ある女の苦悩

もえこ

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夫婦

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「あなた、おかえりなさい」
玄関で、すぐに夫の鞄を受け取る。

「…ただいま…あ~ …今日も、疲れたな…」
夫の決まり文句… 
夫がこれを言わない日は、飲み会の夜以外、ほぼない…。

「今日もお疲れ様…先に食事にしますか?それとも、お風呂にしますか…?」

(… それとも、私…に、しますか… ?なーーんて… )

…こんな風に夫に、明るく…面白おかしく尋ねることができたらどんなにいいだろう…

私は頭の中だけでそんなことを思いつつ、
仕事から帰宅して疲れ切った顔の夫に、いつものように二つの選択肢を与える。

「ああ…先に、夕飯にしようかな…仕事でトラブって昼を食べ損ねたから、すごくお腹が空いてて…」

「そう。すぐに出せるわ、座ってて」

「ああ…ありがとう…」

私は先にテーブルにビールとおつまみを出し、即座に準備していたおかずを温める。

「どうぞ… 」数々のお皿をテーブルに並べる。

「ああ…ありがとう… いただきます… うん、うまいな…!この、里芋の煮っころがし…」

「良かった…おかわりもあるから、どんどん食べてね…」

「うん、美味い美味い… 」

「… … … 」にこやかに笑う夫の顔を見る…。

夫とは、私が26歳、夫が30歳の時に、結婚した…。
それから6年…。
気付けば、私も30を超えた…

結婚生活はいたって順調だ。
子供はいないが、大きな喧嘩も衝突もなく、私は主婦のかたわら、週に2~3回のパートをしている。

夫は穏やかな人…私もどちらかと言えば大人しいタイプで… 
夫婦二人で、ゆっくりとした時間を過ごしながら、年を重ねている。
見た目はともかくも、精神は老夫婦のようなやり取りと、会話…。

幸せかと聞かれれば、確かに幸せだ…
この状況で不満を言えば、贅沢だと言われるかもしれない…
  
だけど私には、夫には絶対に吐き出せない不満があった。

この世代の夫婦のあるある事例なのかもしれないが… いわゆる、レス問題だ…。
結婚して数年は順調だった…。

だけど、ここ2~3年…全く、ない…
夫から、したいと迫られたこともない…。
人に聞いたことはないが、これは普通のことなのだろうか…。

もはや、寂しくてどうにかなりそうなのに、
夫はそんな私の…女の気持ちを、全くわかってはくれない…。

今日こそはと思い、夕飯にウナギのかば焼きとニンニクのホイル焼きを出してみたけれど…
明日、職場で匂うのが嫌だと、にんにくは完全に無視されてしまった…。

ウナギだけで大丈夫だろうかという不安を感じつつも、
私はその日も、じりじりと夜を待った…。




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