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外の世界
誘い
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「初めまして、夏川です」
「こちらこそ初めまして、田島と申します」
その男性と、よくあるチェーンの喫茶店で待ち合わせをしていた。
当然ながらお互いに既婚者だ。
既婚者同士の友人を探すという体でのコミュニティだとはわかっているものの、夫には内緒で登録をしているために、一種の罪悪感のようなものは拭えない。
そんな理由で、顔のぼかしとともに、本名の登録も避けていた。
知り合いが少ないとはいえ、 誰がそのアプリを見ているかわからないからだ。
田島という男は、どちらかといえば線の細い夫とは違い、顔立ちがクッキリとした写真よりも数倍いい男だった。細身だが男らしい体つきで、筋肉もある。
実物を見てガッカリすることが多いと伝え聞いていた私は内心、心を踊らせた。
「僕、この店によく来るんですよ…チェーン店ですけど、水出しアイスコーヒーが美味しくて気に入ってるんです」
「そうなんですね、私もここ、好きですよ」
初対面で最初はかなり緊張していたものの、その男は物腰も柔らかく話しやすかった。
お互いのことを差し障りがない程度に話しつつ、だんだんとその場の雰囲気にも慣れ始めた頃、不意に男に、手を重ねられた。
恥ずかしい話だが、夫以外の男にそのようなことをされたのは初めてのことで、体がビクンと震えた。
「夏川さん、そろそろ場所を変えましょうか?お腹は空いていますか?」
「え…いえ…お腹は…」
唐突すぎて、少し驚く。
「でしたらそろそろ、行きましょうか… 」
どこへ…とは、なぜだか聞けなかった。
そんな無粋なことは、今聞かなくて良い…
今日はこの初対面の男に委ねよう…
長いこと寂しさ感じていた私はただ、そう思った。
「こちらこそ初めまして、田島と申します」
その男性と、よくあるチェーンの喫茶店で待ち合わせをしていた。
当然ながらお互いに既婚者だ。
既婚者同士の友人を探すという体でのコミュニティだとはわかっているものの、夫には内緒で登録をしているために、一種の罪悪感のようなものは拭えない。
そんな理由で、顔のぼかしとともに、本名の登録も避けていた。
知り合いが少ないとはいえ、 誰がそのアプリを見ているかわからないからだ。
田島という男は、どちらかといえば線の細い夫とは違い、顔立ちがクッキリとした写真よりも数倍いい男だった。細身だが男らしい体つきで、筋肉もある。
実物を見てガッカリすることが多いと伝え聞いていた私は内心、心を踊らせた。
「僕、この店によく来るんですよ…チェーン店ですけど、水出しアイスコーヒーが美味しくて気に入ってるんです」
「そうなんですね、私もここ、好きですよ」
初対面で最初はかなり緊張していたものの、その男は物腰も柔らかく話しやすかった。
お互いのことを差し障りがない程度に話しつつ、だんだんとその場の雰囲気にも慣れ始めた頃、不意に男に、手を重ねられた。
恥ずかしい話だが、夫以外の男にそのようなことをされたのは初めてのことで、体がビクンと震えた。
「夏川さん、そろそろ場所を変えましょうか?お腹は空いていますか?」
「え…いえ…お腹は…」
唐突すぎて、少し驚く。
「でしたらそろそろ、行きましょうか… 」
どこへ…とは、なぜだか聞けなかった。
そんな無粋なことは、今聞かなくて良い…
今日はこの初対面の男に委ねよう…
長いこと寂しさ感じていた私はただ、そう思った。
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