つらさが伝わらないつらさ――痩せ姫をめぐる備忘録

エフ=宝泉薫

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二の腕というものさし

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痩せ姫には「痩せているかどうか」を計る、ものさしのようなものがある。

体重や体脂肪率、ウエスト、太もものサイズといった数値はもとより、ジーンズのゆるさ、ベルトの穴の位置、骨の出方、座ったときの痛み、生理の有無、階段の昇り降りのつらさ、周囲の声や視線・・・などなど。
「二の腕を自分の手でつかめるかどうか」というのも、そのひとつだ。

たとえば、親指と中指(もしくは人差し指)で輪っかを作った場合、よほど手の大きい女性でない限り、その周囲の長さは15~19センチくらい。
その範囲内におさまる二の腕というのは、かなりの細さといえる。

僕の知り合いには、その輪っかに、腕がまったく触れないことを、目標にしてる人がいた。
当然、体重は20キロ台。
腕立て伏せをする力もなくなり、日常生活にも支障が生じていた。

ちなみに「命の腕輪」というものがある。
上腕周囲径測定帯とも呼ばれ、要は、二の腕の周囲を測る巻尺みたいなものだ。
痩せ姫のためのものではなく、アフリカなどで飢餓に苦しむ子供を救う目的で使われている。

どういうことかというと、帯の部分によって緑、黄、赤に色分けされていて、二の腕に巻いたとき、どの色の位置まで帯が締まるかで、栄養失調の有無や重篤度がわかる仕組みだ。

すなわち、12.5センチ以上が緑で「適切な栄養状態」を、12.5センチ未満11.5センチ以上が黄で「中くらいの栄養失調」を示し、さらに11.5センチ未満が赤で「重度の栄養失調」の判定になる。
これを紹介したテレビ番組では、赤のゾーンを「死期が近い」と説明していた。

なお、この基準は5歳以下の子供のためのもの。
中学生以上の女性であれば、この3~4割増しぐらいの数値になるはずだ。
つまり、二の腕が10センチ台前半というのは、アフリカなどで飢餓に苦しむ子供のレベルでもある。

ではなぜ、二の腕を計るのかといえば、測定しやすいということに加え、お腹や太ももなどに比べ、浮腫みが出にくい場所だからだろう。
あと、二の腕は、体の中でも、極端に細くするのが難しい部位だったりする。
それこそ、飢餓や摂食障害による低栄養にでもならない限り・・・

痩せの魅力(魔力)に取り憑かれてしまうと、そんな細さに憧れたり、それでないと安心できなくなったりするわけだ。
さらには、自分の手でつかめるような二の腕をしていても「細くない」「太い」と感じてしまう、というケースも珍しくない。

が、栄養失調の子供についていえば、赤や黄のゾーンだった場合、早急に、ピーナッツを主材料とするペースト状の栄養食などを使って、治療する。
痩せ姫が医療現場で、エンシュアなどの栄養剤を処方されるのも、治そうとする立場としては当然なのだろう。

また、俗に「女の細腕」などというけど、これは体力的な要素も含んだイメージ表現で、実際には、男女による太さの違いはそれほどないのでは。
ある程度、脂肪がついている分、ふっくらとして見えたりもするし、出産して、子供をいつも抱っこしてれば、筋肉もついてしまう。

そういえば、桐谷美玲が十代の頃、公表していた二の腕のサイズが17.4センチだった。
中学生以上の女性で、10センチ台前半という人は千人にひとりもいないかもしれない。

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