【完結】あの可愛い人妻を、誰か俺に譲ってください。

翌朝

翌朝…俺がベッドで目覚めると…
彼女はもう、俺の腕の中にはいなかった。

「…白石…さん…？」俺は誰もいないガランとした部屋で、自分でも情けなく感じるほどの…小さな声を発する。

…ソファーに彼女の荷物があるので、まだ部屋のどこかにいるのは間違いない…。トイレかな…

ギッ…というドアが開く音とともに、彼女が洗面所から出てきた。
驚くほどに、綺麗に、身なりを整えて…。まさに、毎朝職場で見る彼女の様子と変わらない。
控えめなメイクでも、もともと目鼻立ちがくっきりした顔立ちのせいか、普通に目立つ。

どうやら朝から風呂に入っていたようで、ほんのり石鹸の良い香りが、彼女の全身から…漂ってくる。
ああ…

彼女がこちらに気付き、声を発する。
「あ…っ、木下さん…起きたんですね。おはよう…ございます。」
由良さんは明るく俺に声をかけ、それと同時に…これは本当に、俺のただの気のせいかもしれないけど…頬を少し赤らめながら、俺からそっと目を逸らす。

「おはよう…ございます…」俺も答える…。
普段の職場での挨拶とは違う…朝の…挨拶。

昨夜のことを思い出すと…なんだか異常に気恥ずかしい…。俺自身も、やっぱり彼女を直視できない…。
そもそもこの後、何を話せばいいのかさえわからない…

彼女にあんなことまで…自分の…男の欲望に任せて、滅茶苦茶に…あんなにもいやらしい行為をしておいて…今更何を、気恥ずかしがってんだと思うけど、やっぱり…なかなか…普通通りに接することができない。

俺が無言でいると、由良さんの方から、明るく話しかけてくれる。

「木下さん…今、8時…位なんですけど…朝ご飯、どうします…？さっき見たら…このホテル…朝ご飯もあるみたいで…メニューがここに…。もし、よかったら…ですけど、朝、食べてから、こちらを出ませんか…？確か10時まで、大丈夫なんですよね？」

今すぐ彼女と離れるのは…すごく辛い…というか、由良さんといられる時間が長いに越したことはない…。ずっと一緒に…いたいくらいだから。

俺は即答で答える。
「はい！ぜひ、そうしましょう。どんなのが、あるんですか…？」ソファーに座っている彼女の横に座り、メニューを受け取る。

ふわりと…石鹸の香り…ああ…幸せだ…

俺は思わず、彼女の頬に顔を寄せ…そっとキスをする。柔らかくてぷるんとした肌…不意打ちに近かったので彼女が一瞬驚いて、こちらを見る。

「…やだ…木下さん…私…なんだか色々…すごく恥ずかしい…のに…」そう言いながら、顔を伏せる由良さん…

彼女も同じなんだ…
俺だってすごく…気恥ずかしい…。

でも…生まれて来てから今まで…俺の人生、こんなに幸せなことは…なかったように思う。

彼女…由良さんは人妻…
　無理なことは分かっているけど…
　　この幸せがずっと続くといい…だなんて…

俺は夢見ていたんだ…
…その後、気持ちが溢れて…
　　　どんどん辛くなるのを知らずに…