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二十三、迷子
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家に向かっていた筈だ。
記憶にある限りでは確かに、歩き慣れた道をなぞっていたはずだった。
手元の液晶では、『クリア』の文字が点滅している。電池の残量は心もとない。マップを起動しようとした途端に電源が落ちる。
(どうしよう…)
途方に暮れて立ち尽くす。
駅から家まで徒歩で20分程の距離。いつも通り小さな画面を見ながら歩き慣れた道をトボトボと帰っていた。
なんの気もなしに、ふと顔を上げたのはついさっき。あたりを見渡して、血の気が引いた。
(…ここ、どこだろ…)
いつの間にか知らない道を突き進んでいたらしい。見たこともない景色に囲まれていた。
頭を抱えたくなったとき、曲がり角から人が現れた。大学生くらいだろうか。その男性の視線はスマホに注がれ、足早に歩を進めている。
人に話しかけるのは得意ではないのだが、背に腹は変えられない。勇気を振り絞って声をかけた。
「すみません…」
気づいてもらえない。
「すみません、」
まだ気付かない。
「すみません!」
少し声を張ったら、彼はようやく振り向いた。怪訝そうな顔でこちらを見ている。
「その、道に迷ってしまって…」
そう告げると、そんなことか、とでも言うように彼は腕を上げて道を指し示した。そのまま硬直する。
「…あ…れ?…ここ、どこだ……?」
まさか。
目の前の彼もマップを起動させようとしている。そして、すぐに焦り始めた。
電池が切れたようだった。
自然な成り行きで、連れ立って大きな道まで戻ることになった。
よく見ると、定期やキーホルダーなどが落ちている。定期の区間はどれもバラバラで、この場所はどこなのか、考えてもわからない。
時折通る人々の視線は全てスマホや携帯の液晶に注がれている。
横にいる彼が、何かに気づいた。
「ついていったら、どうでしょう…?」
声をかけずに。
他に何も思いつかず、帰宅途中らしいサラリーマンの後ろを歩く。もし不審者と思われても、正直警察が来てくれれば家には帰れるだろう。
目の前のサラリーマンが自宅らしき場所のインターホンを押すのを見計らって声をかける。見事に不審者と思われたが致し方ない。
なんだかんだで、自宅に帰ることはできたが、非常に不思議な点が一つ。
迷子になった末たどり着いたあの場所は、徒歩で行けるようなところではなかった。
記憶にある限りでは確かに、歩き慣れた道をなぞっていたはずだった。
手元の液晶では、『クリア』の文字が点滅している。電池の残量は心もとない。マップを起動しようとした途端に電源が落ちる。
(どうしよう…)
途方に暮れて立ち尽くす。
駅から家まで徒歩で20分程の距離。いつも通り小さな画面を見ながら歩き慣れた道をトボトボと帰っていた。
なんの気もなしに、ふと顔を上げたのはついさっき。あたりを見渡して、血の気が引いた。
(…ここ、どこだろ…)
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頭を抱えたくなったとき、曲がり角から人が現れた。大学生くらいだろうか。その男性の視線はスマホに注がれ、足早に歩を進めている。
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「すみません…」
気づいてもらえない。
「すみません、」
まだ気付かない。
「すみません!」
少し声を張ったら、彼はようやく振り向いた。怪訝そうな顔でこちらを見ている。
「その、道に迷ってしまって…」
そう告げると、そんなことか、とでも言うように彼は腕を上げて道を指し示した。そのまま硬直する。
「…あ…れ?…ここ、どこだ……?」
まさか。
目の前の彼もマップを起動させようとしている。そして、すぐに焦り始めた。
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よく見ると、定期やキーホルダーなどが落ちている。定期の区間はどれもバラバラで、この場所はどこなのか、考えてもわからない。
時折通る人々の視線は全てスマホや携帯の液晶に注がれている。
横にいる彼が、何かに気づいた。
「ついていったら、どうでしょう…?」
声をかけずに。
他に何も思いつかず、帰宅途中らしいサラリーマンの後ろを歩く。もし不審者と思われても、正直警察が来てくれれば家には帰れるだろう。
目の前のサラリーマンが自宅らしき場所のインターホンを押すのを見計らって声をかける。見事に不審者と思われたが致し方ない。
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