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第一章 貴族学園入学前
揃いの宝飾品
初めて入った宝飾品店の店内。
そこは女性であれば誰でも感嘆の声を漏らさずにはいられないような、異空間の輝きを放つ場所だった。
所狭しとばかりに様々な宝石が飾られ、それに手の込んだ細工が施された宝飾品が、原石とは違う輝きを放って、見る者の目を惹きつける。しかもそれらが最適な配置、最高に美しく見えるようライトの位置すら調整されているらしく、ただただ心を奪われ、見入ってしまう。
これが実物の宝飾品店の店内なのね……。こんな風になってるなんて、予想すらできなかったわ……。
邸に宝飾品店の商人を呼ぶときは、先にこちらから『こういった物が欲しい』と言って要望を出していたり、逆にあちらが売り込みたい物──新作など──を厳選して持ち込む以外、相手が持ち運ぶ際の事情などの関係上、さほど多くの物を持ってこられず、最低限のものしか見たことがなかった。
だからこそ、一度でいいから宝飾品店に自分の足で行ってみたいと、前々から思っていたのだ。
それがまさか、こんな形で叶うなんて──。
喜びのあまり、嬉しさを前面に出してザガロにお礼を言おうとして──その寸前、私はまた、彼に腕を引っ張られた。
そのままショーケースの前まで連れられて行き、そこで彼が一人の店員に声をかける。
「予約していたザガロ・メラニンだ。品物ができたと連絡をもらったのだが……」
「少々お待ちください」
その言葉を聞いて、“もしかして”という期待に胸が高鳴る。
そういえば兄が以前、婚約者同士は貴族学園に入学する際、お揃いの宝飾品を身につけるものだと言っていたことがあった。
それによって“自分達は婚約者です”と無言で周囲に知らしめ、互いに対して下心を持つ者を牽制したり、二人の仲の良さをアピールするのだとか。
いくらザガロがジェニーさんのことを大切に思っていると言っても、ザガロの婚約者は私だ。いずれ結婚する以上、それなりの関係を築いていかなければならない。
そのことは彼だって分かっているだろうし、だとしたら、そろそろジェニーさんの機嫌だけではなく、私の機嫌も取っておかなければならないことは、さすがの彼も気付いているだろう。
おそらく、そのために今日はここへやって来たというわけだ。
基本的に有名なお菓子屋さんやカフェばかり巡っている彼が、私のためにようやく他の物へと目を向けてくれた。その気持ちが、素直に嬉しい。
「ミディア、行くぞ」
「うん!」
ザガロに声をかけられ、満面の笑顔で返事をして、店の奥へと案内された私達。
そこで「メラニン侯爵令息様、ご婚約者様、お待ちしておりました」と案内された奥の部屋で彼と二人、店員に頭を下げられ──挨拶し終わった店員と目が合った瞬間、なぜか驚いたように、大きく目を見張られた。
そこは女性であれば誰でも感嘆の声を漏らさずにはいられないような、異空間の輝きを放つ場所だった。
所狭しとばかりに様々な宝石が飾られ、それに手の込んだ細工が施された宝飾品が、原石とは違う輝きを放って、見る者の目を惹きつける。しかもそれらが最適な配置、最高に美しく見えるようライトの位置すら調整されているらしく、ただただ心を奪われ、見入ってしまう。
これが実物の宝飾品店の店内なのね……。こんな風になってるなんて、予想すらできなかったわ……。
邸に宝飾品店の商人を呼ぶときは、先にこちらから『こういった物が欲しい』と言って要望を出していたり、逆にあちらが売り込みたい物──新作など──を厳選して持ち込む以外、相手が持ち運ぶ際の事情などの関係上、さほど多くの物を持ってこられず、最低限のものしか見たことがなかった。
だからこそ、一度でいいから宝飾品店に自分の足で行ってみたいと、前々から思っていたのだ。
それがまさか、こんな形で叶うなんて──。
喜びのあまり、嬉しさを前面に出してザガロにお礼を言おうとして──その寸前、私はまた、彼に腕を引っ張られた。
そのままショーケースの前まで連れられて行き、そこで彼が一人の店員に声をかける。
「予約していたザガロ・メラニンだ。品物ができたと連絡をもらったのだが……」
「少々お待ちください」
その言葉を聞いて、“もしかして”という期待に胸が高鳴る。
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それによって“自分達は婚約者です”と無言で周囲に知らしめ、互いに対して下心を持つ者を牽制したり、二人の仲の良さをアピールするのだとか。
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そのことは彼だって分かっているだろうし、だとしたら、そろそろジェニーさんの機嫌だけではなく、私の機嫌も取っておかなければならないことは、さすがの彼も気付いているだろう。
おそらく、そのために今日はここへやって来たというわけだ。
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そこで「メラニン侯爵令息様、ご婚約者様、お待ちしておりました」と案内された奥の部屋で彼と二人、店員に頭を下げられ──挨拶し終わった店員と目が合った瞬間、なぜか驚いたように、大きく目を見張られた。
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