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第五章
二度目はまだ
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一週間ほどで月のものは自然と止まった。リサにそう聞いてはいたけれど、初めてのことだったし不安もあった。ちゃんとリサの言う通りに終わってルカはほっと胸を撫で下ろした。またすぐにでもユリウスとしたいと思ったルカだが、ノルデンには二三日は様子を見るようにとしっかり釘を刺された。
最近ルカは、ユリウスの朝の散歩に一緒に出かけるようになった。同じベッドで眠っていると、朝早くに起き出すユリウスの気配に目が覚める。ユリウスはまだ眠っていろと言うのだが、シャツにトラウザーズにブーツを履き、剣を腰にさしただけの軽装で出かけようとするユリウスがどこに行くのか。気になって聞いたら林に出かけるのだと言う。ルカを拾ったあの林だ。
一緒に行くか?と聞かれ、ルカはうんと返事をした。腕と足が出ない服装の方がいいと言うのでリサに用意してもらい、ルカもユリウスのようにシャツに長ズボンにショートブーツを履いた。
長くなったとはいえ、女性にしてはまだ短髪だし一見男の子に見えるねとルカが言うと、ユリウスは困ったように横を向いた。
「どうかした?」と聞けば、ユリウスはそっぽを向きながら、くしゃくしゃとルカの髪を乱した。
「俺には余計に女に見える」
「そうかな」
ルカにはそうは思えない。でもなんだか恥ずかしいのはどうしてだろう。
今朝もカレルに見送られ、ユリウスと共に朝の林に出かけた。出かける時、ボポがやたらとゲージの扉をかいて出たそうにした。少しだけと思ってゲージを開けると、ポポはだっとルカの肩に駆け上がり、離れようとしない。それで今日はポポも一緒に林へ来た。
「逃げるかもしれないぞ」
ユリウスには忠告されたが、それならそれでいい。ポポはもう大きくなった。一人で林で生きていくことはできるだろう。ポポがいなくなるのは寂しいけれど、ポポがそうしたいなら仕方がない。
隣国ルーキング国との国境線近い林は、小鳥のさえずりに川のせせらぎが静かに時を刻んでいる。いつも何か話すでもなく、ルカはユリウスについて歩く。ユリウスは辺りに注意深く視線を配り、国境線である川べりに立ち、向こう岸の様子をうかがう。時折モント騎士団員の人が、ユリウスの姿を見つけてやって来る。
今朝もユリウスが川べりに立つと、すぐに青い軍服を着た騎士団員が駆けてきた。この人の顔は何度か見たので知っている。クライド第三師団長だ。初めてここで顔を合わせたとき、丁寧に自己紹介してくれたから覚えている。
たいていの者は奴隷のルカを無視するけれど、クライドだけはルカにもぺこりと頭を下げてくれる。ルカもぺこりと下げ返した。
「ベイエル伯様、ルカ殿。おはようございます。昨夜のルーキングの斥候ですが――」
クライドは、ユリウスに昨夜の様子を報告し、「では私はこれで」とまた林の奥へと歩いていった。
「そろそろ戻るか」
ユリウスの差し出す手をルカはとった。大きな手の平でルカの手を握ると、ユリウスはもと来た道とは違う道を行く。
「帰らないの?」
「少し遠回りして戻ろう。ディックたちの小屋がそろそろ完成しそうなんだ」
遠回りというより、どんどん林の奥へとユリウスは踏み入っていく。途中大きな水溜りがあり、ユリウスはひょいとルカを抱き上げた。
「ブーツ履いてるから濡れないよ?」
「まぁいいだろ。ブーツも濡れないに越したことはない」
「キュルっ」
まるで返事したかのようにタイミングよくポポが鳴く。
「ポポもそう言ってるぞ」
ユリウスは水溜りを超えてもそのままルカを片腕に乗せて抱いたまま歩いた。結局ディック達の小屋の立つエリアまでそのまま進んだ。
途中、肩の上のポポが頬ずりするようにルカに擦り寄ってきた。指でちょんちょん撫でてやると、ポポはくすぐったそうに尻尾を揺らす。と思ったら突然ルカの肩から、側の木の枝へと飛び移った。
「あ、ポポ」
ルカが呼ぶとポポはちらりとルカを見たが、そのままするすると木の枝を登り、姿が見えなくなった。
「行っちゃった……」
あまりにあっさりとポポは木立の中に姿を消した。肩にはまだポポの温もりが残っている。ポポがそうしたいなら林に帰ればいいとは思っていたけれど、実際いなくなると急に寂しくなった。ユリウスの首にぎゅっと腕を回し、金糸の髪に顔を埋めた。
「ポポはきっとこの林で逞しく生きていくさ」
ユリウスはぽんぽんとルカの頭を撫でた。
「……うん」
ルカは小さく頷いた。ポポはルカの言っていることがわかるのではと思うこともあった。ポポは賢いシマリスだ。ユリウスの言う通り、逞しく生きていくのだろう。
ユリウスは木立の間に現れた小屋を指さした。
「ほら、着いたぞ」
ディック達の小屋は全部で六棟も建っていた。どれも太い丸太を組んだ三角屋根の立派な建物だ。冬の積雪にも耐えられる丈夫な造りになっているらしい。玄関も積雪を見越して地面よりかなり上にある。
ずいぶん早く建つんだねとルカが驚くとユリウスは、実は見越して先に建て始めさせていたという。王都に行っている間も、コーバスとは文を通して頻繁に情報交換をしているそうで、ディック達が来ることを想定して作業を始めていたそうだ。
そんな説明を聞いていると、立ち並ぶ小屋の玄関の一つが開き、中からディックとフォリスが顔をだした。二人はルカとユリウスの姿に気がつくと、「よお」と片手をあげた。
「朝の散歩ですか? ユリウス様」
フォリスがユリウスにしがみついているルカににこりと笑みながら、ユリウスに話しかけた。
「相変わらず仲いいな、ユリウスとルカは。中、見てきます?」
ディックは扉を大きく開いた。ユリウスが「ああ」と頷きルカをおろすと、二人で小屋の中へと入った。一部屋だけの部屋だが広い。すでに調理台やソファ、ベッドなどが並び、今すぐにも生活できそうだ。
「今日は足りないものを街に買いに行こうかと思ってるんです。それで何が必要か確かめにきたんだ」とフォリス。
この小屋はディックとフォリスの小屋になるらしい。あとの五棟を他の仲間でシェアする。余裕ができればまた新たに小屋を増やしていく予定だそうだ。
これからの生活に向けて、ディック達は着々と準備を進めていた。
ユリウスとルカが部屋を見ている間も、二人はあれがあればいいとか、それは高いからまだ買わないでおこうなど楽しそうに話し合っている。
なんか、いいなぁと思った。
これから先に向かって理想を膨らませていく二人の姿が眩しい。
わたしは、これから先ユリウスとどうしていきたいのだろう。
ふとそんなことを考えた。
ユリウスはどう思っているのだろう。ユリウスの描く未来に、ルカはちゃんといるのだろうか。
ユリウスをじっと見上げたら、ユリウスが「どうした?」と聞いてくる。
ルカは首を振って「なんでもない」と答えた。
願わくば、ユリウスの描く未来に自分がいてほしい。そう思わずにはいられなかった。
***
ディックとフォリスの小屋を出て、屋敷へ戻る道すがら、人の声にユリウスは道をそれた。ルカには聞こえなかったようだが、ユリウスの敏感な耳は人声をとらえた。
気になるからとルカにことわり、ユリウスが木立の間を進むと、金髪のラウと黒髪の希少種が何か言い合っているのが見えた。
話の内容までは聞こえない。でも二人は深刻な様子で、黒髪の希少種が歩いていこうとするラウの腕をつかんだ。
黒髪の希少種は知らない顔だ。
ルカに知っているか?と聞いたが、ルカも知らない顔だという。気になってもう少し近づこうと歩を進めると、ルカのブーツが枯れ葉を踏み、かさりと音を立てた。
ラウと、もう一人の希少種が、はっとしたようにこちらを見た。黒髪の希少種は、ユリウスとルカの姿にひらりと身を翻すと木立の中に消えた。
「邪魔をしたか?」
ユリウスはラウに近づいた。金髪に染めたラウは、「いいえ、もう話は終わっていましたから」と言う。とてもそんな風には見えなかったが。
「さっきの希少種は知り合いか?」
念の為聞くと、ラウはええと頷く。
「ちょっと、昔からの知り合いです」
「何しに来た? あの髪色のまま歩き回るのは危険だぞ。領内にはまだ王宮騎士団が、逃げた希少種をさがしている。不用意に髪を晒すのはよくない」
「ああっと、ええ、まぁそうですね。今度会ったら気をつけるように言っておきますよ」
ラウは「じゃあ」と木立の中へと分け入っていった。
その後ろ姿を見送りながら、ユリウスの中にある疑問が芽生えた。王都で出会ったハルムという希少種。王宮から逃げ出したと言っていた。そしてこのラウも、王宮から逃げ出してきたと聞いた。
ルカを連れ去ったハルムのことを、あの時エメレンスはこう言わなかったか。五年前に一人だけ逃げ出した希少種がいたと。エメレンスは一人だけと言ったのだ。
ディック達希少種は、みんなどこからか逃げ出してきた者達ばかりだ。本人達からは元はどこにいたのかを一通り聞いてはいるが、ユリウス自身がその話が本当かどうかを確かめた訳ではない。
今後のためにもディック達のことを調べておくべきだろう。ユリウスはそう心の中で算段した。
最近ルカは、ユリウスの朝の散歩に一緒に出かけるようになった。同じベッドで眠っていると、朝早くに起き出すユリウスの気配に目が覚める。ユリウスはまだ眠っていろと言うのだが、シャツにトラウザーズにブーツを履き、剣を腰にさしただけの軽装で出かけようとするユリウスがどこに行くのか。気になって聞いたら林に出かけるのだと言う。ルカを拾ったあの林だ。
一緒に行くか?と聞かれ、ルカはうんと返事をした。腕と足が出ない服装の方がいいと言うのでリサに用意してもらい、ルカもユリウスのようにシャツに長ズボンにショートブーツを履いた。
長くなったとはいえ、女性にしてはまだ短髪だし一見男の子に見えるねとルカが言うと、ユリウスは困ったように横を向いた。
「どうかした?」と聞けば、ユリウスはそっぽを向きながら、くしゃくしゃとルカの髪を乱した。
「俺には余計に女に見える」
「そうかな」
ルカにはそうは思えない。でもなんだか恥ずかしいのはどうしてだろう。
今朝もカレルに見送られ、ユリウスと共に朝の林に出かけた。出かける時、ボポがやたらとゲージの扉をかいて出たそうにした。少しだけと思ってゲージを開けると、ポポはだっとルカの肩に駆け上がり、離れようとしない。それで今日はポポも一緒に林へ来た。
「逃げるかもしれないぞ」
ユリウスには忠告されたが、それならそれでいい。ポポはもう大きくなった。一人で林で生きていくことはできるだろう。ポポがいなくなるのは寂しいけれど、ポポがそうしたいなら仕方がない。
隣国ルーキング国との国境線近い林は、小鳥のさえずりに川のせせらぎが静かに時を刻んでいる。いつも何か話すでもなく、ルカはユリウスについて歩く。ユリウスは辺りに注意深く視線を配り、国境線である川べりに立ち、向こう岸の様子をうかがう。時折モント騎士団員の人が、ユリウスの姿を見つけてやって来る。
今朝もユリウスが川べりに立つと、すぐに青い軍服を着た騎士団員が駆けてきた。この人の顔は何度か見たので知っている。クライド第三師団長だ。初めてここで顔を合わせたとき、丁寧に自己紹介してくれたから覚えている。
たいていの者は奴隷のルカを無視するけれど、クライドだけはルカにもぺこりと頭を下げてくれる。ルカもぺこりと下げ返した。
「ベイエル伯様、ルカ殿。おはようございます。昨夜のルーキングの斥候ですが――」
クライドは、ユリウスに昨夜の様子を報告し、「では私はこれで」とまた林の奥へと歩いていった。
「そろそろ戻るか」
ユリウスの差し出す手をルカはとった。大きな手の平でルカの手を握ると、ユリウスはもと来た道とは違う道を行く。
「帰らないの?」
「少し遠回りして戻ろう。ディックたちの小屋がそろそろ完成しそうなんだ」
遠回りというより、どんどん林の奥へとユリウスは踏み入っていく。途中大きな水溜りがあり、ユリウスはひょいとルカを抱き上げた。
「ブーツ履いてるから濡れないよ?」
「まぁいいだろ。ブーツも濡れないに越したことはない」
「キュルっ」
まるで返事したかのようにタイミングよくポポが鳴く。
「ポポもそう言ってるぞ」
ユリウスは水溜りを超えてもそのままルカを片腕に乗せて抱いたまま歩いた。結局ディック達の小屋の立つエリアまでそのまま進んだ。
途中、肩の上のポポが頬ずりするようにルカに擦り寄ってきた。指でちょんちょん撫でてやると、ポポはくすぐったそうに尻尾を揺らす。と思ったら突然ルカの肩から、側の木の枝へと飛び移った。
「あ、ポポ」
ルカが呼ぶとポポはちらりとルカを見たが、そのままするすると木の枝を登り、姿が見えなくなった。
「行っちゃった……」
あまりにあっさりとポポは木立の中に姿を消した。肩にはまだポポの温もりが残っている。ポポがそうしたいなら林に帰ればいいとは思っていたけれど、実際いなくなると急に寂しくなった。ユリウスの首にぎゅっと腕を回し、金糸の髪に顔を埋めた。
「ポポはきっとこの林で逞しく生きていくさ」
ユリウスはぽんぽんとルカの頭を撫でた。
「……うん」
ルカは小さく頷いた。ポポはルカの言っていることがわかるのではと思うこともあった。ポポは賢いシマリスだ。ユリウスの言う通り、逞しく生きていくのだろう。
ユリウスは木立の間に現れた小屋を指さした。
「ほら、着いたぞ」
ディック達の小屋は全部で六棟も建っていた。どれも太い丸太を組んだ三角屋根の立派な建物だ。冬の積雪にも耐えられる丈夫な造りになっているらしい。玄関も積雪を見越して地面よりかなり上にある。
ずいぶん早く建つんだねとルカが驚くとユリウスは、実は見越して先に建て始めさせていたという。王都に行っている間も、コーバスとは文を通して頻繁に情報交換をしているそうで、ディック達が来ることを想定して作業を始めていたそうだ。
そんな説明を聞いていると、立ち並ぶ小屋の玄関の一つが開き、中からディックとフォリスが顔をだした。二人はルカとユリウスの姿に気がつくと、「よお」と片手をあげた。
「朝の散歩ですか? ユリウス様」
フォリスがユリウスにしがみついているルカににこりと笑みながら、ユリウスに話しかけた。
「相変わらず仲いいな、ユリウスとルカは。中、見てきます?」
ディックは扉を大きく開いた。ユリウスが「ああ」と頷きルカをおろすと、二人で小屋の中へと入った。一部屋だけの部屋だが広い。すでに調理台やソファ、ベッドなどが並び、今すぐにも生活できそうだ。
「今日は足りないものを街に買いに行こうかと思ってるんです。それで何が必要か確かめにきたんだ」とフォリス。
この小屋はディックとフォリスの小屋になるらしい。あとの五棟を他の仲間でシェアする。余裕ができればまた新たに小屋を増やしていく予定だそうだ。
これからの生活に向けて、ディック達は着々と準備を進めていた。
ユリウスとルカが部屋を見ている間も、二人はあれがあればいいとか、それは高いからまだ買わないでおこうなど楽しそうに話し合っている。
なんか、いいなぁと思った。
これから先に向かって理想を膨らませていく二人の姿が眩しい。
わたしは、これから先ユリウスとどうしていきたいのだろう。
ふとそんなことを考えた。
ユリウスはどう思っているのだろう。ユリウスの描く未来に、ルカはちゃんといるのだろうか。
ユリウスをじっと見上げたら、ユリウスが「どうした?」と聞いてくる。
ルカは首を振って「なんでもない」と答えた。
願わくば、ユリウスの描く未来に自分がいてほしい。そう思わずにはいられなかった。
***
ディックとフォリスの小屋を出て、屋敷へ戻る道すがら、人の声にユリウスは道をそれた。ルカには聞こえなかったようだが、ユリウスの敏感な耳は人声をとらえた。
気になるからとルカにことわり、ユリウスが木立の間を進むと、金髪のラウと黒髪の希少種が何か言い合っているのが見えた。
話の内容までは聞こえない。でも二人は深刻な様子で、黒髪の希少種が歩いていこうとするラウの腕をつかんだ。
黒髪の希少種は知らない顔だ。
ルカに知っているか?と聞いたが、ルカも知らない顔だという。気になってもう少し近づこうと歩を進めると、ルカのブーツが枯れ葉を踏み、かさりと音を立てた。
ラウと、もう一人の希少種が、はっとしたようにこちらを見た。黒髪の希少種は、ユリウスとルカの姿にひらりと身を翻すと木立の中に消えた。
「邪魔をしたか?」
ユリウスはラウに近づいた。金髪に染めたラウは、「いいえ、もう話は終わっていましたから」と言う。とてもそんな風には見えなかったが。
「さっきの希少種は知り合いか?」
念の為聞くと、ラウはええと頷く。
「ちょっと、昔からの知り合いです」
「何しに来た? あの髪色のまま歩き回るのは危険だぞ。領内にはまだ王宮騎士団が、逃げた希少種をさがしている。不用意に髪を晒すのはよくない」
「ああっと、ええ、まぁそうですね。今度会ったら気をつけるように言っておきますよ」
ラウは「じゃあ」と木立の中へと分け入っていった。
その後ろ姿を見送りながら、ユリウスの中にある疑問が芽生えた。王都で出会ったハルムという希少種。王宮から逃げ出したと言っていた。そしてこのラウも、王宮から逃げ出してきたと聞いた。
ルカを連れ去ったハルムのことを、あの時エメレンスはこう言わなかったか。五年前に一人だけ逃げ出した希少種がいたと。エメレンスは一人だけと言ったのだ。
ディック達希少種は、みんなどこからか逃げ出してきた者達ばかりだ。本人達からは元はどこにいたのかを一通り聞いてはいるが、ユリウス自身がその話が本当かどうかを確かめた訳ではない。
今後のためにもディック達のことを調べておくべきだろう。ユリウスはそう心の中で算段した。
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