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2章レルス王国編
話し合い
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謁見が終わって城を出た俺たち3人は宿に戻ることにした。エマ王女は案内役兼監視ということになっている。
俺たちが昨日した貴族たちへの脅しの悪評はすぐに広まるだろうな。別にそれはいい。今から亜人のギルドを作るのだ。遅かれ早かれ悪い噂は出てくる。それが早くなっただけ。むしろ、敵対するならたとえ王族であっても殺すぞ?というアピールができたと考えよう。
俺の実力も少し見せてやったことだし。当面は大丈夫だと信じたい。
宿についたら2部屋借りた。俺用と女子用だ。
寝る前に少し3人でお話することになった。もちろん俺とルアについてのこと。
「王女さん、今から話すことは全て本当だ。…この話を聞いてそれでも俺たちについてくるというなら、この婚約を考えようと思う。下りると言うなら…明日国王をもう一度脅して婚約も破棄してもらう。ついてくると言うなら、王女さんにはやってもらいたいことがある。」
「わかったわ。でも、その前に私の名前はエマよ!」
ずっと王女さんで馴染んでたからな。仕方がないことだと思う。でも、婚約した身には変わりない。
「悪かった、エマ。」
するとエマはちょっと顔を赤らめた。
「わ、分かればいいのよ。分かれば…。」
そんな姿を見て俺の中でエマに関するある仮説が浮かんだが頭の中で打ち消した。
俺がこの世界に転移したことも、御使いであったことも、勇者に裏切られたことも。ルアが天使族だということも。…俺がこれからすること、俺たちが立てた仮説のことも。
「…これで全てだ。もちろん嘘はひとつもない。これを聞いた上でまだ俺たちについて行きたいと思うなら、俺は止めはしない。歓迎する。今すぐ答えを出せと言われても難しいだろうな。だから、一晩ゆっくり考えろ。……王国の第2王女としてでは無く、1人の人間としてな…。俺たちの話にのったら身分を失うどころか世界の反逆者になることを意味するんだからな。」
バタンっ!
俺はそれだけ言うと、部屋のドアを閉めて俺の部屋に向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Sideエマ・ファン・レルス
窓の外を見ると月が見える。今日は三日月だ。空には星がひとつもない。まるで今の私の心模様を表しているみたいね。
隣のベッドを見ると初めて仲良くなったルアが寝ている。タイチが自分の部屋に戻った後、私とルアは少しだけ…おしゃべりをしていた。
さっきまでのタイチの話が頭をよぎる。
多分…というか間違いなくここが私の人生の別れ道。
まさか森で助けられたことでの出会いがこんな大きな話にまで飛躍するなんて…。
王宮での私は「出来損ない」。昔は王族にふさわしい魔力を持っていたわ。けど、いつからか魔力が増えなくなった。この表現は正しくないわね。正確には魔力が回復しなくなった。それに魔法も上手く使えなくなった。
当初は病気と疑われていたけれど、原因はわからなかったわ。そこからは「出来損ない」扱い。…王族は国民を守る義務があるわ。だから、国民を守れない私は王族として失格と言えるわね。王宮からは王と下民の隠し子とまで言われたわ。
私の母は私を産んですぐに無くなったけど、下民ではないわ。…お父様は王として毎日忙しい。姉兄も私のことを蔑んでいたわ。周りに誰も味方はいなかった。
ならば私に出来ることは政治の道具になる事だった。わかりやすく言うと政略結婚よ。私は美形だと思うわ。求婚も昔から多かったわ。まぁ、これは運が良かったわね。
王族といえど、恋愛には興味があるわ。…王都で恋愛に関する小説だって買ったことだってあるわ。私だって女の子ですもの。けど、それは憧れだわ。私には手の届かないもの。
私は王宮でひたすらに努力したわ。勉強に、魔法、作法。王族や貴族は努力を馬鹿にするわ。見苦しい、はしたない、情けないってね。それでも1人でひたすらに努力していたわ。
べ…別に寂しいって訳じゃないんだからね!
嘘…今のは嘘。…本当はとても寂しかった。1人でもいいから私に味方が欲しかった。いつも願ってたわ。助けて…って。
そんな中、お父様の命令で、ある領地に向かうことになったわ。その帰りの事ね。森を通ると、急にオークに私たちが襲われた。私の護衛はその奇襲にやられてしまった。
…王族は国民を守るために力を持っているのだから、魔物が襲ってきても大丈夫ということで最低限の護衛しかつかなかったわ。
いいえ、こんなものは建前ね。実際はもっと多く護衛がつくはずよ。つまり「出来損ない」にかける労力はないということね。私には政略結婚以外の使い道がない。それならデメリットの方が大きいわ。
私の人生もここまでか…と思ったけれど、タイチとルアに命を救われた。
私には愛し合う2人が眩しかったわ。私が欲しかったものの一つだもの。
ルアと話す時間はとても楽しかったわ。私にとって初めてお友達と言える存在だもの。私が王族と知っても態度を変えなかったことが嬉しかったわ。
タイチは私のことをほかと同じく道具としか思ってないのだと思ったわ。
でも、違った。それが今日分かったわ。
お父様との謁見で、タイチがあんなことするとは思わなかったわ。顔が完全に悪役顔。ルアから少しタイチのことを聞いていたし、私もタイチと話してそういうことをしたとしても不思議じゃないと思ってたけど、本気でやるとは思わなかったわ。
今でもその後のタイチの言葉が耳から離れない。
『手だよ。手。馬車に乗った時から気づいてた。その手、明らかに努力した人の手だろ?』
『お前は政治の道具じゃない。人だ。お前は王族だとかそういうことの前に1人の女の子だ!それを忘れるな!』
嬉しかった。私の努力を見てくれた。私を人として見てくれている。それがどうしようもなく嬉しかったわ。
だけど…私は少し怖い。私が何も出来ないと知ってタイチとルアに見限られるのが。
だから、あと一歩踏み出すことが出来ない。
「これではダメね。」
私は相談しに行くことにした。ルアはもう寝ているから、タイチにだ。タイチが相談に乗ってくれるとは思わないけど。
タイチの部屋の前に来て気づいた。
はっ!これじゃあ私が夜這いに来たみたいじゃない!?ち、違うわ!相談に行くだけよ。
コンコンっ!
ノックしたけど返事がなかった。寝てるかしら?って思ったけど、ドアが開いた。鍵を閉めてなかったみたいだ。中には誰もいなかった。
けど部屋の中は、おかしな空間が広がっていた。部屋の一部に明らかに外の景色が広がっているのだ。
好奇心で私はそこに向かった。本当に外の景色だった。土も本物。夜風が気持ちいい。
「クッッソ!」
どこからかタイチの声が聞こえてきたので、そちらに向かった。タイチを見つけた私は隠れてしまった。
なんで、隠れたのかしら?
タイチは両手に剣?を持って鎖を4本浮かせていたわ。魔法かしら?
「ふぅぅー。」
タイチが大きく深呼吸して目を見開いたら急に動き出した。
その姿はまさに幻想的だった。宙に浮いて踊っているみたいだった。その姿に見惚れてしまった。
「4本は扱えるようになってきたな…。……6本いってみるか…?まぁ、ここなら誰もいない。」
なにか独り言を言っているようだった。
タイチは虚空から鎖を2本取りだした。あれも魔法なの…?あんな魔法見たことない。
さっきと同じことを鎖を6本で挑戦するみたいだ。だけど……
「あぁ、クッソ!!」
さっきと同じようにはいかず、タイチに鎖が巻きついていた。
…私と同じだ。出来ないから努力するその姿は。ずっとタイチや、ルアはなんでもできる才能の塊だと思ってた。
「…んっ?誰だ?」
っ!?なんでわかったのかしら!?
隠れる意味もないのでタイチの前に出ていくことにした。
「なんだ、エマか…。」
「なんだとは何よ!」
「悪かった、悪かった。」
…馬車の中とか、王宮にいた時とかは近寄りがたいのに、今はそんな雰囲気がまるでない。なんでも話してくれそう。不思議だわ…。
「それで、何してんだよ?寝れねぇのか?」
「あんな話をされた後ではね。そういうアンタこそ何してるのよ?」
「俺は修行だな。」
「…ねぇ、タイチはどうして努力してるのよ…?」
「んなもん決まってるだろ?強くなるため。強くなって俺の大事なもんを守るためだ。あとは…俺に誇れる俺であるため?」
「充分強いじゃない。それに努力しても強くなってるとは限らないじゃない…。努力することに意味なんてあるの…?」
「俺は弱い。俺に才能があるなんて思ったことねぇよ。職業も「無」職だし。この力だってどうやって手に入れたか知らねぇし。だから、ひたすらに努力する。才能という力は素晴らしい。でも、それだって磨かなきゃ意味が無い。才能を持ってるか持ってないかの差っていうのはな、スタートラインが違うって言うだけの話。そこからどんなスピードで走るかは自分の頑張り次第だ。だから、才能は無敵じゃない。」
どうしてそんなことを笑いながら言えるのかしら。…この人間を少し過小評価していた気がした。
「毎日毎日絶えず、昨日の自分より強くなるのは難しいと思うかもしれない。でも、意外とそんなことは無い。今日なにかすることは確実に昨日の自分とは違う。それが進化か退化かは分からないが。でも、1番だめなのは何もしないことだ。何もしなければ、何も生まれない。進化だって無理だ。だから、退化してもいい。何かやってみろ。」
「…何それ。」
「昔、じぃ…師匠が俺に言った言葉だ。努力することに意味があるかも知らねぇし、俺が強くなってるかも知らねぇ。それでも何かやらなきゃ、強くはなれねぇ。それは確かだ。」
彼に比べて今の私は何をやっているのだろう…。同じように努力している者なのにこうも違うのか。
今も氷で何かを作ろうとしているタイチに私は話しかける。
「わ…私は自分を変えたい…!もう「出来損ない」と呼ばれたくない…!でも、私は…あなた達に裏切られるのがこわい…」
私が役に立たないと分かった途端に私を侮辱の目で見てきた王宮の人達のように…。
「裏切ったりしねぇよ。でもまぁ俺も言葉で言ったって伝わるなんて思ってない。俺も仲間に裏切られた身だからな。少なくとも誰もお前を馬鹿にしたりはしねぇよ。そんなことしたらルアに殺される。」
「変わりたいというなら、覚悟を決めろ。俺から言えるアドバイスはこんなところだ。」
私は拳を握りしめる。ここが私の分岐点だ!
「私を…連れて行って欲しい…!あなた達の旅に…!」
「…世界を敵に回すぞ?」
「そんなことはどうでもいいわ…!私は変わりたいの…!きっと王宮に残ったって変われない!そのまま死ぬぐらいなら、世界に殺されてもあなた達について行った方がマシよ…!私に誇れる私でありたいもの!」
「いい「覚悟」だ。」
私は覚悟を決める。この人たちについて行って自分を変えるんだ。誰にも…「出来損ない」なんて呼ばせない!
「当然よ!私はタイチの婚約者よ!」
「…………あぁ、そういえばそうだったな。」
「忘れてたの!?」
この男、最低だわ!
「いやお前の返事次第で変わってたし、正確には明日からだし、それに俺はルアが好きだぞ?」
「そんなの知ってるわよ。この国は一夫多妻制だから大丈夫よ。それに…そんなの関係ないわ!絶対に私に夢中にさせてやるんだから!」
「そうか。そんな日が来るとは思わんが、その日が来ることを楽しみにしてる。」
「言ったわね!えぇ、楽しみにしていなさい!」
空には星が瞬いていた。
「ん?星?そういえばここどこなのよ?」
「帝国だが?」
「帝国っっ!!?!? 」
なんで隣国にいるのよ!?さっきまで私王都にいたのに!
「そんなことより」
「そんなこと?!?」
「魔力が回復しないって言う病気治してやろうか?」
俺たちが昨日した貴族たちへの脅しの悪評はすぐに広まるだろうな。別にそれはいい。今から亜人のギルドを作るのだ。遅かれ早かれ悪い噂は出てくる。それが早くなっただけ。むしろ、敵対するならたとえ王族であっても殺すぞ?というアピールができたと考えよう。
俺の実力も少し見せてやったことだし。当面は大丈夫だと信じたい。
宿についたら2部屋借りた。俺用と女子用だ。
寝る前に少し3人でお話することになった。もちろん俺とルアについてのこと。
「王女さん、今から話すことは全て本当だ。…この話を聞いてそれでも俺たちについてくるというなら、この婚約を考えようと思う。下りると言うなら…明日国王をもう一度脅して婚約も破棄してもらう。ついてくると言うなら、王女さんにはやってもらいたいことがある。」
「わかったわ。でも、その前に私の名前はエマよ!」
ずっと王女さんで馴染んでたからな。仕方がないことだと思う。でも、婚約した身には変わりない。
「悪かった、エマ。」
するとエマはちょっと顔を赤らめた。
「わ、分かればいいのよ。分かれば…。」
そんな姿を見て俺の中でエマに関するある仮説が浮かんだが頭の中で打ち消した。
俺がこの世界に転移したことも、御使いであったことも、勇者に裏切られたことも。ルアが天使族だということも。…俺がこれからすること、俺たちが立てた仮説のことも。
「…これで全てだ。もちろん嘘はひとつもない。これを聞いた上でまだ俺たちについて行きたいと思うなら、俺は止めはしない。歓迎する。今すぐ答えを出せと言われても難しいだろうな。だから、一晩ゆっくり考えろ。……王国の第2王女としてでは無く、1人の人間としてな…。俺たちの話にのったら身分を失うどころか世界の反逆者になることを意味するんだからな。」
バタンっ!
俺はそれだけ言うと、部屋のドアを閉めて俺の部屋に向かった。
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Sideエマ・ファン・レルス
窓の外を見ると月が見える。今日は三日月だ。空には星がひとつもない。まるで今の私の心模様を表しているみたいね。
隣のベッドを見ると初めて仲良くなったルアが寝ている。タイチが自分の部屋に戻った後、私とルアは少しだけ…おしゃべりをしていた。
さっきまでのタイチの話が頭をよぎる。
多分…というか間違いなくここが私の人生の別れ道。
まさか森で助けられたことでの出会いがこんな大きな話にまで飛躍するなんて…。
王宮での私は「出来損ない」。昔は王族にふさわしい魔力を持っていたわ。けど、いつからか魔力が増えなくなった。この表現は正しくないわね。正確には魔力が回復しなくなった。それに魔法も上手く使えなくなった。
当初は病気と疑われていたけれど、原因はわからなかったわ。そこからは「出来損ない」扱い。…王族は国民を守る義務があるわ。だから、国民を守れない私は王族として失格と言えるわね。王宮からは王と下民の隠し子とまで言われたわ。
私の母は私を産んですぐに無くなったけど、下民ではないわ。…お父様は王として毎日忙しい。姉兄も私のことを蔑んでいたわ。周りに誰も味方はいなかった。
ならば私に出来ることは政治の道具になる事だった。わかりやすく言うと政略結婚よ。私は美形だと思うわ。求婚も昔から多かったわ。まぁ、これは運が良かったわね。
王族といえど、恋愛には興味があるわ。…王都で恋愛に関する小説だって買ったことだってあるわ。私だって女の子ですもの。けど、それは憧れだわ。私には手の届かないもの。
私は王宮でひたすらに努力したわ。勉強に、魔法、作法。王族や貴族は努力を馬鹿にするわ。見苦しい、はしたない、情けないってね。それでも1人でひたすらに努力していたわ。
べ…別に寂しいって訳じゃないんだからね!
嘘…今のは嘘。…本当はとても寂しかった。1人でもいいから私に味方が欲しかった。いつも願ってたわ。助けて…って。
そんな中、お父様の命令で、ある領地に向かうことになったわ。その帰りの事ね。森を通ると、急にオークに私たちが襲われた。私の護衛はその奇襲にやられてしまった。
…王族は国民を守るために力を持っているのだから、魔物が襲ってきても大丈夫ということで最低限の護衛しかつかなかったわ。
いいえ、こんなものは建前ね。実際はもっと多く護衛がつくはずよ。つまり「出来損ない」にかける労力はないということね。私には政略結婚以外の使い道がない。それならデメリットの方が大きいわ。
私の人生もここまでか…と思ったけれど、タイチとルアに命を救われた。
私には愛し合う2人が眩しかったわ。私が欲しかったものの一つだもの。
ルアと話す時間はとても楽しかったわ。私にとって初めてお友達と言える存在だもの。私が王族と知っても態度を変えなかったことが嬉しかったわ。
タイチは私のことをほかと同じく道具としか思ってないのだと思ったわ。
でも、違った。それが今日分かったわ。
お父様との謁見で、タイチがあんなことするとは思わなかったわ。顔が完全に悪役顔。ルアから少しタイチのことを聞いていたし、私もタイチと話してそういうことをしたとしても不思議じゃないと思ってたけど、本気でやるとは思わなかったわ。
今でもその後のタイチの言葉が耳から離れない。
『手だよ。手。馬車に乗った時から気づいてた。その手、明らかに努力した人の手だろ?』
『お前は政治の道具じゃない。人だ。お前は王族だとかそういうことの前に1人の女の子だ!それを忘れるな!』
嬉しかった。私の努力を見てくれた。私を人として見てくれている。それがどうしようもなく嬉しかったわ。
だけど…私は少し怖い。私が何も出来ないと知ってタイチとルアに見限られるのが。
だから、あと一歩踏み出すことが出来ない。
「これではダメね。」
私は相談しに行くことにした。ルアはもう寝ているから、タイチにだ。タイチが相談に乗ってくれるとは思わないけど。
タイチの部屋の前に来て気づいた。
はっ!これじゃあ私が夜這いに来たみたいじゃない!?ち、違うわ!相談に行くだけよ。
コンコンっ!
ノックしたけど返事がなかった。寝てるかしら?って思ったけど、ドアが開いた。鍵を閉めてなかったみたいだ。中には誰もいなかった。
けど部屋の中は、おかしな空間が広がっていた。部屋の一部に明らかに外の景色が広がっているのだ。
好奇心で私はそこに向かった。本当に外の景色だった。土も本物。夜風が気持ちいい。
「クッッソ!」
どこからかタイチの声が聞こえてきたので、そちらに向かった。タイチを見つけた私は隠れてしまった。
なんで、隠れたのかしら?
タイチは両手に剣?を持って鎖を4本浮かせていたわ。魔法かしら?
「ふぅぅー。」
タイチが大きく深呼吸して目を見開いたら急に動き出した。
その姿はまさに幻想的だった。宙に浮いて踊っているみたいだった。その姿に見惚れてしまった。
「4本は扱えるようになってきたな…。……6本いってみるか…?まぁ、ここなら誰もいない。」
なにか独り言を言っているようだった。
タイチは虚空から鎖を2本取りだした。あれも魔法なの…?あんな魔法見たことない。
さっきと同じことを鎖を6本で挑戦するみたいだ。だけど……
「あぁ、クッソ!!」
さっきと同じようにはいかず、タイチに鎖が巻きついていた。
…私と同じだ。出来ないから努力するその姿は。ずっとタイチや、ルアはなんでもできる才能の塊だと思ってた。
「…んっ?誰だ?」
っ!?なんでわかったのかしら!?
隠れる意味もないのでタイチの前に出ていくことにした。
「なんだ、エマか…。」
「なんだとは何よ!」
「悪かった、悪かった。」
…馬車の中とか、王宮にいた時とかは近寄りがたいのに、今はそんな雰囲気がまるでない。なんでも話してくれそう。不思議だわ…。
「それで、何してんだよ?寝れねぇのか?」
「あんな話をされた後ではね。そういうアンタこそ何してるのよ?」
「俺は修行だな。」
「…ねぇ、タイチはどうして努力してるのよ…?」
「んなもん決まってるだろ?強くなるため。強くなって俺の大事なもんを守るためだ。あとは…俺に誇れる俺であるため?」
「充分強いじゃない。それに努力しても強くなってるとは限らないじゃない…。努力することに意味なんてあるの…?」
「俺は弱い。俺に才能があるなんて思ったことねぇよ。職業も「無」職だし。この力だってどうやって手に入れたか知らねぇし。だから、ひたすらに努力する。才能という力は素晴らしい。でも、それだって磨かなきゃ意味が無い。才能を持ってるか持ってないかの差っていうのはな、スタートラインが違うって言うだけの話。そこからどんなスピードで走るかは自分の頑張り次第だ。だから、才能は無敵じゃない。」
どうしてそんなことを笑いながら言えるのかしら。…この人間を少し過小評価していた気がした。
「毎日毎日絶えず、昨日の自分より強くなるのは難しいと思うかもしれない。でも、意外とそんなことは無い。今日なにかすることは確実に昨日の自分とは違う。それが進化か退化かは分からないが。でも、1番だめなのは何もしないことだ。何もしなければ、何も生まれない。進化だって無理だ。だから、退化してもいい。何かやってみろ。」
「…何それ。」
「昔、じぃ…師匠が俺に言った言葉だ。努力することに意味があるかも知らねぇし、俺が強くなってるかも知らねぇ。それでも何かやらなきゃ、強くはなれねぇ。それは確かだ。」
彼に比べて今の私は何をやっているのだろう…。同じように努力している者なのにこうも違うのか。
今も氷で何かを作ろうとしているタイチに私は話しかける。
「わ…私は自分を変えたい…!もう「出来損ない」と呼ばれたくない…!でも、私は…あなた達に裏切られるのがこわい…」
私が役に立たないと分かった途端に私を侮辱の目で見てきた王宮の人達のように…。
「裏切ったりしねぇよ。でもまぁ俺も言葉で言ったって伝わるなんて思ってない。俺も仲間に裏切られた身だからな。少なくとも誰もお前を馬鹿にしたりはしねぇよ。そんなことしたらルアに殺される。」
「変わりたいというなら、覚悟を決めろ。俺から言えるアドバイスはこんなところだ。」
私は拳を握りしめる。ここが私の分岐点だ!
「私を…連れて行って欲しい…!あなた達の旅に…!」
「…世界を敵に回すぞ?」
「そんなことはどうでもいいわ…!私は変わりたいの…!きっと王宮に残ったって変われない!そのまま死ぬぐらいなら、世界に殺されてもあなた達について行った方がマシよ…!私に誇れる私でありたいもの!」
「いい「覚悟」だ。」
私は覚悟を決める。この人たちについて行って自分を変えるんだ。誰にも…「出来損ない」なんて呼ばせない!
「当然よ!私はタイチの婚約者よ!」
「…………あぁ、そういえばそうだったな。」
「忘れてたの!?」
この男、最低だわ!
「いやお前の返事次第で変わってたし、正確には明日からだし、それに俺はルアが好きだぞ?」
「そんなの知ってるわよ。この国は一夫多妻制だから大丈夫よ。それに…そんなの関係ないわ!絶対に私に夢中にさせてやるんだから!」
「そうか。そんな日が来るとは思わんが、その日が来ることを楽しみにしてる。」
「言ったわね!えぇ、楽しみにしていなさい!」
空には星が瞬いていた。
「ん?星?そういえばここどこなのよ?」
「帝国だが?」
「帝国っっ!!?!? 」
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