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第三章 正体
空白
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「… え… あ、… い、井上さん…? 」
藤崎さんは私の腕に支えられながら歩道に手をついて座り込んだまま…私をゆっくりと見上げる。
「… 藤崎さん…大丈夫ですか… ?」
「えっと… あ… もし、かして… あの、俺… 」
明らかに動揺しているのがわかる… 彼の驚いたような表情…
私自身、動揺を隠せない…
彼に何と告げればいいのか、言葉が見つからない…
震える声で、彼が私に尋ねる。
「井上さん… 正直に答えて、くれるかな… もしかして…もしかして、さ…アイツが、出てきた…?」
アイツ… アイツとは…間違いなく、さっきのアイツだ…
自らをシュウと名乗ったあの男のことだ…。
もう、きっと藤崎さんは気付いている…
あの男、シュウが言うように…
藤崎さんの中で、ぽっかりと空いてしまう、空白の時間があるとすれば、
もう絶対に気付いているはずだ…図書館の後、ここに来るまでの自分の記憶が、ごっそり抜け落ちていることに…
今更、隠す必要はない気がした私は、即座に答える。
「はい…出て、きました…その…あなたの中の、シュウって人…が、ついさっき…」
「… そうか、やっぱり…」
それきり黙り込んでしまった藤崎さん…
道行く人が、座り込んだままの藤崎さんと、そこにつきそう私を横目に気にしながら歩いて行く…
「あの…少しだけでいいので、どこかでお話できませんか…」
聞きたい…
彼の口から、さっきの男のことを…
シュウという…藤崎さんとは真逆な性質に思えた、横柄な男のことを、もういっそ、全て聞いてしまいたい…
その時の私はどうしようもなく…そんな衝動に、駆られた…
藤崎さんはゆらりと私の方に視線を移し、
不安そうな目で私をしばらく見つめた後、やがて、こくりと頷いた。
藤崎さんは私の腕に支えられながら歩道に手をついて座り込んだまま…私をゆっくりと見上げる。
「… 藤崎さん…大丈夫ですか… ?」
「えっと… あ… もし、かして… あの、俺… 」
明らかに動揺しているのがわかる… 彼の驚いたような表情…
私自身、動揺を隠せない…
彼に何と告げればいいのか、言葉が見つからない…
震える声で、彼が私に尋ねる。
「井上さん… 正直に答えて、くれるかな… もしかして…もしかして、さ…アイツが、出てきた…?」
アイツ… アイツとは…間違いなく、さっきのアイツだ…
自らをシュウと名乗ったあの男のことだ…。
もう、きっと藤崎さんは気付いている…
あの男、シュウが言うように…
藤崎さんの中で、ぽっかりと空いてしまう、空白の時間があるとすれば、
もう絶対に気付いているはずだ…図書館の後、ここに来るまでの自分の記憶が、ごっそり抜け落ちていることに…
今更、隠す必要はない気がした私は、即座に答える。
「はい…出て、きました…その…あなたの中の、シュウって人…が、ついさっき…」
「… そうか、やっぱり…」
それきり黙り込んでしまった藤崎さん…
道行く人が、座り込んだままの藤崎さんと、そこにつきそう私を横目に気にしながら歩いて行く…
「あの…少しだけでいいので、どこかでお話できませんか…」
聞きたい…
彼の口から、さっきの男のことを…
シュウという…藤崎さんとは真逆な性質に思えた、横柄な男のことを、もういっそ、全て聞いてしまいたい…
その時の私はどうしようもなく…そんな衝動に、駆られた…
藤崎さんはゆらりと私の方に視線を移し、
不安そうな目で私をしばらく見つめた後、やがて、こくりと頷いた。
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