいた刀は、勢いを殺され、奴の刀と相打ち、火花を散らす。
こちらに背中を向けたあの一瞬──
視線を尻尾に集中させた隙に、刀と鞘の持つ手を入れ替えたのか──!
こいつ、バトルセンスが並じゃねぇ!
「──だが、避けるのではなく、刀で受ける選択をしたのは、《《お前の失態だ》》」
「ほう……」
陰陽術──『黒炎尽』
刀身を通して出力される俺の氣は、空気に触れると同時に黒い炎へと変化する。
炎はあらゆる物を伝い、対象を燃やし尽くすまで消えることはない。
つまり──
俺の刀は防ぐことができない。
炎は奴の刀に移った。
今すぐにでもその得物を投げ捨てなければ、直に身体に引火するが、俺の刀を止めているそれを捨てれば……。
詰みだ──玉藻前。
「喰らえ、『切月下』」
「──なにっ!?」
炎が、奴の刀を包んでいた炎が消えていく──!?
いや違う!刀──奴の妖刀が、俺の炎を喰ってやがる──!
「よそ見か?ちゃんばら小僧」
しまっ──
「ぐっ!」
鞘で足を払われ、後方へ蹴り飛ばされた。
「隊長!?」
「この刀は、触れた物の氣を喰らい、自身の切れ味を増す──まさしく妖刀じゃ」
「触れた物の氣を喰らう、だと……」
「そう。元々は、わしら妖を斬るために作られた刀でのう。妖術は勿論、肉体が氣で構成されておるわしら妖にとっては、これほど脅威な代物はない。月の下──すなわち、夜を切る刀それが、この『切月下』の名の由来じゃ」
「元の持ち主は陰陽師か?なんにせよ、そんな刀を妖が持っているということは、そいつはもうこの世にいないのだろうがな……」
「そうじゃな。この世にはもうおらん……」
「お前が殺したのか」
「……違うと言って、うぬはそれを信じるのかのう?」
「──違いないな」
再び懐へ切り込む。
注意すべき攻撃は主に4つ。
こちらの氣を喰らう妖刀、変則的な挙動でこちらを狙う尾、その二つの後隙を消すように来る鞘による打撃と、出の速い蹴り……。
おまけに的が小さく、よく動くときた。
「この刀は譲り受けたものじゃ。この剣技と共にな!」
「──っ、妖の言葉に耳を貸すつもりはない」
「じゃろうな!人間はそうやって、己に都合の良いものしか見聞きしようとせん!故に貴様らは信用できんのじゃ!」
「妖が信用とは、笑えん冗談だな」
互いの刀が激しくぶつかり、火花が散る。
単純な力比べ──鍔迫り合いなら、こちらが有利──
しかし、そうはさせまいと、間髪入れずに尾と鞘による追撃が迫る。
両方を避けるには、後方へ退くしかない。
後方からの射之上のサポート込みで、ようやく互角に打ち合えているが……。
攻め手に欠ける……。
持久戦じゃ妖に敵うはずもない。
早いところ、突破口を見つけなければ──
「もうよかろう……」
──?
なんだいきなり。
「主らの力量は大体わかった。わしが封印される前に見てきた人間は、誰も彼も、本当に人間か疑いたくなるような輩ばかりじゃったが、主らはそうではない。長生きの秘訣は、引き際を見極めることじゃ」
「ずいぶんと上から言ってくれるな……。確かに俺達は、お前が知っているような歴史に名を残すような陰陽師たちとは違うかもしれない。しかしそんな俺達でも、妖を根絶するために、この身を厭わず戦いに臨んでいる。見くびるな。引き際かどうかくらい、自分で判断する」
「そう気負うな。何も主らが力不足だと言って居るわけではない。寧ろ、人間としてはよくやっておる。多くの鍛錬を積んできたことじゃろう。わしが言いたいのは、そんな者が、こんな無意味な戦いで命を落とすべきではないと言っておるんじゃ」
「無意味だと……?」
「そうじゃ。どちらにせよ、わしはもうじき──」
「ふざけるな」
確かにこいつの言う通りかもしれない。
今の俺達では、こいつを滅するのは難しいかもしれない。
だが、この戦いが──陰陽師としての行いが無意味だと……?
「ならばなぜ、俺の家族は死ななければならなかったんだ!俺の家族は、全員お前たち妖に殺された!この死に意味を持たせられるのは、生き残った俺だけだ!俺が、妖を根絶し、あの悲劇を繰り返させないようにすることでしか、俺が彼らに報いる方法はないんだ!それをお前は、無意味だと言うのか!?」
「隊長……」
脳裏に、あの時の出来事がフラッシュバックする。
父さんは俺と母さんを逃がすために立ち向かっていった。
自分より大きなガタイの鬼に、素手で……。
母さんは俺を押し入れに隠すため、わざと自分に注意を引き付けた。
二人の断末魔は、今でも耳にこびりついている。
生きながらに腸を食われたんだ。
恐ろしかっただろう。
痛かっただろう。
それでも──
俺を庇って、俺を生かしてくれた。
俺が今生きているのは二人のおかげだ。
妖から救ってもらったこの命を、妖を滅することに使う。
無意味なんかじゃない。
「……失礼した。先ほどの発言は撤回する。それほどの覚悟があるのならば、わしも、全力をもって応えるとしよう」
目付きが変わった。
ここからが──
奴の──本気。
妖術か、それとも接近戦──っ!?
真正面から勢いよく刀が投擲される。
間一髪、反射で身体が動き、頬をかすめ、刀は背後へと飛んでいく。
紙一重だった。
──なに!?
視線を前に戻すと、すでに奴の姿はなかった。
奴は、どこへ?
そう思った瞬間──
「隊長!後ろ!」
神室の声が聞こえたとき、既に奴は背後にいた。
こいつ、投げた刀を、先回りしやがったのか……!
クソっ──!
「「──っ!」」
玉藻前の斬撃が、止まった──。
いや。
樋口が止めた。
樋口が俺達の間に割って入り、玉藻前は彼女に刀が当たる寸前で、動きを止めた。
「二人とも、もうやめて……」
震えた声で、樋口はそう懇願した。
「樋口……」
「この子は、間に入った私を切らなかった。これでもう充分でしょ?隊長」
そう言って樋口は目の前の少女を強く抱きしめた。
あの時の、母さんのように……。
俺達は、自然と刀を収めた。
「美甘……」
そう言い残して、玉藻前は樋口の胸のなかで、静かに眠りについた。
少しして、神室と射之上が駆け寄ってきた。
「ちょっと大丈夫!?相変わらず無茶するわねアンタ」
「神室さん、いや、なんというか、身体が勝手に……」
「勝手に……ってもうちょっとで真っ二つだったわよ?」
「なんていうか、この子は止めてくれるって、信じてたんです」
樋口、彼女に救われるとはな……。
「隊長も、ご無事ですか?」
「ああ。取り乱して悪かった」
「気にしないでください」
「で、どうすんのよ隊長、この子……」
どうする、か。
…………。
「樋口、少しの間、そいつをお前に預けていいか?今の俺は冷静じゃない。正しい判断は、下せそうにない」
「……わかりました」
「おやおや、参拝客とは珍しいですね」
鳥居をくぐり、一人の男が現れる。
入口には人除けの結界が貼ってあったはず……。
何者だ──?
「アナタは?」
「これはこれは、申し遅れました。私は、この神社の宮司を務めさせていただいております『伊吹甘人』と申します」
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