超科学

海星

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修行

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 早坂教授には勝てた。

 油断、慢心、怒りが冷静な判断を鈍らせたのだろう。

 しかし葵ちゃんはそうはいかない。

 慢心どころか心を失っている。

 全力で大宣を殺しにくるだろう。

 ブラフも通用しないだろうし生き残る方法は今のところない。

 生き汚いと言われるかもしれないが本音で死にたくないし、それ以上に「自分が大ちゃんを殺したんだ」と正気に戻った葵ちゃんが知った時の事を思うと・・・そう簡単に生きる事を諦めてはいけないと大宣は思った。

 もちろん葵ちゃんに殺されてあげても良いとは思っている。

 自分は葵ちゃんの母親を殺したのだ。

 葵ちゃんの母親に対する感情はわからないが、葵ちゃんはどんな事情があるにせよ母親の仇を殺す権利があると大宣には思える。

 だがそれは全てが終わった後でも構わないはずだ。

 まずはあがいてみようと大宣は思った。







 おかしい。

 葵ちゃんの攻撃が読める。

 予知能力はある。

 だが直前の攻撃が読めたって体が反応しないと意味はない。

 直前がわかって対応出来るのはじゃんけんくらいだ。

 だから早坂教授の攻撃を二時間前に一発だけ予知したのだ。

 訓練すればもっと精度が上がり、攻撃を読みその場で対応出来るかも知れないが直前のパンチを読んだとしても「やっぱりなー」と思いながらそのパンチに殴られるしかない。

 なのに攻撃が読める。

 そして対応も出来る。

 そして攻撃の意図すらわかる。



 意識がなく何も考えていないはずの葵ちゃんの攻撃意図が透けて見えるようだ。




 まず爆破で広範囲を薙ぎ払う。

 大宣は距離を取ろうとバックステップするだろうからレーザー魔法で直線を攻撃する。

 するとバックスステップした相手にレーザー魔法がヒットする。

 大宣はマジックレーザーの攻撃をサイドステップでかわしながら「いつの間に俺は相手の心を読めるようになったんだ?」と思った。




 そうか、葵ちゃんの攻撃は大宣が学んだ修行カリキュラムに記されていた動きそのものなのだ。

 ここまで攻撃を読まれかわされれば意識のある人間であれば何らかの工夫を試みる。

 だが葵ちゃんは無意識に攻撃を繰り出してくる人形のような状態だ。

 かつての修行に従って攻撃を何も考えずに仕掛けてくる。

 




 そうか。

 「A.H」さんの正体がわかった。

 「早坂葵」さんだ。

 




 「A.H」さんの修行カリキュラムは穴があくほど読み返して、意図も理解した。

 他の誰の攻撃も大宣にはかわせない。

 しょせん大宣はにわか仕込みの魔術師もどきだ。

 だが「A.H」さんの攻撃だけならどれだけ苛烈でも目を瞑っていてさえもかわす自信がある。

 光明が見えた。

 「勝負だ、葵ちゃん。

 俺が必ず葵ちゃんを助ける」大宣は力強く宣言した。 
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