記憶の欠片。

春 3

 桜が散ったあとも春は続く。

 薄着で外を歩いても過ごしやすい。
可愛い黒いブラウスに、春っぽいピンクのスカート。
このコーデは、私の勝負服だ。
好きな彼とのデート、付き合ってない彼との初めてのデート。
女の子として意識して欲しくて、普段は履かない膝上スカートにしてみたが。
失敗したと気づいたのは、ダーツをしてる時。

 オシャレなネカフェでダーツの勝負をしてる際、久しぶり過ぎて、上手く刺さらず床に落ちてしまった。
拾う時にしゃがむため、スカートが仕事をしてくれない感覚になる。
これあちらから見たら、パンツが見えてたりするんじゃ？
なんでソワソワしながら、勝てるまで相手に勝負を挑んだ。

 身長が高く、手足が長い彼と、身長が低く、手足が短い私じゃ、勝負にならなかった。
一方的にボコボコにされて、とても悲しくなってしまう。
でも彼から、楽しかったと言ってもらい、ブルが入った時並に嬉しくなった。
ちょろいんだ、私は。
彼の笑顔に弱いんだ、とても。

 その日は、ダーツして、お酒を飲みに行くという流れだった。
お酒を飲むお店は、オシャレなイタリアン。
チーズとワインはとてもよく合うし、カウンター席でお酒を飲む彼の顔を拝めるのはとてもいいな、なんて考えていると酒が回ってしまう。
彼に酔ってるのか、酒に酔ってるのか、それはもう分からない。

気がついた時には見知らぬ天井。
隣には知ってる男の人。