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転生も楽じゃない その4(9)
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ユーオーディアさんは冷めた顔をしながら肘についているレバーを引くと、腕はドアノブに飛びかかって一捻り。鍵は解かれドアが開きます。もっとも、俺の視線はだらんと弛緩した誰かの腕に釘付けでした。
「いつまで驚いた顔をしているのですか。今からあなたは労働者です。あなたにはここで掃除をしていただきます」
「な、なにを……!!」
「一目瞭然でしょう。このゴミと非ゴミの山を取捨選択分別整頓して家をきれいにしていただきたい」
開いたドアの向こうを見てみると、確かに猛烈に散らかった部屋が見えました。ヨレヨレのシャツにいつのものかわからない雑誌と、口の閉じていない八分目くらいのゴミ袋が至る所に散らばっていて、ものの間をかき分けたあとの轍がギリギリ動線になっているといった感じでした。
「何が入ってるんですか!死体ですか!」
「あってもネズミかゴキブリの、ですね。しばらくここがあなたの寝ぐらなので、速やかに片すの賢明ですよ。あなたは家なき子なのですから」
「ここで暮らすんですか!?………うう、でも背に腹は変えられない…」
偉そうなこと言えた身分じゃないのは分かってます。でも俺が何の悪いことをしたんでしょうか。免許偽造はこの身体の責任だし、住所不定なのもこの身体のせいなのに。俺は関係ないのに……でも、じっとしていたら嫌な事を考えるだけなので、恐る恐る部屋の片付けを始めました。
片付けをしてみると意外にも意外なものはなく、案外無難なゴミ屋敷でした。3時過ぎに掃除を始めたんですが、ゴミを分別してまとめて、水場の掃除まで済ませたらもう7時半。本当に疲れました。魔法があってもお掃除は案外アナログというか、せいぜいユーオーディアさんがほうきとちりとりを魔法で召喚していた程度でした。
「…おわったぁぁぁ!!とんでもない家でしたね」
「ええ。極限環境研究所に電話して調査に来てもらおうか迷いました。あそこまで散らかっていれば新しい宇宙が一つや二つ誕生してもなんら不思議ではありません」
「AIって、ジョーク言うんですね」
「高いソフトウェアを入れれば人間よりよっぽど面白いですよ」
「…とりあえず、お腹が空きませんか…って、AIは食べないか。何かいただければすごいありがたいんですけど…」
「AIだろうと食事はします。冷蔵庫に食材があったのでコタツにでも入っててください」
「え…?そう…ですか。ありがとうございます」
隙を見計らって逃げようかとも思いましたが、いくアテもないし、家中掃除して特に怪しいものもないというのは分かったから、とりあえずしばらく様子見することにしました。
街並みはあまり代わり映えしませんでしたが、プラ容器のパッケージに知らない建造物が写ってたり、散らばってた硬貨にはよくわからない人物の肖像画があったり…細かい違いが確かにあることもだんだん分かってきました。
あと、また不思議が増えました。文字を読めるところです。日本語じゃないのに、文字列から意味が、スッと日本語に変換されます。文字を読めるのはいいんですが、何かムズムズするというか…あまり落ち着きません。どうしてだろう…
「準備はできました。あともう一人来るので、その人が来たら晩御飯にしましょう」
「えっ、そうなんですか?一体誰が」
「話の続きはいいんですか」
「え、あ、ああ…お願いします」
「もとよりあなたをあのまま帰すつもりはなかったのです。住所が偽造だったのも最初から知っていましたし」
「ええーー!?」
「嫌がる人を無理矢理連れてきたら誘拐になってしまいます。だから言質を取る必要があったんです」
「騙してたならあんまり誘拐と変わらないと思いますが…!」
「『なんでもします』と言ってしまえばもう同意ですから。迂闊でしたね」
「言ってることやばいって!やっぱり俺、あなたのこと信用できません!何か治療をするなら、普通病院でするでしょ?こんな場所に連れ込むってことは、何か裏があるんでしょ!?」
興奮する俺を見て、ユーオーディアさんは一呼吸置いてから話し始めました。
「いつまで驚いた顔をしているのですか。今からあなたは労働者です。あなたにはここで掃除をしていただきます」
「な、なにを……!!」
「一目瞭然でしょう。このゴミと非ゴミの山を取捨選択分別整頓して家をきれいにしていただきたい」
開いたドアの向こうを見てみると、確かに猛烈に散らかった部屋が見えました。ヨレヨレのシャツにいつのものかわからない雑誌と、口の閉じていない八分目くらいのゴミ袋が至る所に散らばっていて、ものの間をかき分けたあとの轍がギリギリ動線になっているといった感じでした。
「何が入ってるんですか!死体ですか!」
「あってもネズミかゴキブリの、ですね。しばらくここがあなたの寝ぐらなので、速やかに片すの賢明ですよ。あなたは家なき子なのですから」
「ここで暮らすんですか!?………うう、でも背に腹は変えられない…」
偉そうなこと言えた身分じゃないのは分かってます。でも俺が何の悪いことをしたんでしょうか。免許偽造はこの身体の責任だし、住所不定なのもこの身体のせいなのに。俺は関係ないのに……でも、じっとしていたら嫌な事を考えるだけなので、恐る恐る部屋の片付けを始めました。
片付けをしてみると意外にも意外なものはなく、案外無難なゴミ屋敷でした。3時過ぎに掃除を始めたんですが、ゴミを分別してまとめて、水場の掃除まで済ませたらもう7時半。本当に疲れました。魔法があってもお掃除は案外アナログというか、せいぜいユーオーディアさんがほうきとちりとりを魔法で召喚していた程度でした。
「…おわったぁぁぁ!!とんでもない家でしたね」
「ええ。極限環境研究所に電話して調査に来てもらおうか迷いました。あそこまで散らかっていれば新しい宇宙が一つや二つ誕生してもなんら不思議ではありません」
「AIって、ジョーク言うんですね」
「高いソフトウェアを入れれば人間よりよっぽど面白いですよ」
「…とりあえず、お腹が空きませんか…って、AIは食べないか。何かいただければすごいありがたいんですけど…」
「AIだろうと食事はします。冷蔵庫に食材があったのでコタツにでも入っててください」
「え…?そう…ですか。ありがとうございます」
隙を見計らって逃げようかとも思いましたが、いくアテもないし、家中掃除して特に怪しいものもないというのは分かったから、とりあえずしばらく様子見することにしました。
街並みはあまり代わり映えしませんでしたが、プラ容器のパッケージに知らない建造物が写ってたり、散らばってた硬貨にはよくわからない人物の肖像画があったり…細かい違いが確かにあることもだんだん分かってきました。
あと、また不思議が増えました。文字を読めるところです。日本語じゃないのに、文字列から意味が、スッと日本語に変換されます。文字を読めるのはいいんですが、何かムズムズするというか…あまり落ち着きません。どうしてだろう…
「準備はできました。あともう一人来るので、その人が来たら晩御飯にしましょう」
「えっ、そうなんですか?一体誰が」
「話の続きはいいんですか」
「え、あ、ああ…お願いします」
「もとよりあなたをあのまま帰すつもりはなかったのです。住所が偽造だったのも最初から知っていましたし」
「ええーー!?」
「嫌がる人を無理矢理連れてきたら誘拐になってしまいます。だから言質を取る必要があったんです」
「騙してたならあんまり誘拐と変わらないと思いますが…!」
「『なんでもします』と言ってしまえばもう同意ですから。迂闊でしたね」
「言ってることやばいって!やっぱり俺、あなたのこと信用できません!何か治療をするなら、普通病院でするでしょ?こんな場所に連れ込むってことは、何か裏があるんでしょ!?」
興奮する俺を見て、ユーオーディアさんは一呼吸置いてから話し始めました。
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