Retry 異世界生活記

ダース

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第2章.少年期

50.冷たい水の味

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「ん……」

なんだか体が気だるい…
…あれ…?

俺どうしたんだっけ…。


「…ルス…?クルス…。起きたの…?」
母の声だ。

ゆっくりと目を開けると、そこには夕飯の準備をしながら俺に話しかける母がいた。

「あれ…?俺なんで家で寝てるんだ…。」

「クルスが倒れてしまったって綺麗な金髪のお姉さんがあなたを抱えて家まで連れて来てくれたのよ?犬に噛まれて気絶してしまったって言ってたけど…。もう、クルス…男の子なんだからそれくらいで気絶しちゃだめよ?冒険者になるんでしょ?」

…あ…なんだか、だんだん思い出してきた…。
コルトと魔法の練習をしてたら、コルトが俺のMPを使って魔法を…
ってなに俺が気絶した理由を犬に噛まれたからってことにしてるんだ!

「あのお姉さんは知り合い?後でお礼言っておきなさいね?なんだかとても不安な表情をしていて心配しているようだったから…。あ、これそのお姉さんが置いていってくれたお菓子よ。」

そう言って母は、ふわふわの甘いクリームを薄い皮の生地で包んだお菓子をくれた。

「……むぐ…。うまいな…やっぱり…。」


ちなみに俺の腕に残っていた傷は母が回復魔法で治してくれたみたいだった。

「母さん、何か手伝うよ!」
甘い物を食べたらなんだか少し元気になった俺は、母のしている夕飯の準備を手伝うことにした。

「そう?じゃあ、このナガーネギをきざんでおいてもらえる?」

ナガーネギは緑色の細長い野菜だ。
例えていうとなんていうか…ながーいネギだ。
炒め物に振りかけてもいいし、スープに入れてもおいしい万能食材だ。

トントントントントンッ…

リズムのいい音が響く。

「クルスは料理が上手ね。将来は冒険者じゃなくて料理人でもいいかもね!」
母がそう話しかけてくる。

ふふん。俺の包丁さばきに感涙かんるいしているようだ。
…まぁ、なんというか前世での一人暮らしでそこそこ家事はしていたし、学生の時はアルバイトで居酒屋のキッチンで働いていたこともあったのでそのおかげだ。

…しかし、母の言う通りかも…。
この腕をもってお店を開いたらミシュラン三ッ星レストランになってしまうのでは…?。
と考えたが、そもそもこの世界にミシュランがあるのか…?と少し不安になり、やっぱり冒険者にしておこうと思い直した。

「切り終わったよ?母さん。」
ながーいネギを切り終えたので母に報告する。

「ありがとう。それじゃあ、これもお願いできる?」
そう言って母は少し茶色い皮が付いた丸い物を俺に渡した。

これはタマーネギという野菜だ。
ナガーネギの根の部分から、たまに採れるそうだ。
例えていうとなんていうか…タマネギだ。

トントントントントンッ…

再び軽快なリズムが響く。
今度は少し大きめに切る。

「くっ…」
ちなみにタマーネギを切ると、なんだか目にしみる成分が出るらしく、涙が出てくる。

切り終えたタマーネギを母に渡すと、モフリィの肉と一緒に炒めはじめた。
どうやら今日はモフリィの肉とタマーネギの炒め物のようだ。

最後にナガーネギを振りかけると
「夕飯の準備ができたから、お父さんとアリスを呼んで来てもらえる?」
と言われた。

父と妹アリスを呼びに雑貨屋の方に向かう。
父は店の閉店作業中のようで、店先の戸締りをしていた。
アリスは父のそばで勉強中のようだ。…えらいなー。
と思いつつ話しかける。

「父さん、アリス。夕飯の準備ができたよ!」

「お、そうか。急いで行く。アリス。先に行ってなさい。」
父がそう言ったのでアリスと俺は一緒に食卓の方に向かった。

食卓のテーブルには先ほど母が炒めたモフリィの肉とタマーネギの炒め物、そしてパンが置いてある。
パンはコッペパンくらいの大きさだが、前世で俺が食べていたパンより結構かためだ。
粉砂糖が付いたコッペパンがなつかしいなーと思いながらいつもの場所に座る。

「あ、お水が無かったわね。クルスお願いできる?アリスはコップを持って来てちょうだい?」
と母が言ってきた。

パンが結構かためなので、食事の時は水分が必須だ。
飲み物だったり、スープだったり。

「わかった。今持ってくる。」
俺はそう言うと、水をためているかめから柄杓ひしゃくで1Lペットボトルくらいの大きさのビンに水を移し替える。

水を移し替えながら…水道って便利だよなーと感じる。
この世界ではどうやら…というかやっぱり水道なんてなく、水は井戸や川から使う分だけんでこないといけないようだった。
それこそ魔法でドバーッと出来ないの?と思ったが、生活用水全部を魔法で補うのは難しいらしい。

んー…でもせめて冷たい水が飲みたいなー…。
ひんやり冷えた美味しい水が飲みたい。
かめに貯めている水はしょうがないけどやっぱり常温だ。

……少し前から気になっていたことがある。
冷たい水が飲みたくなった俺はそれを試してみることにした。

火の魔法。
これは火を出すことができる。
…でも、たぶん本質はそこではなく、火が出るのは火の魔法を行使し、魔素の熱量を上昇させた結果だ。

火の魔法はおそらく魔素の熱量のコントロール。
その証拠に、水をちょうどいいあったかい感じの温度に温めることができる魔法「アッタカ」を俺は使うことができる。
父やコルトに話したときはそんな魔法知らないと言われてしまったが…。

魔素の熱量をコントロールして上げることができるのであれば、下げることもできるのではないか…。
なんだか冷たい物っていうと水魔法っぽいけど、今ある熱量に変化を加えるのであれば、そういうことなのでは…?と思ったのだ。

そう考え、水を入れた瓶を両手でぎゅっとつかみ、水の温度が下がるようイメージする。
温度の低下…
温度…たしか分子の運動が熱量に繋がっていたはず…
そんなことを前世の学校で習ったような記憶をうっすら思い出した俺は、水の分子、目には動いているようには見えないけど、今手に持っている瓶の中身が静止するよう、そして温度が下がるようイメージしてみる。

すると、手に持っている瓶の温度がだんだんと下がってきた。

「おお…。これは…使える…。」
予想通りの結果になったことに思わず声が出る。

そして水の入った瓶はついにひんやりとした温度になった。

俺は少しうきうきした気持ちになりながら、ひんやりとした温度になった瓶を家族みんなが待つ食卓に持っていき、アリスが準備したコップに注いで行く。


「じゃ、食べましょ!」

「「はーい」」
俺は心の中でいただきまーす。と言いながらまずコップの水を一口飲む。

「ゴクッ…プハッ…」
う~ん!やっぱり冷たい水おいしーっ!

と思っていると父も水を飲む。
「ゴクッ…ッ!ん?今日の水は冷たくておいしいな!」
父がそう言うと母とアリスも水を飲みだした。

「「ゴクッ…ゴクッ…」」

「あら?本当ね!」
「つめたーい!おいしい!」

「俺の魔法で冷たくしてみたんだ!」
へへん!という感じで言ってみる。

「そんな魔法あったかしら…?」

「はっはっは!最近の学校ではそんな魔法も教えているのか!」
母はそんな魔法あったかな…と不思議がっているようだったが、父は水がおいしいのが気に入ったのか、水が冷たくなった理由は気にしていないようだった。

どうやらこの魔法は「アッタカ」の時と同じく、父も母も知らないようなので、とりあえず「ヒンヤリ」という名前にしておいた。


今度の修行の時はこの魔法で冷たくした水を持って行くことにしよう。

…あいつの分も持って行ってやるか…。



----------------------------------------------------------------------------------
魔法「ヒンヤリ」
属性:火
魔素の熱量を減少させる。
水に使うとちょうどいいひんやりした感じの温度に下げることができる。(8℃くらい)
消費MP:1Lx1℃の低下につきMP1消費


--------------------------
ナガーネギ:ながーい緑色の野菜。ネギ味。長さ100cm程度まで育つ。
炒め物に振りかけたり、スープに入れたりして食べることが多い。


タマーネギ:ナガーネギの根の部分から、たまに採れる少し茶色い皮が付いた丸い野菜。タマネギ味。
炒め物に入れたり、スープに入れたりして食べることが多い。
切った時の飛沫が目に入ると沁みるので注意が必要。


モフリィ:モフモフの毛に包まれた丸っこい魔物。
誰彼構わず襲い体当たりをしてくるがモフモフの毛により全然痛くない。
(モフモフの毛はモフリィの絶命とともにしなしなになってしまう。)
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