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頑張り屋の彼女
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由良さんのいいところは、本当に山ほどある。
例えば、コピー機で紙が詰まって、オロオロしている人がいるのに気付くと、自分が忙しいときもすぐにそこへ駆け付けて、一緒に手伝う。
まあ、彼女の席が、コピー機と近いというのもあるが、俺は女性で今までそんな人、あんまり見たことがなかった。
むしろ、わかんない、私、機械触るの、苦手なんです…の女性特有の逃げの一手で、男に頼る女子が多いんじゃないかな。
俺もそう言われてよく頼られ、忙しい時に時間を割いたことが何度もある。
でも、由良さんは違った。
もちろん、配属後すぐ、最初に紙が詰まってエラー表示が出たときは、俺が困っている彼女にいち早く気付き、対処した。ディスプレイの案内表示通りに機械に触れば、大抵のことは解決するもんだ。
彼女のすごいところ。
その時、一生懸命ディスプレイと俺の手順を見ていたんだ。本当に…目を皿のようにして。今思えば、人任せにせず、次回は自分一人で解決できるように…とか、思っていたのかもしれない。
案の定、二度目に彼女自身が紙を詰まらせて立ち上がったとき、ピーピーとうるさい音を立てるコピー機に、俺も含め、何人の男性社員が、彼女の近くに駆け寄ろうとしたことか。
でも彼女はたった一人で、最初俺がしてみせたとおりに、表示を見ながら、紙を抜き去り、見事に解決してみせた。
「よし、もう手順、覚えました!これで詰まりも怖くありませんっ」とにっこり笑顔で席に着く。この笑顔の破壊力って…ほんと、半端ありません。
確かに、できない、苦手です、のタイプの女子の方が、世間的には、頼りなくて可愛いし、女らしい。男から見ても、ほっとけない…俺がやってやるよ…ってなるのかもしんない。
でも俺は、由良さんのように最初はできなくても、頑張ろうとする女性が好きだ。
高いところにある資料を取る時も「あれ、届かないんで、すみません、取ってください」と周りの背の高い男性社員にいえば、一瞬で、済むことだ。でも彼女は違う。
脚立を出して、誰にも言わずにひっそりと、それをやる。
前に飲み会の席かなにかで彼女が言っていた。忙しいときに人に頼むのは気が引ける…できることはできるだけ自分でやった方が、気が楽なんだと。
きっと、そんな彼女の性格と、行動の毎日の積み重ねを目にして、俺は気付けば…彼女をすごく好きになってしまっていた。
もっと、頼ればいいのに…もっと、楽に生きたらいいのに…
そもそも君が頼めば、どの男だって、ほいほい言うこと、聞くと思うよ。
不思議なことに、そういう風に男が思える女子が甘えず、
そうじゃない女子が、やたらと甘える。
あ…これは言っちゃいけないことだった。
俺は女性の敵を作りたいわけでは決してない。ただ、こんな風に思う男が少数でもいるってこと、世の女性は少しだけ知っていても損じゃないのかもしれない、とは思ったりする。
とにもかくにも、彼女が職場にいると思うだけで、俺は毎日、仕事に行くのが楽しいんだ。
そんな彼女と毎日一緒にいられる夫が、マジで本当に羨ましい… 俺のこの苦しい気持ち…どうしたらいいんだ
つづく
例えば、コピー機で紙が詰まって、オロオロしている人がいるのに気付くと、自分が忙しいときもすぐにそこへ駆け付けて、一緒に手伝う。
まあ、彼女の席が、コピー機と近いというのもあるが、俺は女性で今までそんな人、あんまり見たことがなかった。
むしろ、わかんない、私、機械触るの、苦手なんです…の女性特有の逃げの一手で、男に頼る女子が多いんじゃないかな。
俺もそう言われてよく頼られ、忙しい時に時間を割いたことが何度もある。
でも、由良さんは違った。
もちろん、配属後すぐ、最初に紙が詰まってエラー表示が出たときは、俺が困っている彼女にいち早く気付き、対処した。ディスプレイの案内表示通りに機械に触れば、大抵のことは解決するもんだ。
彼女のすごいところ。
その時、一生懸命ディスプレイと俺の手順を見ていたんだ。本当に…目を皿のようにして。今思えば、人任せにせず、次回は自分一人で解決できるように…とか、思っていたのかもしれない。
案の定、二度目に彼女自身が紙を詰まらせて立ち上がったとき、ピーピーとうるさい音を立てるコピー機に、俺も含め、何人の男性社員が、彼女の近くに駆け寄ろうとしたことか。
でも彼女はたった一人で、最初俺がしてみせたとおりに、表示を見ながら、紙を抜き去り、見事に解決してみせた。
「よし、もう手順、覚えました!これで詰まりも怖くありませんっ」とにっこり笑顔で席に着く。この笑顔の破壊力って…ほんと、半端ありません。
確かに、できない、苦手です、のタイプの女子の方が、世間的には、頼りなくて可愛いし、女らしい。男から見ても、ほっとけない…俺がやってやるよ…ってなるのかもしんない。
でも俺は、由良さんのように最初はできなくても、頑張ろうとする女性が好きだ。
高いところにある資料を取る時も「あれ、届かないんで、すみません、取ってください」と周りの背の高い男性社員にいえば、一瞬で、済むことだ。でも彼女は違う。
脚立を出して、誰にも言わずにひっそりと、それをやる。
前に飲み会の席かなにかで彼女が言っていた。忙しいときに人に頼むのは気が引ける…できることはできるだけ自分でやった方が、気が楽なんだと。
きっと、そんな彼女の性格と、行動の毎日の積み重ねを目にして、俺は気付けば…彼女をすごく好きになってしまっていた。
もっと、頼ればいいのに…もっと、楽に生きたらいいのに…
そもそも君が頼めば、どの男だって、ほいほい言うこと、聞くと思うよ。
不思議なことに、そういう風に男が思える女子が甘えず、
そうじゃない女子が、やたらと甘える。
あ…これは言っちゃいけないことだった。
俺は女性の敵を作りたいわけでは決してない。ただ、こんな風に思う男が少数でもいるってこと、世の女性は少しだけ知っていても損じゃないのかもしれない、とは思ったりする。
とにもかくにも、彼女が職場にいると思うだけで、俺は毎日、仕事に行くのが楽しいんだ。
そんな彼女と毎日一緒にいられる夫が、マジで本当に羨ましい… 俺のこの苦しい気持ち…どうしたらいいんだ
つづく
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