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第四章 セストの秘密
地味女が夢をみるとこうなる
次の日、ロザリアは狩りを休んだ。
目の周りが腫れ上がり、寝不足でふらふらするし、とても狩りの列について行けるような状態ではなかった。
地味女でも、せめて仕事は完璧にこなしたい。常々思っていた。華やかな世界では無理なので、他のことで何か一つくらい、胸をはれることがほしい。それがロザリアにとっては仕事だった。それなのに―――。
昨日あれから、セストの口から語られたことは、ロザリアの想像を遥かに超えていた。
五年前、セストの恋人だったディーナが賊に襲われて亡くなり、その際セストが転生の魔法をかけたこと。そのディーナの魂を、セストは探し続けてきたこと。そして二年前、ディーナの魂を持つロザリアを見つけたこと。
「……だからわたしだったんだね…」
ロザリアが、転生の魔法までかけて追い求めた恋人の生まれ変わりだったから。だからセストはロザリアのことを……。
ロザリアの言葉を、セストは否定しなかった。
ただ、セストはロザリアに山本めぐとしての前世があることを知らなかった。昨日チーロから事の次第を聞き、少なからず驚いていたようだった。
チーロは魔力の強さではセストに劣るが、異界渡りの能力に長けているらしい。
セストがこの世界でディーナを探していた時期、チーロは異世界にまで足を運びディーナを探していた。
そして見つけたのがロザリアだった。
が、チーロが語ったようにこちらの世界に連れてくる段階で山本めぐは亡くなり、ロザリアは再び転生した。
チーロはまた異世界に渡りディーナを探していたそうだが、先日魔の森近くにロザリアが来たことでその存在を感知したという。
自分が転生した理由がまさかセストにあったとは思いもしなかった。
わかっていたつもりだった。
セストが本気でロザリアの相手をするわけがないと。
こんなイケメンが、地味女に興味を持つはずがないと。他に目的があるのだと、そうわかっていたはずなのに。
セストの優しさに、笑い顔に、触れる唇の熱さに、酔ってしまった。セストが、自分を見ていないような、そんな違和感を感じながらも、信じる方に舵を切り始めていた。いや、もうたぶん信じていた。なのに。
セストが欲しかったのはロザリアではなかったのだ。ロザリアには記憶もないディーナという女性の、その身代わり。ロザリアに向けられたと思っていた優しさも、唇も、本当はディーナに向けられたものだったのだ。
地味女が甘い夢を見ようとするからこうなるんだ。
最低、とセストに言ってやりたかった。
わたしはあなたの恋人のディーナじゃない。代わりはできない。ロザリアを通り越して、その向こうにいるはずのディーナを求められても困ると。ひどいとなじりたかった。
頬の一つもはってやればよかった。
でもロザリアはどの一つもできなくて―――。
部屋に戻って一人で泣くことしかできなかった。
「なぁ、元気出せよ、ロザリア」
仕事をサボり、何も飲まず何も食べず、腫れぼったいまぶたを持て余しながら部屋で一人ぼぅっとしていると、床に転移の黒い渦が現れ、チーロが姿を見せた。赤く腫れ上がったロザリアの目を見て、チーロは持っていたパンと果実水を差し出した。
「これ食べろ。お腹すいただろう?」
「……いらない。何も欲しくない」
「確かにセストは酷いさ。とんでもない奴だ。あんな奴さっさと忘れて、他の奴を探せよ。なんならあと五年もすれば僕だって―――」
「―――それはない。第一チーロくんはわたしの子供なんでしょ?」
「断るの早すぎないか。子供ったって魂だけの問題だし、それにロザリアはディーナだった時のことは覚えてないんだろ?」
「全く」
前世持ちなんて厄介だと思ってきたのに、更にその前世が絡んでくるとは。
「だいたい、どうしてわたしにはディーナさんの記憶がないの? 山本めぐだった時のことは、全部ちゃんと覚えてるのに」
もしもロザリアにディーナの記憶があれば、今のように苦しむこともなかったはずだ。セストだって、あの手この手でロザリアを篭絡しようとがんばる必要もなかった。運命の再開を果たして幸せになりましたとさ、で終わったことだろう。
「それな、」
チーロは頭をがしがし掻いて、反動をつけてロザリアの隣に腰掛けた。
「ディーナの記憶には魔法がかけられていて、ディーナだった記憶を封じ込められているんだよ」
「記憶が? どうして?」
「知らないよ、そんなこと。セストにもわからないみたいだしな。誰のかけた魔法かもわからない」
そんなことをして誰が得をするのだろう。よくわからない。
「あと、気になってたんだけど……」
ロザリアはセストによく似たチーロの銀髪を見た。
「チーロくんはセストとディーナさんの子供なの?」
セストがディーナの恋人だったのなら、必然的にそうなる。それにしては、昨日のセストとチーロのやり取りからは、親子の雰囲気は感じられなかったのだが。
ロザリアの質問に、チーロはうぇと舌を出した。
「やめてくれよ気持ちの悪いこと言うなよ。こないだも言っただろ? 僕の父はとっくに死んだって」
「あ、そっか」
そういえばそう言っていた。
「じゃあ、どういうこと?」
「ディーナは元々セストの兄、つまりそれが僕の父なんだけどな、エドモンドって名前なんだけど、エドモンドと結婚してたんだよ。でも父は殺されて、それでその後セストと恋人になったんだ」
「……そうなんだ」
ではチーロはふた親とも殺されたということか。
「つらかったね、チーロくん」
この歳で一人取り残されるつらさは計り知れない。思わず銀髪に手を伸ばすと頭を撫でた。
瞬間、チーロはばっとその手を振り払った。
「やめてくれよ、しんみりされると思い出すから」
「そっか、ごめん…」
「あ、いや、そのごめん。振り払ったりして。あの、これ食べろ」
チーロは振り払ったロザリアの手を心配そうに見、持っていたパンを再び差し出した。今度はロザリアは素直に受け取った。剥き出しのパンには、チーロの指の形がくっきりとついている。思わずロザリアは笑みをこぼした。
が、何も言わずに口に運んだ。美味しかった。
「ありがとね、チーロくん。心配して来てくれたんでしょ?」
「お、おう。いいから早く食べろよ。果実水も飲めよ」
チーロは照れくさそうにそっぽを向き、ずいっと果実水の入った瓶をロザリアに押し付ける。それも受け取った。
口に含むとチーロの手のぬくもりで生温い。チーロの優しさに、緩んでいた涙腺から涙がこぼれた。
「な、なんだよ。泣くことはないだろ?」
チーロはロザリアの涙を見ておろおろし、ポケットを探った。が、目当てのものはなかったようで、自身の袖をロザリアの目に押し付けると、それで涙を拭ってくれた。
「……あいつのこと、そんなに好きだったのかよ」
チーロがぽつりと呟いた。
***
朝の伝令で今日はロザリアが体調不良で狩りを休むことを聞いたベネデッタは、ふんっとそっぽを向いた。
他の乙女達は「大丈夫なの?」と伝令役の侍女に聞き返している。
昨日の狩りの大成功の一翼は、明らかにロザリアが担っていた。一角獣は乙女達に鼻先を寄せていっときは興味を示すものの、最後には吸い寄せられるようにロザリアの元へと集まっていたからだ。
ベネデッタには結局ただの一頭も寄ってこなかった。忌々しいことこの上ない。
乙女達はロザリアのことを心配しているが、ベネデッタにしてみれば目障りはいないほうがいい。
ロザリアのことを聞かれた侍女は、「ただの体調不良だそうです。熱はないそうですが、体がだるいそうで」と返してきた。
体がだるいのはベネデッタだって同じだ。
今日は狩りに行こうかどうしようか迷っていたが、ロザリアがいないのなら行ってやってもいい。
あの黒妖犬の檻の前であったことを忘れたわけではない。
狩りで魔獣が襲ってきたら、またまっ先にロザリアを魔獣の前に突き飛ばしてやると決めていたが、昨日は残念ながら魔獣は現れなかった。
いないならいないで、セストにくっついて独り占めしてやるまでだ。
そう思っていたが、狩りのポイントへと移動する間、しんがりを歩くセストの元には行けず、代わりに昨日とは違う付き添いの侍女がうるさいくらい話しかけてくる。
気持ちが高揚しているようで、声がいつもよりも三割増しくらい高い。
はじめは適当に相槌を打っていたが、そのうち面倒になった。
「静かになさいな!」
そう言ったベネデッタの声のほうが大きく、見かねたのか、昨日と同じく先頭を歩いていた魔石室のグラートが、口の前に人差し指を立てた。
「お静かに。魔獣が寄ってきますよ」
その言葉に侍女は口をつぐんだ。
そこからはまたひたすら狩りのポイントへ向けて歩いた。
セストとは話せないし、日の差す前の薄暗い魔の森は、歩くたびぬかるんだ地面に足を取られそうになる。
こんなことなら自分も狩りを休めばよかった。
後ろを振り返ると昨日と同じように、最後尾を深緑のローブを着たセストがのんびりとした足取りで歩いている。こちらはちょこまかと足を動かしているのに、ストライドの長い足は楽でいい。
昨日、行軍の間、ロザリアが何度もセストを振り返って見ていたのをベネデッタは知っている。
昨日の二人の様子を見る限り、ロザリアも満更ではなさそうだった。何度も振り返ってセストとアイコンタクトを取っていた。
けれどベネデッタが何度セストと視線を合わせようとしても、なぜか視線が噛み合わない。
周囲に気を配っているからといえばそう見えないこともないが、ロザリアとはあれだけ目を合わせていたのを知っているだけにまた忌々しい。
なぜ自分は王女なのにこれほど忌々しい目に遭わされなければならないのか。腹立ちまぎれに下草を蹴れば、びょんっと蛙が飛び出し、ベネデッタは驚いて尻餅をついた。
そうこうしている間に今日の狩りの地点に到着した。
が、その日一角獣は一頭も姿を見せなかった。
目の周りが腫れ上がり、寝不足でふらふらするし、とても狩りの列について行けるような状態ではなかった。
地味女でも、せめて仕事は完璧にこなしたい。常々思っていた。華やかな世界では無理なので、他のことで何か一つくらい、胸をはれることがほしい。それがロザリアにとっては仕事だった。それなのに―――。
昨日あれから、セストの口から語られたことは、ロザリアの想像を遥かに超えていた。
五年前、セストの恋人だったディーナが賊に襲われて亡くなり、その際セストが転生の魔法をかけたこと。そのディーナの魂を、セストは探し続けてきたこと。そして二年前、ディーナの魂を持つロザリアを見つけたこと。
「……だからわたしだったんだね…」
ロザリアが、転生の魔法までかけて追い求めた恋人の生まれ変わりだったから。だからセストはロザリアのことを……。
ロザリアの言葉を、セストは否定しなかった。
ただ、セストはロザリアに山本めぐとしての前世があることを知らなかった。昨日チーロから事の次第を聞き、少なからず驚いていたようだった。
チーロは魔力の強さではセストに劣るが、異界渡りの能力に長けているらしい。
セストがこの世界でディーナを探していた時期、チーロは異世界にまで足を運びディーナを探していた。
そして見つけたのがロザリアだった。
が、チーロが語ったようにこちらの世界に連れてくる段階で山本めぐは亡くなり、ロザリアは再び転生した。
チーロはまた異世界に渡りディーナを探していたそうだが、先日魔の森近くにロザリアが来たことでその存在を感知したという。
自分が転生した理由がまさかセストにあったとは思いもしなかった。
わかっていたつもりだった。
セストが本気でロザリアの相手をするわけがないと。
こんなイケメンが、地味女に興味を持つはずがないと。他に目的があるのだと、そうわかっていたはずなのに。
セストの優しさに、笑い顔に、触れる唇の熱さに、酔ってしまった。セストが、自分を見ていないような、そんな違和感を感じながらも、信じる方に舵を切り始めていた。いや、もうたぶん信じていた。なのに。
セストが欲しかったのはロザリアではなかったのだ。ロザリアには記憶もないディーナという女性の、その身代わり。ロザリアに向けられたと思っていた優しさも、唇も、本当はディーナに向けられたものだったのだ。
地味女が甘い夢を見ようとするからこうなるんだ。
最低、とセストに言ってやりたかった。
わたしはあなたの恋人のディーナじゃない。代わりはできない。ロザリアを通り越して、その向こうにいるはずのディーナを求められても困ると。ひどいとなじりたかった。
頬の一つもはってやればよかった。
でもロザリアはどの一つもできなくて―――。
部屋に戻って一人で泣くことしかできなかった。
「なぁ、元気出せよ、ロザリア」
仕事をサボり、何も飲まず何も食べず、腫れぼったいまぶたを持て余しながら部屋で一人ぼぅっとしていると、床に転移の黒い渦が現れ、チーロが姿を見せた。赤く腫れ上がったロザリアの目を見て、チーロは持っていたパンと果実水を差し出した。
「これ食べろ。お腹すいただろう?」
「……いらない。何も欲しくない」
「確かにセストは酷いさ。とんでもない奴だ。あんな奴さっさと忘れて、他の奴を探せよ。なんならあと五年もすれば僕だって―――」
「―――それはない。第一チーロくんはわたしの子供なんでしょ?」
「断るの早すぎないか。子供ったって魂だけの問題だし、それにロザリアはディーナだった時のことは覚えてないんだろ?」
「全く」
前世持ちなんて厄介だと思ってきたのに、更にその前世が絡んでくるとは。
「だいたい、どうしてわたしにはディーナさんの記憶がないの? 山本めぐだった時のことは、全部ちゃんと覚えてるのに」
もしもロザリアにディーナの記憶があれば、今のように苦しむこともなかったはずだ。セストだって、あの手この手でロザリアを篭絡しようとがんばる必要もなかった。運命の再開を果たして幸せになりましたとさ、で終わったことだろう。
「それな、」
チーロは頭をがしがし掻いて、反動をつけてロザリアの隣に腰掛けた。
「ディーナの記憶には魔法がかけられていて、ディーナだった記憶を封じ込められているんだよ」
「記憶が? どうして?」
「知らないよ、そんなこと。セストにもわからないみたいだしな。誰のかけた魔法かもわからない」
そんなことをして誰が得をするのだろう。よくわからない。
「あと、気になってたんだけど……」
ロザリアはセストによく似たチーロの銀髪を見た。
「チーロくんはセストとディーナさんの子供なの?」
セストがディーナの恋人だったのなら、必然的にそうなる。それにしては、昨日のセストとチーロのやり取りからは、親子の雰囲気は感じられなかったのだが。
ロザリアの質問に、チーロはうぇと舌を出した。
「やめてくれよ気持ちの悪いこと言うなよ。こないだも言っただろ? 僕の父はとっくに死んだって」
「あ、そっか」
そういえばそう言っていた。
「じゃあ、どういうこと?」
「ディーナは元々セストの兄、つまりそれが僕の父なんだけどな、エドモンドって名前なんだけど、エドモンドと結婚してたんだよ。でも父は殺されて、それでその後セストと恋人になったんだ」
「……そうなんだ」
ではチーロはふた親とも殺されたということか。
「つらかったね、チーロくん」
この歳で一人取り残されるつらさは計り知れない。思わず銀髪に手を伸ばすと頭を撫でた。
瞬間、チーロはばっとその手を振り払った。
「やめてくれよ、しんみりされると思い出すから」
「そっか、ごめん…」
「あ、いや、そのごめん。振り払ったりして。あの、これ食べろ」
チーロは振り払ったロザリアの手を心配そうに見、持っていたパンを再び差し出した。今度はロザリアは素直に受け取った。剥き出しのパンには、チーロの指の形がくっきりとついている。思わずロザリアは笑みをこぼした。
が、何も言わずに口に運んだ。美味しかった。
「ありがとね、チーロくん。心配して来てくれたんでしょ?」
「お、おう。いいから早く食べろよ。果実水も飲めよ」
チーロは照れくさそうにそっぽを向き、ずいっと果実水の入った瓶をロザリアに押し付ける。それも受け取った。
口に含むとチーロの手のぬくもりで生温い。チーロの優しさに、緩んでいた涙腺から涙がこぼれた。
「な、なんだよ。泣くことはないだろ?」
チーロはロザリアの涙を見ておろおろし、ポケットを探った。が、目当てのものはなかったようで、自身の袖をロザリアの目に押し付けると、それで涙を拭ってくれた。
「……あいつのこと、そんなに好きだったのかよ」
チーロがぽつりと呟いた。
***
朝の伝令で今日はロザリアが体調不良で狩りを休むことを聞いたベネデッタは、ふんっとそっぽを向いた。
他の乙女達は「大丈夫なの?」と伝令役の侍女に聞き返している。
昨日の狩りの大成功の一翼は、明らかにロザリアが担っていた。一角獣は乙女達に鼻先を寄せていっときは興味を示すものの、最後には吸い寄せられるようにロザリアの元へと集まっていたからだ。
ベネデッタには結局ただの一頭も寄ってこなかった。忌々しいことこの上ない。
乙女達はロザリアのことを心配しているが、ベネデッタにしてみれば目障りはいないほうがいい。
ロザリアのことを聞かれた侍女は、「ただの体調不良だそうです。熱はないそうですが、体がだるいそうで」と返してきた。
体がだるいのはベネデッタだって同じだ。
今日は狩りに行こうかどうしようか迷っていたが、ロザリアがいないのなら行ってやってもいい。
あの黒妖犬の檻の前であったことを忘れたわけではない。
狩りで魔獣が襲ってきたら、またまっ先にロザリアを魔獣の前に突き飛ばしてやると決めていたが、昨日は残念ながら魔獣は現れなかった。
いないならいないで、セストにくっついて独り占めしてやるまでだ。
そう思っていたが、狩りのポイントへと移動する間、しんがりを歩くセストの元には行けず、代わりに昨日とは違う付き添いの侍女がうるさいくらい話しかけてくる。
気持ちが高揚しているようで、声がいつもよりも三割増しくらい高い。
はじめは適当に相槌を打っていたが、そのうち面倒になった。
「静かになさいな!」
そう言ったベネデッタの声のほうが大きく、見かねたのか、昨日と同じく先頭を歩いていた魔石室のグラートが、口の前に人差し指を立てた。
「お静かに。魔獣が寄ってきますよ」
その言葉に侍女は口をつぐんだ。
そこからはまたひたすら狩りのポイントへ向けて歩いた。
セストとは話せないし、日の差す前の薄暗い魔の森は、歩くたびぬかるんだ地面に足を取られそうになる。
こんなことなら自分も狩りを休めばよかった。
後ろを振り返ると昨日と同じように、最後尾を深緑のローブを着たセストがのんびりとした足取りで歩いている。こちらはちょこまかと足を動かしているのに、ストライドの長い足は楽でいい。
昨日、行軍の間、ロザリアが何度もセストを振り返って見ていたのをベネデッタは知っている。
昨日の二人の様子を見る限り、ロザリアも満更ではなさそうだった。何度も振り返ってセストとアイコンタクトを取っていた。
けれどベネデッタが何度セストと視線を合わせようとしても、なぜか視線が噛み合わない。
周囲に気を配っているからといえばそう見えないこともないが、ロザリアとはあれだけ目を合わせていたのを知っているだけにまた忌々しい。
なぜ自分は王女なのにこれほど忌々しい目に遭わされなければならないのか。腹立ちまぎれに下草を蹴れば、びょんっと蛙が飛び出し、ベネデッタは驚いて尻餅をついた。
そうこうしている間に今日の狩りの地点に到着した。
が、その日一角獣は一頭も姿を見せなかった。
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