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コドモ身体、不健康で清らかな想いが目指す美しき理想
しおりを挟む14年前の5月に書いた文章を三つ並べてみる。
(一応、連続性もあるので)
●メランコリックな身体と「鏡の中の少女」
今日、前から気になってた本を買った。
「TH №45 メランコリックな身体 痛々しくも美しきカラダの偏愛学」
そのなかに、二次元的な萌えキャラと拒食体型(及び精神性)をめぐる、すぐれた考察があったので、明日あたり、記事にできるといいな。
それと、レベンクロンの拒食小説「鏡の中の少女」について、林アサコがこんな文章を書いてた。
「15歳の少女フランチェスカは、自分に足りない〝硬質な肉体〟〝毅然とした態度〟のすべてを持つパーフェクトな少女〝ケサ〟を夢想していた。そして生来の〝フランチェスカ〟を消し去り、パーフェクトな〝ケサ〟になり変わろうと、譲らない思い込みと精神力で無理なダイエットの虜になる。〝成長する事への抵抗〟〝有機物である事への嫌悪感〟あるいはセックス、排泄、食事等から逃れ、より植物的で硬質でありたいと願うようになるのだ。異様な姿と化したフランチェスカの肉体であったが、痩せた身体は憧れの対象であり、なくした子供時代を取り戻す手がかりである。〝ケサ〟の概念は多くの少女たちにとって不健康で清らかな理想のかたちではないだろうか」
これまた、すぐれたレビューだと思う。
特に「不健康で清らかな理想」という表現が気に入りました。
●想いは肉体よりも美しい
引き続き「TH メランコリックな身体」について。
本橋牛乳という人が「夏目友人帳」(緑川ゆき)について、こんな文章を書いてる。
「多分、想いは肉体よりも美しい。そして孤独だ」
この少女漫画は物の怪モノらしく、僕は読んでないけど、この人が言おうとするところは、ちゃんと伝わってきた。
そして「想い」は「孤独」だから「美しい」のだろう、と。
この文章のタイトルは、
「身体のない想いは時間を超える」
これも、よくわかる。
実際、僕は、生きてる人より、死んだ人の想いに、支配されながら日々を過ごしてる気がするから。
●軽さへの誘惑、もしくは「コドモ身体」考
「TH メランコリックな身体」では、編集長でもある沙月樹京が、すぐれた前口上を述べている。
彼は「拒食の喜び、媚態の憂うつ」(大平健)に出てくる、拒食症患者が、
「時々ね、ふっと私、身体がないんじゃないかっていう気がするんです。すごい解放感!」
「でも直ぐにまた体重を感じてしまうんです。その反動がとっても嫌。それでまた、もっと痩せようとするわけで」
などと語っているのに着目して、拒食行動には、
「身体の存在感を消したい」「極限まで軽くしたい」
という欲望が働いてるのでは、と見る。
そして、茶髪やピアスにも、髪を明るくしたり、肉に穴をあけたりすることで、やはり「軽さ」のようなものを志向してる面があるのでは、と。
そのうえで、ダンス評論の世界で登場した「コドモ身体」という概念を借り「マッチョで強靭な身体」とは対極にあるものが、現代日本では好まれるとして、その典型的存在について、こう解説している。
「なるほど、日本のアニメなどに登場する萌えキャラの多くが不器用だったりよく転んだりするのは〝コドモ身体〟だからなのだ、と納得してしまう。逆に萌えキャラは(略)〝コドモ身体〟を肯定的に自覚することで必然的に生まれてきたものであるということができるし、さらには、その〝コドモ身体〟がリアルな身体性の希薄さに繋がるものだとするなら、身体のリアルさを削ぎ落としたかのようなアニメ的な絵柄を愛好するのは、当然のことだと言える。アニメ的世界こそ〝コドモ身体〟の楽園なのだ」
二次元である以上、そのキャラには、重さはないに等しく、しかも、生身の人間よりずっと細く描かれる。
たしかに、それもまた「軽さ」志向のあらわれなのだろう。
痩せ姫は、萌えキャラのように、幸福なイメージではないけれど、ありえないような「軽さ」を求めたり、体現したりする意味で、通じるものがあると思う。
そういえば、彼女たちも不器用な気がするし、よく転ぶ。
昨日「想いは肉体よりも美しい」という言葉を紹介したけど、そのことに気づいてしまうと、生身の身体を受容しにくくなり、ありえない「軽さ」を志向するしかなくなるのかもしれない。
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