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僕ら

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「あー映画、…面白かったな…」
「う…うん、…」

須賀くんが天井に向かって伸びをしながら僕を見て笑う。

面白かったのかな…
本当はあまり…内容が入ってこなかった… 時々ちょっかいをかけてくる須賀くんの…せいで…
そして、右隣に座る元彼…康介先輩のせいで…

少しの暗闇…
映画のエンディングが流れている途中、お客さんが少しずつ席を立っていく…

まだ、右隣の二人は席をたたない…できれば彼らの後に…そう思っていると、「じゃあ…日向…またな…?」
先輩がおもむろに立ち上がる。
隣にいたみずきさんも、ゆっくりとではあるが立ち上がり、僕らにお辞儀をする。本当に…なんだか、綺麗で品のあるタイプだ… 先輩がこの女性と結婚を決めたのもわかる気がする…

僕を見下ろす先輩の目は…かつてそうであったように、ものすごく優しい…
僕は内心、ドキリとしながらも、自分に言い聞かせる… 普通に、普通に…
「…はい…せ、先輩もお元気で…」

「では、失礼します」…みずきさんが小さく声を発し二人が僕らに背を向けた瞬間、 
「みずきっ!」いきなり…少し大きめの声で、須賀くんが僕の名を呼ぶ…いきなり、なに…

       『え?』

2人の声が重なる。
もちろん、僕と…先輩の隣にいるみずきさんだ… 彼女が僕らを振り返る。

「あ… …もしかして…みずき…っていうんですか、日向さんの下の、お名前…」

できればこんな状況で言いたくなかったけど仕方ない…僕は渋々、「あ…はい、そうなんです…偶然、ですね…字はどんなですか…?」
「あ…私は美しいに、月…って書きます、みずきさんは?」
「あ…僕は… 」

困惑したような表情を見せる先輩…
だめだよ、普通にしてくれなきゃ…

その後、僕は社交辞令程度に彼女と話し、その場は解散となった。

須賀くん…
絶対わざとだ…

須賀くんの広い背中を見つめながら、僕はいつもより早足で歩く須賀くんの後を追った。

須賀くんは映画館からほぼ無言で、正直少し怖い…
そう思った僕は、そのまま拉致されるように、まさか…と言う場所に連れて行かれた     

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