恋文

関塚衣旅葉

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フローズンブルーマルガリータ

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 そのカクテルの名前を見た時、彼にピッタリだなって思った。
誕生日当日会えないから、せめて何か出来たらなって思ったんだ。
綺麗な色のカクテル。
綺麗な水色で、夏に生まれた彼を表すのにとても適してるなぁって思ったんだ。
味は爽やか、らしい。
まだ飲んだことがないから想像でしか書けない。
初めて彼に会った時、王子様が現れたって本気で思った。
会う前はきっと優しい素敵な人なんだろうとは思っていたが、そんな言葉じゃ表せない。
想像よりもとってもかっこよくて、恋に落ちた。
会う前には既に好きになっていたが、実物を見たらもう一度恋に落ちたんだ。
顔がいいとか、声がいいとか、それだけじゃなくて、なんか、もっとこう、安心感があるというか、初めてな気がしなかった。
ずっと昔から知ってるような。
そんな人だった。
急に会うことになって、予定より1日早めに来てもらって、顔を見ながら話せてとても幸せな気持ちになった。
思い出したらまた泣いてしまうから、これ以上は思い出さないでおこう。

 上手く言えないけれど、私は何度も彼と過してる間、恋に落ちた。
とても魅力的で、優しくて、彼の瞳に写ってる事が嬉しかった。
彼の隣にいられるのがとても嬉しかった。
彼の言葉でたくさん救われた。
彼と過ごすことで初めて聞く言葉や単語も沢山あった。
初めての経験も沢山あった。
出会えてよかったなって。
彼と幸せになりたいと思ったから、行動しようと思ったんだ。
でも、不安に襲われた。
私にはできない、私は幸せになれない。
だって私は、変わらないから。
前に進もうとしても、前を見て歩こうとしても、頭の中に出てくる邪魔なものがあった。
最初は小さいから口から出ていったんだけど、時間が進むにつれて、体内に留まって、心を蝕んだ。
痛くて苦しくて、でもどんなに彼と過してても消えてくれなくて。

 そんな私だったが、彼の笑顔が見れたら頑張れた。
苦手な家事も、人よりも時間はかかるが、できる日が増えた。
でも、家事をこなすなんて、当たり前なのだ。
大好きな貴方の荷物になってることも分かっていた。
だから、隣を歩くことが出来なくなっていた。
それでも、今できることをやっていたのだけれど。
人よりもスタート地点が遠いから、ゴールまでたどりつけなかった。

このお酒を飲む頃、彼は素敵な人と過ごしているのだろうなと。
私は彼を想いながらお酒を作る事しか出来なかった。
いつの日か、彼をイメージしたカクテルを彼に作れるようになろうと思う。
それが、私が最後にできることだと思うから。


彼を傍で好きでいることが出来て、私は世界一幸せ者です。
ありがとうございました。
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