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南の国編
21.南の国の呪いの姫と宝石と人助け⑩
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無事快癒したヘレナが元気いっぱいなのはいいが、そのままというのも困る。マクスウェルは意を決してアルベルトを呼んだ。
「叔父上、姫の様子はもう大丈夫そうだけど、治療は終わりでいいのか?」
ヘレナとの言い合いに飽きたのか、アルベルトは珍しくすぐに反応する。
「回路は問題ない。が、自身の魔力がきちんと操れるか、魔力回路を魔力が隅々と通うかの確認は行った方がいいだろうな」
「なるほど~」
ヒースがぽんと手を打つ。アルベルトの言葉は最もなもので、見れば主治医もうんうんと頷いていた。マクスウェルも言われてみれば、という思いで感心する。
ヘレナの様子からして回路の確認を行なっても体調には影響しないだろう、という主治医の言葉で、早速確認を進める事になった。けれどもヘレナはまともに魔法など使った事が無いと、不安な様子だ。
「魔法ならなんでもいいんだろう?」
「そうだな。ただ、あまり些細なものだと意味が無いと思うが。全身の回路を使う程度のものが望ましい」
「それって結構なものだと思うけど……」
でもまあ、やるしかない。簡単なものでもいいと言われると、ヘレナは顔を強張らせながらも頷いた。
「わ、わかったわ」
「ヘレナ様は、どの程度魔法が使えるのですか?」
「……初歩的なやつなら、練習したわ」
「そうなのですか」
話を聞いたリリアンは、ちらりとアルベルトを見る。視線を受けたアルベルトは肩を竦めてみせた。足りないわけではないがもう少し心得があれば早いのにと、おそらくそういう意味だろう。
だがやはりヘレナは不安そうだ。その横顔を見て、リリアンはそうだ、と閃く。ここにはマクスウェルとレイナード、そしてリリアンの三人が居る。それぞれが持つ属性は火、土、水。風以外なら彼女の助けが出来るだろう。アルベルトなら全属性の魔法が使えるが、様子を見る限り助力は難しいとリリアンは判断した。
「ヘレナ様の属性はなんなのでしょう?」
それにはヘレナより前にヒースが答えた。
「ヘレナは水属性だな」
「あら、リリアンとお揃いね」
「リリアンお姉様と!?」
クラベルの言葉にがばりとヘレナが顔を上げる。目を輝かせてリリアンを見る姿は、期待に満ち溢れているように見えた。
「じゃあ、リリアンお姉様。あたしに魔法を教えて!」
そうして出てきたのは予想通りの言葉だった。微笑ましい姿に誰もが表情を和らげる。アルベルトを除いて。
一人苦々しい顔をしている父親を無視し、レイナードはリリアンに呼びかける。
「リリー、練習していた魔法があったろう。魚を出すやつ」
「ええ」
「あれを教えてあげたらどうだ?」
「あれを、ですか」
水で魚を再現する魔法は、水球を作り出す初級魔法とほとんど変わらない魔法だ。が、水を魚の形で維持するのに集中力が必要となる。形を再現しようと意識していると、魔力を消費し過ぎてしまう。その結果水を維持できなくなり、形が崩れてしまう。逆に魔力量に気を取られると、今度はそれで形が作れなくなる。そのバランスがなかなか難しいのだ。
きちんと使えれば消費する魔力も少ない。練習にはうってつけだろう。けれどもリリアンは、少しばかり居心地悪そうに眉を下げた。
「実は、小さい頃にお父様が使っていたのを真似たものなの。だからやるのなら、お父様に教わった方が」
「――何?」
それにアルベルトが反応する。
「リリアン、その魔法というのを見せてくれるか」
「ええ、構いませんが」
頷いたリリアンの手のひらに、しゅるしゅると水が生まれる。集まった水は小魚に姿を変え、空中を泳いだ。泳ぐ、という動作は、リリアンが水を操作している結果だ。泳ぎの動きを再現しない限り、作り出した水はその場から動かない。
「過去に見たものを参考に再現したと……? て、天才か」
その動作は表現しようとすると、結構な労力が必要になる。加えて、魚っぽい動きにしないとそれらしさが失われてしまう。見様見真似でここまでの術を使えるとはと、アルベルトは驚愕した。同時に誇らしさを実感する。リリアンは、それだけ過去、アルベルトの魔法をしっかり観察していたという事だ。時を経てリリアンの模範となれたのを、アルベルトは喜んだ。
が、そんな感動を邪魔する声があって、一気に興が削がれる。
「リリアンお姉様が天才だなんて、分かりきっているじゃない」
「ちょっとこのガキ黙らせろ」
「お、おい、アルベルト」
ヘレナが呆れた表情でアルベルトを見上げている。その強気な態度がどうしようもなくアルベルトを苛立たせていた。昨日今日会ったばかりの小娘に何が分かるのかと、どうしてもそれしか浮かばない。
そんなアルベルトをヒースが宥めようとするが、彼がそちらを見る事はなかった。娘のあんまりな態度を王妃が諌めるも、ヘレナは改める気が無いようで、強気にアルベルトを睨み付けている。
そんな二人の間で、リリアンは穏やかに微笑んでいた。
「あんた、あたしに魔法を教えなさいよ」
「ふざけるな。一人で勝手にやれ」
「ねえお父様、前に見せて頂いた魔法、ちゃんと使えるようになりたいわ。わたくしにも教えてくださらない?」
「よし、じゃあ早速始めよう。まずは適切な魔力を練るところからだな。その後術式の確認をしよう」
「あんたみたいのを二枚舌って言うのよ」
「その生意気な口を開けなくしてやろうか」
黙って見守るマクスウェルは思った。「混沌としてるなぁ」と。
レイナードはああ言っていたが、どうにもヘレナとアルベルトは相性が悪いように見える。その原因はリリアンで、彼女の関心をより惹きたいという願望の表れなのだろう。という事は、もうどうしようもないのが分かりきっていた。お互い引く気が無いのだ、ぶつかり合うしかない。
アルベルトとヘレナが激しく言い争う中で、マクスウェルはヒースに視線を向けた。それに気付いたらしいヒースと目が合う。彼は虚ろな目でうっすらと笑みを浮かべていたが、きっとマクスウェルも同じような表情だったろう。目が合うなり更に頰を引き攣らせたヒースは、完全にマクスウェルの表情筋と同調していた。
ヒースはそれを自覚したのか、それとも王としての経験によるものか。はっとなったかと思うと、そうだ、と声を上げた。それが言い争う声を遮り、視線がヒースに集まる。
「ヘレナの回復祝いと礼を兼ねて、パーティーを開こうと思うんだ。功労者である君らには絶対に参加してもらうから、そのつもりで。まあ、ちょっと準備があるから、何日か滞在して貰う事になるけど」
「我々は構いませんが……」
「な、いいだろアルベルト」
マクスウェルが答えると、ヒースはうんうん、と笑顔で頷いてからアルベルトへ水を向ける。ここは両者笑顔で受けるところだ、ヒースはそれを信じて疑わなかったのだが、対するアルベルトはなぜか眉間に皺を寄せ、ヒースを睨み付けている。結構な眼力に、ヒースは肩をびくりと揺らした。
「報酬は覚えているな」
しかも、そう言う声は低い。パーティーに招待するというのにちっとも喜んでいる気配がない。せっかく感謝を伝える場を設けようと言ってるのにな、とヒースはちょっぴりむくれた。
「わ、分かってるよ……貸し出しも持ち出しも許可できないけど、見るだけならいくらでも」
「そうか」
しかもアルベルトの返答は素っ気ない。ちぇ、と口を尖らせるヒースであった。
「思う存分、じっくり見るといいよ。なんなら本当に泊まればいいのに。そしたら夜通し見放題だぜ?」
「それは断る」
「な、なんで」
「何があるか分からんからな」
「またそれだ! 何があるっていうんだ、俺の王宮」
「何かしかないんだが?」
「え、どういう意味? ねえアルベルト。えっ?」
戸惑うヒースを残し、アルベルトはリリアンを庭へと誘う。早速魔法を教えるからと言われ、いいのかしらと思いながらもリリアンはそれに従った。
ヘレナと、それからクラベルもリリアンの後に続く。これ以上ヘレナの私室に居ても仕方がないので、マクスウェルとレイナードも着いて行く事にした。
が、その前にと、マクスウェルは振り返る。
「ところで陛下、スターシャ姫の事ですが」
「あの子がどうかしたか?」
マクスウェルが名前を出しても、ヒースに不自然な反応は見られない。レイナードと、部屋から出かかっていたクラベルは、そんなヒースの様子をさり気なく注視する。
マクスウェルも注意深く言葉を選んだ。
「……最近姫に会いましたか」
「うん? 当然。毎朝ちゃあんと挨拶してるもの」
「そうでしたか」
「スターシャにも、ヘレナが元気になったって教えてやらないとなあ」
そう言うヒースは、さっきまでと変わらない様子だった。王妃もだ。見る限りでは、普通の会話をしている様にしか見えない。
それこそが異常なんだけど、とマクスウェルは続ける。
「そのスターシャ姫ですが、随分と顔色が悪いようですね」
「ああ。それがどうかしたか?」
「……!?」
平然と答えるヒースに、マクスウェルは内心で驚く。表情にそれが出ないように堪えてはいるが、どういう事だと疑問が渦巻くのを止められない。
マクスウェルの背後でクラベルも戸惑いの表情を浮かべる。どういうことかしら、とレイナードを向くが、そのレイナードも怪訝に眉を寄せるばかり。
ヒースは、そんな彼らの反応こそに首を傾げている。
「いえ、把握しているのならいいです」
「そうかい? じゃ、悪いけど、ヘレナの事頼むよ」
「はい」
そうして三人は改めて挨拶をしてから部屋を出た。なんとも言えない沈黙が下りる。ゆっくりと廊下を進み、離れた所に見えるアルベルト達の背中を追った。
移動しながら、ごく小さく囁く。
「どういう事だ……?」
「やっぱり妙だな」
「妙を通り越して異常だろ。あれを見ておいてあの反応はおかしい」
「……そうだな」
レイナードは溜め息を吐いた。
この数日の様子から、ヒースは真っ当な人の親だと分かる。ヘレナの容体に胸を痛め、快復を喜ぶ。であるのなら、スターシャが相手でも同じ事をするだろう。実際にスターシャは寝込んでいたわけではないが、ヘレナと変わらないくらいには酷い顔色をしていた。ひょっとしたら倒れる寸前なのかもしれない。けれども、毎朝彼女と顔を合わせているというヒースは、スターシャを休ませる必要が無いと認識しているようだった。
それは、あんなにヘレナを心配していたヒースの姿とはかけ離れている。一体どういう事なのだろうか。
思案するレイナード同様、クラベルは口元に手を当てて考え込んでいた。
「もしスターシャ様が呪術を使っているのなら、閣下の仰っていた魔術とは少し違う気がするわね。てっきり、自身の様子を偽っているのだと思っていたけれど」
「それも気になるな。ヒース陛下は彼女をそのままで認識しているようだった。なのに、やつれた状態のスターシャ姫をなんとも思っていない」
「何が起きているのかしら……」
クラベルとマクスウェルのやり取りに、うん、とレイナードは頷く。
「父上の言った通りだ。こんな危険な場所にリリーを置いておけない」
「お前な……!」
レイナードは決意を新たにするように、キリッと表情を引き締めている。一人王宮に滞在しているマクスウェルは、そんな彼を恨めしく睨み付けた。
「本当ならレイ、お前も厄介になるべきなんだぞ。分かってるかそこんとこ」
「でもリリーが居ないし」
「リリアンが居なくてもだよ」
「なんで」
「なんで!? ってなんで!?」
王太子だぞ俺は、と叫ぶマクスウェルを置いて、レイナードはすたすたとリリアンの元へ急ぐ。そんなリリアンには、ヘレナがぴったりと付き添っていた。
スターシャの目的は分からないが、ヘレナの症状とスターシャの状態からして無関係とも思えない。ヘレナが慕っているのなら、リリアンにもなにかが起きてもおかしくないのかも。そう思えばレイナードの心配も理解できる。マクスウェルは溜め息と共に諦めの感情を吐き出して、レイナードは好きにさせる事にした。
それよりも、スターシャだ。今得た情報を共有しようと、マクスウェルはアルベルトに近付いた。
「叔父上、スターシャ姫の事なんだが」
「あのガキ……リリアンにくっつきおって……」
「ダメだこりゃ」
が、マクスウェルの声はアルベルトに届かなかった。アルベルトはヘレナを凝視し続けており、その表情は険しい。目を血走らせ、ぎちぎちと歯を鳴らす姿は普段の貴公子然としたものとはかけ離れている。こうなるともうリリアンの声以外は届かないだろう。
邪悪な空気を纏うアルベルトはそのままに、ヘレナの先導で庭へと出ると早速魔法の練習が始まった。基礎のできているリリアンは、アルベルトがコツを説明するだけでより細やかな動きを再現していた。それだけでなく、同時に三匹の魚を出して操ったりと素晴らしい成長を見せる。
その事にアルベルトが感激して小刻みに震えていたのだが、リリアンが「お父様はもっと、とっても凄いんですよ」と言うと更に震え出し、ヘレナに気味悪がられていた。
が、その後アルベルトが魔法を発動させると、それも違ったものに変わる。瞬時に湧き上がった強い魔力はリリアンがやっていたように水を生むと、しゅるしゅると魚の形へと変化する。次々と生み出されていく魚は、アルベルトの手元から中庭の空へと駆け上っていった。
「まあ……!」
そうして頭上に現れたのは、百を超える魚の群れ。
水でできた魚は、大小様々な種類がいた。群れで機敏に移動するもの、単独で悠々と泳ぐもの。人を丸呑みできそうなものまでが空中を泳いでいる。全ての魚が別々の動きをして、だ。
まるで水中に居るようだった。自由に泳ぐ水でできた魚は、エル=イラーフの強い日差しを受けて煌めく。きらきらと光を散らす魚は優美で、思わずヘレナは息を飲んだ。
「やっぱり、とっても綺麗」
リリアンもほぅ、とそれに見惚れている。魚群の向こうにアルベルトの得意気な顔が見えて気が散るが、確かに素晴らしい光景だった。魅入るリリアンの姿も含めて。
「くっ……」
悔しい。あまりにも完璧な光景すぎて悔しい。ヘレナは唇を噛む。
けれども、魔法の練習なんてほとんどさぼっていたヘレナには、ここまでの魔法なんて使えない。その点はさすがはヴァーミリオン公と言えるだろう。
自在に泳ぐ魚を参考にして、ヘレナは魔力を操った。触媒としているペンダントを握り締め集中する。するとすぐにその変化に気が付いた。以前までと比べると、格段に魔力を練るのに労力がかからなかったのだ。体の隅々から魔力が集まってくる。
いつも通り術式を組み立て魔力を解放する。そうして目の前に思い描いた通りの水の塊が現れ、ヘレナは目を丸くした。
これまでであれば、ほんのちょっぴり水滴が浮かぶだけだったのに。思わず視線をアルベルトへと向けると、彼はリリアンに指導をしている最中だった。そのアルベルトが、ふとヘレナを振り返る。視線が合うなり口角を上げるものだから、ヘレナの悔しさは更に増幅した。ヘレナの魔力回路は元よりも良い状態になっているのだ。きっとアルベルトが治療の際に処置を施したのだろう。
その事実に喜ぶに喜べないヘレナと、どうだ見たかと言わんばかりのアルベルト。そのうちにテンションの上がったアルベルトが、更に大量の魚を作り出した。魚は中庭に放たれると、渦を巻くように回遊を始める。
その魚の数は百、いや千まであるかもしれない。まるで洪水だ。中庭の反対側からうっかり入ってしまった官僚が、回遊する魚に巻き込まれてビチョビチョに濡れていたようだったが、それもぽかんとこの光景を見上げていたせいだ。
ヘレナも同様にあんぐりと口を開けている。見かねたクラベルがヘレナの口をそっと閉めてやり、リリアンは父親を褒め称えていて、そのせいで余計にアルベルトが調子に乗る。レイナードがなぜか悔しそうにしていて、マクスウェルはもう好きにすればいいと放置する事に決めた。
この日、陽が落ちるまで王宮に滞在していたが、スターシャは一同の前には姿を現さなかった。
「叔父上、姫の様子はもう大丈夫そうだけど、治療は終わりでいいのか?」
ヘレナとの言い合いに飽きたのか、アルベルトは珍しくすぐに反応する。
「回路は問題ない。が、自身の魔力がきちんと操れるか、魔力回路を魔力が隅々と通うかの確認は行った方がいいだろうな」
「なるほど~」
ヒースがぽんと手を打つ。アルベルトの言葉は最もなもので、見れば主治医もうんうんと頷いていた。マクスウェルも言われてみれば、という思いで感心する。
ヘレナの様子からして回路の確認を行なっても体調には影響しないだろう、という主治医の言葉で、早速確認を進める事になった。けれどもヘレナはまともに魔法など使った事が無いと、不安な様子だ。
「魔法ならなんでもいいんだろう?」
「そうだな。ただ、あまり些細なものだと意味が無いと思うが。全身の回路を使う程度のものが望ましい」
「それって結構なものだと思うけど……」
でもまあ、やるしかない。簡単なものでもいいと言われると、ヘレナは顔を強張らせながらも頷いた。
「わ、わかったわ」
「ヘレナ様は、どの程度魔法が使えるのですか?」
「……初歩的なやつなら、練習したわ」
「そうなのですか」
話を聞いたリリアンは、ちらりとアルベルトを見る。視線を受けたアルベルトは肩を竦めてみせた。足りないわけではないがもう少し心得があれば早いのにと、おそらくそういう意味だろう。
だがやはりヘレナは不安そうだ。その横顔を見て、リリアンはそうだ、と閃く。ここにはマクスウェルとレイナード、そしてリリアンの三人が居る。それぞれが持つ属性は火、土、水。風以外なら彼女の助けが出来るだろう。アルベルトなら全属性の魔法が使えるが、様子を見る限り助力は難しいとリリアンは判断した。
「ヘレナ様の属性はなんなのでしょう?」
それにはヘレナより前にヒースが答えた。
「ヘレナは水属性だな」
「あら、リリアンとお揃いね」
「リリアンお姉様と!?」
クラベルの言葉にがばりとヘレナが顔を上げる。目を輝かせてリリアンを見る姿は、期待に満ち溢れているように見えた。
「じゃあ、リリアンお姉様。あたしに魔法を教えて!」
そうして出てきたのは予想通りの言葉だった。微笑ましい姿に誰もが表情を和らげる。アルベルトを除いて。
一人苦々しい顔をしている父親を無視し、レイナードはリリアンに呼びかける。
「リリー、練習していた魔法があったろう。魚を出すやつ」
「ええ」
「あれを教えてあげたらどうだ?」
「あれを、ですか」
水で魚を再現する魔法は、水球を作り出す初級魔法とほとんど変わらない魔法だ。が、水を魚の形で維持するのに集中力が必要となる。形を再現しようと意識していると、魔力を消費し過ぎてしまう。その結果水を維持できなくなり、形が崩れてしまう。逆に魔力量に気を取られると、今度はそれで形が作れなくなる。そのバランスがなかなか難しいのだ。
きちんと使えれば消費する魔力も少ない。練習にはうってつけだろう。けれどもリリアンは、少しばかり居心地悪そうに眉を下げた。
「実は、小さい頃にお父様が使っていたのを真似たものなの。だからやるのなら、お父様に教わった方が」
「――何?」
それにアルベルトが反応する。
「リリアン、その魔法というのを見せてくれるか」
「ええ、構いませんが」
頷いたリリアンの手のひらに、しゅるしゅると水が生まれる。集まった水は小魚に姿を変え、空中を泳いだ。泳ぐ、という動作は、リリアンが水を操作している結果だ。泳ぎの動きを再現しない限り、作り出した水はその場から動かない。
「過去に見たものを参考に再現したと……? て、天才か」
その動作は表現しようとすると、結構な労力が必要になる。加えて、魚っぽい動きにしないとそれらしさが失われてしまう。見様見真似でここまでの術を使えるとはと、アルベルトは驚愕した。同時に誇らしさを実感する。リリアンは、それだけ過去、アルベルトの魔法をしっかり観察していたという事だ。時を経てリリアンの模範となれたのを、アルベルトは喜んだ。
が、そんな感動を邪魔する声があって、一気に興が削がれる。
「リリアンお姉様が天才だなんて、分かりきっているじゃない」
「ちょっとこのガキ黙らせろ」
「お、おい、アルベルト」
ヘレナが呆れた表情でアルベルトを見上げている。その強気な態度がどうしようもなくアルベルトを苛立たせていた。昨日今日会ったばかりの小娘に何が分かるのかと、どうしてもそれしか浮かばない。
そんなアルベルトをヒースが宥めようとするが、彼がそちらを見る事はなかった。娘のあんまりな態度を王妃が諌めるも、ヘレナは改める気が無いようで、強気にアルベルトを睨み付けている。
そんな二人の間で、リリアンは穏やかに微笑んでいた。
「あんた、あたしに魔法を教えなさいよ」
「ふざけるな。一人で勝手にやれ」
「ねえお父様、前に見せて頂いた魔法、ちゃんと使えるようになりたいわ。わたくしにも教えてくださらない?」
「よし、じゃあ早速始めよう。まずは適切な魔力を練るところからだな。その後術式の確認をしよう」
「あんたみたいのを二枚舌って言うのよ」
「その生意気な口を開けなくしてやろうか」
黙って見守るマクスウェルは思った。「混沌としてるなぁ」と。
レイナードはああ言っていたが、どうにもヘレナとアルベルトは相性が悪いように見える。その原因はリリアンで、彼女の関心をより惹きたいという願望の表れなのだろう。という事は、もうどうしようもないのが分かりきっていた。お互い引く気が無いのだ、ぶつかり合うしかない。
アルベルトとヘレナが激しく言い争う中で、マクスウェルはヒースに視線を向けた。それに気付いたらしいヒースと目が合う。彼は虚ろな目でうっすらと笑みを浮かべていたが、きっとマクスウェルも同じような表情だったろう。目が合うなり更に頰を引き攣らせたヒースは、完全にマクスウェルの表情筋と同調していた。
ヒースはそれを自覚したのか、それとも王としての経験によるものか。はっとなったかと思うと、そうだ、と声を上げた。それが言い争う声を遮り、視線がヒースに集まる。
「ヘレナの回復祝いと礼を兼ねて、パーティーを開こうと思うんだ。功労者である君らには絶対に参加してもらうから、そのつもりで。まあ、ちょっと準備があるから、何日か滞在して貰う事になるけど」
「我々は構いませんが……」
「な、いいだろアルベルト」
マクスウェルが答えると、ヒースはうんうん、と笑顔で頷いてからアルベルトへ水を向ける。ここは両者笑顔で受けるところだ、ヒースはそれを信じて疑わなかったのだが、対するアルベルトはなぜか眉間に皺を寄せ、ヒースを睨み付けている。結構な眼力に、ヒースは肩をびくりと揺らした。
「報酬は覚えているな」
しかも、そう言う声は低い。パーティーに招待するというのにちっとも喜んでいる気配がない。せっかく感謝を伝える場を設けようと言ってるのにな、とヒースはちょっぴりむくれた。
「わ、分かってるよ……貸し出しも持ち出しも許可できないけど、見るだけならいくらでも」
「そうか」
しかもアルベルトの返答は素っ気ない。ちぇ、と口を尖らせるヒースであった。
「思う存分、じっくり見るといいよ。なんなら本当に泊まればいいのに。そしたら夜通し見放題だぜ?」
「それは断る」
「な、なんで」
「何があるか分からんからな」
「またそれだ! 何があるっていうんだ、俺の王宮」
「何かしかないんだが?」
「え、どういう意味? ねえアルベルト。えっ?」
戸惑うヒースを残し、アルベルトはリリアンを庭へと誘う。早速魔法を教えるからと言われ、いいのかしらと思いながらもリリアンはそれに従った。
ヘレナと、それからクラベルもリリアンの後に続く。これ以上ヘレナの私室に居ても仕方がないので、マクスウェルとレイナードも着いて行く事にした。
が、その前にと、マクスウェルは振り返る。
「ところで陛下、スターシャ姫の事ですが」
「あの子がどうかしたか?」
マクスウェルが名前を出しても、ヒースに不自然な反応は見られない。レイナードと、部屋から出かかっていたクラベルは、そんなヒースの様子をさり気なく注視する。
マクスウェルも注意深く言葉を選んだ。
「……最近姫に会いましたか」
「うん? 当然。毎朝ちゃあんと挨拶してるもの」
「そうでしたか」
「スターシャにも、ヘレナが元気になったって教えてやらないとなあ」
そう言うヒースは、さっきまでと変わらない様子だった。王妃もだ。見る限りでは、普通の会話をしている様にしか見えない。
それこそが異常なんだけど、とマクスウェルは続ける。
「そのスターシャ姫ですが、随分と顔色が悪いようですね」
「ああ。それがどうかしたか?」
「……!?」
平然と答えるヒースに、マクスウェルは内心で驚く。表情にそれが出ないように堪えてはいるが、どういう事だと疑問が渦巻くのを止められない。
マクスウェルの背後でクラベルも戸惑いの表情を浮かべる。どういうことかしら、とレイナードを向くが、そのレイナードも怪訝に眉を寄せるばかり。
ヒースは、そんな彼らの反応こそに首を傾げている。
「いえ、把握しているのならいいです」
「そうかい? じゃ、悪いけど、ヘレナの事頼むよ」
「はい」
そうして三人は改めて挨拶をしてから部屋を出た。なんとも言えない沈黙が下りる。ゆっくりと廊下を進み、離れた所に見えるアルベルト達の背中を追った。
移動しながら、ごく小さく囁く。
「どういう事だ……?」
「やっぱり妙だな」
「妙を通り越して異常だろ。あれを見ておいてあの反応はおかしい」
「……そうだな」
レイナードは溜め息を吐いた。
この数日の様子から、ヒースは真っ当な人の親だと分かる。ヘレナの容体に胸を痛め、快復を喜ぶ。であるのなら、スターシャが相手でも同じ事をするだろう。実際にスターシャは寝込んでいたわけではないが、ヘレナと変わらないくらいには酷い顔色をしていた。ひょっとしたら倒れる寸前なのかもしれない。けれども、毎朝彼女と顔を合わせているというヒースは、スターシャを休ませる必要が無いと認識しているようだった。
それは、あんなにヘレナを心配していたヒースの姿とはかけ離れている。一体どういう事なのだろうか。
思案するレイナード同様、クラベルは口元に手を当てて考え込んでいた。
「もしスターシャ様が呪術を使っているのなら、閣下の仰っていた魔術とは少し違う気がするわね。てっきり、自身の様子を偽っているのだと思っていたけれど」
「それも気になるな。ヒース陛下は彼女をそのままで認識しているようだった。なのに、やつれた状態のスターシャ姫をなんとも思っていない」
「何が起きているのかしら……」
クラベルとマクスウェルのやり取りに、うん、とレイナードは頷く。
「父上の言った通りだ。こんな危険な場所にリリーを置いておけない」
「お前な……!」
レイナードは決意を新たにするように、キリッと表情を引き締めている。一人王宮に滞在しているマクスウェルは、そんな彼を恨めしく睨み付けた。
「本当ならレイ、お前も厄介になるべきなんだぞ。分かってるかそこんとこ」
「でもリリーが居ないし」
「リリアンが居なくてもだよ」
「なんで」
「なんで!? ってなんで!?」
王太子だぞ俺は、と叫ぶマクスウェルを置いて、レイナードはすたすたとリリアンの元へ急ぐ。そんなリリアンには、ヘレナがぴったりと付き添っていた。
スターシャの目的は分からないが、ヘレナの症状とスターシャの状態からして無関係とも思えない。ヘレナが慕っているのなら、リリアンにもなにかが起きてもおかしくないのかも。そう思えばレイナードの心配も理解できる。マクスウェルは溜め息と共に諦めの感情を吐き出して、レイナードは好きにさせる事にした。
それよりも、スターシャだ。今得た情報を共有しようと、マクスウェルはアルベルトに近付いた。
「叔父上、スターシャ姫の事なんだが」
「あのガキ……リリアンにくっつきおって……」
「ダメだこりゃ」
が、マクスウェルの声はアルベルトに届かなかった。アルベルトはヘレナを凝視し続けており、その表情は険しい。目を血走らせ、ぎちぎちと歯を鳴らす姿は普段の貴公子然としたものとはかけ離れている。こうなるともうリリアンの声以外は届かないだろう。
邪悪な空気を纏うアルベルトはそのままに、ヘレナの先導で庭へと出ると早速魔法の練習が始まった。基礎のできているリリアンは、アルベルトがコツを説明するだけでより細やかな動きを再現していた。それだけでなく、同時に三匹の魚を出して操ったりと素晴らしい成長を見せる。
その事にアルベルトが感激して小刻みに震えていたのだが、リリアンが「お父様はもっと、とっても凄いんですよ」と言うと更に震え出し、ヘレナに気味悪がられていた。
が、その後アルベルトが魔法を発動させると、それも違ったものに変わる。瞬時に湧き上がった強い魔力はリリアンがやっていたように水を生むと、しゅるしゅると魚の形へと変化する。次々と生み出されていく魚は、アルベルトの手元から中庭の空へと駆け上っていった。
「まあ……!」
そうして頭上に現れたのは、百を超える魚の群れ。
水でできた魚は、大小様々な種類がいた。群れで機敏に移動するもの、単独で悠々と泳ぐもの。人を丸呑みできそうなものまでが空中を泳いでいる。全ての魚が別々の動きをして、だ。
まるで水中に居るようだった。自由に泳ぐ水でできた魚は、エル=イラーフの強い日差しを受けて煌めく。きらきらと光を散らす魚は優美で、思わずヘレナは息を飲んだ。
「やっぱり、とっても綺麗」
リリアンもほぅ、とそれに見惚れている。魚群の向こうにアルベルトの得意気な顔が見えて気が散るが、確かに素晴らしい光景だった。魅入るリリアンの姿も含めて。
「くっ……」
悔しい。あまりにも完璧な光景すぎて悔しい。ヘレナは唇を噛む。
けれども、魔法の練習なんてほとんどさぼっていたヘレナには、ここまでの魔法なんて使えない。その点はさすがはヴァーミリオン公と言えるだろう。
自在に泳ぐ魚を参考にして、ヘレナは魔力を操った。触媒としているペンダントを握り締め集中する。するとすぐにその変化に気が付いた。以前までと比べると、格段に魔力を練るのに労力がかからなかったのだ。体の隅々から魔力が集まってくる。
いつも通り術式を組み立て魔力を解放する。そうして目の前に思い描いた通りの水の塊が現れ、ヘレナは目を丸くした。
これまでであれば、ほんのちょっぴり水滴が浮かぶだけだったのに。思わず視線をアルベルトへと向けると、彼はリリアンに指導をしている最中だった。そのアルベルトが、ふとヘレナを振り返る。視線が合うなり口角を上げるものだから、ヘレナの悔しさは更に増幅した。ヘレナの魔力回路は元よりも良い状態になっているのだ。きっとアルベルトが治療の際に処置を施したのだろう。
その事実に喜ぶに喜べないヘレナと、どうだ見たかと言わんばかりのアルベルト。そのうちにテンションの上がったアルベルトが、更に大量の魚を作り出した。魚は中庭に放たれると、渦を巻くように回遊を始める。
その魚の数は百、いや千まであるかもしれない。まるで洪水だ。中庭の反対側からうっかり入ってしまった官僚が、回遊する魚に巻き込まれてビチョビチョに濡れていたようだったが、それもぽかんとこの光景を見上げていたせいだ。
ヘレナも同様にあんぐりと口を開けている。見かねたクラベルがヘレナの口をそっと閉めてやり、リリアンは父親を褒め称えていて、そのせいで余計にアルベルトが調子に乗る。レイナードがなぜか悔しそうにしていて、マクスウェルはもう好きにすればいいと放置する事に決めた。
この日、陽が落ちるまで王宮に滞在していたが、スターシャは一同の前には姿を現さなかった。
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