オミナス・ワールド

ひとやま あてる

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第1章 Life in Lacra Village

第2話 エスナの苦悩

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 ラクラ村、村長宅。 そこでは男どもが集まって何やら言い合いを続けていた。

「結局、誰が最初にこんなことをやったんじゃ……?」
「俺はあいつが殴りかかったから手伝ったまでさ」
「はぁ? なんで俺なんだよ! お前こそ先に殴ってたろうが!」
「いきなりあんなものを向けられたら仕方ないっての」
「みんな恐怖でおかしくなってたんだよ。 あいつからはこっちを攻撃する意志が感じられたね!」
「はぁ……これでは埒が開かんな」

 村長──メレド=ラクラは深いため息をついた。

 現在の話し合いは、村の男どもが身元不明者を集団暴行したことに起因している。

『おい、どうするんだよ……?』
『まさか、殺しちゃいねぇだろうな……?』

 ハジメが意識を失った直後、正気に戻った彼らは自分達のやってしまったことを後悔し始めていた。

 夜中に異国の言語を話すハジメは彼らにとって恐怖以外の何者でも無く、暴行もただ突発的にやってしまったことだった。 いわば恐怖に対する反射的な行動であり、間違っているといえば間違っているのだが、理解できない行動でもなかった。 しかし足元に転がった重傷者を目の前にすると、やってやったというよりも後悔が先んじるのだった。

『おい、何してる!?』

 この集団の中での唯一の女性が膝を折り、ハジメの身体に触れながら荷物を漁っていた。

『この人、言葉が分かっていなかったようです。 さっきの光も、私が指差したから見せてくれただけかもしれません』
『あれはどう考えても我々への攻撃だったろう?』
『そもそも、こんな夜中に徘徊している時点で怪しさしか無い!』
『盗賊の犯行を未然に食い止めたと思えば心は痛まん』
『そうは言いますが……この人、身分の低い方には見えないのです』
『その服装か? 確かに変だが、貴族様では無いだろう』

 ハジメの服装は上下セットのジャージである。 大学の近隣に宿を借りていたハジメにとって、服装はそれほど気にするようなものではなかった。 短い登校時間で誰かに見られることも少ないし、そもそも友達の少ないハジメには服装に掛ける意欲も金も存在していなかった。

『そうでしょうか? この人の手、まったく綺麗なままです。 少なくとも農業や林業に従事している人間の手ではありません』
『待て待て。 それは、あれか? 俺たちは間違ってどこぞの貴族様を殴打したってことか……?』
『魔人じゃあるまいし、言葉が分からない人間など聞いたことが……』
『嘘だ……これじゃ俺たち……』

 唐突に、彼らを不安が襲った。 自分達が殴った相手が貴族だったなど、それだけで極刑に値する重罪だ。 それがたとえ正当防衛であっても、農民のその言が裁判で通用した前例などここ数100年、いやこれまでになかったかもしれない。

 今回は集団による暴行だ。 これでは誰がやったなどで言い逃れはできず、下手すれば村ごと焼却させられる恐れさえある。

『それならいっそ殺して埋めたほうが……』
『め、滅多なこと言うもんじゃねぇよ! やるなら言い出したお前がやれよ!』
『でもこうなったのはここにいる全員の責任だろう! ……なぁ、エスナ』

 エスナと呼ばれた女性──ハジメに話しかけていた彼女はびくりと肩を震わせた。

『え……私は……』
『お前がこいつ……この人を刺激しなければこうはなっていないだろうが!』

 そうだそうだ、と一人の男の発言に周囲が同調を示し始めた。

『私は、何も……』
『これは……エスナ、お前がやったことだよな?』

 突然の暴論に、エスナは理解が追いつかなかった。

『……え?』
『お前が俺たちを焚きつけたからこうなったんだ。 この責任はお前が取らなければならない』
『ど、どうして……どうして私の責任に……』
『口答えするなッ! 村に飼ってもらっているお前に発言権は無い!』

 男の一人は大声で怒鳴り散らした。 そうすればエスナは何も言えないということを知っているからだ。 有無を言わさず畳み掛ければ、彼女は全ての物事に対して首を縦に振る。

『そうだな、じゃあお前の──』
『何をやっておる……』

 男が言い切る前に、しゃがれた声がそれを妨げた。

『そ、村長……』
『なんじゃ喚きおって。 して、何者が徘徊していたか分かったのか?』
『え、いや……』

 バツの悪そうな反応に、村長は周囲の男どもを見渡す。 だがそのどれも目を合わそうとはしない。 そして最後にエスナの方を見ると、彼女は下を向いて俯いているだけだ。
 
『……む?』

 村長は彼女の視線を追った。 そこには何やら転がっているようだが、よくよく目を凝らせば何者かが倒れ伏している。 しかもボロ切れのように衣類が傷つけられ、息荒く背中を揺らしているではないか。

『何があったのじゃ……?』
『えーっと、そのー……』
『エスナ、お前が答えるのじゃ』
『え、あ、はい……。 あの、実は──』

 かくかくしかじか。 エスナが話し終えてから村長の怒号が響くまでは数秒もなかった。 そして現在に至るというわけだ。

「起こってしまったことは最早覆らん。 あの場で遺棄しようとしなかっただけマシというものじゃ。 ……みな、よく聞け。 まずその者に心当たりは?」

 返事はない……当然だ。 ラクラ村はエーデルグライト王国でも最も辺鄙な地に存在しているし、村人の大半が自分の村から出た経験すら無いのだ。 外の人間など知る由もないだろう。

 ラクラ村は総人口100名にも及ばない小さな村だ。 ここは新規ではないが少し昔から続く村であり、王国南端の山裾の開拓を任された開拓村だ。 そのような場所にわざわざ寄り付くような人間がいるだろうか? いや、居ない。 村長はそう断言できる。

 他村や町との交流のため外出の機会が多い村長こそ、田舎暮らしの不便さは知っている。 村から町に出たいと思う人間はいても、その逆はいない。 では誰なら寄り付くのか。 それは、町などを追われた犯罪者や口減らしのために村を追い出された者、そして貴族の末弟などだろう。

 村の男どもが乱暴した彼は、身なりや身体的特徴から貴族である可能性は高い。 もし彼が逃げ出してきた貴族などであった場合、捜索の手がこの村まで伸びてくることは容易に想像できる。 そんな時に彼を保護していなかった、あまつさえ殺してしまっていたなどが知れればこの村は終わりだ。  全員が首を括る……いや、それ以上か。 少なくとも、まともな最期は迎えさせてもらえないだろう。

 いくら村人程度が偽ったところで、魔法で捜索されて仕舞えば容易に足がつく。 だからこそ、真摯な態度で対応しておかなければならない。

 とはいえ、だ。

「まぁそうじゃろうな。 とにかく、その者はしばらくこの村で預かることとする。 もしその者に関わりのある人間がやってきたら、決して偽るでないぞ?」

 男どもはごくりと喉を鳴らした。 それほどに村長の眼光は鋭いものだった。

「それは分かりましたけど、誰が面倒見るんですか? 俺は家族があるんで、これ以上生活が逼迫するようなのは無理ですよ」

 誰だってそうだろう。 村長であってもそれは例外ではない。 どの男も自分に面倒事を押し付けられるのを避けたい面持ちだ。

「問題ない、適任ならおる」
「それって……?」

 男ども全員の視線が1人に集中した。

「エスナ、責任を取ってお前が面倒を見るのだ」

 この集まりの中にあって唯一何も言葉を発さなかった彼女。 彼女の目は絶望に染まりながら、それでいてこの状況を受け入れているとも取れる揺らぎを含んでいる。

「……はい」

 エスナに拒否権は無い。 今までも、これからも。 村には大変に世話になっているし、食料を分けてすらもらって生活しているのだから。

「では、今後その者の面倒はエスナが見ることとする。 他の者は何があっても関わるでないぞ?」

 村長の言葉に反抗する者は誰もいなかった。


          ▽


「ん……お姉、ちゃん……?」

 物音に反応して少女が目を覚ました。

「あ、ごめんね。 起こしちゃったね、レスカ」

 扉が開いて、そこから月明かりが室内に漏れ入っている。

 エスナは荷物を背中に隠しながら、いつも通り妹のレスカに優しく話しかける。

「いいの……。 お姉ちゃん、まだ夜だよ? どうしたの?」
「何でもないのよ。 えっと、そうね……これからひとりかぞ……お友達が増えるから相手してあげてね」
「んー……お友達……?」
「まだ眠いわね。 また起きたらお話ししてあげるわ。 だから今は眠っていなさい」
「はぁー……い」

 レスカがすぅすぅと寝息を立て始めたのを確認して、エスナは荷物を室内に運び込んだ。 荷物──木板に横たえられた男を引き摺りながら、彼を使用していない空き部屋へ。 そのままそっと扉を閉じた。

「ふぅ……」

 と、エスナは大きく溜め息をついた。 悩みの対象は、彼。 忌々しい、と思う。

 エスナの表情が醜いものに歪むが、彼女は両手で無理やりに口角を上げてそれをなかったことにして見せた。

「なんで……私ばっかり……」

 涙が溢れる。 しかしこの状況は一生変えられない。

 状況が好転するとすれば、エスナが頭角を表して町などに徴用された場合のみだ。 それ以外では、決して今の扱いは変化しないだろう。 むしろ現在はなお悪くなっている一方だ。

「なんで……なんで死んじゃったのよ二人とも……」

 怨嗟の先は、早くして他界した両親へ。 こうやって誰かに恨みをぶつけでもしなければエスナの心の均衡は保たれない。

 エスナは日に日に自分自身の表情が固くなっていると感じている。 そう指摘されさえしている。 どうしてこうなったのか。 いや、どうしてもこうしてもない。 運が無かった、ただそれだけだ。

 エスナは妹の平穏な生活を望み、自らこの生活を選択したのだ。 今更その選択が覆るわけもないし、覆せない状況にすらなってしまっている。 こんなことなら口減らしで村を追い出されたほうがマシだったかもしれない。 今の状況を見れば、そうとさえ思ってしまう。 しかし特定の誰かが悪いというわけではない。 唯一名を挙げて指摘できるのは、この状況を想定できなかった自分自身だ。

「うぅ……やだ……こんな生活、やだよぅ……」

 押し殺した嗚咽はそれでも溢れ、涙となってエスナの顔面を汚す。 飲み込んだ怨嗟は数あれ、それを誰かに話せた経験はない。 毎日毎日、生じたそれらは彼女の心に澱を残し続ける。 妹のために貼り付けた笑顔も、ひとたび緊張を解けば能面そのものだ。

 エスナに安寧の時間は来ない。 就寝の時であっても精神的疲労が入眠障害を引き起こし、それによって生まれた眠れない時間は余計なことを考える無駄を生じさせる。 目の下の隈も日に日に酷くなる一方だ。 これではいずれ壊れる。 そうエスナの身体が警告している。

「こんな時に、なんであなたは……っ」

 今度の怨嗟の矛先は、本日村にやってきた男に向けられた。

 いっそあの男を殺せば……? いや、短絡的な思考はダメだ。 村長も全ての責任はエスナにあると宣言してしまっている。 この男に何かがあれば、それは結果的に妹のレスカを傷つけることにつながる。 それだけは絶対に避けなければならない。 同時にレスカが独り立ちできるまではエスナも倒れてはならない。 エスナが風邪を引いてしまうだけでも、その日の食事が困難になってしまう。

 虚な目で色々なことを考えながら、エスナは闖入者の部屋の扉にもたれかかって意識を失った……もとい、眠りについたのだった。

「お姉ちゃん……?」
「ん……レスカ……」
「ベッドで寝なきゃだめなんだよ?」
「そう、ね……いつも言ってるのに私ができなきゃ駄目ね。 注意できて偉いわレスカ」
「えへへー」
「もう起きる時間、だった……?」
「ううん、あたしがちょっと早く起きただけだよ。 お姉ちゃんはもう少し寝る?」
「いいえ、今日も学校があるから……。 じゃあ、朝ご飯にするわね。 桶を持ってきてくれる?」
「うん!」
「走らないの」
「はぁーい」

 エスナの声でレスカは歩速を緩め、寝室から3つの桶を持ってきた。

「お姉ちゃん、今日もお願いします!」
「お願いできて偉いわ、レスカ。 それじゃあ……」

 エスナは右手を身体の前に、手のひらを下にして翳した。 彼女の右手の甲には、黒い紋様が刻まれている。 それは魔法使用が可能な者の証──魔導印。 小さな魔法陣を描くそれは、エスナの意識のもと彼女の体内からマナと呼ばれるエネルギーを吸収し始めた。

 マナ自体は人間の目には確認できないものだが、徐々に光を帯びる魔導印が客観的にマナ吸収度合いを示してくれる。 そして魔導印の紋様が完全に光り切ったとき、エスナの右手は辞書ほどの大きさの本を掴んでいた。 これこそ魔法使いにのみ許された、叡智の結晶である魔導書。 その本の装丁は青く燻んでおり、それは水属性を使えるという証明である。

「かっこいいー!」
「そう? ありがとう」
「あたしも早く魔法使えるようになりたい!」
「レスカにはちょっと早いんじゃないかなぁー?」
「えー、ずるいずるい! あたしもお姉ちゃんみたいにカッコよくみんなのお役に立ちたい!」

 レスカの純粋な発言にエスナは思わずウルっとくるのを抑えながら、今度は左手を桶に翳した。 すると、何もないところ──エスナの手のひらあたりから水が溢れ出したではないか。

「今日もお恵みをありがとう!」
「どういたしまして」

 エスナは2人分の桶ともう一つ──朝食に使う桶に水を溜め、ふぅと息を吐いた。 そこそこ運動した程度の疲労感がエスナを襲っている。 これはマナの損耗による生理的な現象だ。 この状態に陥るたびにもっとマナ総量を増やさないと、とエスナは感じてしまう。

 日々の魔法使用によって体内のマナ総量は増えるとされているが、実際のところは未だに研究段階であるという。 唯一分かっているのは、魔法の技能は遺伝的要因が強いということ。 親が魔法使いなら、子も魔法使いという確率が高いのだ。 またその逆で、親が魔法使いでなければ子はほぼ100%の確率で魔法使いではないらしい。 こればかりは持って生まれたものなので、エスナが今後魔法使いとして大成するには自分の血に流れる可能性に期待するほかない。 一応、後天的に発言される魔法技能も存在する。

「じゃあお顔を洗いに行きましょう」
「うん!」

 エスナがふっと力を抜くと、魔導書は跡形もなく消えてしまっていた。 またどことなり戻っていったのだろう。

 エスナは燥ぐレスカの背を小走りで追いかける。

 家の裏手で顔を洗いながらレスカが言う。

「お姉ちゃん、新しいお友達ってだぁれ?」

 寝ぼけていたかと思いきや、レスカは昨夜のことを覚えていたらしい。

「あ、ああ、うん。 村長さんからお願いされた人なの。 今は大怪我しちゃっててね、私達でお世話しないといけないのよ」
「へー、そうなんだぁ。どうしてお怪我しちゃったの?」
「え、えっと……その人ね、昨日の夜にお外を歩いていたの」
「あー、駄目なんだ! 夜に外に出たら怖い盗賊とか魔物に襲われるのにー」
「夜は危ないのにね」
「でも、早く治ると良いね。 治ったらその人、レスカともお友達になってくれるかなぁ?」
「レスカはいつもいい子にしてるから、きっとお友達になってくれるわ」
「やったー。 レスカこれからもっといい子にする!」
「レスカはいつもいい子よ。 私には勿体無いくらいだわ」
「もったいないー?」
「気にしないで。 あ、えっと、その人は男の人だから、お父さんとお母さんの部屋にはあまり入っちゃダメよ?」
「どうして?」
「怪我して寝てるから、もし起きたら痛くて暴れちゃうかもしれないわ。 その時にレスカがいたら、レスカも怪我しちゃうかも」
「痛いのは嫌だから入らないようにするね」
「うん、偉いねレスカは」

 エスナはどこまでも純粋な妹を更に大切に思いつつ、朝食の準備に取りかかった。 といっても、野菜を洗って刻んでスープにするだけだ。 野菜は裏庭に干していたいくつかを持ってきてある。

 火をつけるのは火打ち石があるため容易だ。

 野菜を刻むのも、石包丁によって簡素には行うことができる。

「おいしかった!」
「そう、良かったわ」

 食事と言えるかどうか怪しい行為を終え、エスナは外出の準備に取り掛かる。 エスナは本日、学校のある日だ。 週に2回、エスナは隣の村にある学校に通っている。 そこには週に2回魔法の講師がやってくるため、それに合わせてエスナは登校をしている。 しかしそれもタダではない。 魔法の才能があることは必須であり、加えて学費も必要。 その学費もばかにならない金額で、とても1人の農民が払えるようなものではない。

 ではそれをどう工面しているかというと、村が善意でお金をエスナに注ぎ込んでくれている。 そこにエスナは感謝の念しかないのだが、善意によって村に縛り付けられているとも言える。

 ラクラ村で魔法が使えるのは今のところエスナだけで、魔法が使えるなら村のために使うのが当然だろうというのが村の民意だ。 そう言われて仕舞えばエスナはもう何も言えないし、そうせざるを得ない。

 村から水源まではそこそこの距離があるため、各家に水の補充などするのがもっぱらエスナの役目だ。 その他田畑の水やりなど、生活のあらゆる部分で水は必須の要素。 エスナがこき使われるのは言うまでもない。

「じゃあレスカ、いい子にしてるのよ。 もしお友達が起きたら、お水を飲ませてあげてね。 あと、余ってるスープもあげていいわ。 それ以外は入らないようにね」
「わかった! お姉ちゃん、今日もがんばってね」

 エスナはレスカにハグをして、村を出発した。 途中同年代の女子たちがエスナを見てコソコソと何か言っているが、こんなものはいつもの話だ。 いちいち気にしていてもキリがない。 どうせ、無駄飯食いだとかなんとか揶揄しているのだろう。 エスナ自身その自覚はあるし、実際にそうなのだから文句は言えない。 それでもそこを補ってあまりある魔法を使用した仕事をしているはずなのだが、ラクラ村ではエスナは村民を潤すことは当たり前らしい。 むしろそうしないのは異常とさえ思われている様子だ。

「まぁいいけど」

 自分が何かを言われる分には耐えられる。 しかしそれがレスカに向いたりしたら? エスナはかぶりを振って恐ろしい考えをどこかに追いやった。

 エスナは馬鹿にされるのは慣れている。 見窄らしいエスナの格好を見て彼女らの機嫌が良くなるというのなら、それも構わない。 村民の機嫌を損ねなければ、エスナはレスカと生きていける。 それだけ出来れば良い……と、昨日までは思っていた。

「一生起きてこなきゃ良いのに……」

 彼に対して、エスナは嫌でもそう思ってしまう。

 エスナはレスカほど良い人間ではないと彼女自身理解している。 普段からストレスを抱えている分、人よりも怒りっぽいくなってしまうし、負の感情には日々苛まれている。 良い方向よりも悪い方向に考えてしまうのは当然なのだ。 だからこそ、これからの生活に不安しかない。

「早く出ていってよ……」

 家庭はエスナにとって本来至福の空間。 なにせそこにはレスカがいるのだから。 しかし現在ではそこに異物が紛れ込んでいる。

 エスナはこれから上手くやっていける自信がなくなる。 そう考えて、エスナは付近の木をガスガスと蹴った。 こうでもしてストレスを発散しなければやっていけないのだ。 隣の村までの道すがらはいつもこうだ。 なにせ片道1時間以上も掛かるのだから、黙って歩き続けると言う方が無理というもの。

 この日からエスナはレスカへの心配をより一層抱え、徐々に精神をすり減らしていくのだった。
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