52 / 78
第2章.少年期
52.ロッテのお買い物
しおりを挟む
「行ってくるぞ!しっかり寝てろよ?」
「それじゃ行ってくるわね!おとなしく寝てるのよ?」
翌日、俺は父と母を見送る。
昼間までは暇なので魔力を体に纏う練習をする。
\ピコーン/
スキル
・魔力操作LvLv26 → 27 (1UP)
「…そろそろかな…。」
お昼近くになったので、俺はロッテとの待ち合わせ場所、サンタール回復薬店に向かった。
「あ、クルスくん!こっちだよ!」
サンタール回復薬店の前で既に待っていたロッテが手を振っている。
「ごめん。待った?」
月9のドラマのようなセリフを言ってみる。
「さっき着いたところだよ?」
「それじゃあ行こ?買いたい物があるの!」
そう言い、歩きだしたロッテに続く。
「なにがほしいんだ?」
「魔石がほしいの。」
「魔石?どうしてだ?」
魔石。この世界での暮らしに必要不可欠なものだ。
電灯の変わりだったりコンロの変わりだったり。
しかし結構高いぞ…?と思いほしい理由を聞いてみる。
「この前、召喚魔法の授業があったでしょ?」
「ああ、ロッテはネズミの魔物を召喚できたんだよな。ポルンだったっけ。」
「うん。召喚獣と契約できたのはよかったんだけど、召喚魔法を使うとわたしのMPがほとんどなくなっちゃうの。」
あ~、そういうことか。
召喚魔法を行使する際は、MPを消費する。
しかし、消費するMPは魔法を使用する者、召喚する召喚獣によって異なるとジムニー先生の授業で教えてもらったなと思いだした。
しかし学校をサボったくせにまじめな買い物だなーと思いながらロッテの話を聞く。
「MPがなくなっちゃったら召喚したくてもポルンを召喚できなくなっちゃうから、MPを貯めておける魔石がほしいの…。」
「なるほどなー。たしかにそれはそうだなー。」
ちなみに俺の忠実なる召喚獣オルフェを召喚する時に消費するMPは1だ。
とてもエコな召喚獣である。さすが!
「でも魔石って結構高いぞ…?」
そうそう。確かなかなかなお値段しますよ…?
「…うん。今日はお小遣い全部持ってきたの。」
「ぜ…全部!?いいのか…?」
「…だって、ポルンはわたしが王国魔法師になるために必要なとっても大切な召喚獣なの。それにお金を使うのは全然もったいなくないの。」
「そ…そうか。まあロッテの買い物だし好きに買えばいいけど…。」
「それに、クルスくん「鑑定」って能力持ってたよね。お買いものに便利って言ってたでしょ?」
そう…。「鑑定」。
このスキルを持っていることは言わないつもりだったけど、スキルがLv2に上がった時にうれしくてつい喋ってしまったのだ…。くっ…。
「まあ、便利といえば便利だけど…。」
「ふふっ…。クルスくんとお買い物に来れば、掘り出し物が見つけられるかなって!」
う~む…。
うまいこと使われてる気が…。まぁいいか…。
「…ところでお小遣い全部っていくら持ってきたんだ…?」
昨日行ったロッテの家がちょっといい家だったので気になって聞いてみる。
「30万ガルだよ?お小遣いが月1万ガルなの。」
…え…?
なんて……?
「さん…じゅ…え…?」
「どうしたの?クルスくん。」
「…いや…なんでもない。」
…くっ…!
ボンボンめ…っ!
と思いつつなんだか聞かなかったことにして道を進む。
「あ、ここ魔石専門店だって。入ってみよう?」
ロッテが市場の中では少し大きいきれいな店の前で足をとめた。
「うん。」
結構綺麗なお店だ。魔石店かー。
俺も入ったことが無いから楽しみだ。
「「いっらしゃいませー」」
お店に入ると紳士的な服を着た店員が出迎えてくれた。
店内にはとても明るく清潔感あふれる感じだ。
さすが魔石店。いい光の魔石を使ってるのかな…。
なんだか家電のお店みたいだなと思いながら店内を見回す。
お、これは風の魔石。
説明書きが書いてある。
「そよ風程度の風魔法を出すことができます。夏の暑い日に是非!!」
ほほう…。
魔法の「エア」が出せる魔石なのかな…。
いくらするんだろうと値札を見てみる。
「150,000ガル」
…た…高い…
一応鑑定もしてみる。
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:魔法蓄積
・材質:魔石
・名前:---
う~ん。
これだとロッテの役には立ってあげられそうにないかも…。
と魔石を見つめる。
「クルスくん!MPを貯められる魔石はこっちだって!」
店の少し奥のほうでロッテが呼んでいる。
店員にMPを貯められる魔石の売り場を聞いたようだ。
「今行くよ!」
俺はロッテが呼んでいる魔石売り場へと向かった。
「おお…?」
お…なんだかさっきの売り場と雰囲気が違う…。
そう感じ少し声が漏れる。
なんだか一つ一つが豪華な箱に入れられており、まるで宝石を展示しているような感じだ。
…これ…ものすごい高いんじゃ…とりあえず一番手前の魔石を見てみる。
透明な魔石だ…。
ダイヤモンドみたいにピカピカと光っているわけではないが、
こういう風に豪華に展示されていると、なにかの光があふれ出ているような…気が…するような気がしなくもない…。
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:MP蓄積
・材質:魔石
・名前:---
おお…。MP蓄積…。
しかしこれは店員に聞いた方がよさそうだ…。
「あの…この魔石はどういうものですか?」
紳士的な服の店員に聞いてみる。
「こちらはサヅキ領の鉱山で取れた魔石でMPを貯めることが出来るものです。貯められるMP量は100で、一番多くお買い上げ頂いているのがこの辺りの魔石ですので、もっともお手頃なものですね。」
「へ~。ありがとうございます!」
MP100か~。俺のMPまるまるもう1回分貯めておける感じだ。
いいんじゃないか…?
一番の売れ筋でお手頃らしいし。
えっと値段はと…
「10,000,000ガル」
ん…?
汗が額を通る。
ええっと…いち…じゅう…ひゃく…
…1千万ガル…
…むりだ…ロッテ…。
30万ガルじゃ買えないことを察した俺はロッテの方を見る。
「ク…クルスくん…」
ロッテも察したようで、しょんぼりした表情で俺を見ている。
…少し肩を落としながら俺とロッテは店を出た。
「…魔石って高いんだね…」
しょんぼりしたロッテがそう呟く。
「そ…そうだな…。30万あれば買えるかと思ったけどな…。」
そよ風を出す風の魔石が15万だったし買えるかもと思ったが、
MPを貯められる魔石はとても高いことがわかり俺もちょっとテンションが下がってしまった。
「…ふぅ。お腹すいたしご飯でも食べよう。」
しかししょんぼりしていてもしょうがないし、ということで腹ごしらえを提案する。
「…うん。そうだね。」
「ホーンラビットセット2つください。」
適当に見つけたレストランの席に座り、注文をする。
ホーンラビットセットはホーンラビットの肉とパン、そしてスープだ。
この街ではどこのレストランでも置いてある人気メニューだ。
「どうしようかなー…。あんなにするとは思わなかった…。」
ロッテはなんだか考え込んでいる。
う~ん。しかしあの値段だと、ロッテが月1万ガルのお小遣いをため続けても買えそうにないよなー…。
テンションの低いロッテを見ながら考える。
「中古品を扱ってるようなお店とかの方がいいんじゃないか?掘り出し物があるかもしれないし。」
とりあえず新品よりは安いんじゃない…?
というのと、小さな店がごったがえす市場ならではの探し方もあるんじゃない?
と、とりあえず言ってみる。
まぁしかしそれでも30万ガルで買えるものが見つかるかはわからないけど…。
「…そうだね!クルスくんの「鑑定」で掘り出し物見つかるかもしれないしね!」
ちょっとだけ元気になったかな…?
というテンションのロッテとホーンラビットセットをたいらげ、市場の裏の方、小さな店がひしめき合う場所へと向かった。
…なんだかジロジロとみられている気がする。
まぁあまり小さな子供が出入りする場所ではないからな…。
実はここは若干治安が悪いみたいで、父と母からは行ってはいけないと言われている。
「ク…クルスくん…」
不安なのかロッテは俺の服の裾を掴む。
少し歩くと、魔石を扱う露店があった。
「ロッテ、このお店を少しのぞいてみよう。」
「うん。」
お店はこじんまりとしていて所狭しと魔石が置いてある。
「いらっしゃい。あら、小さなお客さんだねぇ…。めずらしい。なにを探してるんだい?」
店主らしきおばあさんが話しかけてきた。
ローブを頭からかぶり、魔女のような風貌だ。
…あ…あやしい…!
「MPを貯められる魔石を探してるんです。でも高くて…。」
ロッテが答える。
「いくらあるんだい…?」
「30万ガルです。」
「そうだねぇ…。これなんかどうだい?」
店主の魔女のようなおばあさんは陳列してある魔石から1つの魔石を取りだした。
灰色に濁った魔石。
値札にはちょうど30万ガルと書いてある。
「これはそうだねぇ…たしかMPを50貯めることができるよ?」
「50…ど…どうしよう…」
ロッテは悩みながら取りだされた魔石を見ている。
う~ん…しかしあの魔石、
さっきのお店で見た魔石の半分のMP量だ。
しかし、それでこんなに値段が下がるものか…?
と不安になり「鑑定」する。
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:魔法蓄積
・材質:魔石
・名前:---
ん?
分類のところが魔法蓄積…。
MPをためられる魔石じゃないな…。
「それ…本当にMPを貯められる魔石ですか…?」
「ん…?どうしたんだい?MPを貯められるよ?」
店主の魔女のようなおばあさんは平然とした顔でそう言う。
「実際に使ってみてもいいですか?」
「それはだめだねぇ…。たくさん使うと壊れてしまうことがあるからねぇ…。」
「そうですか…。他のお店も覗いて来ますので、機会があったらまた立ち寄ります。」
「そうかい?よろしくねぇ…。」
俺はまだ少し悩んでいるロッテの手を引っ張り店を出た。
「クルスくん。あの魔石買ってみようかな…。1千万ガルに比べたら安いし…」
名残惜しそうにロッテがそう言う。
「…あれ…偽物だよ…。」
「え…っ?」
「「鑑定」でみたらMPを貯められる性能は無いみたいだったよ。」
「そ…そうなんだ…。」
あやうく頑張って貯めたお小遣い全部を詐欺られてしまうところだったと気付いたロッテは少し緊張した面持ちになってそう言った。
「まぁ、そんなお店もあるよ!次!次!」
まぁ市場ってそんなもんだし!とロッテを次のお店に促す。
「う…うん!ありがとうね!クルスくん!」
その後、手当たりしだいにお店を覗いてみる。
…
「いらっしゃいませ~」
……
「いらっしゃい!」、「いらっしゃいませ~」
「この魔石はお手頃よ~」
………
「今ならなんと1千万ガルのところ97%OFFの30万ガルですぞ!」
…
……
………
「つ…疲れた…」
「見つからないね…クルスくん…。」
さんざん探してみたけど、30万ガルで買えるものは見つからなかった。
「クルスくん…ありがとう…。やっぱりもうちょっとお金を貯めてから探しに来ることにするよ。」
ロッテは少し残念そうな顔でそう言った。
「…そうか…う~ん。そうだな…。」
残念だけど、やっぱりお金が足りないことにはどうにもならないかもとそう答える。
「じゃあ、帰ろっか…今日はお買いもの一緒にしてくれてありがとうね!」
「うん。帰り道は…あっちかな。ここの道を通れば早いかも。」
買い物に来て結構時間が経っており、そろそろ帰らないと、両親が家に着いて、俺がおとなしく寝ていなかったことがばれてしまうので、少し細い道だがショートカットして市場の出口に向かうことにした。
「なんだか薄暗いね…。こっちで合ってるよね…?クルスくん…」
「うん………たぶん…」
この道は通ったことが無いのでたぶんだ。まぁたぶん着く。
…
……
「なんだか、さっきより道が細くなってきたよ…?こっちで合ってるんだよね…。クルスくん…」
「…うん……た…たぶん…そのはず…」
た…たぶん着くはずだ…たぶん。
…
……
………
…………
……………
「ね…ねぇ…クルスくん…。迷ってないよね……」
「ま…迷ってないよ…!」
「……本当は…?」
「……迷った…」
迷ったみたいだ。
どうしよう…。
知らない道でショートカットなんてするんじゃなかった…。
「もう…。」
ロッテは少し呆れた顔になっている。
しょうがないじゃん!
知らない道だったんだから!
スマートフォンでマップを見て歩く現代っ子だった俺をそんな目で見るんじゃない!
とロッテから視線を外す。
「…あ、なんかあそこにお店があるよ?聞いてみよう!」
すると、この薄暗い路地にこじんまりと開いているお店が目に入った。
「すいませ~ん。」
俺とロッテは市場の出口を聞こうとお店に入ることにした。
……
「あれ…誰もいないのかな…」
シーンとした店内を見回す。
ボロボロの剣、弓、槍…
俺の雑貨屋で売っている物より相当ボロい武器が所狭しと並んでいる。
「あ…魔石…」
ロッテの声のした方向を振り向くと、そちらには魔石が並んでいた。
しかし、並んでいるというよりはもうごちゃっと置いてある感じだ。
「んー?お客さんかい…?」
店の奥から眼鏡を掛けた老人が出てきた。
「あ、すみません。市場の出口はどちらかわかりますか…?迷ってしまって…。」
市場の出口を聞いてみる。
「ああ…それだったら…この店の裏口から出て真っすぐ行くといい。10分くらいで着くよ…。裏口はそこの扉じゃ…。」
そう言って老人は裏口の扉を指さす。
「ありがとうございます!」
「そういえば、ここに並んでいる魔石でMPを貯められるものはありませんか…?」
市場の出口への行き方もわかったし最後にもうひと探しするかと聞いてみる。
「ん~…どうかのう…。そこに置いてある魔石は色が綺麗だからとわしが適当に市場で買いあさったものでのう…。そんなに性能のいいものは置いておらんと思うのう…。観賞用じゃ。まぁ適当に見ていってくれ…。どれでも1つ10万ガルじゃ。」
「そうなんですね。ありがとうございます。」
1つ10万ガルならロッテにも買えるな…。
ん~…。しかしこの老人の趣味で集めた魔石のようだ。
確かに、綺麗な色の魔石が多いけど、MPが貯められる魔石はないかもな…。
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:---
・材質:魔石
・名前:---
…これはたぶんなににも使えない魔石だな…。
とりあえず、片っ端から「鑑定」をしてみた。
…
……
………
これが最後の魔石かな…。
ごちゃっと置かれた魔石の一番下にあった魔石を取りだす。
いつからここにあったのか、魔石の表面は薄く汚れ、埃がひっついている。
俺はその埃を手で擦ってみる。
すると、綺麗な黄金色の地肌が顔を出した。
…綺麗な魔石だな…
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:MP蓄積
・材質:魔石
・名前:スターツ
お?
MP蓄積って…これじゃない?
なんかよくわからないけど石の名前とかあるみたいだし!
「ロ…ロッテ…!」
見つけたー!とちょっとうれしくなりながらロッテを呼ぶ。
「これ…MPを貯められる魔石みたい…」
「え…?ほんと?」
ロッテは驚きの表情を見せる。
「でも、どれくらい貯められるかはわからないんだ…俺の「鑑定」のレベルがもっと高ければわかるかもしれないんだけど…」
うむ。MPが貯められることはわかったんだけど、どれくらい貯められるかがわからないんだよな…。
1しか貯められません!とかだったら意味ないしな…。と少し不安になりながらロッテにそう伝える。
「うわぁ…綺麗…」
ロッテはそんなことはどうでもいいと言わんばかりにその黄金色の魔石を手に取り、見入っている。
「これ!ください!」
ロッテは迷いもせず、その魔石を持ちながら、老人にそう伝える。
「いいのか…?貯められる量もわからないし、10万ガルだぞ…?」
「いいの!なんだか気に入っちゃった!…なにかと急に出会うことがあるから、好きなようにしなさいってお父さんとお母さんが毎月くれたお金だし…。今がその時な気がするの!」
ロッテは笑いながらそう言った。
ちなみに魔石は後で母に頼んでペンダントにしてもらうんだと言っていた。
魔石を購入し、目的を達成した俺とロッテは老人に教えてもらった道を進み、市場の出口に到着した。
「今日はありがとうねクルスくん!おかげでいいお買いものが出来たよ。」
「俺もいい気分転換になったよ。…明日からまた頑張ろうな!」
いい買い物ができたかどうかは分からないが今日の目的を一応達成できた俺はなんだか達成感を感じていた。
帰り道、
「…えへへ…。学校をサボるってこんな感じなんだ…。ふふっ…。」
ロッテはなんだかにやにやしながら呟いている。
ど…どうしよう…。ロッテにサボり癖でもついたら親御さんになんて謝ったらいいか…。
悪影響の無いように後でまた、勉強でも教えよう…。
その後、サンタール回復薬店の前でロッテとは別れ、俺は家路に着いた。
…
……
「ただーいまー」
って誰もいないけど…
まだ両親は帰っていない時間なので家には誰もいない。
「おかえり!にぃにぃ!」
っ!!
…アリスだ…。
そうだったアリスは帰ってくるんだった。
…俺がおとなしく寝ていなかったことが両親にばれてしまう…。
口止めしておかねば…。
「にぃにぃどこ行ってたの?今日はお休みしてるんじゃなかったの…?」
「ア…アリス…。ちょ…ちょっとだけお腹が減ったから出ていただけなんだ…気にしないでくれ…。あ、あとこのことはお父さんとお母さんに言っちゃだめだからな~」
俺はそう言ってアリスの頭を撫でる。
「うん!わかった!」
元気よくアリスは返事をする。
…いい子だなー…。
そう思いながら俺は布団の中にもぐりこんだ。
…
……
「ただいまー」
「ただいまー、帰ったぞー。」
母が帰宅し、少し後に父も帰ってきた。
「クルス、しっかり寝てた…?体はよくなったかしら…?」
母が心配して俺のことを見に来た。
「う…うん。しっかり寝たらよくなったよ。明日は学校に行けそう。」
「そう。よかったわ。それじゃあ夕飯の準備をするわね。」
少しだけ後ろめたい気持ちを持ちつつ、買い物のため、結構歩いて疲れた俺は夕飯まで寝ることにした。
「クルスー。ごはんよー。」
「はーい。」
母に呼ばれ食卓に着く。
「今日はモフリィを狩りに行ったらホーンラビットも取れたからホーンラビットステーキだぞ?」
どうやら父が仕留めたホーンラビットのステーキが今日の夕食のようだ。
ステーキ!ビバステーキ!
昼食もホーンラビットだったけど、これはおいしいので飽きることはない。
もぐもぐとホーンラビットの肉を食べる。
「アリスは今日なんの授業だったの?」
母がアリスに問いかける。
「今日はね、算数!魔石の数を数えたの!」
「あら。えらいわね~。」
そう言いながら母はアリスの頭を撫でる。
「それでね、帰りにハネペンを買ってきたの!」
「あら、お買いものしてきたの?えらいわね~。」
母はさらにアリスの頭を撫でる。
「それでね、家に帰ってきたらにぃにぃがお布団の中からいなくなっててびっくりしたの!」
「あらあら…。え…?」
母がチラリとこちらを見る…。
「あ…これは、にぃにぃが言っちゃいけないって言ってたことだ…っにぃにぃごめんなさい…。」
………
「…どういうことかしら…クルス…。」
「あ…えーと…」
「…正直に言いなさい…?」
魔力を纏ったコルトよりも、もしかしたら恐ろしいかもと思わせるその気迫に俺は自白してしまった…。
…
……
「クルス…ちょっとそこに座りなさい。」
そして…
…
……
………
めちゃくちゃ怒られた…。
俺はもう2度と学校をサボらないぞと心に誓った。
翌日、
「おはよう!クルスくん!」
そうあいさつをしてきたロッテの首元には黄金色のペンダントが輝いていた。
「おはよう…ロッテ…」
「ど…どうしたの…?なんだか元気ないよ…?」
「いや…」
俺は昨日めちゃくちゃ怒られたので疲弊していた。
「…ふふっ!昨日のことは秘密ね!」
いつものしっかりものを装ったロッテの本性はこっちか?
と思えるような表情でロッテはそう言った。
「う…うん…。」
「…ク…クルスくん……」
なんだか照れくさそうな表情になりながらロッテが続けて話しかけてくる。
「ん?なに?」
「………ま…また……気分がのらない時は…一緒に学校…サボってくれる…?」
「いや、学校サボるとかそういうのよくないと思うんで。」
「ええーっ!?」
-------------------------------------------------------------------------
魔石:鉱山や魔物から採取できる石。MPを蓄積したり、魔法を蓄積したりなど、様々な性能のものがある。
------------------------------
魔石「スターツ」
分類:MP蓄積
MP蓄積量:610/610
300年ほど前、サヅキ領内の鉱山から発掘された魔石。
黄金色に輝く外観と、そのMP蓄積量から「スターツ」と名付けられ、オークションに出品、高値で貴族に落札される。
しかしその後、魔石「スターツ」を落札した貴族が没落し、家財一式が売り払われる際に行方不明となった。
「それじゃ行ってくるわね!おとなしく寝てるのよ?」
翌日、俺は父と母を見送る。
昼間までは暇なので魔力を体に纏う練習をする。
\ピコーン/
スキル
・魔力操作LvLv26 → 27 (1UP)
「…そろそろかな…。」
お昼近くになったので、俺はロッテとの待ち合わせ場所、サンタール回復薬店に向かった。
「あ、クルスくん!こっちだよ!」
サンタール回復薬店の前で既に待っていたロッテが手を振っている。
「ごめん。待った?」
月9のドラマのようなセリフを言ってみる。
「さっき着いたところだよ?」
「それじゃあ行こ?買いたい物があるの!」
そう言い、歩きだしたロッテに続く。
「なにがほしいんだ?」
「魔石がほしいの。」
「魔石?どうしてだ?」
魔石。この世界での暮らしに必要不可欠なものだ。
電灯の変わりだったりコンロの変わりだったり。
しかし結構高いぞ…?と思いほしい理由を聞いてみる。
「この前、召喚魔法の授業があったでしょ?」
「ああ、ロッテはネズミの魔物を召喚できたんだよな。ポルンだったっけ。」
「うん。召喚獣と契約できたのはよかったんだけど、召喚魔法を使うとわたしのMPがほとんどなくなっちゃうの。」
あ~、そういうことか。
召喚魔法を行使する際は、MPを消費する。
しかし、消費するMPは魔法を使用する者、召喚する召喚獣によって異なるとジムニー先生の授業で教えてもらったなと思いだした。
しかし学校をサボったくせにまじめな買い物だなーと思いながらロッテの話を聞く。
「MPがなくなっちゃったら召喚したくてもポルンを召喚できなくなっちゃうから、MPを貯めておける魔石がほしいの…。」
「なるほどなー。たしかにそれはそうだなー。」
ちなみに俺の忠実なる召喚獣オルフェを召喚する時に消費するMPは1だ。
とてもエコな召喚獣である。さすが!
「でも魔石って結構高いぞ…?」
そうそう。確かなかなかなお値段しますよ…?
「…うん。今日はお小遣い全部持ってきたの。」
「ぜ…全部!?いいのか…?」
「…だって、ポルンはわたしが王国魔法師になるために必要なとっても大切な召喚獣なの。それにお金を使うのは全然もったいなくないの。」
「そ…そうか。まあロッテの買い物だし好きに買えばいいけど…。」
「それに、クルスくん「鑑定」って能力持ってたよね。お買いものに便利って言ってたでしょ?」
そう…。「鑑定」。
このスキルを持っていることは言わないつもりだったけど、スキルがLv2に上がった時にうれしくてつい喋ってしまったのだ…。くっ…。
「まあ、便利といえば便利だけど…。」
「ふふっ…。クルスくんとお買い物に来れば、掘り出し物が見つけられるかなって!」
う~む…。
うまいこと使われてる気が…。まぁいいか…。
「…ところでお小遣い全部っていくら持ってきたんだ…?」
昨日行ったロッテの家がちょっといい家だったので気になって聞いてみる。
「30万ガルだよ?お小遣いが月1万ガルなの。」
…え…?
なんて……?
「さん…じゅ…え…?」
「どうしたの?クルスくん。」
「…いや…なんでもない。」
…くっ…!
ボンボンめ…っ!
と思いつつなんだか聞かなかったことにして道を進む。
「あ、ここ魔石専門店だって。入ってみよう?」
ロッテが市場の中では少し大きいきれいな店の前で足をとめた。
「うん。」
結構綺麗なお店だ。魔石店かー。
俺も入ったことが無いから楽しみだ。
「「いっらしゃいませー」」
お店に入ると紳士的な服を着た店員が出迎えてくれた。
店内にはとても明るく清潔感あふれる感じだ。
さすが魔石店。いい光の魔石を使ってるのかな…。
なんだか家電のお店みたいだなと思いながら店内を見回す。
お、これは風の魔石。
説明書きが書いてある。
「そよ風程度の風魔法を出すことができます。夏の暑い日に是非!!」
ほほう…。
魔法の「エア」が出せる魔石なのかな…。
いくらするんだろうと値札を見てみる。
「150,000ガル」
…た…高い…
一応鑑定もしてみる。
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:魔法蓄積
・材質:魔石
・名前:---
う~ん。
これだとロッテの役には立ってあげられそうにないかも…。
と魔石を見つめる。
「クルスくん!MPを貯められる魔石はこっちだって!」
店の少し奥のほうでロッテが呼んでいる。
店員にMPを貯められる魔石の売り場を聞いたようだ。
「今行くよ!」
俺はロッテが呼んでいる魔石売り場へと向かった。
「おお…?」
お…なんだかさっきの売り場と雰囲気が違う…。
そう感じ少し声が漏れる。
なんだか一つ一つが豪華な箱に入れられており、まるで宝石を展示しているような感じだ。
…これ…ものすごい高いんじゃ…とりあえず一番手前の魔石を見てみる。
透明な魔石だ…。
ダイヤモンドみたいにピカピカと光っているわけではないが、
こういう風に豪華に展示されていると、なにかの光があふれ出ているような…気が…するような気がしなくもない…。
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:MP蓄積
・材質:魔石
・名前:---
おお…。MP蓄積…。
しかしこれは店員に聞いた方がよさそうだ…。
「あの…この魔石はどういうものですか?」
紳士的な服の店員に聞いてみる。
「こちらはサヅキ領の鉱山で取れた魔石でMPを貯めることが出来るものです。貯められるMP量は100で、一番多くお買い上げ頂いているのがこの辺りの魔石ですので、もっともお手頃なものですね。」
「へ~。ありがとうございます!」
MP100か~。俺のMPまるまるもう1回分貯めておける感じだ。
いいんじゃないか…?
一番の売れ筋でお手頃らしいし。
えっと値段はと…
「10,000,000ガル」
ん…?
汗が額を通る。
ええっと…いち…じゅう…ひゃく…
…1千万ガル…
…むりだ…ロッテ…。
30万ガルじゃ買えないことを察した俺はロッテの方を見る。
「ク…クルスくん…」
ロッテも察したようで、しょんぼりした表情で俺を見ている。
…少し肩を落としながら俺とロッテは店を出た。
「…魔石って高いんだね…」
しょんぼりしたロッテがそう呟く。
「そ…そうだな…。30万あれば買えるかと思ったけどな…。」
そよ風を出す風の魔石が15万だったし買えるかもと思ったが、
MPを貯められる魔石はとても高いことがわかり俺もちょっとテンションが下がってしまった。
「…ふぅ。お腹すいたしご飯でも食べよう。」
しかししょんぼりしていてもしょうがないし、ということで腹ごしらえを提案する。
「…うん。そうだね。」
「ホーンラビットセット2つください。」
適当に見つけたレストランの席に座り、注文をする。
ホーンラビットセットはホーンラビットの肉とパン、そしてスープだ。
この街ではどこのレストランでも置いてある人気メニューだ。
「どうしようかなー…。あんなにするとは思わなかった…。」
ロッテはなんだか考え込んでいる。
う~ん。しかしあの値段だと、ロッテが月1万ガルのお小遣いをため続けても買えそうにないよなー…。
テンションの低いロッテを見ながら考える。
「中古品を扱ってるようなお店とかの方がいいんじゃないか?掘り出し物があるかもしれないし。」
とりあえず新品よりは安いんじゃない…?
というのと、小さな店がごったがえす市場ならではの探し方もあるんじゃない?
と、とりあえず言ってみる。
まぁしかしそれでも30万ガルで買えるものが見つかるかはわからないけど…。
「…そうだね!クルスくんの「鑑定」で掘り出し物見つかるかもしれないしね!」
ちょっとだけ元気になったかな…?
というテンションのロッテとホーンラビットセットをたいらげ、市場の裏の方、小さな店がひしめき合う場所へと向かった。
…なんだかジロジロとみられている気がする。
まぁあまり小さな子供が出入りする場所ではないからな…。
実はここは若干治安が悪いみたいで、父と母からは行ってはいけないと言われている。
「ク…クルスくん…」
不安なのかロッテは俺の服の裾を掴む。
少し歩くと、魔石を扱う露店があった。
「ロッテ、このお店を少しのぞいてみよう。」
「うん。」
お店はこじんまりとしていて所狭しと魔石が置いてある。
「いらっしゃい。あら、小さなお客さんだねぇ…。めずらしい。なにを探してるんだい?」
店主らしきおばあさんが話しかけてきた。
ローブを頭からかぶり、魔女のような風貌だ。
…あ…あやしい…!
「MPを貯められる魔石を探してるんです。でも高くて…。」
ロッテが答える。
「いくらあるんだい…?」
「30万ガルです。」
「そうだねぇ…。これなんかどうだい?」
店主の魔女のようなおばあさんは陳列してある魔石から1つの魔石を取りだした。
灰色に濁った魔石。
値札にはちょうど30万ガルと書いてある。
「これはそうだねぇ…たしかMPを50貯めることができるよ?」
「50…ど…どうしよう…」
ロッテは悩みながら取りだされた魔石を見ている。
う~ん…しかしあの魔石、
さっきのお店で見た魔石の半分のMP量だ。
しかし、それでこんなに値段が下がるものか…?
と不安になり「鑑定」する。
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:魔法蓄積
・材質:魔石
・名前:---
ん?
分類のところが魔法蓄積…。
MPをためられる魔石じゃないな…。
「それ…本当にMPを貯められる魔石ですか…?」
「ん…?どうしたんだい?MPを貯められるよ?」
店主の魔女のようなおばあさんは平然とした顔でそう言う。
「実際に使ってみてもいいですか?」
「それはだめだねぇ…。たくさん使うと壊れてしまうことがあるからねぇ…。」
「そうですか…。他のお店も覗いて来ますので、機会があったらまた立ち寄ります。」
「そうかい?よろしくねぇ…。」
俺はまだ少し悩んでいるロッテの手を引っ張り店を出た。
「クルスくん。あの魔石買ってみようかな…。1千万ガルに比べたら安いし…」
名残惜しそうにロッテがそう言う。
「…あれ…偽物だよ…。」
「え…っ?」
「「鑑定」でみたらMPを貯められる性能は無いみたいだったよ。」
「そ…そうなんだ…。」
あやうく頑張って貯めたお小遣い全部を詐欺られてしまうところだったと気付いたロッテは少し緊張した面持ちになってそう言った。
「まぁ、そんなお店もあるよ!次!次!」
まぁ市場ってそんなもんだし!とロッテを次のお店に促す。
「う…うん!ありがとうね!クルスくん!」
その後、手当たりしだいにお店を覗いてみる。
…
「いらっしゃいませ~」
……
「いらっしゃい!」、「いらっしゃいませ~」
「この魔石はお手頃よ~」
………
「今ならなんと1千万ガルのところ97%OFFの30万ガルですぞ!」
…
……
………
「つ…疲れた…」
「見つからないね…クルスくん…。」
さんざん探してみたけど、30万ガルで買えるものは見つからなかった。
「クルスくん…ありがとう…。やっぱりもうちょっとお金を貯めてから探しに来ることにするよ。」
ロッテは少し残念そうな顔でそう言った。
「…そうか…う~ん。そうだな…。」
残念だけど、やっぱりお金が足りないことにはどうにもならないかもとそう答える。
「じゃあ、帰ろっか…今日はお買いもの一緒にしてくれてありがとうね!」
「うん。帰り道は…あっちかな。ここの道を通れば早いかも。」
買い物に来て結構時間が経っており、そろそろ帰らないと、両親が家に着いて、俺がおとなしく寝ていなかったことがばれてしまうので、少し細い道だがショートカットして市場の出口に向かうことにした。
「なんだか薄暗いね…。こっちで合ってるよね…?クルスくん…」
「うん………たぶん…」
この道は通ったことが無いのでたぶんだ。まぁたぶん着く。
…
……
「なんだか、さっきより道が細くなってきたよ…?こっちで合ってるんだよね…。クルスくん…」
「…うん……た…たぶん…そのはず…」
た…たぶん着くはずだ…たぶん。
…
……
………
…………
……………
「ね…ねぇ…クルスくん…。迷ってないよね……」
「ま…迷ってないよ…!」
「……本当は…?」
「……迷った…」
迷ったみたいだ。
どうしよう…。
知らない道でショートカットなんてするんじゃなかった…。
「もう…。」
ロッテは少し呆れた顔になっている。
しょうがないじゃん!
知らない道だったんだから!
スマートフォンでマップを見て歩く現代っ子だった俺をそんな目で見るんじゃない!
とロッテから視線を外す。
「…あ、なんかあそこにお店があるよ?聞いてみよう!」
すると、この薄暗い路地にこじんまりと開いているお店が目に入った。
「すいませ~ん。」
俺とロッテは市場の出口を聞こうとお店に入ることにした。
……
「あれ…誰もいないのかな…」
シーンとした店内を見回す。
ボロボロの剣、弓、槍…
俺の雑貨屋で売っている物より相当ボロい武器が所狭しと並んでいる。
「あ…魔石…」
ロッテの声のした方向を振り向くと、そちらには魔石が並んでいた。
しかし、並んでいるというよりはもうごちゃっと置いてある感じだ。
「んー?お客さんかい…?」
店の奥から眼鏡を掛けた老人が出てきた。
「あ、すみません。市場の出口はどちらかわかりますか…?迷ってしまって…。」
市場の出口を聞いてみる。
「ああ…それだったら…この店の裏口から出て真っすぐ行くといい。10分くらいで着くよ…。裏口はそこの扉じゃ…。」
そう言って老人は裏口の扉を指さす。
「ありがとうございます!」
「そういえば、ここに並んでいる魔石でMPを貯められるものはありませんか…?」
市場の出口への行き方もわかったし最後にもうひと探しするかと聞いてみる。
「ん~…どうかのう…。そこに置いてある魔石は色が綺麗だからとわしが適当に市場で買いあさったものでのう…。そんなに性能のいいものは置いておらんと思うのう…。観賞用じゃ。まぁ適当に見ていってくれ…。どれでも1つ10万ガルじゃ。」
「そうなんですね。ありがとうございます。」
1つ10万ガルならロッテにも買えるな…。
ん~…。しかしこの老人の趣味で集めた魔石のようだ。
確かに、綺麗な色の魔石が多いけど、MPが貯められる魔石はないかもな…。
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:---
・材質:魔石
・名前:---
…これはたぶんなににも使えない魔石だな…。
とりあえず、片っ端から「鑑定」をしてみた。
…
……
………
これが最後の魔石かな…。
ごちゃっと置かれた魔石の一番下にあった魔石を取りだす。
いつからここにあったのか、魔石の表面は薄く汚れ、埃がひっついている。
俺はその埃を手で擦ってみる。
すると、綺麗な黄金色の地肌が顔を出した。
…綺麗な魔石だな…
「鑑定」
鑑定結果
・種類:石
・分類:MP蓄積
・材質:魔石
・名前:スターツ
お?
MP蓄積って…これじゃない?
なんかよくわからないけど石の名前とかあるみたいだし!
「ロ…ロッテ…!」
見つけたー!とちょっとうれしくなりながらロッテを呼ぶ。
「これ…MPを貯められる魔石みたい…」
「え…?ほんと?」
ロッテは驚きの表情を見せる。
「でも、どれくらい貯められるかはわからないんだ…俺の「鑑定」のレベルがもっと高ければわかるかもしれないんだけど…」
うむ。MPが貯められることはわかったんだけど、どれくらい貯められるかがわからないんだよな…。
1しか貯められません!とかだったら意味ないしな…。と少し不安になりながらロッテにそう伝える。
「うわぁ…綺麗…」
ロッテはそんなことはどうでもいいと言わんばかりにその黄金色の魔石を手に取り、見入っている。
「これ!ください!」
ロッテは迷いもせず、その魔石を持ちながら、老人にそう伝える。
「いいのか…?貯められる量もわからないし、10万ガルだぞ…?」
「いいの!なんだか気に入っちゃった!…なにかと急に出会うことがあるから、好きなようにしなさいってお父さんとお母さんが毎月くれたお金だし…。今がその時な気がするの!」
ロッテは笑いながらそう言った。
ちなみに魔石は後で母に頼んでペンダントにしてもらうんだと言っていた。
魔石を購入し、目的を達成した俺とロッテは老人に教えてもらった道を進み、市場の出口に到着した。
「今日はありがとうねクルスくん!おかげでいいお買いものが出来たよ。」
「俺もいい気分転換になったよ。…明日からまた頑張ろうな!」
いい買い物ができたかどうかは分からないが今日の目的を一応達成できた俺はなんだか達成感を感じていた。
帰り道、
「…えへへ…。学校をサボるってこんな感じなんだ…。ふふっ…。」
ロッテはなんだかにやにやしながら呟いている。
ど…どうしよう…。ロッテにサボり癖でもついたら親御さんになんて謝ったらいいか…。
悪影響の無いように後でまた、勉強でも教えよう…。
その後、サンタール回復薬店の前でロッテとは別れ、俺は家路に着いた。
…
……
「ただーいまー」
って誰もいないけど…
まだ両親は帰っていない時間なので家には誰もいない。
「おかえり!にぃにぃ!」
っ!!
…アリスだ…。
そうだったアリスは帰ってくるんだった。
…俺がおとなしく寝ていなかったことが両親にばれてしまう…。
口止めしておかねば…。
「にぃにぃどこ行ってたの?今日はお休みしてるんじゃなかったの…?」
「ア…アリス…。ちょ…ちょっとだけお腹が減ったから出ていただけなんだ…気にしないでくれ…。あ、あとこのことはお父さんとお母さんに言っちゃだめだからな~」
俺はそう言ってアリスの頭を撫でる。
「うん!わかった!」
元気よくアリスは返事をする。
…いい子だなー…。
そう思いながら俺は布団の中にもぐりこんだ。
…
……
「ただいまー」
「ただいまー、帰ったぞー。」
母が帰宅し、少し後に父も帰ってきた。
「クルス、しっかり寝てた…?体はよくなったかしら…?」
母が心配して俺のことを見に来た。
「う…うん。しっかり寝たらよくなったよ。明日は学校に行けそう。」
「そう。よかったわ。それじゃあ夕飯の準備をするわね。」
少しだけ後ろめたい気持ちを持ちつつ、買い物のため、結構歩いて疲れた俺は夕飯まで寝ることにした。
「クルスー。ごはんよー。」
「はーい。」
母に呼ばれ食卓に着く。
「今日はモフリィを狩りに行ったらホーンラビットも取れたからホーンラビットステーキだぞ?」
どうやら父が仕留めたホーンラビットのステーキが今日の夕食のようだ。
ステーキ!ビバステーキ!
昼食もホーンラビットだったけど、これはおいしいので飽きることはない。
もぐもぐとホーンラビットの肉を食べる。
「アリスは今日なんの授業だったの?」
母がアリスに問いかける。
「今日はね、算数!魔石の数を数えたの!」
「あら。えらいわね~。」
そう言いながら母はアリスの頭を撫でる。
「それでね、帰りにハネペンを買ってきたの!」
「あら、お買いものしてきたの?えらいわね~。」
母はさらにアリスの頭を撫でる。
「それでね、家に帰ってきたらにぃにぃがお布団の中からいなくなっててびっくりしたの!」
「あらあら…。え…?」
母がチラリとこちらを見る…。
「あ…これは、にぃにぃが言っちゃいけないって言ってたことだ…っにぃにぃごめんなさい…。」
………
「…どういうことかしら…クルス…。」
「あ…えーと…」
「…正直に言いなさい…?」
魔力を纏ったコルトよりも、もしかしたら恐ろしいかもと思わせるその気迫に俺は自白してしまった…。
…
……
「クルス…ちょっとそこに座りなさい。」
そして…
…
……
………
めちゃくちゃ怒られた…。
俺はもう2度と学校をサボらないぞと心に誓った。
翌日、
「おはよう!クルスくん!」
そうあいさつをしてきたロッテの首元には黄金色のペンダントが輝いていた。
「おはよう…ロッテ…」
「ど…どうしたの…?なんだか元気ないよ…?」
「いや…」
俺は昨日めちゃくちゃ怒られたので疲弊していた。
「…ふふっ!昨日のことは秘密ね!」
いつものしっかりものを装ったロッテの本性はこっちか?
と思えるような表情でロッテはそう言った。
「う…うん…。」
「…ク…クルスくん……」
なんだか照れくさそうな表情になりながらロッテが続けて話しかけてくる。
「ん?なに?」
「………ま…また……気分がのらない時は…一緒に学校…サボってくれる…?」
「いや、学校サボるとかそういうのよくないと思うんで。」
「ええーっ!?」
-------------------------------------------------------------------------
魔石:鉱山や魔物から採取できる石。MPを蓄積したり、魔法を蓄積したりなど、様々な性能のものがある。
------------------------------
魔石「スターツ」
分類:MP蓄積
MP蓄積量:610/610
300年ほど前、サヅキ領内の鉱山から発掘された魔石。
黄金色に輝く外観と、そのMP蓄積量から「スターツ」と名付けられ、オークションに出品、高値で貴族に落札される。
しかしその後、魔石「スターツ」を落札した貴族が没落し、家財一式が売り払われる際に行方不明となった。
1
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました
たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。
「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」
どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。
彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。
幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。
記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。
新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。
この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。
主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。
※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる