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補足
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なんとか馬車に乗せてもらい、無事に王宮へと辿り着いたカーライルは、開かれない城門を必死になって叩き続けていた。
「おい! 聞こえないのか⁉︎ 王太子の俺が戻って来たと言ってるだろう? なのになんで門を開けない? 父上に取り次いでくれ!」
最早一人称を『私』にすることすら忘れ、開かない門を狂ったように叩き続ける。
そんなカーライルに、門番達はチラリと視線を向けるだけで、彼を止めようとも諌めようともしない。
騒ぎ疲れればそのうち大人しくなるだろうと思い、面倒だから関わらないようしているだけだ。
「はぁ……はぁ……なんで、なんでだ……」
案の定と言うべきか門番達の予想通りと言うべきか、いくら喚いても騒いでも、まったく開く様子のない城門に縋り付くようにして、カーライルはとうとう膝をついてしまう。
「久しぶりに愛する息子が戻って来たんだぞ……。普通の親だったら、泣いて喜んでパーティの一つぐらい催すものじゃないのか……」
ましてや自分は王太子。国王のたった一人の後継だ。
その自分が漸く戻って来たというのに、この対応はあり得ないだろう。
というかそもそも、門番達はなんで門を開けないんだ?
今までは自分が門の前へ立つだけで、何を言わずとも「お帰りなさいませ」と言って門を開けていたのに。
訝し気な目を門番に向け、カーライルは口を開く。
「……おい、お前達。なんでさっさと門を開けない? まさか服が平民のものだというだけで、俺が誰だか分からないわけじゃないだろうな?」
一抹の不安を覚えて尋ねると、しかしそれに門番達は揃って首を横に振った。
「まさか、そのようなことはございませんよ。貴方様は元王太子のカーライル様でいらっしゃいますよね?」
「ああ、そうだ。俺は元王太子の……ん? 元……?」
何やら不可解な単語が門番の口から発せられ、カーライルは眉を顰める。
ちょっと待て。こいつ今……俺のことを元王太子と言ったのか?
どういうことか問い詰めようとカーライルが門番の襟首に手を伸ばすのと、彼の後ろ襟が何者かによって背後へと引かれるのとが同時だった。
「ぐっ……! だ、誰だ⁉︎ 離せ!」
後ろ襟を掴まれた状態では抵抗できず、カーライルはジタバタと手足を動かす。
背後にいるのが誰なのか確認しようとするも、そのままの状態では振り向くことすらできずに。
「なんだよ? 一体誰なんだ⁉︎ は、離せ!」
闇雲に暴れるカーライルの疑問に答えたのは、初めて耳にする男の声だった。
「おい! 聞こえないのか⁉︎ 王太子の俺が戻って来たと言ってるだろう? なのになんで門を開けない? 父上に取り次いでくれ!」
最早一人称を『私』にすることすら忘れ、開かない門を狂ったように叩き続ける。
そんなカーライルに、門番達はチラリと視線を向けるだけで、彼を止めようとも諌めようともしない。
騒ぎ疲れればそのうち大人しくなるだろうと思い、面倒だから関わらないようしているだけだ。
「はぁ……はぁ……なんで、なんでだ……」
案の定と言うべきか門番達の予想通りと言うべきか、いくら喚いても騒いでも、まったく開く様子のない城門に縋り付くようにして、カーライルはとうとう膝をついてしまう。
「久しぶりに愛する息子が戻って来たんだぞ……。普通の親だったら、泣いて喜んでパーティの一つぐらい催すものじゃないのか……」
ましてや自分は王太子。国王のたった一人の後継だ。
その自分が漸く戻って来たというのに、この対応はあり得ないだろう。
というかそもそも、門番達はなんで門を開けないんだ?
今までは自分が門の前へ立つだけで、何を言わずとも「お帰りなさいませ」と言って門を開けていたのに。
訝し気な目を門番に向け、カーライルは口を開く。
「……おい、お前達。なんでさっさと門を開けない? まさか服が平民のものだというだけで、俺が誰だか分からないわけじゃないだろうな?」
一抹の不安を覚えて尋ねると、しかしそれに門番達は揃って首を横に振った。
「まさか、そのようなことはございませんよ。貴方様は元王太子のカーライル様でいらっしゃいますよね?」
「ああ、そうだ。俺は元王太子の……ん? 元……?」
何やら不可解な単語が門番の口から発せられ、カーライルは眉を顰める。
ちょっと待て。こいつ今……俺のことを元王太子と言ったのか?
どういうことか問い詰めようとカーライルが門番の襟首に手を伸ばすのと、彼の後ろ襟が何者かによって背後へと引かれるのとが同時だった。
「ぐっ……! だ、誰だ⁉︎ 離せ!」
後ろ襟を掴まれた状態では抵抗できず、カーライルはジタバタと手足を動かす。
背後にいるのが誰なのか確認しようとするも、そのままの状態では振り向くことすらできずに。
「なんだよ? 一体誰なんだ⁉︎ は、離せ!」
闇雲に暴れるカーライルの疑問に答えたのは、初めて耳にする男の声だった。
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