定時に帰る彼女と、残業しまくる僕

もえこ

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第1章

1

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「おはようございます…」

彼女は挨拶を済ませ、自分の飲む珈琲等の準備を済ませ、始業のチャイムとともに、仕事を即座に開始する。

どうやら何かの雑誌とかで紹介されていたみたいに、
前日の帰り際に、翌日優先すべき業務のメモを付箋でPCに貼って帰ってるみたいで、毎朝席についたら、まずそれに目を通しているようだ。
そこから一気に片付けるつもりなのかな…

たとえば午前中に、

「美波さん、今忙しいかな?これ、頼めたりする…?時間、厳しそうなら他の人に頼むけど…」
そんな風に主任に聞かれたりすると、彼女はほぼ、こう答える。
「大丈夫です。」って。
仕事がデキる彼女にとって、少しの+アルファの仕事は、朝飯前のようだ…

ただ、彼女には譲れない一定程度の法則みたいなものがあって、

たとえば、定時の30分前…午後4時半くらいになって主任が同様の質問をしようものなら、彼女の返答はガラリと変わる。

すべて、後回し…彼女にとって何より定時、5時キッカリに帰るのが最も重要なミッションのようだ。

この前、同僚の女性が恐らく飲み会なのか、合コンなのかよくわからないけど、彼女に4時半過ぎ位にやむなく自分の仕事を頼もうと声をかけようものなら、

「あ、無理です。もう、帰る時間、間近なんで。」

そう言って、人目気にせず、あっさり5時のカンコンチャイムでダッシュしていたっけ…。


ほんと、わかりやすい…

毎日そこまでして徹底的に定時に帰って、彼女はその後一体、何をしているんだろうか…何か好きな、趣味にでも没頭しているのだろうか…もしかして、習い事とか…?

美波さんはもちろん、職場の飲み会にも一切顔を出したことがない。

2年前に彼女がこの部署に配属された際に、彼女とほか数人の歓迎会をしたときですら、彼女は主役にも関わらず、家庭の事情という理由で来なかったくらいだから…

だから、いまだに親しい同僚もいないようにみえる。
 
ああ…彼女のことが気になる… 
 
普段が謎に包まれている彼女をとにかく、知りたいと…

            日に日に僕は思うようになった。







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