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二十五、自殺
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よく、人を殺す夢を見る。
とは言え、相手の顔はおぼろげでよくわからない。
ただ、その夢を見たあとは酷く悲しい気分で目が覚めるのだ。…自分が殺されたわけでもないのに。
「―――ってー、真面目でー、すごいよねー。」
間延びした声は、小馬鹿にしたような音を含んでいた。
『もっと効率よくできないのか』
暗にそう言われているのは分かっていた。実際、廊下の影でそう言っているのを聞いてしまった。しかし、問い詰めることも文句を言うこともできずに、せめてもの意趣返しと言わんばかりににっこりと笑う。
「ありがとう。」
心にもない言葉を口先だけで並べて、その場をあとにする。クスクスと嘲笑う声が背中に刺さった。
「あのさ、もう少し周りと上手くできないかなー」
またお前かとでも言わんばかりの表情で言葉が紡がれる。
「俺も協力してやるから」
恩着せがましい言葉は、本心ではないことを知っているし、彼の『協力』は、ただ人間関係を掻き回してより悪化させるだけだと、ついこの間身を持って知った。
「すいません、ありがとうございます。」
表情が悟られないよう、深く頭を下げた。
夢の中で、目の前の人物が叫ぼうとしている。
自分はそれを止めようと、相手の口に手を当てる。首に手をやり、力を込める。
相手は、しばらくもがいたあと、力尽きたように動かなくなった。
そっと両手を離すと、首には手の跡が模様のように浮き出ていた。
また、朝が来る。
朝、電車を待つホームで、ふと、線路に降りてみたくなった。
フラフラと黄色い線を超えるが、周りがそれに気付くこともない。
『まもなく、電車がまいります』
自動音声が聞こえる。
今降りたら、きっと楽になれる。
一歩、もう一歩と進みだそうとしたときだった。
「それはダメだ」
頭の中で声がした。
ハッとして振り返ると、ホームの人混みの中になんだか良く知っているような気がする顔があった。
「それは、駄目だよ」
疲れたように笑みを浮かべながら、それでも『ダメだ』と繰り返す。
「まだ終わりじゃないんだから」
ね?
そう言いながら傾げた首には、見覚えのある手の跡。まさかと思って近づこうとした時、丁度電車が到着した。
人波に流され、電車に押し込まれながらも目で探したが、もう見つからない。
ドアがしまった瞬間、ようやくホームにその人が見えた。
「また今夜」
よく見知った、自分と同じ顔のその人をおいて、電車が走り出す。
また今夜、夢の中で。
とは言え、相手の顔はおぼろげでよくわからない。
ただ、その夢を見たあとは酷く悲しい気分で目が覚めるのだ。…自分が殺されたわけでもないのに。
「―――ってー、真面目でー、すごいよねー。」
間延びした声は、小馬鹿にしたような音を含んでいた。
『もっと効率よくできないのか』
暗にそう言われているのは分かっていた。実際、廊下の影でそう言っているのを聞いてしまった。しかし、問い詰めることも文句を言うこともできずに、せめてもの意趣返しと言わんばかりににっこりと笑う。
「ありがとう。」
心にもない言葉を口先だけで並べて、その場をあとにする。クスクスと嘲笑う声が背中に刺さった。
「あのさ、もう少し周りと上手くできないかなー」
またお前かとでも言わんばかりの表情で言葉が紡がれる。
「俺も協力してやるから」
恩着せがましい言葉は、本心ではないことを知っているし、彼の『協力』は、ただ人間関係を掻き回してより悪化させるだけだと、ついこの間身を持って知った。
「すいません、ありがとうございます。」
表情が悟られないよう、深く頭を下げた。
夢の中で、目の前の人物が叫ぼうとしている。
自分はそれを止めようと、相手の口に手を当てる。首に手をやり、力を込める。
相手は、しばらくもがいたあと、力尽きたように動かなくなった。
そっと両手を離すと、首には手の跡が模様のように浮き出ていた。
また、朝が来る。
朝、電車を待つホームで、ふと、線路に降りてみたくなった。
フラフラと黄色い線を超えるが、周りがそれに気付くこともない。
『まもなく、電車がまいります』
自動音声が聞こえる。
今降りたら、きっと楽になれる。
一歩、もう一歩と進みだそうとしたときだった。
「それはダメだ」
頭の中で声がした。
ハッとして振り返ると、ホームの人混みの中になんだか良く知っているような気がする顔があった。
「それは、駄目だよ」
疲れたように笑みを浮かべながら、それでも『ダメだ』と繰り返す。
「まだ終わりじゃないんだから」
ね?
そう言いながら傾げた首には、見覚えのある手の跡。まさかと思って近づこうとした時、丁度電車が到着した。
人波に流され、電車に押し込まれながらも目で探したが、もう見つからない。
ドアがしまった瞬間、ようやくホームにその人が見えた。
「また今夜」
よく見知った、自分と同じ顔のその人をおいて、電車が走り出す。
また今夜、夢の中で。
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