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第三章
家令テッドの奔走 1
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主のアランから女性を一人連れ帰るかもしれないと告げられてから今日で十日になる。
主はツハンへ出かけられてから一度首都へとお戻りになったが、再び屋敷を飛び出されていった。今度は首都から馬で三時間ほどの内陸部の森の中へ行かれると言う。少しも屋敷に落ち着くことがない。
まるで空を縦横無尽に駆け回るという龍のようだとテッドは思った。忙しいことこの上ない。
アランの留守の間もテッドは淡々と仕事をこなしていく。
アランに指示された、女性物の用意も、部屋の用意も準備万端整っている。いつ来られてもいいように、毎日の部屋の掃除も欠くことのないよう、他の使用人へと指示を出す。
アラン宛に届いた書状の仕分けもテッドの仕事だ。
急ぎ決済をいただきたいものをまとめておく。
アランがツハン行きのためにキャンセルした二つの夜会の主催者へは、お詫びの品を送った。それに対し礼状が届いている。内容に目を通すと、通り一遍の文句が並ぶ。それらは主人に読ませるほどのものではないと判断し、済の木箱へと移動させる。
白い封書の多い中、可愛らしいピンクの小花柄の封書が混じっている。
テッドが引き出してみると、差出人はグロリアーナ嬢だった。セービン伯爵のご令嬢だ。
さきの夜会で、アランがグロリアーナ嬢に引き合わされたということは、情報として家令のテッドはきっちりと仕入れている。
この可愛らしい封書から察するに、グロリアーナ嬢はアランを気に入ったようだ。
「ふむ」
テッドは主宛の私的な封書は開封しないようにしている。しかし中には急ぎ確認した方がいい場合もある。特に今回のように戻りがいつになるのかはっきりしない時は注意が必要だ。
これは急ぎ確認したほうがいい案件なのか。それとも主の帰りを待っていても大丈夫な案件だろうか。しばしあごに指をあて考える。
ここ最近のあの主の様子だ。
他に気になることがあって跳びまわっているときに、束の間屋敷に帰ってきたからといって、グロリアーナ嬢からの封書を開くとも思えない。
相手はセービン伯爵のご令嬢である。あまり放っておいて、あとあと面倒なことになっては主も困るだろう。
テッドはそう判断し、ペーパーナイフで封書を開き、中を一読した。
「ああ、これは……」
お茶会への招待状だった。
しかもセービン伯爵家の屋敷で、伯爵夫人を交えての。
これは娘の要望を受け、夫人が本格的にアランの囲い込みへと動き出したと見るべきだろう。
この話はアランにとって決して悪い話ではない。むしろ今後のアランのため、真剣に考えてもいい良縁だともいえる。
しかし――。
当の主は今日明日にも女性を連れ帰るかもしれないのだ。しかも当面の生活用品を揃えさせたところから、当分の間、当屋敷に住まわせるつもりでもあるようだ。
「さて、どうしたものか……」
これまで独身を通してきた主が、屋敷に女性を囲ったとなると一大事だ。アランをぜひにと狙っているのは何もグロリアーナ嬢だけではない。
ここは一つ先手が必要となるだろう。
「馬車を」
テッドは執務室を出ると使用人へ馬車の用意をさせ、急ぎ王宮へと向かった。
主はツハンへ出かけられてから一度首都へとお戻りになったが、再び屋敷を飛び出されていった。今度は首都から馬で三時間ほどの内陸部の森の中へ行かれると言う。少しも屋敷に落ち着くことがない。
まるで空を縦横無尽に駆け回るという龍のようだとテッドは思った。忙しいことこの上ない。
アランの留守の間もテッドは淡々と仕事をこなしていく。
アランに指示された、女性物の用意も、部屋の用意も準備万端整っている。いつ来られてもいいように、毎日の部屋の掃除も欠くことのないよう、他の使用人へと指示を出す。
アラン宛に届いた書状の仕分けもテッドの仕事だ。
急ぎ決済をいただきたいものをまとめておく。
アランがツハン行きのためにキャンセルした二つの夜会の主催者へは、お詫びの品を送った。それに対し礼状が届いている。内容に目を通すと、通り一遍の文句が並ぶ。それらは主人に読ませるほどのものではないと判断し、済の木箱へと移動させる。
白い封書の多い中、可愛らしいピンクの小花柄の封書が混じっている。
テッドが引き出してみると、差出人はグロリアーナ嬢だった。セービン伯爵のご令嬢だ。
さきの夜会で、アランがグロリアーナ嬢に引き合わされたということは、情報として家令のテッドはきっちりと仕入れている。
この可愛らしい封書から察するに、グロリアーナ嬢はアランを気に入ったようだ。
「ふむ」
テッドは主宛の私的な封書は開封しないようにしている。しかし中には急ぎ確認した方がいい場合もある。特に今回のように戻りがいつになるのかはっきりしない時は注意が必要だ。
これは急ぎ確認したほうがいい案件なのか。それとも主の帰りを待っていても大丈夫な案件だろうか。しばしあごに指をあて考える。
ここ最近のあの主の様子だ。
他に気になることがあって跳びまわっているときに、束の間屋敷に帰ってきたからといって、グロリアーナ嬢からの封書を開くとも思えない。
相手はセービン伯爵のご令嬢である。あまり放っておいて、あとあと面倒なことになっては主も困るだろう。
テッドはそう判断し、ペーパーナイフで封書を開き、中を一読した。
「ああ、これは……」
お茶会への招待状だった。
しかもセービン伯爵家の屋敷で、伯爵夫人を交えての。
これは娘の要望を受け、夫人が本格的にアランの囲い込みへと動き出したと見るべきだろう。
この話はアランにとって決して悪い話ではない。むしろ今後のアランのため、真剣に考えてもいい良縁だともいえる。
しかし――。
当の主は今日明日にも女性を連れ帰るかもしれないのだ。しかも当面の生活用品を揃えさせたところから、当分の間、当屋敷に住まわせるつもりでもあるようだ。
「さて、どうしたものか……」
これまで独身を通してきた主が、屋敷に女性を囲ったとなると一大事だ。アランをぜひにと狙っているのは何もグロリアーナ嬢だけではない。
ここは一つ先手が必要となるだろう。
「馬車を」
テッドは執務室を出ると使用人へ馬車の用意をさせ、急ぎ王宮へと向かった。
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