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開闢令嬢その1(1)
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『元来、令嬢というと様々なものがあったのですが、なぜか令嬢は悪役にされがちでありました。かつて令嬢とは高貴さの表れでした。彼女たちは彼女たちなりに信念を持って、ただただ高貴に生きていたのです。その生まれ持った気高さや清さを羨んだ下賤な一般市民たちは、『令嬢はすべからく性格が最悪で、高貴な生まれの自分に酔っている』とみなし、令嬢を悪者に仕立て上げました。しかし実際のところは、彼らは令嬢のことをよく知らなかったのです。令嬢たちが燦々と輝きすぎたためです。彼らの目に令嬢の本当の姿が映ることは決してなく、彼らは盲目のまま石を投げ続けました。』
『令嬢は絶滅しました。彼らの投げた石の中に、隕石が混じっていたのです。これはジャイアント・インパクトと呼ばれ、およそ一般市民のほぼ全てを死に至らしめました。しかし下賤な一般市民の生き残りたちは、隕石の落下は令嬢の企みであったとでっち上げたのです。やがて一般市民たちは代替わりし、令嬢という存在そのものすら、忘れ去られていきました。』
『ジャイアント・インパクトから、およそ40億年は経った頃のことです。下賤な一般市民は陸に上がり空を飛び荒ぶり、野蛮にも互いにその身を食い荒らしながら、『文明』と呼ばれるものを築き上げました。この頃、一般市民は己が何者であったかも、己がどんな罪を犯したかさえも忘れてしまっていました。』
そう、あの歴史的発見が訪れるまでは…
「教授、本当にここであっているんですの…?」
「ああ、そのはずだ。太古の昔に絶滅したと考えられていた『令嬢』の遺跡…」
「あの文献、正直私は一切理解できなかったんですが。怪文書でしてよあんなの」
「だからこその調査なのだ!人類が生まれる前に『令嬢』なる知的存在があったとわかれば、それこそ偉大な世界的大発見だろう?」
「…はあ、私こういう狭くて暗いところ不慣れなんですけど」
「君は大企業の社長の娘だったな。この涌田研はフィールドワークを通して人類史を見つめ直すアクティブ・ラボだ!社長の娘だろうと手加減はできない」
「はあぁ~。にしても、『令嬢』ってどういう意味なんでしょうね。これで案外しょうもないものだったらたまらないわ。じいやに着替えを持って迎えにきてもらおうかしら」
「ぶつくさ言うな!着いたぞ!」
こじんまりとしているように見える洞窟の中を、教授はズカズカと、研究生の姫岡はツカツカと進んで行きました。
「文献によると、ここで『高貴な振る舞い』をすると書いてある…」
「ただの行き止まりですわ。やっぱり無駄足でしたわね」
「まだだ!高貴に振る舞うとなれば…やはりコレであろう」
「…なんですの、それ」
「お茶だ!!今からアフタヌーンティーするぞ!」
「玄米茶ァ~~!?玄米茶でアフタヌーンティーをしようなどと、お脳細胞を脱穀され遊ばせましたか??」
「家にコレしかなかったんだ!!お茶請けはおかき!!午後7時56分だから原理上アフタヌーンティーにもなるだろう!!ほらさっさとやるぞ」
「おかきは作成過程で高音の油による爆裂を伴うので下品ですわ!庶民が正月のあまりの切り餅で賄うおやつ如きが、高貴なるアフタヌーンティーの座に君臨しようなどと僭越もいいところでしてよ!!」
「なんだよ偏見ばっかり!!お前、この調査が失敗したら卒論書けないんだぞ!!文句あるならちったあ協力しろ!!」
「……ちっ、いいですこと!?もはやアフタヌーンティーをするのには遅すぎるのですわよ!『今は午後だからアフタヌーンと言って差し支えなしぃ~~』などと翻った態度を取るのは精神的に幼稚で非常識!すなわち、今するべきは舞踏会です!」
「舞踏会とか言ったってよお、私はどじょう掬いしかできないぞ!?こんな狭いところで踊れと言われたって…」
「ど…どじょう……!?その泥臭さの化身のような言葉を口から発さないでちょうだい!!4文字の中に濁点が2回も!!ああ、空気中に土埃が待っているような気分だわ!!」
『ごごごごご…………』
行き止まりのように見えた壁が突然地面にゆっくりと沈み込み、その大きな音に二人は目を奪われてしまいました。
「こっ………これはぁ!!!」
「何事…何事ですの!?じいや!!じいや助けて!!」
「…チャンスだよ!!やっぱり伝承は本当だったんだべさ!!このままどじょう掬いしながら洞窟探索するっぺよ!!」
「ああもう!!レディを置いていくなんて~~~!!!」
謎に開いた壁が閉じていくことにも気づくことなく、二人は洞窟の奥地へと駆け抜けていくのでした…
『令嬢は絶滅しました。彼らの投げた石の中に、隕石が混じっていたのです。これはジャイアント・インパクトと呼ばれ、およそ一般市民のほぼ全てを死に至らしめました。しかし下賤な一般市民の生き残りたちは、隕石の落下は令嬢の企みであったとでっち上げたのです。やがて一般市民たちは代替わりし、令嬢という存在そのものすら、忘れ去られていきました。』
『ジャイアント・インパクトから、およそ40億年は経った頃のことです。下賤な一般市民は陸に上がり空を飛び荒ぶり、野蛮にも互いにその身を食い荒らしながら、『文明』と呼ばれるものを築き上げました。この頃、一般市民は己が何者であったかも、己がどんな罪を犯したかさえも忘れてしまっていました。』
そう、あの歴史的発見が訪れるまでは…
「教授、本当にここであっているんですの…?」
「ああ、そのはずだ。太古の昔に絶滅したと考えられていた『令嬢』の遺跡…」
「あの文献、正直私は一切理解できなかったんですが。怪文書でしてよあんなの」
「だからこその調査なのだ!人類が生まれる前に『令嬢』なる知的存在があったとわかれば、それこそ偉大な世界的大発見だろう?」
「…はあ、私こういう狭くて暗いところ不慣れなんですけど」
「君は大企業の社長の娘だったな。この涌田研はフィールドワークを通して人類史を見つめ直すアクティブ・ラボだ!社長の娘だろうと手加減はできない」
「はあぁ~。にしても、『令嬢』ってどういう意味なんでしょうね。これで案外しょうもないものだったらたまらないわ。じいやに着替えを持って迎えにきてもらおうかしら」
「ぶつくさ言うな!着いたぞ!」
こじんまりとしているように見える洞窟の中を、教授はズカズカと、研究生の姫岡はツカツカと進んで行きました。
「文献によると、ここで『高貴な振る舞い』をすると書いてある…」
「ただの行き止まりですわ。やっぱり無駄足でしたわね」
「まだだ!高貴に振る舞うとなれば…やはりコレであろう」
「…なんですの、それ」
「お茶だ!!今からアフタヌーンティーするぞ!」
「玄米茶ァ~~!?玄米茶でアフタヌーンティーをしようなどと、お脳細胞を脱穀され遊ばせましたか??」
「家にコレしかなかったんだ!!お茶請けはおかき!!午後7時56分だから原理上アフタヌーンティーにもなるだろう!!ほらさっさとやるぞ」
「おかきは作成過程で高音の油による爆裂を伴うので下品ですわ!庶民が正月のあまりの切り餅で賄うおやつ如きが、高貴なるアフタヌーンティーの座に君臨しようなどと僭越もいいところでしてよ!!」
「なんだよ偏見ばっかり!!お前、この調査が失敗したら卒論書けないんだぞ!!文句あるならちったあ協力しろ!!」
「……ちっ、いいですこと!?もはやアフタヌーンティーをするのには遅すぎるのですわよ!『今は午後だからアフタヌーンと言って差し支えなしぃ~~』などと翻った態度を取るのは精神的に幼稚で非常識!すなわち、今するべきは舞踏会です!」
「舞踏会とか言ったってよお、私はどじょう掬いしかできないぞ!?こんな狭いところで踊れと言われたって…」
「ど…どじょう……!?その泥臭さの化身のような言葉を口から発さないでちょうだい!!4文字の中に濁点が2回も!!ああ、空気中に土埃が待っているような気分だわ!!」
『ごごごごご…………』
行き止まりのように見えた壁が突然地面にゆっくりと沈み込み、その大きな音に二人は目を奪われてしまいました。
「こっ………これはぁ!!!」
「何事…何事ですの!?じいや!!じいや助けて!!」
「…チャンスだよ!!やっぱり伝承は本当だったんだべさ!!このままどじょう掬いしながら洞窟探索するっぺよ!!」
「ああもう!!レディを置いていくなんて~~~!!!」
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