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最後の会話
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監禁事件→救助→その後の顛末です。
◆
それからのこと。
ヴィーネ家の監禁部屋から助け出されたガベーレだったが、それでまたイレーネとルディと3人で元通りに暮らす……というわけにはいかなかった。
リオニーの家から『娘は遠くの地で静養させる。その娘の世話にガベーレを差し出してほしい、生活の保障はする、ラウターバッハ家への援助もする」という提案が。
家族からは応じろ応じろの半強制。
相手のイレーネが元は人妻だったという事情もあり、家族はそれも材料に三男を責めまくる。
ガベーレもとうとう折れた。それに応じないわけにはいかなかった。
婚約者だったリオニーに対する責任。
人妻に手を出し子供まで作ったが、そっちの家族との幸せは手にすることは叶わなかったガベーレ。
可愛いルディと愛するイレーネと別れさせられ、王都から遠く離れた静養のための地へと旅立つガベーレ。
馬車の中の痩せ細ったリオニー。うつろな目のガベーレ。二人は、王都で教会に結婚届けを出して既に夫婦となっていた。
ガベーレとイレーネとルディの3人は、ふたたび会うことも許されずに
そのまま別れ別れになった。
=====
一方イレーネは、戦争で寡婦となった女性や身寄りのない女性たちや様々な事情で孤児となった子どもたちなどが共同で暮らす教会にルディと共に入所することになった。
戦後、国が設置した施設で、焼け残った教会に少し手を入れて、生活に困った女性たち子どもたちが暮らせるようになっている。数十人もの人間がそこで共同生活を送っている。
リオニーと結婚したと聞かされ更には辺境の地へ追いやられたガベーレのその後を知って卒倒したりもしたが、教会行きを勧められそこに行く決心を固めた。
=====
《※フランツ視点》
イレーネが、その教会へ出発する日の朝。
玄関先に立ち並ぶ人々。
イレーネとルディは、それまでお世話になっていたウルリッヒさんちからケストナー家に来ていた。最後にお礼と挨拶を言いに。
執事さんの弟、ウルリッヒさんの奥さんらしき人も一緒。
なんでも、これから行く教会関係者に知り合いがいるらしく一緒に教会まで送って行ってくれるんだそうだ。
玄関の外、ルディを抱いたイレーネ、ウルリッヒさんちの奥さん、従者何人か、ケストナー家の面々。
トルーデ、俺、執事のエトムントさん、メイドさん達、執事見習いの人、使用人の方達数人…
イレーネが、この別邸の主であるトルーデの前に進み彼女に向かい深く頭を下げる。
「本当に…本当に…わたしたちはとんでもない迷惑をおかけしてしまいました。
あの人を…ガベーレを、監禁から解放してくださったことも…ありがとうございました。このご恩を胸に刻んで、この子と二人これから強く生きていきます。 ───突然来た不躾なわたしに、優しくしてくださったこと、執事さんのご実家でお世話になったことも、嬉しかったです…わたしのような人間に、こんなに良くしてくださって…本当にありがとうございました…」
その言葉を聞いたトルーデは、彼女を見つめ静かに
「どうかお元気で」、と返した。
「フランツも、最後だから…」とトルーデから促される。
皆がいるその目の前で、俺たちは、ぎこちない会話を交わすこととなった。
なかなか言葉が出てこない。
イレーネが、会話の口火を切った。
「……あなたにはもう、私を助ける義理なんかないのにこんなにもすっかり色々やってもらってしまって。本当にありがとう ──…あなたとこの家の方たちに助けてもらわなかったら、わたしとルディは今こうして生きていられたかどうか分からない。……それから、それから…あなたを傷つけてしまって、ほんとうにごめんなさい。どんなに謝っても謝っても足りないわ。
あなたを待ち続けるつもりだったけど結局あなたを裏切ってしまった。 ────わたしは最低の人間よ。ごめんなさい、いいえ…ーーーー申し訳ありませんでした」
他人に戻っての、謝罪。
小さなルディが、イレーネの腕の中でジタバタする。その小さな手を、懸命に何故だかこちらに伸ばしてくる。
「おっと…」
ルディがグラグラするが、イレーネが抱え直し体勢を戻す。その際に、小さなルディの指と俺の手が軽く触れた。
「…まあ、正直言って、ショックなんてもんじゃなかったよ…色々言いたいこともあったけど…」
長話などするつもりもない。イレーネに対してもう気持ちは一筋も残ってはいない。短く終わらせよう。
「元気で。もう会うこともないだろうけど…これでさよならだ」
会話をバッサリ終わらせたような俺の物言いに、イレーネはひどく傷付いたような哀しそうな目をした。
「さよなら…」
俺たちはおそらく、もう二度と会うことはない。
かつて愛し合ったはずの元妻との縁は、こうして切れた。
「皆さん、色々ご尽力くださいまして本当になんとお礼を言っていいか…。お世話になりました…申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました」
イレーネは、ケストナー家の面々に対して深々と頭を下げる。
ルディがぐずり出す。
=====
イレーネ達一行は出発していった。
乾いた青空に、木々を揺らして風が吹き抜けてゆく。
◆
それからのこと。
ヴィーネ家の監禁部屋から助け出されたガベーレだったが、それでまたイレーネとルディと3人で元通りに暮らす……というわけにはいかなかった。
リオニーの家から『娘は遠くの地で静養させる。その娘の世話にガベーレを差し出してほしい、生活の保障はする、ラウターバッハ家への援助もする」という提案が。
家族からは応じろ応じろの半強制。
相手のイレーネが元は人妻だったという事情もあり、家族はそれも材料に三男を責めまくる。
ガベーレもとうとう折れた。それに応じないわけにはいかなかった。
婚約者だったリオニーに対する責任。
人妻に手を出し子供まで作ったが、そっちの家族との幸せは手にすることは叶わなかったガベーレ。
可愛いルディと愛するイレーネと別れさせられ、王都から遠く離れた静養のための地へと旅立つガベーレ。
馬車の中の痩せ細ったリオニー。うつろな目のガベーレ。二人は、王都で教会に結婚届けを出して既に夫婦となっていた。
ガベーレとイレーネとルディの3人は、ふたたび会うことも許されずに
そのまま別れ別れになった。
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一方イレーネは、戦争で寡婦となった女性や身寄りのない女性たちや様々な事情で孤児となった子どもたちなどが共同で暮らす教会にルディと共に入所することになった。
戦後、国が設置した施設で、焼け残った教会に少し手を入れて、生活に困った女性たち子どもたちが暮らせるようになっている。数十人もの人間がそこで共同生活を送っている。
リオニーと結婚したと聞かされ更には辺境の地へ追いやられたガベーレのその後を知って卒倒したりもしたが、教会行きを勧められそこに行く決心を固めた。
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《※フランツ視点》
イレーネが、その教会へ出発する日の朝。
玄関先に立ち並ぶ人々。
イレーネとルディは、それまでお世話になっていたウルリッヒさんちからケストナー家に来ていた。最後にお礼と挨拶を言いに。
執事さんの弟、ウルリッヒさんの奥さんらしき人も一緒。
なんでも、これから行く教会関係者に知り合いがいるらしく一緒に教会まで送って行ってくれるんだそうだ。
玄関の外、ルディを抱いたイレーネ、ウルリッヒさんちの奥さん、従者何人か、ケストナー家の面々。
トルーデ、俺、執事のエトムントさん、メイドさん達、執事見習いの人、使用人の方達数人…
イレーネが、この別邸の主であるトルーデの前に進み彼女に向かい深く頭を下げる。
「本当に…本当に…わたしたちはとんでもない迷惑をおかけしてしまいました。
あの人を…ガベーレを、監禁から解放してくださったことも…ありがとうございました。このご恩を胸に刻んで、この子と二人これから強く生きていきます。 ───突然来た不躾なわたしに、優しくしてくださったこと、執事さんのご実家でお世話になったことも、嬉しかったです…わたしのような人間に、こんなに良くしてくださって…本当にありがとうございました…」
その言葉を聞いたトルーデは、彼女を見つめ静かに
「どうかお元気で」、と返した。
「フランツも、最後だから…」とトルーデから促される。
皆がいるその目の前で、俺たちは、ぎこちない会話を交わすこととなった。
なかなか言葉が出てこない。
イレーネが、会話の口火を切った。
「……あなたにはもう、私を助ける義理なんかないのにこんなにもすっかり色々やってもらってしまって。本当にありがとう ──…あなたとこの家の方たちに助けてもらわなかったら、わたしとルディは今こうして生きていられたかどうか分からない。……それから、それから…あなたを傷つけてしまって、ほんとうにごめんなさい。どんなに謝っても謝っても足りないわ。
あなたを待ち続けるつもりだったけど結局あなたを裏切ってしまった。 ────わたしは最低の人間よ。ごめんなさい、いいえ…ーーーー申し訳ありませんでした」
他人に戻っての、謝罪。
小さなルディが、イレーネの腕の中でジタバタする。その小さな手を、懸命に何故だかこちらに伸ばしてくる。
「おっと…」
ルディがグラグラするが、イレーネが抱え直し体勢を戻す。その際に、小さなルディの指と俺の手が軽く触れた。
「…まあ、正直言って、ショックなんてもんじゃなかったよ…色々言いたいこともあったけど…」
長話などするつもりもない。イレーネに対してもう気持ちは一筋も残ってはいない。短く終わらせよう。
「元気で。もう会うこともないだろうけど…これでさよならだ」
会話をバッサリ終わらせたような俺の物言いに、イレーネはひどく傷付いたような哀しそうな目をした。
「さよなら…」
俺たちはおそらく、もう二度と会うことはない。
かつて愛し合ったはずの元妻との縁は、こうして切れた。
「皆さん、色々ご尽力くださいまして本当になんとお礼を言っていいか…。お世話になりました…申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました」
イレーネは、ケストナー家の面々に対して深々と頭を下げる。
ルディがぐずり出す。
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イレーネ達一行は出発していった。
乾いた青空に、木々を揺らして風が吹き抜けてゆく。
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