ある女の苦悩

もえこ

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夫婦

妻の決断

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私は呆然とする…。

私の意を決しての夜の誘いを、またしても、断られてしまった。

疲れているから…

ただ、それだけの簡単な一言で、私の心はまた、こんな風に打ち砕かれる。

女の方から言うこと…誘うこと…
セックスがしたいと男を誘うことが、どれほどに勇気がいることか…夫は全然わかっていない…

しかも夫は、私の性格をわかっているはずだ。
私が付き合った当初から、積極的な女ではないことは夫も知っているはず…

どんなにそんな行為がしたい時でも、しよっかとか、したいとか…ただの一度も、こちらから積極的に誘ったことなどない…
これまで、雰囲気をなんとかそんな方向に持っていって、促すのがせいぜいだけった…

夫はわかっているのだろうか…
女の欲望を…
男だけではない…
女にだって、こんな風に、したいと思う夜があるということを…

私は愕然とする…
もう、夫とは一生できないのかもしれない…

夫が希望するままに、そもそも寝室を別にしたのは間違いだった…
そこから、セックスレスに拍車がかかったのは間違いない…。
しかも、子供のことはどう考えているのだろう…
私は既に30代…
ずっと、妊娠が可能なわけではないのだ…

ああ…体の力が抜けていく…
もう、夫とは無理かもしれない…
結婚とは、そもそも、なんなのだろうか…

もう、いっそ…

私は脳内に浮かんだセリフを咄嗟に飲み込む。

いっそ、もう…  

夜の町にでも繰り出して、
その辺の男と、浮気でもしてしまおうか…  
一夜限りの、見知らぬ男とのセックス… 

それはそれでいいのかもしれない…

「そうよね、疲れてるよね、部屋に戻るわ、おやすみなさい」

私がそう言うと、夫が何か言いかけたような気がしたが、あえて引き留めにも来ない…

もう、いい…   

私はそのまま、夫の部屋を後にした。




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