ある女の苦悩

外の世界

死

「う…　嘘…　」声が、震える…


これは、きっと嘘だ…

夢だ…　　そうだ、夢に違いない…
あり得ないこと…
セックスをしていて、その相手が突然死するなんて、そんなこと…

あり得ない…
私の身の回りにこんなことが、起きるはずはない…

私はなんとか自分自身にそう言い聞かせるが、どうしても…
全裸の男の…
恐らく絶命しながらも、いまだ逞しいままの男の脱力した裸体が目の端に映り、
それが、どうしようもなく、私に事実を告げてくる…。

夢ではない…
夢なんかじゃない…

男をもっとよく、見てみろ…

たった今、お前と狂おしく抱き合った男が、すぐそこで絶命しているではないか…

恥ずかしい格好で…仰向けに…　
もはや、すべてをおまえの目の前にさらけ出して…

あの男の一部は、ついさっきまでおまえの中に入っていたではないか…
熱い熱を放つ男のそれに、穿たれ…男の激しい律動に、何度も嬌声を上げていたのはお前…おまえじゃないか…

そんな声が…遠くから…
いや、違う…最も近くから…自分自身の頭の中から聞こえてくるような、感覚…。

突如、数年前にニュースで見た映像が蘇る…。

ビジネスホテルの一室で女性が、
一人…全裸で死亡していたという衝撃的なニュース…　

明らかに行為後の女が、ベッドで絶命していたというニュースが頭に蘇る…。