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第2章.少年期
51.息抜き
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「はい。今日の授業はここまで。明日は算数の授業です。テストをしますからみんなしっかりと準備してきてね!」
「「「えええ~っ!」」」
どうやら明日の算数の授業はテストをするらしい。
ジムニー先生の言葉にみんないやだいやだと反応する。
まぁ俺は前世で大学にも通わせてもらったので特に問題はない。
それよりも、コルトのMPを使えることが分かったので、早く週末になって魔法の修行ができないかという思いで今週の授業はなんだか気が乗らない。
まぁそんな時もある。ごめんよジムニー先生…。
「よし、帰るか!」
そう言って俺はノートとペンを鞄にしまい帰り支度をする。
「はぁ…算数のテストか…やだなぁ…」
隣から声が聞こえた。
ロッテだ。
「どうしたんだ…?ロッテ算数苦手だったっけ?」
ロッテは勉強そんなに苦手じゃなかった気がしたけどな…と気になって声を掛けた。
「う~ん…なんだか最近授業でやっているところがわからなくて…。明日のテストで悪い点取ったらお母さんに怒られちゃう…はぁ…」
ん~。どうやら最近授業でやっているところがわからず、つまづいているようだ。
最近やっているところ…。
割り算とかあたりだったかな…。
「お母さん厳しいのか…?なんだったら教えるけど…。」
ロッテのママは教育ママさんだったり…?
なんだかいつものしっかりした感じのロッテではないので心配になり、そう言ってみる。
「えっ…?い…いいの…?お…お願いしよう…かな…。で…でも…テストは明日だし…わたし覚えられなくてせっかくクルスくんに教えてもらってもいい点取れないかも…。…そんなことになったら…。で…でも…」
う~む…。
たしかに今日の明日じゃ間に合わないかもな…。
「たしかに間に合わないってこともあるか…。もういっそサボっちゃうとか!」
間に合わないなら無かったことにすればいい!
という方策を提案してみる。
「…あ…そういうことじゃ…なく…て…間に合わない…わけ…でも…うぅ…。……それにサボるなんてできないよ…。」
なんだか元気のない声だ。
う~む。やっぱりしっかりものを装ったロッテは、俺のもうサボっちゃいなよ!という提案を却下した。
「なんだよ…。せっかく提案したのにー。」
そうだそうだ!人の行為を無碍にしやがってー!
とちょっとムッとした表情をロッテに向けてみる…。
…くっ…8歳児にこんな…っ!
と思いつつも、抗議する時はしっかり抗議しないとな!と心を鬼にする。
俺なりの遺憾の意だ。
「わ…わたしだってっ…ほんとはサボっちゃいたいよ…でも…うぅ…」
「いいんじゃないか…?一回くらい…。明日は気分転換して、その後勉強して次のテストでいい点取ればいいだろ。」
そうそう。気分ののらないときに頑張ってもあんまり効果出ないしリフレッシュしてできる時にやればいいし!
「そ…そうかな…で…でも…。」
「俺もなんだか授業に集中できてないみたいだし、明日はロッテと一緒にサボろうかな…。」
うむ…。なんだかロッテにサボることを提案していたら俺もサボりたくなってしまった。
…というか今週は早く魔法の修行がしたくて気分がのらないのだ!
「っえ?…クルスくんもサボっちゃうの…?」
「まぁテストはしなくても今授業でやっているところはわかってるし。」
「………クルスくんって算数得意だよね…。授業の時はいつもボケッとしてるのに…。」
…言い方なー…。
「じゃ…じゃぁわたしもサボっちゃおう…かな…。」
お…どうやら俺の提案を受け入れてくれたようだ。
そうそう。休みも大切!
「で…でもどうやって休もう…。お父さんとお母さんになんて言えば…。」
そう。問題なのは休む理由。
ここが問題だ。
ふっふっふ…。実は俺には考えがある。
ついにあれを使う時が来たようだ…。
「実はそれについては考えがあるんだ。とりあえずロッテの家の近くまで帰ろう。」
俺はそう言い、ロッテと一緒に学校を出た。
「そういえばロッテの家はどの辺なんだ?」
「わたしの家は…あ、あのお店のところを右に曲がって10分くらい歩くと着くよ!」
「そうなんだ。」
お、あれはサンタール回復薬店。
しかしあれだな…。よく見るとなかなか豪勢なつくりだな…。
ポーションで荒稼ぎしてるんじゃないだろうな…と思いつつ、店の前で右に曲がる。
「そう言えばロッテのお父さんとお母さんは何してるんだ?」
「わたしのお父さんとお母さんは冒険者ギルドで働いてるの!」
「へー。一緒の所で働いてるのか。」
「うん!」
どうやらロッテの両親は冒険者ギルドの職員らしい。
職場結婚のようだ。
ちなみにロッテの母は王国魔法師になりたかったそうだが、騎士・魔法師選抜高等学校の入学試験で落ちてしまい、諦めたそうだ。
…う~む。
ロッテってば実はなかなか期待を背負っているのかもな…。
そんなことを思っているとロッテの家に着いたようでロッテが声を掛けてきた。
「あそこがわたしの家だよ。」
「へー。綺麗な家だね!」
お…これはなかなか綺麗な石造りの家…。
しかも2階建てだ!
くっ…。俺もいつかは2階建ての家に住んでやる!と心に誓う。
「でしょ!」
ロッテは得意げな表情をする。
おだてると調子に乗るタイプだな…。
と思いつつ、本題の明日学校を休む方法についての話しを切りだす。
「よし。それじゃあ、ロッテ、まず温度石は家にあるか?」
温度石。
温度に応じて色が変わるという性質を持つ石だ。
細長く加工して人の体温を測ったり、料理の時に鍋の温度を測ったりするのに使う。
体温用の温度石は平熱の時に測ると黄色だが、熱が上がるとだんだん赤みを帯びていき、ちょっとクラクラする感じの熱の時に測ってみるとオレンジ色になる。
「え…?うん。あるけど…。」
「それと、お父さんとお母さんはいつ頃帰ってくるか教えてくれ。」
「う~ん。あと5時間くらいでいつも帰ってくるよ?」
「そうか。」
う~ん…。結構まだ時間があるな…。
「それじゃあお父さんとお母さんが帰ってくるまで算数の勉強するか。」
「え?っう…うん!」
「それじゃあノートとペンを…」
「じゃあわたしのお部屋でやろう?」
ロッテはそう言って俺の手を引っ張る。
「えっ?」
「こっちだよ!」
ロッテに引っ張られるがままに着いていく。
ガチャッ…
「ここがわたしの部屋!座って?」
そう言ってロッテがドアを開け、ピンク色のカーテンとベッドの置いてある部屋に案内された。
「お水持ってくるから待っててね!」
ロッテはそう言って1階に下りて行った。
「……」
ど…どうしよう…。
女の子のお部屋に案内されてしまった…。心の準備が…。
キョロキョロと部屋を見回す。
女の子って感じの部屋だな…。
装飾品がいっぱいあるわけではないが、部屋はピンク色の物で彩られている。
ガチャ…
「お待たせ!はい、お水。」
ロッテが戻ってきて水の入ったコップを出してくれた。
「あ、ありがとう…。」
「ゴクッ…ッ!ゴホッゴホッ…」
「だっ大丈夫!?クルスくん!」
「ごめ…変な所に入っただけだからっ…!」
「そう?…それじゃ、勉強を教えて!」
…そうだった。
勉強教えるんだった。算数の勉強。
前世で28歳で生涯を終え、転生して8年暮らしたおかげで、女の子の部屋に呼ばれるイベントを長い間経験していなかったせいか、変に緊張してしまった…。
「う…うん。それじゃあまず、どのあたりの授業からわからなくなった?」
気を取り直してロッテの方を向く。
「ええっとね…」
そうしてとりあえず、地道に教えてみた。
…
……
………
「あ、なんだかだんだんわかってきたかも!ふふっ!クルスくんありがとう!」
「そうか。ロッテも結構覚えるのが早いな。」
「っ!…えへへ…」
「「ただいまー!」」
「あ、お父さんとお母さんが帰ってきたみたい。」
どうやらロッテのお父さんとお母さんが帰ってきたようだ。
一緒の職場ということもあって一緒に帰ってくるんだな。
仲睦まじい…。
ロッテが両親を迎えに1階に下りていく。
俺も挨拶をするため、ロッテの後に続く。
…!ご…ご両親へのあいさつ…っ!
…な…なんて言えば…っ!
「お父さんお母さんおかえりなさい!お友達のクルスくんに勉強を教えてもらってるの!」
「あら。こんにちわクルスくん!ありがとうねぇ~」
ほほー。この人がロッテのお母さんか。
教育ママか?と疑ってしまったが、優しそうなロングヘアーの女性だ。
「ありがとうな。クルスくんと言えばたしか…馬を召喚した子だったかな?」
おおぅ…。どうやら俺の召喚獣のことはロッテの御両親にまで轟いているようだ。
「こんにちわ!ロッテはとても覚えが早いのでもうちょっとやったら勉強は終わりそうです。」
「あらそう?それじゃあもうちょっとだけお願いね?ロッテ、クルスくんと仲良くね?」
「はい。お母さん!」
そう言って俺とロッテは部屋に戻った。
それでは明日サボる準備に取り掛かるか…。
…しかし…
「……結構ロッテ算数出来てきたと思うし、明日サボらなくてもいいんじゃないか…?」
うむ…。
この感じなら、明日テスト受けてもいいんじゃない?
「う~ん。でも、なんだかもう明日はお休みの気分になっちゃった。それにテストはしなくても今授業でやっているところはわかってきたし。…ふふっ!」
ロッテはそう言ってなんだかにやにやしている。
まぁ確かに一度休みの気分になるともう抜け出せないよな…。
まぁいいか…。
「そうか…。それじゃあロッテ、こっちに来てここに座ってくれ。」
「え?うん。」
俺は座ったロッテの首の両側に手を添える。
「あっ…え…っ?ク…クルスく……」
そしてあの魔法を唱える。
「アッタカ」
「ク…クルスくん…?なにしてるの…?」
「ん…?俺のスペシャルな魔法だ!ちょっと待ってて。」
そう。これは俺のスペシャルな魔法。
父もコルトも知らないと言っていた。もしかしたら伝説の魔法かもしれない。
…
……
………
「ま…まだ…かな…」
「もうちょっと。」
「…あ、べつにいい…けど…」
…
……
………
「よし!」
ロッテの体温がちょうどいいあったかい感じの温度になったので俺はロッテから手を離す。
人には効きづらいのか、30分くらいかかってしまったがうまくいった。
「どうだ?ちょっと体があつかったりしないか?」
「そういえば…なんだか体があついような…。」
「よし。それじゃあこれで温度を測ってみてくれ。」
そう言って温度石をロッテに渡す。
「うん。」
ロッテは温度石を受け取り脇に挟む。
ちなみに温度石は約20秒ほどで温度を測定することができる。
「あ…っ!」
温度を測り終えた温度石を見てロッテが驚く。
ロッテの体温を測り終えた温度石はオレンジ色になっていた。
温度石のオレンジ色。そうつまりロッテは熱がある状態になったのだ。
人の60%は水で出来ていると聞いたことがある。
で、あれば水を温めることができた「アッタカ」は人にも効くのではないかと思ったのだ。
「アッタカ」は水に使うとちょうどいいあったかい感じの温度、38℃程に温めることができる。
そう…これを人に使い体温を38℃にすることができた場合、それはとてつもない魔法となる。
38℃といえば、これは学校や会社を休んでもいい熱の温度だ。
38℃熱があると報告した日にはもう、8割がた休める。
これが37℃くらいだった場合、そうはいかない。あ…ちょっと休みずらい…となってしまう。
…そしてもし…これを敵に使った場合…
「あ…今日はなんだか熱っぽくて…。ちょっと寝てなきゃいけないの…。あなたの勝ちでいいわ…。」
となり、戦わずして勝ってしまうことができるかもしれない魔法だ…。
38℃になるのに30分ほどかかるので、その間ジッとしてもらう必要はあるが…。
俺の前世は江戸城を無血開城した勝海舟か!?
と思ったが、俺の前世は鉄工所で働くサラリーマンだったことを思い出したので
体温を測り終えた後の行動についてロッテに伝える。
「よし。それじゃあそれを持ってロッテのお母さんの所に行くか。時間が経つと体温が元に戻っちゃうからな。」
そう言って1階のロッテの母のところに向かう。
「すみません。」
「あら、どうしたの?」
「勉強は終わったのですが、ロッテが頑張りすぎちゃったみたいで、熱が出てしまったようです。」
そう言って俺はロッテの体温を測りオレンジ色になった温度石を渡す。
「あら。オレンジ色。ロッテ大丈夫?」
そう言ってロッテの母はロッテのおでこを触る。
「本当ね…。明日はお休みしなさい?」
「う…うん。」
ロッテは元気のないような演技をしている。
なんだか少し罪悪感を感じているような表情だ。
その後自分の鞄を取りにロッテの部屋に戻る。
「…あ…ありがとうクルスくん…。」
「これで明日はお休みだな!…なんだかお母さんに悪いことしたかなって思ってる?」
さっきの罪悪感を感じているような表情が気になったので聞いてみる。
「…少し…。でも、なんだか学校をサボるなんて…。思いつきもしなかった。…ふふっ!なんだか不思議な感じ…。」
「ねぇ…クルスくんも明日は、さ…サボるの?」
「うん…俺も同じ方法を使って…」
明日は父もモフリィの肉の補充のために出かけるので俺は気分転換に市場にでも行こうかなと思っている。
「じゃ…じゃあ…、お買いものでもしに行かない…?」
「ん?いいよ。市場に行くつもりだったし。」
「ほんと!?それじゃあ明日の…お昼にサンタール回復薬店の前で待ち合わせね!」
「わかった。」
なんだか吹っ切れたような表情になったロッテと明日の昼、待ち合わせの約束をした。
「「「えええ~っ!」」」
どうやら明日の算数の授業はテストをするらしい。
ジムニー先生の言葉にみんないやだいやだと反応する。
まぁ俺は前世で大学にも通わせてもらったので特に問題はない。
それよりも、コルトのMPを使えることが分かったので、早く週末になって魔法の修行ができないかという思いで今週の授業はなんだか気が乗らない。
まぁそんな時もある。ごめんよジムニー先生…。
「よし、帰るか!」
そう言って俺はノートとペンを鞄にしまい帰り支度をする。
「はぁ…算数のテストか…やだなぁ…」
隣から声が聞こえた。
ロッテだ。
「どうしたんだ…?ロッテ算数苦手だったっけ?」
ロッテは勉強そんなに苦手じゃなかった気がしたけどな…と気になって声を掛けた。
「う~ん…なんだか最近授業でやっているところがわからなくて…。明日のテストで悪い点取ったらお母さんに怒られちゃう…はぁ…」
ん~。どうやら最近授業でやっているところがわからず、つまづいているようだ。
最近やっているところ…。
割り算とかあたりだったかな…。
「お母さん厳しいのか…?なんだったら教えるけど…。」
ロッテのママは教育ママさんだったり…?
なんだかいつものしっかりした感じのロッテではないので心配になり、そう言ってみる。
「えっ…?い…いいの…?お…お願いしよう…かな…。で…でも…テストは明日だし…わたし覚えられなくてせっかくクルスくんに教えてもらってもいい点取れないかも…。…そんなことになったら…。で…でも…」
う~む…。
たしかに今日の明日じゃ間に合わないかもな…。
「たしかに間に合わないってこともあるか…。もういっそサボっちゃうとか!」
間に合わないなら無かったことにすればいい!
という方策を提案してみる。
「…あ…そういうことじゃ…なく…て…間に合わない…わけ…でも…うぅ…。……それにサボるなんてできないよ…。」
なんだか元気のない声だ。
う~む。やっぱりしっかりものを装ったロッテは、俺のもうサボっちゃいなよ!という提案を却下した。
「なんだよ…。せっかく提案したのにー。」
そうだそうだ!人の行為を無碍にしやがってー!
とちょっとムッとした表情をロッテに向けてみる…。
…くっ…8歳児にこんな…っ!
と思いつつも、抗議する時はしっかり抗議しないとな!と心を鬼にする。
俺なりの遺憾の意だ。
「わ…わたしだってっ…ほんとはサボっちゃいたいよ…でも…うぅ…」
「いいんじゃないか…?一回くらい…。明日は気分転換して、その後勉強して次のテストでいい点取ればいいだろ。」
そうそう。気分ののらないときに頑張ってもあんまり効果出ないしリフレッシュしてできる時にやればいいし!
「そ…そうかな…で…でも…。」
「俺もなんだか授業に集中できてないみたいだし、明日はロッテと一緒にサボろうかな…。」
うむ…。なんだかロッテにサボることを提案していたら俺もサボりたくなってしまった。
…というか今週は早く魔法の修行がしたくて気分がのらないのだ!
「っえ?…クルスくんもサボっちゃうの…?」
「まぁテストはしなくても今授業でやっているところはわかってるし。」
「………クルスくんって算数得意だよね…。授業の時はいつもボケッとしてるのに…。」
…言い方なー…。
「じゃ…じゃぁわたしもサボっちゃおう…かな…。」
お…どうやら俺の提案を受け入れてくれたようだ。
そうそう。休みも大切!
「で…でもどうやって休もう…。お父さんとお母さんになんて言えば…。」
そう。問題なのは休む理由。
ここが問題だ。
ふっふっふ…。実は俺には考えがある。
ついにあれを使う時が来たようだ…。
「実はそれについては考えがあるんだ。とりあえずロッテの家の近くまで帰ろう。」
俺はそう言い、ロッテと一緒に学校を出た。
「そういえばロッテの家はどの辺なんだ?」
「わたしの家は…あ、あのお店のところを右に曲がって10分くらい歩くと着くよ!」
「そうなんだ。」
お、あれはサンタール回復薬店。
しかしあれだな…。よく見るとなかなか豪勢なつくりだな…。
ポーションで荒稼ぎしてるんじゃないだろうな…と思いつつ、店の前で右に曲がる。
「そう言えばロッテのお父さんとお母さんは何してるんだ?」
「わたしのお父さんとお母さんは冒険者ギルドで働いてるの!」
「へー。一緒の所で働いてるのか。」
「うん!」
どうやらロッテの両親は冒険者ギルドの職員らしい。
職場結婚のようだ。
ちなみにロッテの母は王国魔法師になりたかったそうだが、騎士・魔法師選抜高等学校の入学試験で落ちてしまい、諦めたそうだ。
…う~む。
ロッテってば実はなかなか期待を背負っているのかもな…。
そんなことを思っているとロッテの家に着いたようでロッテが声を掛けてきた。
「あそこがわたしの家だよ。」
「へー。綺麗な家だね!」
お…これはなかなか綺麗な石造りの家…。
しかも2階建てだ!
くっ…。俺もいつかは2階建ての家に住んでやる!と心に誓う。
「でしょ!」
ロッテは得意げな表情をする。
おだてると調子に乗るタイプだな…。
と思いつつ、本題の明日学校を休む方法についての話しを切りだす。
「よし。それじゃあ、ロッテ、まず温度石は家にあるか?」
温度石。
温度に応じて色が変わるという性質を持つ石だ。
細長く加工して人の体温を測ったり、料理の時に鍋の温度を測ったりするのに使う。
体温用の温度石は平熱の時に測ると黄色だが、熱が上がるとだんだん赤みを帯びていき、ちょっとクラクラする感じの熱の時に測ってみるとオレンジ色になる。
「え…?うん。あるけど…。」
「それと、お父さんとお母さんはいつ頃帰ってくるか教えてくれ。」
「う~ん。あと5時間くらいでいつも帰ってくるよ?」
「そうか。」
う~ん…。結構まだ時間があるな…。
「それじゃあお父さんとお母さんが帰ってくるまで算数の勉強するか。」
「え?っう…うん!」
「それじゃあノートとペンを…」
「じゃあわたしのお部屋でやろう?」
ロッテはそう言って俺の手を引っ張る。
「えっ?」
「こっちだよ!」
ロッテに引っ張られるがままに着いていく。
ガチャッ…
「ここがわたしの部屋!座って?」
そう言ってロッテがドアを開け、ピンク色のカーテンとベッドの置いてある部屋に案内された。
「お水持ってくるから待っててね!」
ロッテはそう言って1階に下りて行った。
「……」
ど…どうしよう…。
女の子のお部屋に案内されてしまった…。心の準備が…。
キョロキョロと部屋を見回す。
女の子って感じの部屋だな…。
装飾品がいっぱいあるわけではないが、部屋はピンク色の物で彩られている。
ガチャ…
「お待たせ!はい、お水。」
ロッテが戻ってきて水の入ったコップを出してくれた。
「あ、ありがとう…。」
「ゴクッ…ッ!ゴホッゴホッ…」
「だっ大丈夫!?クルスくん!」
「ごめ…変な所に入っただけだからっ…!」
「そう?…それじゃ、勉強を教えて!」
…そうだった。
勉強教えるんだった。算数の勉強。
前世で28歳で生涯を終え、転生して8年暮らしたおかげで、女の子の部屋に呼ばれるイベントを長い間経験していなかったせいか、変に緊張してしまった…。
「う…うん。それじゃあまず、どのあたりの授業からわからなくなった?」
気を取り直してロッテの方を向く。
「ええっとね…」
そうしてとりあえず、地道に教えてみた。
…
……
………
「あ、なんだかだんだんわかってきたかも!ふふっ!クルスくんありがとう!」
「そうか。ロッテも結構覚えるのが早いな。」
「っ!…えへへ…」
「「ただいまー!」」
「あ、お父さんとお母さんが帰ってきたみたい。」
どうやらロッテのお父さんとお母さんが帰ってきたようだ。
一緒の職場ということもあって一緒に帰ってくるんだな。
仲睦まじい…。
ロッテが両親を迎えに1階に下りていく。
俺も挨拶をするため、ロッテの後に続く。
…!ご…ご両親へのあいさつ…っ!
…な…なんて言えば…っ!
「お父さんお母さんおかえりなさい!お友達のクルスくんに勉強を教えてもらってるの!」
「あら。こんにちわクルスくん!ありがとうねぇ~」
ほほー。この人がロッテのお母さんか。
教育ママか?と疑ってしまったが、優しそうなロングヘアーの女性だ。
「ありがとうな。クルスくんと言えばたしか…馬を召喚した子だったかな?」
おおぅ…。どうやら俺の召喚獣のことはロッテの御両親にまで轟いているようだ。
「こんにちわ!ロッテはとても覚えが早いのでもうちょっとやったら勉強は終わりそうです。」
「あらそう?それじゃあもうちょっとだけお願いね?ロッテ、クルスくんと仲良くね?」
「はい。お母さん!」
そう言って俺とロッテは部屋に戻った。
それでは明日サボる準備に取り掛かるか…。
…しかし…
「……結構ロッテ算数出来てきたと思うし、明日サボらなくてもいいんじゃないか…?」
うむ…。
この感じなら、明日テスト受けてもいいんじゃない?
「う~ん。でも、なんだかもう明日はお休みの気分になっちゃった。それにテストはしなくても今授業でやっているところはわかってきたし。…ふふっ!」
ロッテはそう言ってなんだかにやにやしている。
まぁ確かに一度休みの気分になるともう抜け出せないよな…。
まぁいいか…。
「そうか…。それじゃあロッテ、こっちに来てここに座ってくれ。」
「え?うん。」
俺は座ったロッテの首の両側に手を添える。
「あっ…え…っ?ク…クルスく……」
そしてあの魔法を唱える。
「アッタカ」
「ク…クルスくん…?なにしてるの…?」
「ん…?俺のスペシャルな魔法だ!ちょっと待ってて。」
そう。これは俺のスペシャルな魔法。
父もコルトも知らないと言っていた。もしかしたら伝説の魔法かもしれない。
…
……
………
「ま…まだ…かな…」
「もうちょっと。」
「…あ、べつにいい…けど…」
…
……
………
「よし!」
ロッテの体温がちょうどいいあったかい感じの温度になったので俺はロッテから手を離す。
人には効きづらいのか、30分くらいかかってしまったがうまくいった。
「どうだ?ちょっと体があつかったりしないか?」
「そういえば…なんだか体があついような…。」
「よし。それじゃあこれで温度を測ってみてくれ。」
そう言って温度石をロッテに渡す。
「うん。」
ロッテは温度石を受け取り脇に挟む。
ちなみに温度石は約20秒ほどで温度を測定することができる。
「あ…っ!」
温度を測り終えた温度石を見てロッテが驚く。
ロッテの体温を測り終えた温度石はオレンジ色になっていた。
温度石のオレンジ色。そうつまりロッテは熱がある状態になったのだ。
人の60%は水で出来ていると聞いたことがある。
で、あれば水を温めることができた「アッタカ」は人にも効くのではないかと思ったのだ。
「アッタカ」は水に使うとちょうどいいあったかい感じの温度、38℃程に温めることができる。
そう…これを人に使い体温を38℃にすることができた場合、それはとてつもない魔法となる。
38℃といえば、これは学校や会社を休んでもいい熱の温度だ。
38℃熱があると報告した日にはもう、8割がた休める。
これが37℃くらいだった場合、そうはいかない。あ…ちょっと休みずらい…となってしまう。
…そしてもし…これを敵に使った場合…
「あ…今日はなんだか熱っぽくて…。ちょっと寝てなきゃいけないの…。あなたの勝ちでいいわ…。」
となり、戦わずして勝ってしまうことができるかもしれない魔法だ…。
38℃になるのに30分ほどかかるので、その間ジッとしてもらう必要はあるが…。
俺の前世は江戸城を無血開城した勝海舟か!?
と思ったが、俺の前世は鉄工所で働くサラリーマンだったことを思い出したので
体温を測り終えた後の行動についてロッテに伝える。
「よし。それじゃあそれを持ってロッテのお母さんの所に行くか。時間が経つと体温が元に戻っちゃうからな。」
そう言って1階のロッテの母のところに向かう。
「すみません。」
「あら、どうしたの?」
「勉強は終わったのですが、ロッテが頑張りすぎちゃったみたいで、熱が出てしまったようです。」
そう言って俺はロッテの体温を測りオレンジ色になった温度石を渡す。
「あら。オレンジ色。ロッテ大丈夫?」
そう言ってロッテの母はロッテのおでこを触る。
「本当ね…。明日はお休みしなさい?」
「う…うん。」
ロッテは元気のないような演技をしている。
なんだか少し罪悪感を感じているような表情だ。
その後自分の鞄を取りにロッテの部屋に戻る。
「…あ…ありがとうクルスくん…。」
「これで明日はお休みだな!…なんだかお母さんに悪いことしたかなって思ってる?」
さっきの罪悪感を感じているような表情が気になったので聞いてみる。
「…少し…。でも、なんだか学校をサボるなんて…。思いつきもしなかった。…ふふっ!なんだか不思議な感じ…。」
「ねぇ…クルスくんも明日は、さ…サボるの?」
「うん…俺も同じ方法を使って…」
明日は父もモフリィの肉の補充のために出かけるので俺は気分転換に市場にでも行こうかなと思っている。
「じゃ…じゃあ…、お買いものでもしに行かない…?」
「ん?いいよ。市場に行くつもりだったし。」
「ほんと!?それじゃあ明日の…お昼にサンタール回復薬店の前で待ち合わせね!」
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おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
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