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第2章 Dynamism in New Life
第41話 蹂躙される弱者
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グレッグとカミラが攻めるタイミングを窺っている。
「あの若者が善戦しているうちに奇襲を仕掛けるとしやしょう」
「あんた、前に出られるのかい?」
「生憎とあっしは攻撃方面に薄いが、ゼラかオリガのどちらかさえ釣ることができれば勝算は十分にありますな」
彼らの視線の先では、ハジメが必死に魔弾を捌き続けている光景が繰り広げられている。 時には刃の腹で受け止め、時には回避し、敵の攻撃をいなすことには成功しているが、そこから先の行動はどうにも望めそうにない。
「あれじゃ時間の無駄だね。 相手を足止めしているようで、その実自分の体力を減らす以外の有益な結果は伴っていないよ」
カミラの指摘通りハジメは攻撃を受けこそしないものの、言ってしまえばただそれだけだ。 ゼラやオリガにダメージを与えられているわけでもなく、魔弾程度であればそこまでマナ消費を強いることすらできていないだろう。 そもそも二対一で継戦すること自体が愚策以外のなにものでもない。
戦いにおいて重要なのは、自分を相手と互角以上の状況に置くことだ。 それは隠密行動からの奇襲であったり、力量の低い相手を優先して狙ったり、自分のやりたいことを押し付けるのがセオリーであり、ハジメはフルで戦ってあれなのだから総合的に判断して状況は不利としか言えない。 それなのにそんなことを続けてしまうのが初心者の悪いところであり、そんな者は大成もしなければ長生きすることすらできない。
「駒は使えるうちに使いやしょう。 行動は臨機に」
「了解した。 後ろは任せな」
しかし現実は無常だ。
二人が行動を開始するよりも、ゼラが魔法を完成させる方が先だった。 タイミングとしてはほぼ同時だったが、攻撃を命中させられるまでの時間を含めれば二人は圧倒的に遅れていると言って良いだろう。
未だに運はゼラ側に味方し、彼らの悪行を許容することになる。
二人の敗因は時間を掛けすぎたことと、ゼラに攻撃魔法がないとたかをくくっていたことだ。 その誤った一歩は、掴みかけていた敵の背中を大きく遠ざけることに繋がる。
「《負力解放》」
《負力徴収》を前提とした攻撃魔法──《負力解放》。
突如、凄まじい負の波動がゼラから解き放たれた。 これは集める負のエネルギーが多いほど、そして深いほど威力を増す魔法。 魔法には、発動までの前提条件が厳しいほど強度を増す性質があり、つまりこれもその例に漏れない。
波動はゼラを中心に音波に匹敵する速度で駆け抜けた。 そこからわずかに遅れて建造物や人間が影響を受け、破壊という結末を伴って《負力解放》がその効力を最大限に発揮した。
突如生じた炸裂音。
災害とも言えるようなエネルギーの拡散は建物を砕き、人間を吹き飛ばし、ベルナルダンを覆う外壁に穴を開けた。 建物の倒壊に巻き込まれて圧死する者、衝撃により叩きつけられて即死する者や甚大なダメージを負う者、飛んできた瓦礫によって潰死する者など様々だが、夜に差し掛かった時間帯ということもあって屋内で被害を被った人間があまりにも多かった。
「な……!?」
「グレ──」
コンマ数秒グレッグの知覚がカミラに先んじたが、全てを無視する波動は彼らの思考よりも早くその身体を通過し、内包されたエネルギーを叩きつけた。
「オリガ、あの二人はよろしく」
「ほい、了解」
ゼラとオリガは繋いでいた手を離した。 ゼラの魔法の副産物として捕捉されていたグレッグとカミラを、オリガはすでに肉眼で確認できている。 そのためもはやゼラの魔法は必要無くなっている。
オリガはそのまま、魔法の衝撃によって宙を舞っている対象を追う。
「コソコソとゴキブリみたいに覗いてた連中見っけ! 流石にあんたらのそれは罪深いでしょ!」
オリガが二人を見つけているということは、攻撃準備のためのマーキングが可能だということ。
「死ねよゴミども! 《断罪》!」
空中で回避不能な状態のグレッグとカミラ。 その心臓目掛けて光の十字架が降り注いだ。
▽
「くそ、どうなってやがる!?」
カルミネは呪詛を吐いた。 折角逃げ込んだはずのベルナルダンが紛争地帯の様相を呈し、安全とは程遠い悲劇を生み始めていたからだ。
カルミネの当初の予定では、町に潜伏してほとぼりが冷めたのち準備を整えて新天地を目指すはずだった。 その際グレッグを頼っても良かっただろう。 何かしらこれからの行動を肯定できるだけの材料を集めて、ようやく後ろ暗い生活からもオサラバできると思っていた。 しかし現実はそう甘くなく、ゼラたちに会わないまま逃げるという選択肢がまず潰され、そして今回の予定すらも大きく狂い始めた。
「まずい……どうする、どうする!?」
町の彼方此方から火の手が上がっている。 それはゼラの魔法の余波によって発生したものであり、破壊されて飛散した可燃物に伝播すると、更に勢いを増して住民の動きを制限する壁と化している。
カルミネの思考を妨害するように、ベルナルダンは阿鼻叫喚の地獄絵図の様相を呈し始めていた。 痛みによる呻き、助けを呼ぶ声、注意喚起や避難誘導を促す怒号、混乱し半狂乱になった者の悲鳴、その他様々な音が町中を埋め尽くしている。
町中には、とりわけ人間の動きが激しい場所がある。 そこにはこの災禍を引き起こした張本人であるゼラがおり、彼は悠然と魔弾をばら撒きながら一つ一つ丁寧に人間を潰して回っている。 それはまるで事務的に処理するような──無感情なものであり、生き残った住民の恐怖心を煽る要因となっている。
ゼラは破壊された外壁から町中に侵入した。 それは更なる負のエネルギーを集めるためであり、今回の事件を知る人間を全て殺し尽くすためだ。 逃げ惑う人々によって恐怖は周辺に伝染されて広がっていくが、彼らはそれがゼラに力を与えていることなど知る由もない。
「あ、あいつは……!」
カルミネは遠方に絶対に会いたくない人物であるゼラを捕捉した。 彼の視界に映れば最後、カルミネは絶対に生きては帰れない。 かといって、人間を問答無用で駆逐して回るゼラから町中で身を隠し続けるのは至難の業である。 それならいっそここから逃げる方が生存できる可能性は高い。
(俺はとことんツイてねぇな……。 どこまで不幸を掘り進めれば俺の幸運は見つかるんだ? この様子だともうベルナルダンは終わりだろうし、とっとと火事場泥棒でもして逃げたいところだ。 だが、俺を追う魔物の問題すら解決できてねぇんだよな……。 出来ればこのままグレッグとか魔物がゼラやオリガを殺してくれたらいいんだが……)
他人に頼り切っている時点でカルミネに良い未来が巡ってくるはずはない。 が、それにしては運が悪すぎるとカルミネは思う。
「ね、ねぇ、おじさん、助けて……。 ぼくのママが……ママが、下敷きに──」
「うるせぇッ、ガキは引っ込んでろ!」
「ぃぎゃッ……!」
十歳前後の少年だろうか。 親が倒壊の下敷きになり、それでも一生懸命に誰かを頼った。 その結果がこの、暴力による返答。 少年はもんどりうって倒れ、胃酸を吐き散らしながら呻き転がる。 それを見てもカルミネは何も思わないし、この場においてはそれが最適な行動とさえ言える。
「人に頼ってんじゃねぇんだよクソガキ! 自分でなんとかしてろ! 殺されてぇのか!?」
「ゔ……うわぁあああん……!」
少年は顔面をボロボロに泣き崩し、怨嗟の籠った視線をカルミネに送りながら逃げ出した。
(チッ、甘ったれのガキが……。 俺はお前に構ってる暇なんてねぇんだよ! 邪魔しやがって。 しかし、ここからどうする……?)
その答えなど、とうに出ているではないか。 先程カルミネが言った通り、そして行動で示した通り、危機的状況において誰かが助けてくれる奇跡など起こり得ない。 誰かに助けを求めたところで、その誰かが助けを求めていないとは限らない。 カルミネもまさに助け欲する側の人間であり、他人に手を差し伸べられるほどの余裕も力もない。 もしそんなものがあったのならこんな状況には陥っていないし、不幸こそ人間のベースラインなのだから不幸を嘆いたところで何も変わることはない。
幸福な人生を歩める人間などごく一部だけであり、富裕層が分け合った幸福の残り滓である不幸をいかに他人に押し付けられるかが生き残る秘訣だ。 それで言うならば幸福とは相対的なものであり、自分より不幸な人間がいれば自分は幸福だということに他ならない。 誰かを殺すことによって自分に運が巡ってくるかもしれないし、誰かから運を奪わなければ一生幸福にはなれないかもしれない。 それほどまでに運量──幸福に至るための要素は世界に不足している。
とはいえ、だ。 ベルナルダンは危機に直面しているものの、こうして五体満足で動ける状況にあるカルミネは幸福の側の人間だ。 選択肢が残されているだけ恵まれているとも言える。
「くそッ! 結局やるしかねぇのかよ!」
カルミネは自分の状況を理解できる理性が残されているからこそ、それが口惜しい。 半狂乱になって何も考えないでいる方が、幾分か状況はマシだったかもしれない。 なにせ、周囲の可哀想な住民とは違って彼には選択肢が残されてしまっている。 選択肢がある以上、それを駆使して何としてでも生き残らなければならず、それは絶望や苦行を経験することと同義だ。
できることならば苦難も痛みも感じずに過ごしたいところだが、状況はカルミネにそれを許してくれない。 彼の直感は、逃げ出すことよりも戦うことの方に生存率の高さを見出しているし、実際にそうだろう。 もしこのままカルミネがベルナルダンを離れて個人で行動するならば、他人に押し付けることのできなかった不幸が彼を襲うはずだ。 それならば、グレッグやカミラなどゼラを駆除したい面々が残されている今という機会を利用して幸運を貯め、未来に投資する方が賢明だろう。 たとえそこへ至る間に漆黒の谷が広がっていようとも、一人でないのなら飛び越えられる可能性はゼロではない。
カルミネは魔導書を展開させて走る。 目的地は、先程彼が蹴飛ばした少年のところだ。 案の定、少年は瓦礫がぶち撒けられた家屋の前で右往左往しており、目についた人間に救援を求めて泣き喚いている。
「《浮揚》!」
《浮揚》は、カルミネが随分昔に取得した魔法だ。 それは物を浮かせる魔法であり、それこそ重いものを運ぶ際には便利そうだが、実際は“浮かせる”ただそれだけの作用しか持ち合わせていない。 物をその場で上に浮かせる以外、水平方向への移動などは不可能であり、カルミネはこれを実生活で役に立てた経験はない。 気づけば彼には部下が出来ていたし、荷物の運搬などは部下に任せれば問題なかったこともあり、《浮揚》を使う機会は訪れなかった。 それがここにきて意味を見出し始める。
カルミネがマナを広げた一帯の瓦礫が浮き上がり、その下に一人の女性が見えた。
少年はキョトンとした様子でカルミネを眺め、そしてすぐに状況に気がついて母の元へと駆け出した。
少年の母は足が圧迫されていた程度で命の支障はなく、すぐに少年によって現場から引き摺り出された。 カルミネはそれを確認して魔法を解除し、なにやら声を掛けてくる少年とその母を無視してその場を去る。
「お、おじさん、ありが──」
カルミネは最後までは聞くつもりはない。
(全部俺のためにやったことで感謝される謂れはない。 動ける人間が増えれば一緒に逃げることも可能になるだろうし、最悪の場合でも見捨てる前提の囮にも使える。 これにはゼラの活動を順調にいかないように邪魔する意味合いもある。 これは俺にためにやってることで、善行で俺の運を高めてるだけだ。 感謝なんてしてくるんじゃねぇ!)
カルミネは自分にそう言い聞かせ、意味があるかどうか分からない活動に従事する。 これによって住民が各所に四散して恐怖がより広範囲に蔓延することになるのが、一方でゼラを町に留める時間稼ぎにも繋がってくる。 そうやって嫌がらせを続ければ、カルミネ以外の誰かがなんとかしてくれるだろう。 結局それは他人に頼っていることになるのだが、それでも完全な依存ではなく部分依存であり、それら物事に自ら噛んでいるか噛んでいないかでは未来に歴然とした差が生まれてくる。 カルミネは無意識に正しい選択肢を選んでいる。
カルミネは風魔法を使って人助け──彼は自分のためと言い張っている──を敢行する。
逃げ惑う住民は自然と役場へ。 ゼラが意図したわけではないのだが、建物の倒壊や火の手によって絶妙に逃げ道が限られ、容易には町の中心には近づけず、また町の外へも逃げにくくなっている。
「おい、さっさとポーションをよこせ!」
「うるせぇ俺が先だ! 妻が重症なんだ!」
「組合は何をやってる!? あれはお前らが招いた悪魔だろうが!」
「どこか隠れる場所を……!」
「ど、けよ……! 邪魔なんだよクソが!」
もはや役場内に秩序などなく、行き場を失った住民がここに押し寄せ、口々に自分たちの用件ばかり述べている。 それによって騒ぎが広がり、職員がいくら注意を促そうとも通じることはない。
「ま、待ってください! お一人ずつ、お一人ずつ──」
この緊急事態において職員がなぜ暴徒のような住民の対応をしているかというと、詰めかけた彼らによって逃げ場がないからだ。 今やカウンター内にも侵入され、好き放題に机などが荒らされている。 しかしそんなところに彼らの望むものなど置いているわけがないし、そうやって無茶を続けるだけ対応が遅れるというのが誰にも理解できないらしい。 まぁ無理もないだろう。 誰だって助かりたいし、自分が助かるためなら何だってやる──そんな逼迫した状況だ。
職員だってただの人間だ。 それを押し殺してまで職務に従事しようとしている彼らこそ誉められるべきであるが、ここでポジティブな感情を吐き出せる者はおらず、むしろそれはノイズだ。 極限の状況で美徳を優先する人間など、真っ先に死んでしまうものなのだから。
「オルソー、出られないぞ! どうすんだ!? さっさとポーションでも何でも配っちまってあいつらを黙らせてくれよ」
ハンスとオルソーは役場内の一室から出られなくなっていた。 彼らの居るここは魔法使い組合内の大型魔導具設置室。
これより少し前、ハンスはオルソーを探して役場にやってきていた。 この時すでに町中は何故か混乱状態にあり、役場に押しかける住民が多数いた。 その中でハンスが住民たちの騒ぎを聞き流しつつ職員に聞いたところ、オルソーは別の場所へ赴いているということだったので、ハンスは直接彼を探すことにした。
ハンスが役場に到着した際、オルソーはベルナルダンの北東──と言っても役場から数十メートルしか離れていない場所にあるカーライル家を訪れていた。 彼はカーライル家当主であり騎士のキリップ=カーライルとの面談をしており、その内容はベルナルダンの防備に関するものであった。 キリップは町長と同等、下手すれば町長よりも権力を発揮できる貴族位であり、有事に際して住民の指揮を任せることのできる人物である。
魔物や危険な魔法使いの出現しているベルナルダンの現状において、町長の手が及ばない範囲の統制についてオルソーがキリップと検討している最中、事態は先んじて動き出していた。 彼らは二人だけの対談を成立させるために使用人などを排した状態で当主の部屋にいたため、オリガの魔法で町の各所で変死が相次いでいることに気づけなかった。
オルソーが事態に気が付いたのは、爆発による衝撃波で部屋のガラスが砕け散った時になってようやくだ。 その頃には町中は騒ぎに見舞われており、オルソーは事態の理解に遅れた。
町の外での爆発を見てオルソーが思い浮かんだ犯人は、魔物ではなくゼラとオリガであった。 そこには何故か確証があった。 だから彼はキリップに無理を言って即座に動き出すように懇請すると、すぐに役場へ足を走らせた。 そしてハンスと出会い、彼から事態の一部を聞かされた。
オルソーとハンスの二人は役場内へ急いだわけだが、この時すでにそこは混沌とした状況であった。 それでも何とか役場内を走り、荒らされていないはずのオルソーの執務室だったり資料室を巡ったが、何故かそこには重要な物資──ポーションや魔導具の類が悉く失われており、最後の望みとして大型魔導具を設置している部屋を訪れた。 そこは唯一オルソーでのみ出入り可能な場所だったので、緊急用に隠してあったポーションを三つ手に入れることができたわけだが、問題はそこからだった。
役場に詰めかける住民は助けを求めてやってきており、逃げ込む最後の砦としてここへ至っている。 だからハンスとオルソーが入って行った大型魔導具設置室──重要な設備のため唯一地下に設営されて窓の無い小部屋の形態を取っている──のような場所は隠れるには最適だと判断され、多くの者が狂気的に向かってきた。 部屋から出ようとしていたオルソーだが、これはまずいと判断して即座に扉を閉鎖し、錬金魔法によって扉を頑丈に作り替えた。 そして今に至る。
「他の部屋を覗いただろう? ポーションはそれだけだ。 他は全部持ち出されてしまった」
「どこのどいつにだよ? まさかメジーナか?」
メジーナは魔法使い組合の受付嬢をしている女性。 ハンスは彼女を疑っている。 オルソーはそんなハンスの言葉を聞きながら壁を砕き、地面を魔法で掘削している。
「まさか、彼女はそんなことはしない。 恐らく隣のハンターギルドの連中だろうな。 こっそり俺の執務室の合鍵を作っていることも知っていたしな」
「そいつらを放置したからこうなってるって分かってるのか!?」
「現行犯で捕まえるつもりだったが、裏目に出たというわけだ。 済まないな」
「そんな悠長に言ってるなよ! 僕はフリックにポーションを届けないといけないんだよ!」
「ああ、分かっている。 だが、ポーションを外の連中に見せれば暴動の激化は必至だった。 だからこうして地面を掘っているんだろう」
オルソーがそうしているのは、部屋の外が制御不能なほどに荒れ狂った状況だからだ。 今もなお扉を壊さんと激しい叩打が繰り返されているし、ひとたび扉を開けば押し寄せた住民の群れによって圧死してしまうことは目に見えている。 かと言って彼らを魔法で蹴散らすことも難しいし、だからこうして壁を掘っているわけだ。
「だから早くしろよ!」
「焦らせるな。 俺はこっちの専門じゃないんだ。 グレッグあたりなら余裕だと思うんだがな」
「くっそ……!」
「そうなのか? それで、彼は何か言っていたか?」
「そのグレッグってのはさっき戻ってきたばっかで、カミラが接触する手筈だったけど、僕はこっちに来たからな。 状況は分からない」
「そうか……。 とにかく、地上に出たらハンスはフリックの元へ向かってくれ。 俺は住民の避難誘導を優先するからついて行くことはできないが、そっちが落ち着いたら合流する」
「あ、ああ……。 だけど、急いでくれ……!」
オルソーが落ち着いていられるのは、自分が落ち着きを失っては周りの人間を心配させてしまうからだ。 困難な状況においてこそ上に立つものは心が揺らいではならず、彼はそうあるべきだと自分を律している。 しかし内心はフリックの心配が大きく、長く付き合っている友人だからこそ誰よりも彼の身を案じている。 そんなオルソーの様子からハンスがやや冷静になっているところを見ると、彼の行動はやはり意味があるらしい。
(フリック、無事でいてくれ……。 そして願わくば、グレッグがゼラとオリガを始末していて欲しいところだ)
オルソーは知らない。 今まさに彼の頭上ではゼラによる殺戮が進んでいることを。 そして彼の望みの一つがもう叶わないということを。
「フリック、目を開けろ! 息をしてくれ! フリック……ッ!」
地面に臥してピクリともしないフリック。 彼の開かれた眼窩は光を失って漆黒に染まっており、瞳孔は完全に開ききっている。
ダスクはその事実が信じられず何度も声を掛け続けるが、結果は変わらない。
死──。
全ての生命に訪れる末路がフリックを包んでいた。
「何でだよ! 何でだよ!? クソ、クソ、クソォオオオ!!!」
叫ぶことによってダスクの身体から激しく出血が生じるが、怒りと悲しみが彼に痛みを忘れさせる。 しかし彼もまた大きな傷を負っており、放置すれば命に関わる程度には全身をボロボロにされてしまっている。 これは先ほどのゼラの魔法によるものだ。
《負力解放》の直前、ダスクは直感的に危険を嗅ぎ分け、目の前の命──レスカを優先して逃げる体勢を取った。 それが功を奏したのか、運が良かっただけなのか、彼は波動によって吹き飛ばされて外壁に叩きつけられたものの、ハジメと同様に即死は免れた。 とはいえ至近距離でそれを食らったのは事実なので、レスカを保護する意識が優先されて自保護を放棄し、その結果右腕の開放骨折や全身打撲、骨折、その他あらゆる障害が彼を苛んだ。 顔面を強打した影響なのか右目は完全に見えていないし、肉体を鍛えた上でこれなのだから魔法による衝撃は相当なものだった。
レスカはダスクをクッションに叩きつけられたため直接的なダメージは多くないが、その後もかなりの距離地面を転がされたため生傷は絶えない。 また、元より深刻なダメージを負っていたこともあって、絶命必至な状態だった。 それを見たダスクは所持していた回復ポーション──衝撃によってベルトバッグの中で砕けてしまった──を手で掬ってレスカの口に運び、一時的な救命を急いだ。 その後ダスクは片腕でレスカを抱えたまま精神力だけでフリックを探し、程なくして完全に停止してしまっている彼を見つけた。
ダスクは怨嗟を吐き、フリックの最後を、自身の不甲斐なさを嘆く。 その叫びはハジメの接近に繋がる。
ドサ──。
ハジメは脱力して両膝をついた。 彼が杖代わりにしていた黒刀も大きな音を立てて倒れている。
「そん、な……」
座り込んだダスクの様子と、彼の膝の上で動かないフリックを見れば状況は明らかだ。 そしてダスクの背後で横たわっているレスカを見て、ハジメは心臓が限界まで締め付けられた。
「お前、か……。 無事だったんだな……」
ダスクが醸す弱々しい雰囲気。 それはハジメに不吉なことを感じさせるには十分であり、一気に鼓動が限界まで加速し、息が早く荒くなる。
「ハッ……ハァ……あ……ああ……あ、あああッ……ああああ!?」
「レスカは無事だ! ……っ……」
「……ッ!?」
ハジメが精神崩壊する直前、それを感じ取ったダスクは大声を張り上げた。
ハジメはびくりと大きく身体を揺らし、双眸から大粒の涙を流してレスカの元へ。
「レスカ……! レスカ……!?」
ハジメがレスカの口元に耳を近づけると、浅い息が彼の耳を撫ぜた。
(生きてる……! 生きてる! だけど──)
レスカの容体は非常によろしくない。 素人目にも、彼女の余命はあともって数時間。 ダスクの機転によりダメージはやや和らいでいるが、少量の回復ポーション程度では多少の時間稼ぎが関の山だ。 命の危機を脱するには、より多くのポーション、ないしは回復魔法が必要だ。
「俺のバッグの底に、僅かだがポーションが残ってる……。 レスカを連れてきて飲ませてやれ……」
そう言っているダスクはどう考えても瀕死であり、傍目には彼の方が重症だろう。 だからハジメは一瞬狼狽えたが、自分の中での命の優先度を曲げずにレスカをダスクの側まで運んだ。 そしてバッグを受け取ると、数滴だけ残ったポーションをレスカに飲ませる。
「ダスク、さん……」
「感謝なんてするな……。 俺は未来に投資しただけだからな……。 じゃあ……行け」
「どこに……?」
現在ゼラは町中でか弱い民を蹂躙しており、オリガも同様にこの場には居ない。 今がここから離れる好機であり、夜間ということと魔物の脅威を無視さえすれば逃げることは選択肢として挙がっても良いだろう。 しかし重症かつ戦う力をほとんど持たないハジメとレスカに、逃げ出したとて何ができるというのか。 夜間に危険な荒野に出るとなると相当な覚悟が必要だし、ここで野垂れ死ぬのとはさして変わらない選択かもしれない。 それでもなおダスクがそれを推す理由がある。
「南のクレルヴォー修道院……。 そこのパーソンって男が、回復魔法を使える……。 無事そこまで行けたらレスカは助かるはずだ……。 だから行け」
「で、でも──」
「行けっつってんだろうが!」
「……!」
ダスクの叫びには有無を言わせない必死さが浮かんでいた。 ハジメはそれを感じ取り、ダスクの覚悟を見て何も言えなくなってしまった。
痛々しいダスクの姿に、悍ましい死に顔を晒すフリック。 ハジメとしては恐ろしいこの場所も、恐らく彼らと会える最後の場所だと確信できる。
別れがこのような形で訪れるなんて信じられず、ハジメは自然と涙が溢れた。
「嫌だ……。 やだよ……こんな、こんな……」
「泣くな。 俺とフリックが逆の立場だったとしても、あいつならそうしてるはずだ」
「でも、ダスクさんを置いてなんて……!」
「足手纏いが生意気言うな……。 お前らの成長はフリックの楽しみだったんだ……。 だからあいつの願いを成就させるために、お前らは南へ向かえ!」
理不尽な現実に対する怒り、何もできない自分への失望、そしてここを立ち去ることを拒否できない弱さ。 それらはハジメの心をひどく弱らせ、ダスクの言うような未来に期待できなくなる。
(それでも──先が真っ暗でも、行くしかないのかよ……)
ハジメが惨めさに震えていると、ダスクから声掛けがあった。
「最後に大人からの忠告だ、聞いていけ。 とにかく、お前らはこれを恨むな。 人間、弱いのは当たり前だからな……。 弱さを知ってもなお生きられる奴が、多分一番強いからな。 だからお前が……いや、お前らが魔法使いとして生きていくなら、マイナス感情じゃなくて、未来に繋げられる感情で人生を歩け。 そしたらフリックも喜んでくれるはずだ……」
「……」
「分かったのか?」
「……分かった」
「じゃあもう消えろ。 目障りだ」
「ごめん……」
「言うな」
「ありがとう……」
「俺に言うな」
「……二人とも、さよなら」
「じゃあな」
ハジメは黒刀を握ると、ダスクとフリックに背を向けてよろよろと歩き出した。
向かう先は、漆黒の闇に覆われた荒野。
ハジメの未来を表すかのように、世界は真っ黒に大口を開けて彼を迎えている。 しかし、ダスクに未来を託された以上、ここを進むしかない。
ハジメは震える足で歩き続けた。 時間で言えばかなりの時間、距離で言えばそれほどでもない。 日中ならベルナルダンは未だに視認できている、その程度の場所にハジメとレスカは居る。
ズ──。
ハジメの背後で重い音がズシリと響いた。
直後、激しい突風と異常感覚が通り抜けたかと思うと、パラパラと細かな破片がハジメの背中を叩き、その中でも大きめの物体が頭部を強打した。
「ゔッ……!」
ハジメは痛みで視界が明滅し、派手に地面に転がされる。
通り抜けたこの感覚をハジメは知っている。
(あいつの、魔法……)
すぐにゼラの魔法が思い当たる。
ハジメが後頭部を指すると、生暖かい感覚が指先に触れた。 大きなものではないが、これは恐らく頭皮を傷つけたことによるものだろう。 しかしこの程度なら、大丈夫だ。
ハジメは後ろを見ずにレスカを抱えると、再び歩き続けた。
「ちくしょう……! ちくしょう……! ちくしょう……!」
ハジメは顔面を悔しさで歪めながら涙を流し続けた。 それでもとめどなく涙が溢れる。
(俺は弱い……。 だけど、それによってダスクさんや他の人が傷つくのは嫌だ……。 今の俺に力はない……。 だから誰だっていい。 どうかあの人たちを助けてやってくれ……! そのためなら、あとからどんな代償を支払ったって──)
失意のままに進むハジメ。
理不尽で無情。 それが世界の平常運転だった。
「あの若者が善戦しているうちに奇襲を仕掛けるとしやしょう」
「あんた、前に出られるのかい?」
「生憎とあっしは攻撃方面に薄いが、ゼラかオリガのどちらかさえ釣ることができれば勝算は十分にありますな」
彼らの視線の先では、ハジメが必死に魔弾を捌き続けている光景が繰り広げられている。 時には刃の腹で受け止め、時には回避し、敵の攻撃をいなすことには成功しているが、そこから先の行動はどうにも望めそうにない。
「あれじゃ時間の無駄だね。 相手を足止めしているようで、その実自分の体力を減らす以外の有益な結果は伴っていないよ」
カミラの指摘通りハジメは攻撃を受けこそしないものの、言ってしまえばただそれだけだ。 ゼラやオリガにダメージを与えられているわけでもなく、魔弾程度であればそこまでマナ消費を強いることすらできていないだろう。 そもそも二対一で継戦すること自体が愚策以外のなにものでもない。
戦いにおいて重要なのは、自分を相手と互角以上の状況に置くことだ。 それは隠密行動からの奇襲であったり、力量の低い相手を優先して狙ったり、自分のやりたいことを押し付けるのがセオリーであり、ハジメはフルで戦ってあれなのだから総合的に判断して状況は不利としか言えない。 それなのにそんなことを続けてしまうのが初心者の悪いところであり、そんな者は大成もしなければ長生きすることすらできない。
「駒は使えるうちに使いやしょう。 行動は臨機に」
「了解した。 後ろは任せな」
しかし現実は無常だ。
二人が行動を開始するよりも、ゼラが魔法を完成させる方が先だった。 タイミングとしてはほぼ同時だったが、攻撃を命中させられるまでの時間を含めれば二人は圧倒的に遅れていると言って良いだろう。
未だに運はゼラ側に味方し、彼らの悪行を許容することになる。
二人の敗因は時間を掛けすぎたことと、ゼラに攻撃魔法がないとたかをくくっていたことだ。 その誤った一歩は、掴みかけていた敵の背中を大きく遠ざけることに繋がる。
「《負力解放》」
《負力徴収》を前提とした攻撃魔法──《負力解放》。
突如、凄まじい負の波動がゼラから解き放たれた。 これは集める負のエネルギーが多いほど、そして深いほど威力を増す魔法。 魔法には、発動までの前提条件が厳しいほど強度を増す性質があり、つまりこれもその例に漏れない。
波動はゼラを中心に音波に匹敵する速度で駆け抜けた。 そこからわずかに遅れて建造物や人間が影響を受け、破壊という結末を伴って《負力解放》がその効力を最大限に発揮した。
突如生じた炸裂音。
災害とも言えるようなエネルギーの拡散は建物を砕き、人間を吹き飛ばし、ベルナルダンを覆う外壁に穴を開けた。 建物の倒壊に巻き込まれて圧死する者、衝撃により叩きつけられて即死する者や甚大なダメージを負う者、飛んできた瓦礫によって潰死する者など様々だが、夜に差し掛かった時間帯ということもあって屋内で被害を被った人間があまりにも多かった。
「な……!?」
「グレ──」
コンマ数秒グレッグの知覚がカミラに先んじたが、全てを無視する波動は彼らの思考よりも早くその身体を通過し、内包されたエネルギーを叩きつけた。
「オリガ、あの二人はよろしく」
「ほい、了解」
ゼラとオリガは繋いでいた手を離した。 ゼラの魔法の副産物として捕捉されていたグレッグとカミラを、オリガはすでに肉眼で確認できている。 そのためもはやゼラの魔法は必要無くなっている。
オリガはそのまま、魔法の衝撃によって宙を舞っている対象を追う。
「コソコソとゴキブリみたいに覗いてた連中見っけ! 流石にあんたらのそれは罪深いでしょ!」
オリガが二人を見つけているということは、攻撃準備のためのマーキングが可能だということ。
「死ねよゴミども! 《断罪》!」
空中で回避不能な状態のグレッグとカミラ。 その心臓目掛けて光の十字架が降り注いだ。
▽
「くそ、どうなってやがる!?」
カルミネは呪詛を吐いた。 折角逃げ込んだはずのベルナルダンが紛争地帯の様相を呈し、安全とは程遠い悲劇を生み始めていたからだ。
カルミネの当初の予定では、町に潜伏してほとぼりが冷めたのち準備を整えて新天地を目指すはずだった。 その際グレッグを頼っても良かっただろう。 何かしらこれからの行動を肯定できるだけの材料を集めて、ようやく後ろ暗い生活からもオサラバできると思っていた。 しかし現実はそう甘くなく、ゼラたちに会わないまま逃げるという選択肢がまず潰され、そして今回の予定すらも大きく狂い始めた。
「まずい……どうする、どうする!?」
町の彼方此方から火の手が上がっている。 それはゼラの魔法の余波によって発生したものであり、破壊されて飛散した可燃物に伝播すると、更に勢いを増して住民の動きを制限する壁と化している。
カルミネの思考を妨害するように、ベルナルダンは阿鼻叫喚の地獄絵図の様相を呈し始めていた。 痛みによる呻き、助けを呼ぶ声、注意喚起や避難誘導を促す怒号、混乱し半狂乱になった者の悲鳴、その他様々な音が町中を埋め尽くしている。
町中には、とりわけ人間の動きが激しい場所がある。 そこにはこの災禍を引き起こした張本人であるゼラがおり、彼は悠然と魔弾をばら撒きながら一つ一つ丁寧に人間を潰して回っている。 それはまるで事務的に処理するような──無感情なものであり、生き残った住民の恐怖心を煽る要因となっている。
ゼラは破壊された外壁から町中に侵入した。 それは更なる負のエネルギーを集めるためであり、今回の事件を知る人間を全て殺し尽くすためだ。 逃げ惑う人々によって恐怖は周辺に伝染されて広がっていくが、彼らはそれがゼラに力を与えていることなど知る由もない。
「あ、あいつは……!」
カルミネは遠方に絶対に会いたくない人物であるゼラを捕捉した。 彼の視界に映れば最後、カルミネは絶対に生きては帰れない。 かといって、人間を問答無用で駆逐して回るゼラから町中で身を隠し続けるのは至難の業である。 それならいっそここから逃げる方が生存できる可能性は高い。
(俺はとことんツイてねぇな……。 どこまで不幸を掘り進めれば俺の幸運は見つかるんだ? この様子だともうベルナルダンは終わりだろうし、とっとと火事場泥棒でもして逃げたいところだ。 だが、俺を追う魔物の問題すら解決できてねぇんだよな……。 出来ればこのままグレッグとか魔物がゼラやオリガを殺してくれたらいいんだが……)
他人に頼り切っている時点でカルミネに良い未来が巡ってくるはずはない。 が、それにしては運が悪すぎるとカルミネは思う。
「ね、ねぇ、おじさん、助けて……。 ぼくのママが……ママが、下敷きに──」
「うるせぇッ、ガキは引っ込んでろ!」
「ぃぎゃッ……!」
十歳前後の少年だろうか。 親が倒壊の下敷きになり、それでも一生懸命に誰かを頼った。 その結果がこの、暴力による返答。 少年はもんどりうって倒れ、胃酸を吐き散らしながら呻き転がる。 それを見てもカルミネは何も思わないし、この場においてはそれが最適な行動とさえ言える。
「人に頼ってんじゃねぇんだよクソガキ! 自分でなんとかしてろ! 殺されてぇのか!?」
「ゔ……うわぁあああん……!」
少年は顔面をボロボロに泣き崩し、怨嗟の籠った視線をカルミネに送りながら逃げ出した。
(チッ、甘ったれのガキが……。 俺はお前に構ってる暇なんてねぇんだよ! 邪魔しやがって。 しかし、ここからどうする……?)
その答えなど、とうに出ているではないか。 先程カルミネが言った通り、そして行動で示した通り、危機的状況において誰かが助けてくれる奇跡など起こり得ない。 誰かに助けを求めたところで、その誰かが助けを求めていないとは限らない。 カルミネもまさに助け欲する側の人間であり、他人に手を差し伸べられるほどの余裕も力もない。 もしそんなものがあったのならこんな状況には陥っていないし、不幸こそ人間のベースラインなのだから不幸を嘆いたところで何も変わることはない。
幸福な人生を歩める人間などごく一部だけであり、富裕層が分け合った幸福の残り滓である不幸をいかに他人に押し付けられるかが生き残る秘訣だ。 それで言うならば幸福とは相対的なものであり、自分より不幸な人間がいれば自分は幸福だということに他ならない。 誰かを殺すことによって自分に運が巡ってくるかもしれないし、誰かから運を奪わなければ一生幸福にはなれないかもしれない。 それほどまでに運量──幸福に至るための要素は世界に不足している。
とはいえ、だ。 ベルナルダンは危機に直面しているものの、こうして五体満足で動ける状況にあるカルミネは幸福の側の人間だ。 選択肢が残されているだけ恵まれているとも言える。
「くそッ! 結局やるしかねぇのかよ!」
カルミネは自分の状況を理解できる理性が残されているからこそ、それが口惜しい。 半狂乱になって何も考えないでいる方が、幾分か状況はマシだったかもしれない。 なにせ、周囲の可哀想な住民とは違って彼には選択肢が残されてしまっている。 選択肢がある以上、それを駆使して何としてでも生き残らなければならず、それは絶望や苦行を経験することと同義だ。
できることならば苦難も痛みも感じずに過ごしたいところだが、状況はカルミネにそれを許してくれない。 彼の直感は、逃げ出すことよりも戦うことの方に生存率の高さを見出しているし、実際にそうだろう。 もしこのままカルミネがベルナルダンを離れて個人で行動するならば、他人に押し付けることのできなかった不幸が彼を襲うはずだ。 それならば、グレッグやカミラなどゼラを駆除したい面々が残されている今という機会を利用して幸運を貯め、未来に投資する方が賢明だろう。 たとえそこへ至る間に漆黒の谷が広がっていようとも、一人でないのなら飛び越えられる可能性はゼロではない。
カルミネは魔導書を展開させて走る。 目的地は、先程彼が蹴飛ばした少年のところだ。 案の定、少年は瓦礫がぶち撒けられた家屋の前で右往左往しており、目についた人間に救援を求めて泣き喚いている。
「《浮揚》!」
《浮揚》は、カルミネが随分昔に取得した魔法だ。 それは物を浮かせる魔法であり、それこそ重いものを運ぶ際には便利そうだが、実際は“浮かせる”ただそれだけの作用しか持ち合わせていない。 物をその場で上に浮かせる以外、水平方向への移動などは不可能であり、カルミネはこれを実生活で役に立てた経験はない。 気づけば彼には部下が出来ていたし、荷物の運搬などは部下に任せれば問題なかったこともあり、《浮揚》を使う機会は訪れなかった。 それがここにきて意味を見出し始める。
カルミネがマナを広げた一帯の瓦礫が浮き上がり、その下に一人の女性が見えた。
少年はキョトンとした様子でカルミネを眺め、そしてすぐに状況に気がついて母の元へと駆け出した。
少年の母は足が圧迫されていた程度で命の支障はなく、すぐに少年によって現場から引き摺り出された。 カルミネはそれを確認して魔法を解除し、なにやら声を掛けてくる少年とその母を無視してその場を去る。
「お、おじさん、ありが──」
カルミネは最後までは聞くつもりはない。
(全部俺のためにやったことで感謝される謂れはない。 動ける人間が増えれば一緒に逃げることも可能になるだろうし、最悪の場合でも見捨てる前提の囮にも使える。 これにはゼラの活動を順調にいかないように邪魔する意味合いもある。 これは俺にためにやってることで、善行で俺の運を高めてるだけだ。 感謝なんてしてくるんじゃねぇ!)
カルミネは自分にそう言い聞かせ、意味があるかどうか分からない活動に従事する。 これによって住民が各所に四散して恐怖がより広範囲に蔓延することになるのが、一方でゼラを町に留める時間稼ぎにも繋がってくる。 そうやって嫌がらせを続ければ、カルミネ以外の誰かがなんとかしてくれるだろう。 結局それは他人に頼っていることになるのだが、それでも完全な依存ではなく部分依存であり、それら物事に自ら噛んでいるか噛んでいないかでは未来に歴然とした差が生まれてくる。 カルミネは無意識に正しい選択肢を選んでいる。
カルミネは風魔法を使って人助け──彼は自分のためと言い張っている──を敢行する。
逃げ惑う住民は自然と役場へ。 ゼラが意図したわけではないのだが、建物の倒壊や火の手によって絶妙に逃げ道が限られ、容易には町の中心には近づけず、また町の外へも逃げにくくなっている。
「おい、さっさとポーションをよこせ!」
「うるせぇ俺が先だ! 妻が重症なんだ!」
「組合は何をやってる!? あれはお前らが招いた悪魔だろうが!」
「どこか隠れる場所を……!」
「ど、けよ……! 邪魔なんだよクソが!」
もはや役場内に秩序などなく、行き場を失った住民がここに押し寄せ、口々に自分たちの用件ばかり述べている。 それによって騒ぎが広がり、職員がいくら注意を促そうとも通じることはない。
「ま、待ってください! お一人ずつ、お一人ずつ──」
この緊急事態において職員がなぜ暴徒のような住民の対応をしているかというと、詰めかけた彼らによって逃げ場がないからだ。 今やカウンター内にも侵入され、好き放題に机などが荒らされている。 しかしそんなところに彼らの望むものなど置いているわけがないし、そうやって無茶を続けるだけ対応が遅れるというのが誰にも理解できないらしい。 まぁ無理もないだろう。 誰だって助かりたいし、自分が助かるためなら何だってやる──そんな逼迫した状況だ。
職員だってただの人間だ。 それを押し殺してまで職務に従事しようとしている彼らこそ誉められるべきであるが、ここでポジティブな感情を吐き出せる者はおらず、むしろそれはノイズだ。 極限の状況で美徳を優先する人間など、真っ先に死んでしまうものなのだから。
「オルソー、出られないぞ! どうすんだ!? さっさとポーションでも何でも配っちまってあいつらを黙らせてくれよ」
ハンスとオルソーは役場内の一室から出られなくなっていた。 彼らの居るここは魔法使い組合内の大型魔導具設置室。
これより少し前、ハンスはオルソーを探して役場にやってきていた。 この時すでに町中は何故か混乱状態にあり、役場に押しかける住民が多数いた。 その中でハンスが住民たちの騒ぎを聞き流しつつ職員に聞いたところ、オルソーは別の場所へ赴いているということだったので、ハンスは直接彼を探すことにした。
ハンスが役場に到着した際、オルソーはベルナルダンの北東──と言っても役場から数十メートルしか離れていない場所にあるカーライル家を訪れていた。 彼はカーライル家当主であり騎士のキリップ=カーライルとの面談をしており、その内容はベルナルダンの防備に関するものであった。 キリップは町長と同等、下手すれば町長よりも権力を発揮できる貴族位であり、有事に際して住民の指揮を任せることのできる人物である。
魔物や危険な魔法使いの出現しているベルナルダンの現状において、町長の手が及ばない範囲の統制についてオルソーがキリップと検討している最中、事態は先んじて動き出していた。 彼らは二人だけの対談を成立させるために使用人などを排した状態で当主の部屋にいたため、オリガの魔法で町の各所で変死が相次いでいることに気づけなかった。
オルソーが事態に気が付いたのは、爆発による衝撃波で部屋のガラスが砕け散った時になってようやくだ。 その頃には町中は騒ぎに見舞われており、オルソーは事態の理解に遅れた。
町の外での爆発を見てオルソーが思い浮かんだ犯人は、魔物ではなくゼラとオリガであった。 そこには何故か確証があった。 だから彼はキリップに無理を言って即座に動き出すように懇請すると、すぐに役場へ足を走らせた。 そしてハンスと出会い、彼から事態の一部を聞かされた。
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役場に詰めかける住民は助けを求めてやってきており、逃げ込む最後の砦としてここへ至っている。 だからハンスとオルソーが入って行った大型魔導具設置室──重要な設備のため唯一地下に設営されて窓の無い小部屋の形態を取っている──のような場所は隠れるには最適だと判断され、多くの者が狂気的に向かってきた。 部屋から出ようとしていたオルソーだが、これはまずいと判断して即座に扉を閉鎖し、錬金魔法によって扉を頑丈に作り替えた。 そして今に至る。
「他の部屋を覗いただろう? ポーションはそれだけだ。 他は全部持ち出されてしまった」
「どこのどいつにだよ? まさかメジーナか?」
メジーナは魔法使い組合の受付嬢をしている女性。 ハンスは彼女を疑っている。 オルソーはそんなハンスの言葉を聞きながら壁を砕き、地面を魔法で掘削している。
「まさか、彼女はそんなことはしない。 恐らく隣のハンターギルドの連中だろうな。 こっそり俺の執務室の合鍵を作っていることも知っていたしな」
「そいつらを放置したからこうなってるって分かってるのか!?」
「現行犯で捕まえるつもりだったが、裏目に出たというわけだ。 済まないな」
「そんな悠長に言ってるなよ! 僕はフリックにポーションを届けないといけないんだよ!」
「ああ、分かっている。 だが、ポーションを外の連中に見せれば暴動の激化は必至だった。 だからこうして地面を掘っているんだろう」
オルソーがそうしているのは、部屋の外が制御不能なほどに荒れ狂った状況だからだ。 今もなお扉を壊さんと激しい叩打が繰り返されているし、ひとたび扉を開けば押し寄せた住民の群れによって圧死してしまうことは目に見えている。 かと言って彼らを魔法で蹴散らすことも難しいし、だからこうして壁を掘っているわけだ。
「だから早くしろよ!」
「焦らせるな。 俺はこっちの専門じゃないんだ。 グレッグあたりなら余裕だと思うんだがな」
「くっそ……!」
「そうなのか? それで、彼は何か言っていたか?」
「そのグレッグってのはさっき戻ってきたばっかで、カミラが接触する手筈だったけど、僕はこっちに来たからな。 状況は分からない」
「そうか……。 とにかく、地上に出たらハンスはフリックの元へ向かってくれ。 俺は住民の避難誘導を優先するからついて行くことはできないが、そっちが落ち着いたら合流する」
「あ、ああ……。 だけど、急いでくれ……!」
オルソーが落ち着いていられるのは、自分が落ち着きを失っては周りの人間を心配させてしまうからだ。 困難な状況においてこそ上に立つものは心が揺らいではならず、彼はそうあるべきだと自分を律している。 しかし内心はフリックの心配が大きく、長く付き合っている友人だからこそ誰よりも彼の身を案じている。 そんなオルソーの様子からハンスがやや冷静になっているところを見ると、彼の行動はやはり意味があるらしい。
(フリック、無事でいてくれ……。 そして願わくば、グレッグがゼラとオリガを始末していて欲しいところだ)
オルソーは知らない。 今まさに彼の頭上ではゼラによる殺戮が進んでいることを。 そして彼の望みの一つがもう叶わないということを。
「フリック、目を開けろ! 息をしてくれ! フリック……ッ!」
地面に臥してピクリともしないフリック。 彼の開かれた眼窩は光を失って漆黒に染まっており、瞳孔は完全に開ききっている。
ダスクはその事実が信じられず何度も声を掛け続けるが、結果は変わらない。
死──。
全ての生命に訪れる末路がフリックを包んでいた。
「何でだよ! 何でだよ!? クソ、クソ、クソォオオオ!!!」
叫ぶことによってダスクの身体から激しく出血が生じるが、怒りと悲しみが彼に痛みを忘れさせる。 しかし彼もまた大きな傷を負っており、放置すれば命に関わる程度には全身をボロボロにされてしまっている。 これは先ほどのゼラの魔法によるものだ。
《負力解放》の直前、ダスクは直感的に危険を嗅ぎ分け、目の前の命──レスカを優先して逃げる体勢を取った。 それが功を奏したのか、運が良かっただけなのか、彼は波動によって吹き飛ばされて外壁に叩きつけられたものの、ハジメと同様に即死は免れた。 とはいえ至近距離でそれを食らったのは事実なので、レスカを保護する意識が優先されて自保護を放棄し、その結果右腕の開放骨折や全身打撲、骨折、その他あらゆる障害が彼を苛んだ。 顔面を強打した影響なのか右目は完全に見えていないし、肉体を鍛えた上でこれなのだから魔法による衝撃は相当なものだった。
レスカはダスクをクッションに叩きつけられたため直接的なダメージは多くないが、その後もかなりの距離地面を転がされたため生傷は絶えない。 また、元より深刻なダメージを負っていたこともあって、絶命必至な状態だった。 それを見たダスクは所持していた回復ポーション──衝撃によってベルトバッグの中で砕けてしまった──を手で掬ってレスカの口に運び、一時的な救命を急いだ。 その後ダスクは片腕でレスカを抱えたまま精神力だけでフリックを探し、程なくして完全に停止してしまっている彼を見つけた。
ダスクは怨嗟を吐き、フリックの最後を、自身の不甲斐なさを嘆く。 その叫びはハジメの接近に繋がる。
ドサ──。
ハジメは脱力して両膝をついた。 彼が杖代わりにしていた黒刀も大きな音を立てて倒れている。
「そん、な……」
座り込んだダスクの様子と、彼の膝の上で動かないフリックを見れば状況は明らかだ。 そしてダスクの背後で横たわっているレスカを見て、ハジメは心臓が限界まで締め付けられた。
「お前、か……。 無事だったんだな……」
ダスクが醸す弱々しい雰囲気。 それはハジメに不吉なことを感じさせるには十分であり、一気に鼓動が限界まで加速し、息が早く荒くなる。
「ハッ……ハァ……あ……ああ……あ、あああッ……ああああ!?」
「レスカは無事だ! ……っ……」
「……ッ!?」
ハジメが精神崩壊する直前、それを感じ取ったダスクは大声を張り上げた。
ハジメはびくりと大きく身体を揺らし、双眸から大粒の涙を流してレスカの元へ。
「レスカ……! レスカ……!?」
ハジメがレスカの口元に耳を近づけると、浅い息が彼の耳を撫ぜた。
(生きてる……! 生きてる! だけど──)
レスカの容体は非常によろしくない。 素人目にも、彼女の余命はあともって数時間。 ダスクの機転によりダメージはやや和らいでいるが、少量の回復ポーション程度では多少の時間稼ぎが関の山だ。 命の危機を脱するには、より多くのポーション、ないしは回復魔法が必要だ。
「俺のバッグの底に、僅かだがポーションが残ってる……。 レスカを連れてきて飲ませてやれ……」
そう言っているダスクはどう考えても瀕死であり、傍目には彼の方が重症だろう。 だからハジメは一瞬狼狽えたが、自分の中での命の優先度を曲げずにレスカをダスクの側まで運んだ。 そしてバッグを受け取ると、数滴だけ残ったポーションをレスカに飲ませる。
「ダスク、さん……」
「感謝なんてするな……。 俺は未来に投資しただけだからな……。 じゃあ……行け」
「どこに……?」
現在ゼラは町中でか弱い民を蹂躙しており、オリガも同様にこの場には居ない。 今がここから離れる好機であり、夜間ということと魔物の脅威を無視さえすれば逃げることは選択肢として挙がっても良いだろう。 しかし重症かつ戦う力をほとんど持たないハジメとレスカに、逃げ出したとて何ができるというのか。 夜間に危険な荒野に出るとなると相当な覚悟が必要だし、ここで野垂れ死ぬのとはさして変わらない選択かもしれない。 それでもなおダスクがそれを推す理由がある。
「南のクレルヴォー修道院……。 そこのパーソンって男が、回復魔法を使える……。 無事そこまで行けたらレスカは助かるはずだ……。 だから行け」
「で、でも──」
「行けっつってんだろうが!」
「……!」
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「泣くな。 俺とフリックが逆の立場だったとしても、あいつならそうしてるはずだ」
「でも、ダスクさんを置いてなんて……!」
「足手纏いが生意気言うな……。 お前らの成長はフリックの楽しみだったんだ……。 だからあいつの願いを成就させるために、お前らは南へ向かえ!」
理不尽な現実に対する怒り、何もできない自分への失望、そしてここを立ち去ることを拒否できない弱さ。 それらはハジメの心をひどく弱らせ、ダスクの言うような未来に期待できなくなる。
(それでも──先が真っ暗でも、行くしかないのかよ……)
ハジメが惨めさに震えていると、ダスクから声掛けがあった。
「最後に大人からの忠告だ、聞いていけ。 とにかく、お前らはこれを恨むな。 人間、弱いのは当たり前だからな……。 弱さを知ってもなお生きられる奴が、多分一番強いからな。 だからお前が……いや、お前らが魔法使いとして生きていくなら、マイナス感情じゃなくて、未来に繋げられる感情で人生を歩け。 そしたらフリックも喜んでくれるはずだ……」
「……」
「分かったのか?」
「……分かった」
「じゃあもう消えろ。 目障りだ」
「ごめん……」
「言うな」
「ありがとう……」
「俺に言うな」
「……二人とも、さよなら」
「じゃあな」
ハジメは黒刀を握ると、ダスクとフリックに背を向けてよろよろと歩き出した。
向かう先は、漆黒の闇に覆われた荒野。
ハジメの未来を表すかのように、世界は真っ黒に大口を開けて彼を迎えている。 しかし、ダスクに未来を託された以上、ここを進むしかない。
ハジメは震える足で歩き続けた。 時間で言えばかなりの時間、距離で言えばそれほどでもない。 日中ならベルナルダンは未だに視認できている、その程度の場所にハジメとレスカは居る。
ズ──。
ハジメの背後で重い音がズシリと響いた。
直後、激しい突風と異常感覚が通り抜けたかと思うと、パラパラと細かな破片がハジメの背中を叩き、その中でも大きめの物体が頭部を強打した。
「ゔッ……!」
ハジメは痛みで視界が明滅し、派手に地面に転がされる。
通り抜けたこの感覚をハジメは知っている。
(あいつの、魔法……)
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「ちくしょう……! ちくしょう……! ちくしょう……!」
ハジメは顔面を悔しさで歪めながら涙を流し続けた。 それでもとめどなく涙が溢れる。
(俺は弱い……。 だけど、それによってダスクさんや他の人が傷つくのは嫌だ……。 今の俺に力はない……。 だから誰だっていい。 どうかあの人たちを助けてやってくれ……! そのためなら、あとからどんな代償を支払ったって──)
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