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彼女がいい子な理由
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しおりを挟むあの子を初めて見たときの衝撃は、今も忘れない。
高校の入学式、同じクラスにビックリするほど細い子がいて、それが彼女だった。
同じ中学から来た子によれば、去年の夏くらいから痩せたらしい。
「前から細いほうではあったけど、あんなに病的ではなかったんだよね。盲腸の手術のあと、少し太ったのを気にして、ダイエットを始めたんだって。バドミントン部のキャプテンをやるくらい、スポーツも得意だったのに、卒業式のときなんて、自分の足ではステージに上がれなくて、先生の手を借りなきゃいけないくらいだったんだよ」
数日後、身体測定が行われ、誰が言いふらしたのか、彼女の身長体重が広まった。
161センチで31.8キロ。
普通ならありえない数字だけど、身体測定のときに手足を露出した姿を思い出し、たしかにそうかもなって納得した。
でも、性格はよさそうで、私は仲よくなれたらいいなって思ったんだ。
顔も頬とか口元とかやつれてはいたけれど、可愛かった。
ショートカットが似合う小顔で、目鼻立ちも小作りというか、楚々とした感じで、笑顔が儚げで。
授業中も積極的に発言するし、成績もいいみたいだった。
ただ、どことなく、仲良くなれない気もした。
その理由がわかったのは、別のクラスメイトが口にしたひとことを聞いたとき。
「あの子ってさ、いかにも演技っぽく、明るくやってみせてるところあるよね」
じつは私も同じタイプ。
よく似ているから、惹かれるし、その逆の感情も抱いてしまうんだなって。
ただ、私の場合、その明るく見せる演技を見抜かれたくなくて、中3くらいから、隠すようになった。
なるべく目立ちすぎないよう、普通に普通に振る舞うことを心がけて。
彼女は全然そんなこと考えてなさそうで、そこがちょっと危なっかしく思えた。
クラスのなかで浮いていたのも、体型のせいだけじゃなかったよね、きっと。
そうそう「いかにも演技っぽく」というクラスメイトのあのひとことを聞いたのは、ホームルームのあとだった。
体育祭のチアリーダーをクラスでひとり出さなくてはならず、なかなか決まらなかったとき、重苦しい空気のなかで彼女が突然、立候補したんだ。
みんな、自分にならなくて助かったというホッとした気分だったけど、かなりざわつきもした。
たぶん、彼女のチアリーダー姿を想像したんだと思う。
私もそうだったから。
でも、彼女がそれで好奇の目にさらされるくらいなら、いっそ自分が買って出ればよかったとも思った。
思っただけだけどね。
彼女は自分の体型、痩せすぎだとは感じてなかったのかな。
もしそうなら、好奇の目で見られても平気だったのかな。
なんにせよ、その日は訪れなかった。
体育祭の前に、彼女はこの世からいなくなってしまったのだから。
それもあんなかたちで、新聞やテレビでも報じられるという、ショッキングな去り方で。
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