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三十七、隧道
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どこで間違えたのだろうか。
先程から走っているトンネルの中には、時間の感覚を忘れるような明るいライトが延々と続いている。
壁を覆う白い板は、いつの間にか、新旧入り混じっているようで、グレーのモザイクを見ているようだった。
近道を、しようと思ったのだ。
渋滞に続く渋滞。終わらない車の列を、抜け出し、皆が気づいていないような細い路地に入った。
元来、地図というものが苦手で昨今流行のカーナビなんぞは乗せていない。
方位磁針を片手に目的地を目指すのが得意だったため、今回も、愛用の小さな方位磁針を覗き込みながら入り組んだ道を進んだ。…恐らく、それが悪かったのだろう。
入り口は、さながら高速道路のトンネルのようだった。前後に車はなく、ありきたりなトンネルの中を淡々と進んでいた。目的地は、山を一つ超えるはずだったので、長いトンネルを通ってもおかしくない。そう、思っていた。
おかしい
そう感じたのはついさっきだ。
うねる道はいくら走っても出口が見えず、そらに加えて、対向車もない。同じ車線上にももちろん車は見当たらない。
引き返そうか…
不安にかられ、一瞬、弱気な考えが頭をよぎる。しかし、今まで走ってきた時間を思うと、そうアッサリと引き返せなかった。あと少し。あと少しで、きっと出口が見える。
…そう思いながら走って、もう何十分になるだろう。車内の時計と、ガソリンのメーターだけが時間の経過を報せていた。
とうとう、車を止めた。
脇に寄せ、エンジンを切って、頭を抱える。何がどうなっているのやら。
さんざん迷った挙句、渋々車を降りた。
長いトンネルには必ず設置されている、非常電話。幸い、今まで使ったことはないが、まさかこんな場面で使うとは思っても見なかった。
自分がどこのトンネルにいるかわからないなんて、恥ずかしいにも程がある。が、電波も圏外となっている今、背に腹は変えられなかった。
受話器をとり、応答をまつ。
すぐに、男性の声がした。
状況を説明しようと口を開く前に、電話口の相手が囁くように告げる。
『今すぐ引き返してください。』
まるで此方の状況がわかっているように、また、何か秘密でも漏らすように密やかな声で、流暢に言葉を並べる。
『サイドミラーをたたんで、バックミラーは何かで覆ってください。ターンして、急いで戻って。それから、他の車を見るまでは後ろを絶対に見ないように。』
かえれなくなります
そう囁いてから、彼はすぐに『あ、悪戯電話でしたー』と受話器から離れたところで声を張っていた。
騙されているような気がしたが、脳裏にこびりついている嫌な予感から、指示通りに車をターンさせる。
車線を変えた途端、ゾワリと、首筋に鳥肌が立った。
純粋な恐怖から、アクセルを踏む足に力がこもる。前だけを見て、しっかりとハンドルを握る。
時折後ろから視線を感じたが、全て無視してアクセルを踏み続けた。
入ってきた入り口までは、異常に早く着いた。多少安堵し、車の速度を落とす。
まだ、油断はできない。
逃れたはずの渋滞の列に大人しく加わり、漸く一息ついた。
急いで、サイドミラーとバックミラーを復活させる。てっきり、手形でもついているかと思ったが、どうやらホラーの見すぎだったようで、なんの変哲もない景色に胸をなでおろした。
後日、渋々乗せたカーナビとやらで、あのトンネルを調べたが、どうにも出てこなかった。しかし、喉元すぎればなんとやらで、今更になって気になるのだ。もし、走り続けてい隧道、もし、振り返っていたら…。
何が、あったのだろうか、と。
先程から走っているトンネルの中には、時間の感覚を忘れるような明るいライトが延々と続いている。
壁を覆う白い板は、いつの間にか、新旧入り混じっているようで、グレーのモザイクを見ているようだった。
近道を、しようと思ったのだ。
渋滞に続く渋滞。終わらない車の列を、抜け出し、皆が気づいていないような細い路地に入った。
元来、地図というものが苦手で昨今流行のカーナビなんぞは乗せていない。
方位磁針を片手に目的地を目指すのが得意だったため、今回も、愛用の小さな方位磁針を覗き込みながら入り組んだ道を進んだ。…恐らく、それが悪かったのだろう。
入り口は、さながら高速道路のトンネルのようだった。前後に車はなく、ありきたりなトンネルの中を淡々と進んでいた。目的地は、山を一つ超えるはずだったので、長いトンネルを通ってもおかしくない。そう、思っていた。
おかしい
そう感じたのはついさっきだ。
うねる道はいくら走っても出口が見えず、そらに加えて、対向車もない。同じ車線上にももちろん車は見当たらない。
引き返そうか…
不安にかられ、一瞬、弱気な考えが頭をよぎる。しかし、今まで走ってきた時間を思うと、そうアッサリと引き返せなかった。あと少し。あと少しで、きっと出口が見える。
…そう思いながら走って、もう何十分になるだろう。車内の時計と、ガソリンのメーターだけが時間の経過を報せていた。
とうとう、車を止めた。
脇に寄せ、エンジンを切って、頭を抱える。何がどうなっているのやら。
さんざん迷った挙句、渋々車を降りた。
長いトンネルには必ず設置されている、非常電話。幸い、今まで使ったことはないが、まさかこんな場面で使うとは思っても見なかった。
自分がどこのトンネルにいるかわからないなんて、恥ずかしいにも程がある。が、電波も圏外となっている今、背に腹は変えられなかった。
受話器をとり、応答をまつ。
すぐに、男性の声がした。
状況を説明しようと口を開く前に、電話口の相手が囁くように告げる。
『今すぐ引き返してください。』
まるで此方の状況がわかっているように、また、何か秘密でも漏らすように密やかな声で、流暢に言葉を並べる。
『サイドミラーをたたんで、バックミラーは何かで覆ってください。ターンして、急いで戻って。それから、他の車を見るまでは後ろを絶対に見ないように。』
かえれなくなります
そう囁いてから、彼はすぐに『あ、悪戯電話でしたー』と受話器から離れたところで声を張っていた。
騙されているような気がしたが、脳裏にこびりついている嫌な予感から、指示通りに車をターンさせる。
車線を変えた途端、ゾワリと、首筋に鳥肌が立った。
純粋な恐怖から、アクセルを踏む足に力がこもる。前だけを見て、しっかりとハンドルを握る。
時折後ろから視線を感じたが、全て無視してアクセルを踏み続けた。
入ってきた入り口までは、異常に早く着いた。多少安堵し、車の速度を落とす。
まだ、油断はできない。
逃れたはずの渋滞の列に大人しく加わり、漸く一息ついた。
急いで、サイドミラーとバックミラーを復活させる。てっきり、手形でもついているかと思ったが、どうやらホラーの見すぎだったようで、なんの変哲もない景色に胸をなでおろした。
後日、渋々乗せたカーナビとやらで、あのトンネルを調べたが、どうにも出てこなかった。しかし、喉元すぎればなんとやらで、今更になって気になるのだ。もし、走り続けてい隧道、もし、振り返っていたら…。
何が、あったのだろうか、と。
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