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情報開示
圭一が…由布院って…言ったか、今…
「む…ぐっ…!?…ごほっ… …っ…」
俺は予想もしない圭一の発言にむせ返って、慌てて水を飲む。
「け…けいい…」言いかけると、
「由布院…九州の大分の…確か温泉ですよね?」
…ほら、やっぱり…田口が目を丸くして俺らを交互に見ながら、反応する。
寺崎を見る。表情を変えていない。
ただ、無反応で、しかも無言だ…逆に…何考えてるかわかんなくて、ちょっと怖い。
「そうです、大分の温泉です。今度の週末先輩と行くことになって…んで、そのリサーチしてました。ネットカフェで…ね、先輩」圭一は少しだけ、珍しく微笑みながら話す。
「えーー!?そうなんですね…!?日帰り…は無理か…まさか旅館にお泊り…ですか~…うわーすごい!いいですね~」田口がさすが女子だ…なんだか…すごくテンション高めに、感嘆の声をあげる。
俺が取り繕うように、話を続ける。
「あ…まあ、そう、そうそう、圭一、今年受験も控えてるからさ、今すごく勉強も模擬試験とかも頑張ってるし、ちょうど一息ついたところで…息抜きっていう感じで。俺、こいつの家庭教師みたいなの、少ししてるし…圭一の両親もぜひよろしくって…言うしさ。まあ、もちろん、勉強道具も持参でな… な!圭一」
そんな感じで、俺がグルグル頭をフル回転しながら、なるべく違和感がないように補足して促すと、
「はい…まあ道具、少しは持って行きます。でも、多分、あんま…しないかもです。俺的にはあくまで先輩と、観光とか食事とか温泉とか、色々楽しむのが目的です…お湯も、めちゃくちゃいいらしいし、ね!先輩。」
圭一…おまえ、なんかおかしいぞ…今日…
俺は圭一と田口が話すのを聞きながら、段々と…げんなりしてきていた。
圭一は、普段はそんなに自分から、個人的な情報を開示するタイプではない。
聞かれたら必要最低限の範囲で、そのことに対してのみ答えるタイプ。ただ、場の雰囲気は大事にするのであまりに静かだと気を遣って口を開くこともあるのだが…今は最初と違って別に…そんな場面でもない。
田口が話を振ってきてもさらっと適当に返せば済むはずなのに、ネットカフェ(しかもペアシートとか言うし…)で調べただの、週末に温泉旅行に行くだの、わざわざ自分から…詳細な情報を提供しちゃってる…
ましてや初対面の田口がいるこの場で、そんなにペラペラ喋るタイプではないはずなのに…
わざとか…?もしかして…だけど、本当に単なる俺の自惚れかもだけど、寺崎に聞かせるため…?変な、対抗意識かなんかかな…
あと、怖いのが…寺崎が、さっきから一言も言葉を発していないこと。
黙々と食事をとりながら、一応話は聞いているようで、相槌を打ったりはしているけど…なんか…ちょっと…変。
まさか、奴が…シュウが現れている…?とかも考えてみるが、そういう感じでもない…気がする。
その後は圭一と田口でなんとなく話が勝手に進んでいくので、俺と寺崎は会話にあまり加わらずに食事をすすめた。
その時、会話の途中で、不意に田口が、「圭一さん!…あ、すみません…もしよろしければ、お名前で呼んでも良いですか?…なんとなく呼びやすくて…」
…またか…。
…圭一さん…って言ったよな…今…。
うん…わかってる… 俺と会った時も、この子はそうだった…
あろうことか初対面の俺の名前を『佐々木』という苗字ではなく『僚介さん』と呼ぼうとして…その時は田口の彼氏である寺崎が怒っていないか、すごく…冷や冷やしたのを思い出す。
分かってる…この子は、そういう子なんだ。
でも、俺の中に、ある感情が芽生えた。
圭一を…『圭一』と呼んでいいのは俺だけ…だ…できれば気安くこの子に…そんな風に簡単に呼んでほしくない…
これって…よくいう独占欲っていうやつなんだろうか…
俺ももう…完全に終わってるかもしれない… こんなに…圭一のこと…独り占めしたいのだろうか…
でも…圭一がOKだと答えるならそれはもう圭一の自由だ、仕方のないことだ…俺はそう、うなだれていた。
でも、その思いはすぐに、杞憂に終わった。
圭一の答えは以下のとおり。
「あ…遠慮します…っていうか、ダメです。俺のこと、『圭一』って名前で呼んでいいのは、僚介先輩と、一部の友人、家族だけです。だからすみませんけど『奥村』でお願いします。あ、でも完全に俺、あなたより年下なんで呼び捨てでもなんでもどうぞ、そういうの俺、全然、気にしませんので」
あーあ…またこいつ、寺崎や田口の前で余計なこと、堂々と言ってさ…俺たちの関係、怪しまれはしないだろうか…
ほら見ろ…田口も少し、いやかなり…もともと大きい目をさらに見開いて、びっくりしてるし…寺崎は…無表情…過ぎて、感情が読めなくて怖い…くらいじゃないか…
でも、俺は…正直に言うと、この圭一の、田口に対する真っすぐな迷いない拒否の回答が嬉しくて…
もうこいつが、ここで何を口走ろうと…いいや…とか、そんな風に思う自分もいた。
その後俺たちは、バイトの話や大学の話…ゲームとか漫画とかの話に脱線もしつつ、差しさわりのない会話をして、レストランの前で別れを告げた。
「お二人とも、温泉旅行から帰ったら、またいろいろ、お話聞かせてくださいねっ!」田口はそう明るく言いながら、お辞儀をして寺崎と歩き出した。
ただ一つ、あの場で、気になったこと。
寺崎だけが…言葉をほとんど発さずに終わった…そのことだけが、気掛かりだった…
シュウが…寺崎の内部から様子見をしていたのか…それとも、寺崎自身が…?
わからないことを想像しても仕方がない…な…
俺はなんとかそう考え、圭一の横に並んで歩いた。
「む…ぐっ…!?…ごほっ… …っ…」
俺は予想もしない圭一の発言にむせ返って、慌てて水を飲む。
「け…けいい…」言いかけると、
「由布院…九州の大分の…確か温泉ですよね?」
…ほら、やっぱり…田口が目を丸くして俺らを交互に見ながら、反応する。
寺崎を見る。表情を変えていない。
ただ、無反応で、しかも無言だ…逆に…何考えてるかわかんなくて、ちょっと怖い。
「そうです、大分の温泉です。今度の週末先輩と行くことになって…んで、そのリサーチしてました。ネットカフェで…ね、先輩」圭一は少しだけ、珍しく微笑みながら話す。
「えーー!?そうなんですね…!?日帰り…は無理か…まさか旅館にお泊り…ですか~…うわーすごい!いいですね~」田口がさすが女子だ…なんだか…すごくテンション高めに、感嘆の声をあげる。
俺が取り繕うように、話を続ける。
「あ…まあ、そう、そうそう、圭一、今年受験も控えてるからさ、今すごく勉強も模擬試験とかも頑張ってるし、ちょうど一息ついたところで…息抜きっていう感じで。俺、こいつの家庭教師みたいなの、少ししてるし…圭一の両親もぜひよろしくって…言うしさ。まあ、もちろん、勉強道具も持参でな… な!圭一」
そんな感じで、俺がグルグル頭をフル回転しながら、なるべく違和感がないように補足して促すと、
「はい…まあ道具、少しは持って行きます。でも、多分、あんま…しないかもです。俺的にはあくまで先輩と、観光とか食事とか温泉とか、色々楽しむのが目的です…お湯も、めちゃくちゃいいらしいし、ね!先輩。」
圭一…おまえ、なんかおかしいぞ…今日…
俺は圭一と田口が話すのを聞きながら、段々と…げんなりしてきていた。
圭一は、普段はそんなに自分から、個人的な情報を開示するタイプではない。
聞かれたら必要最低限の範囲で、そのことに対してのみ答えるタイプ。ただ、場の雰囲気は大事にするのであまりに静かだと気を遣って口を開くこともあるのだが…今は最初と違って別に…そんな場面でもない。
田口が話を振ってきてもさらっと適当に返せば済むはずなのに、ネットカフェ(しかもペアシートとか言うし…)で調べただの、週末に温泉旅行に行くだの、わざわざ自分から…詳細な情報を提供しちゃってる…
ましてや初対面の田口がいるこの場で、そんなにペラペラ喋るタイプではないはずなのに…
わざとか…?もしかして…だけど、本当に単なる俺の自惚れかもだけど、寺崎に聞かせるため…?変な、対抗意識かなんかかな…
あと、怖いのが…寺崎が、さっきから一言も言葉を発していないこと。
黙々と食事をとりながら、一応話は聞いているようで、相槌を打ったりはしているけど…なんか…ちょっと…変。
まさか、奴が…シュウが現れている…?とかも考えてみるが、そういう感じでもない…気がする。
その後は圭一と田口でなんとなく話が勝手に進んでいくので、俺と寺崎は会話にあまり加わらずに食事をすすめた。
その時、会話の途中で、不意に田口が、「圭一さん!…あ、すみません…もしよろしければ、お名前で呼んでも良いですか?…なんとなく呼びやすくて…」
…またか…。
…圭一さん…って言ったよな…今…。
うん…わかってる… 俺と会った時も、この子はそうだった…
あろうことか初対面の俺の名前を『佐々木』という苗字ではなく『僚介さん』と呼ぼうとして…その時は田口の彼氏である寺崎が怒っていないか、すごく…冷や冷やしたのを思い出す。
分かってる…この子は、そういう子なんだ。
でも、俺の中に、ある感情が芽生えた。
圭一を…『圭一』と呼んでいいのは俺だけ…だ…できれば気安くこの子に…そんな風に簡単に呼んでほしくない…
これって…よくいう独占欲っていうやつなんだろうか…
俺ももう…完全に終わってるかもしれない… こんなに…圭一のこと…独り占めしたいのだろうか…
でも…圭一がOKだと答えるならそれはもう圭一の自由だ、仕方のないことだ…俺はそう、うなだれていた。
でも、その思いはすぐに、杞憂に終わった。
圭一の答えは以下のとおり。
「あ…遠慮します…っていうか、ダメです。俺のこと、『圭一』って名前で呼んでいいのは、僚介先輩と、一部の友人、家族だけです。だからすみませんけど『奥村』でお願いします。あ、でも完全に俺、あなたより年下なんで呼び捨てでもなんでもどうぞ、そういうの俺、全然、気にしませんので」
あーあ…またこいつ、寺崎や田口の前で余計なこと、堂々と言ってさ…俺たちの関係、怪しまれはしないだろうか…
ほら見ろ…田口も少し、いやかなり…もともと大きい目をさらに見開いて、びっくりしてるし…寺崎は…無表情…過ぎて、感情が読めなくて怖い…くらいじゃないか…
でも、俺は…正直に言うと、この圭一の、田口に対する真っすぐな迷いない拒否の回答が嬉しくて…
もうこいつが、ここで何を口走ろうと…いいや…とか、そんな風に思う自分もいた。
その後俺たちは、バイトの話や大学の話…ゲームとか漫画とかの話に脱線もしつつ、差しさわりのない会話をして、レストランの前で別れを告げた。
「お二人とも、温泉旅行から帰ったら、またいろいろ、お話聞かせてくださいねっ!」田口はそう明るく言いながら、お辞儀をして寺崎と歩き出した。
ただ一つ、あの場で、気になったこと。
寺崎だけが…言葉をほとんど発さずに終わった…そのことだけが、気掛かりだった…
シュウが…寺崎の内部から様子見をしていたのか…それとも、寺崎自身が…?
わからないことを想像しても仕方がない…な…
俺はなんとかそう考え、圭一の横に並んで歩いた。
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